ダンジョンで修行するのは間違っていない   作:カユ

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第四話  剣の天稟(ソード・ギフテッド)

side 剣神(フツヌシ)

 

 

幼子、飛鳥を弟子兼眷族(ファミリア)にしてから一年が経った。当初は剣を振ったことしかない自分が子供を育てることができるか不安だったが、その思いは良い意味で裏切られることになった。

 

あまりにも良い子だったのだ。飛鳥が失っていたのは家族や友人の顔と思い出だけであり、一般常識やおそらく学んでいたであろう物事はしっかり覚えていたのだ。いや、顔や思い出を忘れていることは決して「だけ」とは言えないのだが。

 

そして精神的には、その年にしてはあり得ないほど聡明であり、大人びた性格をしていた。出会った当初の言葉遣いや態度を見れば分かりきっていたことだが。

 

 

「はぁっ、はぁっ!フツヌシ様…!隣山までの往復終わりました…!」

 

「よしっ、10分休憩だ!」

 

「はいっ」

 

息切れをしている飛鳥が膝に手をつきながら報告してくる。

あれからひたすら修練を積んだ飛鳥は肉体的、というか【ステイタス】という面では圧倒的な進化をしている。

 

 

 

トウドウ・飛鳥

 

Lev.1

 

力 :S 915

 

耐久:S 999

 

器用:S 999

 

敏捷:S 904

 

魔力:I0

 

《魔法》

【】

【】

 

《スキル》

求道者(ソード・アトラクティッド)

・全アビリティの上昇率の高域化

・必要睡眠時間の減少

・肉体回復速度の上昇

 

 

 

 

魔力は魔法が無いのだから当然とはいえ、それを除いたアビリティオールS。これが異常だというのは眷属がいたことがない自分でも分かる。伝え聞いた話によると、通常アビリティの伸びには個人差があり、伸びにくい項目のアビリティがあるという。しかし、スキルによって伸びにくい項目が消えるうえにおそらく伸び自体もよくなっている。一柱の武道家としては下記二つのスキルに注目していたのだが、一番やばいのは間違いなく、「全アビリティの上昇率の高域化」という効果だった。

 

 

 

そんなことを考えているうちに、おそらく10分ほど経っただろう。

手作りの竹刀を二つ取り片方を寝転がっている飛鳥に渡す。

 

 

「ほら、立て飛鳥!打ち合い稽古だ」

 

「はい!」

 

 

飛鳥は立ち上がり竹刀を構える。そこにいたのは何もできない幼子ではなく一端の剣士だった。

 

「行くぞっ!」

 

 

手始めに距離を詰め上段から斬り下す。飛鳥は身体を右にずらし避けたあと左下からの斬り上げをしてくる。それを身体を横にずらしギリギリで避ける。

 

「ハァッ!」

 

「避けの動作が大きい!もっと相手の剣の軌道を見ろ!そのせいで攻撃までの切り替えが遅くなってるぞ!!」

 

「はい!…ふっ!!」

 

 

今度は飛鳥の方から斬りかかってくる。上段からの振り下ろし、それを左に避けようとすると剣の軌道が横薙ぎに()()()

一度本気で振り下ろした剣の軌道を変えるなど、ステイタスという力が無ければできぬこと。普通なら想定外の動きであり、こちらは大きく避けることになり致命的な隙をさらしてしまうか、何もできず一太刀を浴びることになるかの二択だろう。

しかし…

 

 

「なっ!!!」

 

「甘い!」

 

自らの竹刀を飛鳥の竹刀に重ね、飛鳥の横薙ぎを柔らかく受け流し縦の軌道に変える。後ろに流した竹刀を上段に持ち上げ、バランスを崩した飛鳥の首に添える。

 

 

「終わりだ。」

 

「参り…ました」

 

 

降参の声に竹刀を下す。呆然としていた飛鳥は次第に頬を赤くし興奮した様子で詰め寄ってくる。

 

 

「今のすごいですフツヌシ様!速さを全く変えずに横薙ぎに変えたのに、それに竹刀を完璧に合わせて逸らすとか人間業じゃないですよ!」

 

「まぁ、神だしな」

 

「でも身体能力は一般人と同じぐらいなのに…!今のフツヌシ様には全く見えないはずの速さで、それを避けるでも防ぐでもなく、受け流すなんて!しかも横薙ぎを縦に変えられたのに違和感が全然なくて、こちらは体制を崩すことになって…!」

 

「当然力で無理やり軌道を変えても勝てないしな!飛鳥の刃先の向きを変えることであくまでお前の力を利用した形になるわけだ。目に見えないのはあれだ、感覚で合わせれば大丈夫だ!」

 

「すごすぎる…!!!」

 

 

飛鳥の尊敬の視線を浴びながら、冷や汗が出てくるのを感じる。さっきの剣は軌道が曲がったにも関わらず速度がほとんど変わっていなかった。通常無理に変えてしまえば速度は明らかに落ちてしまう。ましてや、それでも円を描く程度の曲がり具合なのだ。それがなんだあの角度は?直角とまではいかなくとも70度は曲がっていた。

お前はできないかと問われればできると言えるだろう。なにせ(わたし)は剣神であり、その業だけでかつて見た第一級冒険者と対等に戦うことだってできる。友神のタケミカヅチもできるだろう。

しかし飛鳥は()()()()()()()()()()()()()の今年八歳になる、ぎりぎり幼子を卒業したといえるくらいの少年なのだ。

 

その天稟とも呼ぶべき剣の才能に興奮を覚える。神は不変だ。故に剣神である自分の剣技がこれ以上極まることなどないし、肉体など言うまでもない。このまま成長すればこの少年の剣技は、間違いなく神域に足を踏みいれることができるだろう。人は無限に成長する。だからこそその輝きに神々(わたしたち)は熱狂するのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

では、もしその先にさえも至ってしまったら?

神も知らぬ領域に至ったとき、その業は…どれほどのモノなのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フツヌシ様?」

 

「ッ?!」

 

「どこか怪我しましたか?」

 

 

飛鳥の心配する声に飛んでいた意識が戻る。飛鳥に何処も怪我していないと伝え頭を撫でる。そうだ。確かにこの子の才能は驚異的だが、それでもそれ以前に()としてこの子には幸せであって欲しい。そこに神の身勝手な思いを押し付けてはいけない。自分はただこの子の幸せの為に剣を教えるのだ。自らの身を守れるように、大切なものができたときにそれを守れるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい。というわけでフツヌシ様もまた神であったわけです。
ダンまちの世界において神は不変であり、武神であり武闘家なら自分がそれ以上強くなることは無いと言われたらどう思うのか?という私なりの解釈で書きまたした。(結果神らしいとも言える、人類が自分より強くなるのを望んでしまうという傲慢さ)
本当はただの修行パートだったのに、勝手にフツヌシ様がそう思考してました。

次回よりめちゃくちゃ重要な章が始まります。簡単に言えば、幼少期のアイズと飛鳥の邂逅ですね。バチバチのオリ展開です。そこでアイズに一つの楔が打たれ、そして飛鳥の飛躍が始まります。アイズと飛鳥は同じ歳であり、アイズが八歳、つまり黒いワイバーンを倒してLvel2になってすぐの時系列となってます。

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