ダンジョンで修行するのは間違っていない   作:カユ

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アイズはリヴェリア達のことを家族として認めたというのと、なんだかんだいってレベル2にランクアップして、一時的に精神に余裕ができているという解釈をしてます。作中でも、リヴェリア達と一緒にいると年相応になるという描写がありましたし。
そして主人公ですが、一年ほどフツヌシ様と家族として生活し、当初と比べるとずいぶん子供らしくなっています。


第六話  邂逅

がたごと、がたごとと少しだけ馬車が揺れる。

フツヌシ様には長時間馬車の揺れでお尻を打ったりするのはキツいらしく、今回は比較的揺れが少ない中級馬車での旅となった。運賃が割高になるが、馬車に乗るのは二組までで、クッションや軽食がついてくる。ちょっと背伸びした農民や冒険者が使うような馬車だ。更に上には、中に乗るのは一組だけで、まるで高級宿屋のような内装をした上級馬車というのもあるらしい。まぁ僕には縁は無いと思うけど。

 

フツヌシ様の家は村の外れにあり、村の近くに現れた魔物を狩ったり、僕が【ステイタス】を使い力仕事を手伝ったりして、金銭を稼いでいる。しかし、田舎の村にお金を使う機会などあまり無く、それが理由で今回は少し奮発して中級馬車を利用したわけだ。

 

そんな風に色々考えながら備え付けの窓から外の景色を眺めていたのだが…

一年ほど修行した末に身に付いた感覚が、先ほどから対面に座っている女の子から見られていると訴える。

 

 

自分達がこの馬車に乗り込んだあと、ぼろぼろのローブを深く被った女性と子供が入ってきて、二組が揃ったので出発することになったのだ。

 

大人の女性はボロボロのローブでは隠せないような気品があり、逆にそのアンバランスさで違和感がすごかった。女の子の方は馬車に入った瞬間、「動きにくい」と言ってローブを脱ぎ、その行動に大人の女性がため息をついていた。

 

その女の子は、馬車の中で日が当たっていないにも関わらず光っていると錯覚するほど綺麗な金髪で、宝石のように綺麗な金色の瞳をしている。少しタレ目ぎみの眼が眠そうな、それでいて柔らかい印象を与える。

神様と同じぐらい顔が整っている人を初めて見たのでつい見惚れてしまった。

しかし、フツヌシ様と間違いなく厄介事であると目でアイコンタクトをし、空気と一体化していたのだが…

 

じーー

やはり物凄く見られている気がする。

ローブを被って中級馬車まで使って目立たないようにしているあちらとしても、あまりこちらには関わりたく無いはずなのだから、自分を見ているわけがない!と納得させて勇気を出してチラ見してみる…

 

————見られてました。物凄く目が合ってます。

すると女の子はその小さく形のよい口を動かし聞いてきた。

 

「あなたも冒険者なの?」

 

「え?」

 

「だって、剣持ってる」

 

予想外の質問に一瞬答えに詰まる。いや驚いた理由は冒険者だと当てられたからでは無く、この綺麗な女の子から「も」という言葉が出てきたからなのだが。つまり…

 

「えっと…冒険者ではないけど神様から恩恵(ファルナ)は貰ってるよ?そういう君はもしかして冒険者…だったりする?」

 

「そう」

 

「そうなんだ!この年ぐらいで恩恵(ファルナ)を貰っている子とははじめて会うよ。よろしく」

 

「アイズ」

 

「へ?」

 

「わたしの名前はアイズ・ヴァレンシュタイン」

 

「あ、あぁ名前ね。僕の名前はトウドウ・飛鳥。極東出身だから飛鳥の方が名前だよ。よろしくねアイズちゃん」

 

「アイズちゃんじゃなくて、アイズって呼んで。ロキを思い出す」

 

「アイズ?」

 

あ、この子天然だ。名前を呼ぶと満足そうな顔で頷くアイズにそう確信する。ロキというのは誰か分からないがひどく嫌われているらしい。別にこのぐらいの年齢でちゃんづけで呼ばれているのは普通だと思うが。

 

「レベルアップはした?」

 

「いや、アビリティはもう良い感じなんだけどね。偉業をまだ達成していないからまだレベル1だよ」

 

「わたしはもうレベル2。前上がった」

 

「…ホント?」

 

本当のことだというアイズに驚愕の目を向けると、胸を張ってドヤ顔をする。相変わらず眠そうな眼によって生意気そうな仕草をしてもただ可愛いという感想しか出てこないのだが。

 

しかし本当に驚くことべきことだ。何せレベルアップというのは、神に讃えられるような偉業を成さなければできないと聞いている。それを自分と同い年ぐらいに見える女の子が成したと言っているのだ。この子はただ可愛い女の子ではないということなのだろう。

 

すると隣でアイズと喋っている僕に生暖かい目を向けていたフツヌシ様が驚いたように呟く。

 

「レベル2…だと…!?」

 

アイズの隣に座っていた女性が深い、それはもう深いため息をつきアイズに拳骨をする。

 

「アイズ、何の為に誰にも言わずにこのローブを被ってまで来たと思っている」

 

「あ…」

 

凛々しい声で女性は注意を促す。そしてローブを脱ぎ…

 

 

 

その下に隠れていたのは美しく鋭利な容貌だった。エメラルドのような美しい髪と瞳を持ち、その耳は鋭く尖っていた。はじめて見たが、魔法に長け美しい容貌の者が多いと噂に聞く妖精(エルフ)だろう。

 

「すまない、そちらにいるのは神とお見受けする。私の名前はリヴェリア・リヨス・アールヴだ。貴方の名前を聞かせてもらえないだろうか?」

 

(わたし)の名前はフツヌシという。しかし、妖精の王族(アールヴ)だと?なぜそのような者が護衛もつけずにこんなところにいる?」

 

「私はこう見えてロキ・ファミリアのLevel5の冒険者だ。

安全という面では問題ない。とはいえ目立つわけにはいかないので、こうしてお忍びで来ていた」

 

「ロキ・ファミリア…。確かゼウスとヘラの後釜に納まったというファミリアだったか?そんな者がここにいる理由は聞かない方がいいか?」

 

「詳しい事情は言えないのだが、目的はこの子の修行のためだ。一ヶ月ほど剣士の聖地と呼ばれているというヴァルサへ滞在しようと思っている」

 

「なるほど、それは奇遇だ。実は(わたし)たちも飛鳥にそろそろ剣士としての経験を積ませようと思って、ヴァルサに向かう途中なのだ。同い年ということだし、是非その娘には我が弟子と仲良くしてほしいのだが…」

 

 

 

 

 

「その前に一つ、お前に聞かねばいけぬことがある」

 

フツヌシ様は居住まいを正すと鋭い瞳をリヴェリア様に向ける。

 

「このような幼子がレベルアップなどというものをしたのは何故だ?このような子供がレベルアップするのにどこまで追い詰めた?」

 

 

 

「ちがう!!リヴァリアは悪くない!強くなりたいわたしをリヴェリア達は手伝ってくれてるだけ!」

 

アイズが瞳を大きく開き、フツヌシ様に叫ぶ。

その声にフツヌシ様はアイズを見る。

 

「なぜそうまでして力を求める?」

 

アイズは鬼気迫る表情で言った。

 

「強くなるため…!悲願(ねがい)を叶えるために力がいる!怪物(モンスター)を殺すための力が…!」

 

その表情に戦慄を抱く。先程まで得意げな顔をしていた幼い少女はおらず、そこにいたのは一人の復讐者(アヴェンジャー)だった。その瞳に宿る途方もない憎悪になぜかこちらの胸が痛くなる。

 

「止めることはできない…か」

 

フツヌシ様はそう呟き瞑目する。

 

「お前たちを誤解してしまったようだ。謝罪しようリヴェリア、すまなかった」

 

「いや…そう誤解されてしまうのも仕方ないだろうさ」

 

リヴェリア様は哀しそうに目を伏せる。

 

その姿を見てアイズもまた親に叱られた子供のように俯く。その瞳にはやはり強い憎悪が宿っていたが、同時にどこか迷子の子供のようにも見えた。

 

 

そこからは誰も口を開かず、無言の空間だけが広がる。

がたごと、がたごとと小さな馬車の音が響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あれ?何でこんな空気悪くなってるの?

主人公こと飛鳥君ですが、強くなるためには知識も大事であるという考えのもと、しっかり色々なことを勉強しているので、アールヴがエルフの王族というのもしっかり理解しています。本当に8歳の子供か?

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