ダンジョンで修行するのは間違っていない   作:カユ

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適当に書いてたあらすじ欄を変えました。
めちゃくちゃ重要なことですが、
・オラリオでロキ・ファミリアに入る。
・『死の七日間』に介入する
というのは今のところ決めています。
アストレア・レコードを読んだことない人は絶対読むべき。本当に泣けます。


第七話  男なら

 

 

 

少しずつ揺れがゆっくりになっていた馬車がついに止まる。御車台から中継地点の村に着いたという大きな声が聞こえる。その声に応じて外へ出る。まだ夕暮れになりかけぐらいの時間だが、今日はこのタンザ村に泊まり明日ヴァルサへ到着予定だ。

ヴァルサへ行く者達はみんなこの村を通っていく。ヴァルサは剣士の聖地としては有名だが、町としては普通の規模なため、中継地点にあるこの村も特別発展してる訳ではないそうだ。宿屋がニ・三軒建っているだけの長閑(のどか)な村だ。街道沿いのため治安は良く怪物(モンスター)もほぼ出ず、木の柵が囲うだけとなっている。その周りには黄金色の小麦畑が広がっている。どこか懐かしいような気分になる。

 

しかしそんなタンザ村の穏やかな空気とは反対に、馬車の中の暗い雰囲気のまま無言で歩いていく。宿屋まで案内してくれている御者は背後の空気に気付かず、タンザ村の特産は小麦だの、ここは自分の故郷であるなどと、あれこれと明るく説明してくれる。いや、彼は気付いていて敢えて空気を変えようとしてくれているのかもしれない。

 

 

後方を歩きながらアイズの後ろ姿を眺める。思い出すのは、先程の彼女が見せた強い憎しみの表情。どこまでも暗く、昏い瞳。まだ八歳の少女が浮かべてはいけないような表情。いや、少女であるとか関係なしに、今まで見たことがない顔。けれど、何故かそれに共感してしまうような、決して他人事じゃないような気持ちになる。

 

「今日泊まっていただくのは黄金の小麦亭というところでしてね。そこは何と言ってもタンザ村特産の小麦を使ったパンが絶品で────」

 

御者の人が身振り手振りで説明してくれている。しかし、頭の中を巡っているのはアイズのこと。喋ったのは少しだけだったけれど、悪い子ではないというのだけは確信を持てた。

ふと頭の中に()()()()()が浮かんできた。男なら女の子が悩んでたら慰めろ。誰の言葉かは思い出せないけど、その人の事を尊敬していたということだけは覚えている。

だから…

 

 

「アイズがなんでそんなに力を求めているのか、今日初めて会ったばかりの僕には分からない。でも、君が焦っているのは分かる」

 

立ち止まって呟く。【ステイタス】を持っているアイズとリヴェリア様にしか聞こえないぐらいの小さな声で。その声にアイズは振り返り、訝しげにこちらを見る。

 

「だから…今から勝負をしよう」

 

「ぇ?」

 

「焦っているときは剣を振るのが一番いいっていうのが僕の持論なんだ。すみませんリヴェリア様、少しだけアイズを借ります!」

 

アイズの手を握り走り出す。彼女は困惑している様子だけど手を振り払おうとはしない。

 

 

 

自分も、ふとした瞬間にどうしようもなく焦燥感を感じる時がある。それは寝る前だったり、食事をしている時だったり、様々だ。けれどそういう時は剣を取り外に出る。無心でひたすら剣を振るっていると、気が付けば焦りなどの感情は消えてなくなる。

 

自分には彼女が泣くのを我慢しているように見えた。迷子になって不安なのに、強がって必死に涙を堪えている、そんな小さな子供。まだ会ったばかりの自分が泣いてもいいんだよ、なんて言っても通じないだろう。自分は彼女とそこまでの信頼関係を築けていない。だから、気持ちの誤魔化し方を教えることにした。

 

 

背後からはフツヌシ様の困惑した声が聞こえる。

 

「ごめんなさいフツヌシ様!ちょっと来る途中にあった村の外のところに行ってきます!」

 

街道沿いの、村から走って五分ほどのところにあった開けた場所に向かう。素振りならともかく、村の中で勝負をするわけにはいかない。そこなら誰にも気を遣わずに剣を振ることができるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 剣神(フツヌシ)

 

飛鳥が何か呟いたと思ったら、勝負をするなどと言い出して娘を連れて行ってしまった。今まで同世代の子供と一切関わりを持ってこなかったからなのか、距離感を盛大に間違っている。

 

「おい急に何言っている飛鳥!…すまないな、うちの弟子が勝手にお前のところの娘を連れて行って。普段は初対面の子にあんなことはしないんだが…」

 

「いや、大丈夫だ。神フツヌシよ。少年はアイズを心配してくれたようだ。むしろあの子を心配するならあれくらい強引なほうがいい」

 

「そう言ってくれると助かるのだがな…」

 

「それにしても良く相手の事を見ているし、アイズ相手に引っ張れる胆力もある。どういう教育をしたらあのような聡明な子に育つのだ?実は小人族(パルゥム)で、もうすぐ成人と言われても私は驚かないぞ」

 

リヴェリアは感心したように言う。しかし(わたし)が出会った時には既に年不相応な賢さだった。記憶もなく、これからどうなるかも分からなくて不安なはずなのに、あの年齢の子にはありえないほど落ち着いて考え、自分がどうするかを冷静に考えていた。飛鳥の過去は知らない。あいつがどんな性格で、どんな風に笑っていたのか。飛鳥は元からあそこまで賢かったのか?それとも全てを失ったが故に大人にならざるを得なくなったのか。

時々思うのだ。もし村が怪物(モンスター)に襲われることなく、普通に育っていたのなら、この子は剣を執ることなどなかったのではないかと。

 

「飛鳥は記憶喪失だ。七歳より以前の記憶を持たない」

 

「なに?」

 

「村が怪物(モンスター)に襲われ、最後の生き残りのあの子を保護して引き取った。目覚めた時、あいつは(わたし)に剣を教えてほしいと頼みこんできたのだ。忘れているというより、心が無意識の内に思い出さないようにしている、といった感じか。だから、(わたし)もあいつの過去は知らない」

 

彼女は絶句した様子で声を失っている。飛鳥が思い出さないようにしている光景とはどれほどのものだろう?家族や友人との思い出を失ってまで、思いだしたくない記憶とは。

 

「飛鳥は思い出せなくとも、娘のあの怪物(モンスター)への憎悪に、何かを感じたのだろう」

 

彼女は悲しそうな表情で走っていく二人の背中を見て言う。

 

「どうしても思ってしまうな。なぜ…ただ普通に生きる子供たちがこんなにも辛い思いをしなければいけないのか、と」

 

(わたし)も…何度そう思ったことか分からない。しかし、過去を変えることは今の(わたし)にはできない。神の力(アルカナム)を持たぬこの身でできるのは、あいつに剣を教えることだけよ」

 

 

 

飛鳥に遮られる形になっていた御者の男は気を利かせてくれたのか、話を聞かないように途中から少し離れて待ってくれていた。その男に改めて案内を頼む。

 

「さて、荷物を宿に預けてあいつらを追いかけるとしよう。師として、(わたし)たちは勝負を見守らなければいけまい?」

 

「あぁ、行こう…」

 

 

 

 




ぶっちゃけこの頃のアイズって荒みまくっているから、大体シリアスになってしまう。ということでこの章は大体シリアスです。というかオラリオ行っても『死の七日間』だからしばらくシリアス?

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