ダンジョンで修行するのは間違っていない   作:カユ

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投稿頻度など割と重要なことを活動報告にて載せているので、この作品に興味を持って下さっているほんとうに有難い読者様はそちらをご覧になってください。





第八話  勝負

 

 

 

広場に着いた。

僕はあの日から一年間寝る間もなく剣を振り続けてきた。

考えることは常に剣のことばかりで、ここを通った時もこの広さだったらフツヌシ様と打ち合い稽古をするのに十分な広さだなとか、村からも比較的近いから鍛錬の場所に最適だなとか反射的に考えてしまっていたのだ。

 

「ここなら思う存分動けるでしょ?あ、でも真剣は危ないからこの竹刀を使ってね」

 

アイズは頷いて竹刀を受け取る。いつでもどこでもフツヌシ様と稽古ができるように竹刀は常にニ本持ち歩いている。フツヌシ様ならまだしも、【ステイタス】を持った僕の力では普通の竹刀じゃ当然耐えらないので、特別な竹を編んで作ったらしい。

 

「でも…いいの?わたしはレベル2だよ?あなたじゃ怪我するかも。手加減は…苦手だから」

 

「大丈夫、レベル1の差ぐらいなら剣の業でどうにでもなる事を教えてあげるよ」

 

当然のように戦うのには乗り気な辺り、やはりアイズもストレスが溜まっていたらしい。心配する言葉とは対照的に、竹刀を振って加減を調節しているやる気満々な彼女に苦笑いする。

しかし、剣の業だけで圧倒的な力の差を覆すフツヌシ様(化け物)に師事しているのだ。神様はよく第一級冒険者までなら戦えるなどと意味分からないことを豪語している。その弟子である自分ならレベル差一つぐらいはどうにかしなくはいけないだろう。それと、レベル差というのがどれだけ力が違うというのかを体感したかったので、敢えて挑発するように言った。

 

「じゃあやろう」

 

思惑通り彼女はムッとした顔をし、やる気を漲らせてくる。その単純さに子供らしさを感じ、微笑ましい気持ちになる。

 

 

 

「この石を上に投げて地面に落ちたら開始だ」

 

その言葉と共に石を空高く投げる。お互いに剣を構えて相手の目を睨みつける。

 

───石が落ちる音がする。

 

「ッッ!!」

 

疾い!

瞬間アイズが走り寄ってくる。想定していたより速い動きに一瞬反応が遅れる。顔に向かって伸びてきた竹刀をギリギリで避ける。最初から顔は本当に手加減無しというか殺しにきてないか?!

体制を崩した僕に彼女の連撃が襲う。それを出来うる限り最小の動きで避ける。どんな動きをするのか分からないので、初見の相手なら出来る限り余裕を持って避けたいのだが、大きく避ければ彼女の次の動きに追いつけないのでそれはできない。

ひたすら避け続ける。少しずつだが目が慣れてきた。今の自分じゃ真似出来ないほどの連撃だが、見えないほどではない。彼女の竹刀に僕の竹刀を合わせて受け流す。あの日、僕の竹刀を受け流したフツヌシ様の真似。

 

「ここだっ!」

 

受け流されると思っていなかったのか、驚いている彼女の胴に竹刀を振るう。

 

──決まった。

 

その確信は一瞬で驚愕に変わる。

 

「なっ!!」

 

アイズは今までで一番の反射と速さでもって避けて僕から距離を取る。

 

「危なかった…!」

 

彼女は驚いているようだが、こちらも冷や汗が出る。まだ速くなるのか、と。これが【ステイタス】の差。

なるほど、これならばレベルが下の者が上の者には敵わないなどと言われている理由も納得だ。けれど、突破口はある。その圧倒的な速さと比べると、どうにも力の方は劣るようだ。比較的まだ受け流すのは容易だった。

総評すると、彼女の剣は剣技を身に付けていない者を想定した、文字通り怪物(モンスター)を殺すためだけの剣なのだろう。そこに敵を欺く技はなく、ただいかに速く剣を振れるのかという技を突き詰めた剣。対人経験が豊富なら実に読みやすい剣とも言える。まぁそれは圧倒的な【ステイタス】が補うのだが。 

 

そこからはひたすら竹刀を斬り結ぶ。アイズがこちらに斬りかかっては、それを受け流して反撃する。その反撃を彼女が大きく避けて仕切り直し。ただそれの繰り返しだ。僕の速さだと彼女に攻撃が届くには遅いが、自らに迫り来る竹刀を受け流したり避ける分には十分だ。それゆえにお互いに決め手がない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side

 

「驚いたな…!アイズと同年代で戦える者がいるとは…!」

 

「当然!なんたって(わたし)の弟子だからな!」

 

飛鳥の剣技は既に一流と言えるレベルまで到達している。足りないのはまだ幼い故の体格と様々な相手との戦闘経験の少なさだ。今まで(わたし)としか打ち合ったことがなかった飛鳥は、当然それ以外の剣技を知らない。特に自分より格上の身体能力を持つ相手との経験が無いのは致命的だったゆえ、この戦いは実に有意義なものになるだろう。

 

「特筆すべきはレベル差を覆すほどのあの業か。あそこまで美しい剣を振るう者はオラリアにもなかなかいないぞ?」

 

「飛鳥のスキルに睡眠時間を減らすものと疲労を軽減するものがあるのだ。あいつは二・三時間ほどしか寝ない上にそれ以外の時間の全てを己の鍛錬に費やすのだ。結果、飛鳥は齢八歳にしてあの領域まで至っている」

 

改めて考えると異常だな?どこの世に八歳で一流の剣士がいるというのだ。しかし、その成長っぷりは一人の剣士として実に楽しみでもある。

 

「…神フツヌシよ。そのようなスキルがあるというのは驚きだが、スキルというのはあまり人に言いふらすものではない。私は聞かなかったことにしよう」

 

「む?そうなのか?ではお前の言う通り聞かなかったことにしてもらうと有難い」

 

スキルを言い触らさない方がよいというのは知っている。飛鳥の有用性が分かるように、あわよくばロキ・ファミリアに飛鳥を改宗(コンバージョン)させるために、敢えてリヴェリアに喋ったのだ。

…飛鳥はもうすぐオラリオに行くだろう。(わたし)

が世話になっている村では強くなるには限界がある。力を求めるのなら、ランクアップは必須だ。そしてそれを成すには冒険をする必要がある。(わたし)も着いていきたいところだが、今世話になっている村を離れるわけにはいかない。飛鳥の村のように、怪物(モンスター)に襲われるかもしれないからだ。今回も療養目的の傭兵団が村に滞在するので、ここまで来ることができている。

ということで、飛鳥はオラリオで何処かのファミリアに入れてもらう必要があるのだ。ロキ・ファミリアならファミリアの規模自体が大きい上に、アイズという似た境遇を持つ子供がいる。今更一人増えた程度変わらないだろう。

 

「しかし終わらないな。まだ明日も移動なのだ。あの子達の為にももう終わらせよう」

 

「うむ、これ以上は千日手だな。…二人共稽古は終わりだ!!」

 

飛鳥の反撃に娘が距離を取ったタイミングを狙って声をかける。娘はまだやり足りないとばかりに不満そうな顔をしているが、飛鳥は元気良く返事をして娘に何やら話しかけている。

 

 

 

 

 

 

 

side 飛鳥

 

 

「アイズは凄く速いね!今回は僕の負けだよ。あのままじゃあ僕の方が先に体力が切れて負けてただろうからね」

 

「そんなことない、あなたの方が凄い…!何であんなにギリギリで避けれるの?どうやったらあんな風に受け流したりできるの…!?」

 

アイズが今までにない興奮した様子で迫ってくる。目は口ほどに物を言うという極東の諺があるが、まさに彼女を表す言葉だろう。表情は相変わらず無表情なのに、眠そうな目だけが大きく見開かれてキラキラ輝いている。まだ会って半日ほどだが、彼女の感情を察知するなら目を見れば大体分かることを理解した。

 

「ちょっと近い近い近い!説明するから落ち着いてアイズ!」

 

「落ち着いた」

 

あまりに綺麗な顔がすぐ近くに来るもんだから、耐え切れず制止の声をあげると、ビシッという効果音が付きそうなぐらい一瞬で気を付けの姿勢になる。

そういえばこの子は天然だったという事実を思い出ながら、彼女にさっきの勝負での立ち回りでどんな事をしたかを説明する。

フツヌシ様とリヴェリア様と一緒に村に戻りながらも説明するのだが、隣を歩きながらもアイズはその黄金の瞳でこちらの目と合わせるように聴いているので、少し照れくさい気持ちになる。そんな自分達をフツヌシ様達は微笑ましそうな目で見てくるので、何故だが無性に恥ずかしくなってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──突然村の方から馬の嘶きが聞こえる。

馬上には御者がおり蒼白な表情でこちらに向かって来る。御者が今までにないぐらい大きな声で叫ぶ。

 

 

 

 

 

怪物(モンスター)が…!()()()()()()が村を…!冒険者様どうかお助けを!!」

 

 

───瞬間、走り出す。持っていた荷物も背中に提げていた二本の竹刀も投げ捨て、ただ一本腰に提げていた剣だけを手に持ち駆け出す。

隣には同時に反応したアイズがいる。しかし【ステイタス】の差でその背中は少しずつ遠くなっていく。置いてかれないようにひたすら追いかける。

 

「お、おい待てアイズ!一人で突っ走るな!」

 

後ろからリヴェリア様の制止の声が聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

───ひどくあたまがいたい

 

 

 

 

 




過去が迫ってくる。

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