とある凡才投手の苦悩   作:鯖太郎

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第11話

「いやー、早いもんだな」

 

「急にどうした舞元。物語の導入みたいなこと言い出して」

 

「いや、だってもう2今日から2年よ?この前入学したばっかだと思ってたのに今日から後輩できんだぜ?」

 

そう、今日は入学式だ。1年前の今日、あたしはそこまで期待に胸を膨らませていた訳でもないが、それでも新しい環境というものに一抹の不安と高校生になれば何かが変わるかも、なんてささやかに自分勝手な期待を抱いていたのも記憶に新しい。

 

「あー…確かにね。いやほんとこんなつもりじゃなかったんだけどな…」

 

確かに変わったと言えば変わった。それもとてつもなく大きく。

 

「どういうこと?」

 

「なんて言うんだろうなー…ここまで野球ガチでやるつもり無かったのになーって思って。そもそもあたし強くもない地元の公立中学校で2番手ピッチャーやってる程度だったのに…今気づけば馬鹿みたいに本気になって野球やってんなーって。」

 

「あぁ…それは俺もかも。こんな甲子園本気で目指すつもり無かったわ」

 

「でしょ?あたしなんて野球は一応内申に書ける程度でそこそこにして勉強頑張るつもりでここ来たもん。そのはずが補習受けてるんだからほんとわかんねぇよなぁ…」

 

「まあな…てかゆめお…最近一人称あたしだけどなんか変なもんでも食ったか?それともソッチだったのか?」

 

「違ぇわ!なんか俺って言い方イキってない?」

 

「お前…俺の事イキってる奴だと思ってたのか…」

 

「いや違くて!まあそうなんだけど、子供の頃俺って言い出したやつだいたいカッコつけから入ってるじゃんか!」

 

「まあ、確かに俺がかっこいいと思ってた節はあったかもな」

 

「でしょ?で、なんか俺って威圧感あるよなー、もっと理路整然とした話し方になりたいなーって思って私、って言ってたのね?それが砕けてあたし、になった訳よ」

 

「それで今ではオカマに…」

 

「なってないからね!?新入生ももうすぐ来るんだから変なこと吹き込まないでよ!?」

 

「すまんすまん」

 

「いや、ガチだかんな?」

 

今後新入生からオカマ疑惑もちかけられたらまず舞元から殴りにかかることを決めた。

 

 

 

 

「集合!」

 

「「「ウス!!」」」

 

「えー、今日入学式が終わって正式に入部が決まった面々や。何人かは見学来てくれとったけど、そっから何人か増えて結局今年は去年から1人増えて7人入部してくれることになった!」

 

「「「おおー」」」

 

「というわけで1人ずつ自己紹介してけー」

 

「はい!チューリップ学園出身健屋花那です!ポジションはピッチャーです!コントロールには自信があるのでよろしくお願いします!」

 

チューリップ学園って県内屈指の中高一貫の私学じゃんか!なんでわざわざ…と思ったら監督も気になったらしい。

 

「私学から来たんか!しかもチューリップ学園ってめっちゃ頭ええとこやん」

 

「そうなんです!進学するつもりだったんですけど去年限りで高等部の硬式野球部が廃部になっちゃいまして…野球は続けたかったので受験して入学しました!」

 

「そうなんや、素晴らしい志やな!期待してるで?」

 

「ありがとうございます!」

 

恐らく特進だろうし特進のピッチャーの後輩か。親近感が湧くなー。

 

「それじゃ、セレネイド中学から来ました、レザ・アルファンルナです。同じくピッチャーです。このチームのエースをめざして頑張りす!」

 

えらくイケメンで背の高いやつが来た。こいつは敵か?

 

「ええな!レザはうちが提携してるインドネシアのセレネイド学園からの交換留学生やねんけど3年間うちの高校に通うねんな?どう改めてうちの高校は?」

 

「はい!野球が大好きなので、素晴らしい環境で野球が出来そうで楽しみです。」

 

いい子だ。優しくしよう。

 

「そう言って貰えて嬉しいわ、ほな次行こか!」

 

「はーい、まななつ中の奈羅花でーす!ダイ○のAの御幸に憧れてキャッチャーやってました!負けるのが大嫌いなので勝ちに貢献したいです!気軽ににゃらかって呼んでください!」

 

次に来たのはキャッチャーというにはあまりに細身で小柄な子だった…いや、りりむちゃんいるしあんま気にしてないけど。

 

「負けず嫌いはええな、あてぃしも負けたくないし。お前らもこれくらい勝ちにこだわれよ?」

 

「「「はい!」」」

 

「残りの子らは入学式前から参加してくれてるし、自己紹介やってくれてるから簡潔にしよか」

 

「はい!鏑木ろこです!よろしくお願いします!」

 

「獅子堂あかりでーす。よろしくお願いしまーす」

 

「ミリー・パフェでーす!よろしく!」

 

「アイア・アマレです。よろしくです」

 

「はーい、ありがとう!1年生に負けへんように頑張れよ?じゃあ解散!」

 

「「「はい!!!」」」

 

 

 

 

こうして我がにじさんじ高校に新入生が入部し、1ヶ月半がたったある日のこと。

ブルペンで投げ込んでいるレザを眺めながら筋力トレーニングに励んでいると舞元がやってきた。

 

「いやぁー、まじでレザいい球投げんなぁ」

 

「うん、正直に言うあたしより良いよね」

 

「ゆめお?そこまで卑屈にならなくていいぞ?」

 

「いや、でも普通にめちゃくちゃいいピッチャーじゃん?」

 

「確かに1年にしてはなかなかいいけどさ、ゆめお、お前結構成長してんぞ?」

 

「まじ?まだまだ納得いかないとこだらけなんだけど…」

 

「球速は同じくらい、シュートはレザのヤバい。でもコントロールやスタミナ、持ち球の数、その他色々加味するとゆめおの方が総合力では上だな」

 

「舞元…お前良い奴だな…」

 

「やめっ、やめろお前!両手を広げて近づいてくんな!」

 

舞元に感謝を強めに伝えようとしていると、監督が不気味な程に喜色満面でやってきた。

 

「集合〜!!」

 

「「「「ウス!!!」」」」

 

「えぇー、お前らぁ、いい知らせがある!」

 

ざわめきが広がる中、監督は勿体ぶるように笑みを浮かべながら見回してくる。

 

「なんやと思う?…正解は…今週末、練習試合っ、決まりましたぁ!」

 

「「「「お、おぉ〜?」」」」

 

拍子抜けである。練習試合ならありがたいことによく組んでいるし、特段珍しいことでは無い。…となると?

 

「監督、もしかしてその相手が…」

 

「そうや!ゆめおはさすが頭ええなぁー、いっつも本読んでるだけあるわ!」

 

「本は関係ないけどありがとうございます。で相手は…?」

 

「まあまあ、がっつくなや!大事なことは最後に取っとこうや、な?」

 

「は、はい…」

 

「えー、5月25日。つまり今週の土曜やな。会場はここで、14時プレーボールの予定や。1年生は初めての練習試合やけどどんどん使っていくからそれを見据えてしっかり準備するように。」

 

「「「「ウス!!!!」」」」

 

「で、相手やけど…なんと!釜石高校とやります!」

 

「まじですか!」

 

「まじ?」

 

「やっば!監督あざっす!」

 

口々に盛り上がる中、葛葉が隣から不安げに尋ねてきた。

 

「え、どこ?」

 

「葛葉お前興味無さすぎんだろ…去年の夏の岩手代表だよ」

 

「へえー、じゃあ強ぇんだ」

 

「ほんとになんも知らねぇんだな…」

 

自分の高校の代表校くらい確認するもんじゃねぇの…?あとかなりの強豪校なので葛葉ならスカウトも来てた可能性が十分有り得るのが余計にイカレてると感じる要素だ。本当に野球に、特に自分自身にかかわる野球関係の物事にしか興味が無いんだろう。

 

「向こうの監督さんがな、最近ウチが急にどんどん強なったから是非お手合わせ願いたい、練習とかも含め勉強させて欲しいってことらしいわ。まあ、言うなれば偵察やな」

 

「え、それ受け入れて良かったんですか…?」

 

同じ地区の強豪校、しかも格上で甲子園出場校さらに強くなってしまっては我々の目標の甲子園出場が遠くなるのでは…と思ってしまった。

 

「ええねんええねん!どうせ倒すなら倒しがいのある方がええやろ?

それに学ぶのは別に向こうだけじゃない。ウチも向こうさんの練習勉強させてもらうし、お互いに成長しましょうってことや。」

 

「そうなんですね、流石監督です」

 

やはり名将と呼ばれただけはあるな…定期的にボンクラと名監督を行ったり来たりするとこさえなければ。

 

「まだまだええことはあるぞ?これを受けた後に甲子園行ったり優勝したりしてみ?今度は全国の強豪校から勉強させてくれってお願い来るやろな。そしたらお前らのレベルアップにも繋がるやん?」

 

「まあ、そんな訳であてぃしの野望第1ステップ、しっかり勝ちに行くからな!勉強させて下さい言うてくる相手に負けたら恥ずかしいぞ!」

 

「「「「ウス!!!!!」」」」

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