「一緒にって、俺とお前がか?」
「ああ。どう……かな?」
レッドが恐る恐るといった様子で訊いてくる。
俺とレッドの二人旅か、正直楽しそうではあるけど……。
「えっと……一応理由を訊いても良いか?」
俺が理由を訊くと、レッドは真剣な表情で話し始めた。
「俺はお前とポケモンバトルをしたあの日に思ったんだ。俺はフレイと一緒に強くなりたい、チャンピオンを目指したいって。でもそれには足りない物があったんだ」
「足りない物?」
「ポケモンについての知識と経験だよ。実際、俺はあのバトルをするまで鋼タイプというタイプがある事を知らなかった。そんな事じゃ俺にはチャンピオンなんて到底無理だ」
「レッド……」
レッドの悔しそうな顔を見ていると、レッドは再び真剣な表情をしながら話を続けた。
「だから俺は考えた。どんな風に知識を付けて、経験を積んでいけば良いか。そして思い付いたのが、お前と旅をする事だったんだよ」
「俺と一緒じゃなくても旅してれば知識は付くし、経験は積めるだろ?」
「確かにな。でも俺がお前と旅をしたいと思ったのは、お前のバトルを見てみたいと思ったからなんだよ」
「俺のバトルを?」
「ああ。お前のバトルはテレビでよく見るトレーナー達のバトルとは何か違う気がしたんだ」
「そんな事は無いとは思うけどな……俺だってテレビとか雑誌でやってる戦い方を参考にはするし」
「いや、お前のバトルからはそういった物とは違う何かを感じた。俺はそれが何なのかを確かめたいんだ」
そう俺に言うレッドの眼はとても真剣な物だった。
他のトレーナーとは違う何か、か……今思い当たるのは、前世で得た知識だけど、もしかしたら俺自身が気付いてなかっただけで、他にもあるのかもしれないな……もしレッドとの旅でそれに気付けるかもしれないなら、断る理由は一つも無いな。
そこまで考えた後、俺はレッドに向かってこう言った。
「正直俺にはその何かっていうのは思い当たらない。でも今の話を聞いて、俺はお前と旅をすることでそれを見つけられるかもしれないって思った。それにお前との二人旅ってのも楽しそうだしな」
「それじゃあ……!」
「ああ。一緒に行こうぜ、レッド!」
俺はそう言いながらレッドに手を差し出す。レッドはその手を取ると、力強く手を握ってきた。
「ああ! これからよろしくな、ユウト! ルカ!」
「こちらこそよろしくな、レッド」
『よろしくね、レッド』
俺達は笑い合いながら握手を交わす。これからどうなるかは分からないけど、レッドやポケモン達と一緒なら乗り越えられる、そんな気がした。
「さて、俺達もそろそろ出発の準備するか。早くしないとグリーン達に先を越されるからな」
「だな。アイツらがどこまで行ったかは分からないけど、どんどん先越されるのは流石にマズいからな」
「確かにな。さて、まずは必要な物を買い揃えるか」
レッドと一緒に行く事にした後、俺達はポケモンセンターのベンチに座りながら、出発に必要な物の買い出しに行くためのメモを書いていた。
「まずは『きずぐすり』系のアイテム、これはいざとなれば『きのみ』で代用出来るけど、持っといて損は無いな」
「何個くらい必要なんだ?」
「んーと、そうだな……『きずぐすり』は10個くらい、『どくけし』とかもそれくらい持っとくか」
『なんでもなおし』があれば一番だけど、ここじゃ売ってなかったみたいだしな。やっぱりもっと先の方、タマムシシティ辺りまで行かないと難しいのかもしれない。
「因みにそれは一人分なのか?」
「その通り、万が一はぐれる事もあるだろうしな」
その時は波導を使えば済む話ではあるけど、すぐに合流出来るとは限らないしな。それに、その時に野生のポケモンに襲われて手持ち達がダメージを受けたのにも関わらず回復系のアイテムがなかったら最悪の場合だってあり得る。それだけは絶対に避けたいのだ。
「なるほどな。それじゃあ『モンスターボール』は何個くらいにするんだ?」
「出会った野生のポケモンを全部捕まえる勢いでなら20個は欲しいけど、ポンポン捕まえても全員を活躍させてやれる訳じゃないから、次の街に着くまでの分としてこれも10個くらいにしとくか」
レッドと話しながらここまで決めた分をメモ帳にまとめた後、俺は次に必要な物について考え始めた。
「後は野宿用の食糧だな。レッド、寝袋は持ってるよな?」
「もちろん。その日の内にポケモンセンターに辿り着けないかもしれないからな」
「なら良いか。他に必要なのは今のところは無いかな。よし、それじゃあ買い出しに行くか」
「分かった」
『レッツゴー!』
こうして俺達は度に出発するために必要な物の買い出しへと繰り出した。
「よし、こんなもんで良いかな」
『あまり時間がかからずに終わったね』
「だな。ユウトがいてくれて本当に助かったよ」
出発用の買い出しを終えて、俺達はポケモンセンターに戻って来ていた。何となく時間を確認してみると、まだ昼前だったため、これからについての作戦会議をする事にした。
「さてと、それじゃあまずはトキワのもりを抜けて、ここに一番近いニビシティに行かなきゃな」
「ニビシティか。確かあそこにもジムがあるんだよな」
「ああ、あそこのジムは岩タイプのジムだ。岩タイプに有効なのは、草タイプと水タイプと地面タイプ、それと格闘タイプと鋼タイプの5つだな」
「俺達が持ってないタイプばかりだな……」
レッドは難しい顔をしたが、俺はそれに対して首を横に振った。
「いや、そうでもないぞ。鋼タイプならルカが『アイアンテール』を持ってるし、フレイも鋼タイプの技を覚えるぞ」
「そうなのか?」
「ああ。ヒトカゲは『メタルクロー』っていう技を覚えてくれるんだ。それに『メタルクロー』を使ってると、物理的な攻撃の威力も上がることもあるから、防御力の高い岩タイプにも対抗できるんだ」
「へー、そうなのか」
「だから出来る限りニビシティまでに覚えさせときたいかな」
「なるほどな……他にニビジムに関して必要なことはあるか?」
レッドからの質問に対して俺は少し考えた。
「そうだな……レッドは今、手持ちポケモンがフレイしかいないから、もう一体は手持ちとして捕まえておきたいかな」
「え、なんでだ?」
「たぶんニビジムではジムリーダーがポケモンを二体出してくると思う。それなのにこっちはフレイ一体じゃ流石にマズいからな」
「そういう事か……それじゃあどんなポケモンがいたら良いんだ?」
「理想はさっき挙げた草・水・地面・格闘・鋼のどれかのタイプを持ってるポケモンなんだけど、この辺にはいないからなぁ……そうなると今のところの理想はバタフリーだな」
「バタフリーって確かキャタピーの最終進化系だよな」
レッドの言葉に俺は頷いた。
「その通り。因みに何故バタフリーが良いかというと、バタフリーは草タイプの技の『ギガドレイン』とか『どくのこな』などの状態変化技を覚えてくれるからなんだ」
「『ギガドレイン』は確か相手の体力を奪って、その後に自分の体力を回復する技だよな」
「ああ。それに『ギガドレイン』は物理的な攻撃じゃないから、防御力の高い岩タイプにはとても有効なんだ」
「なるほどな……」
「それで……」
それからしばらく、俺達の作戦会議は続いた。そして程よいかなと思った頃、俺はメモ書きでページが真っ黒になったメモ帳を閉じた。
「……一応このくらいにしとくか。後は戦いながら考えれば良いだろうしな」
「了解。そういえば……俺達、飯も食わずに話してたな」
『凄く集中して話してたからね』
レッドとルカの言葉を聞き、ポケモンセンターの時計を確認すると、昼飯を食うのにちょうど良い時間だった。
「それじゃあまずは腹ごしらえをして、それから出発しよう」
「了解!」
『りょーかい!』
俺はメモ帳をリュックにしまい、レッド達と一緒にポケモンセンター内のレストランへと向かった。