「ルカ、片方のコラッタに『でんきショック』! ルーグはもう片方に『かぜおこし』!」
ルカから放たれた電気とルーグの作り出した風がコラッタ達に命中する。
『ぐあっ!』
『ぐっ!』
それを確認してから、俺は次の指示をした。
「ルカ、違う方のコラッタに『アイアンテール』! ルーグはもう片方に『でんこうせっか』!
『了解したよ!』
『任せておけ!』
ルカはさっきとは違うコラッタの方へと走り、上からアイアンテールを叩き付けた。ルーグはもう片方のコラッタへ目にも止まらぬ早さで飛び、そのまま体をぶつけた。
『ぐっ……!』
『ぐぅ……!』
二匹のコラッタがその衝撃でロケット団員達の方へと吹き飛ぶと、その内の一人がコラッタに視線を向けた。
「おい、お前ら! ……ちっ、あいつら中々やるじゃねえか!」
「そのようだな。特にあのピカチュウはよく育てられている」
「へっ! だが俺達だって負けられないんだよ! コラッタ! 『でんこうせっか』!」
「こちらも同じく『でんこうせっか』だ!」
『あいよ!』
『承知!』
ロケット団員達の指示を受けたコラッタ達がルカ達にでんこうせっかを繰り出し、それがルカ達に命中した。
『うわっ!』
『くっ!』
攻撃を受けたルカとルーグが衝撃でこちらに飛ばされてきたが、何とか体勢を立て直した。
「ルカ! ルーグ! 大丈夫か!?」
『何とか、ね……』
『だが、あのコラッタ達も中々の強さだ……』
「みたいだな。これはちょっとキツい戦いになるかもな」
さて、ここからどうしたものかな……。
俺は静かに次の手について考え始めた。
「フィル! ライトを支えておいてくれ!」
「ピー!」
フィルは俺の指示に従い、ライトを頭で支えた。
えっと……まずは『きずぐすり』で傷の治療だよな……?
俺はリュックの中から『きずぐすり』を取りだし、治療を始めた。
「ピカッ!」
「耐えてくれ、ライト。……大丈夫だ、すぐに治してやるからな」
『きずぐすり』がとても傷に染みるらしく、ライトはとても痛そうな顔になった。ユウトならもっとポケモンに寄り添ったやり方が出来るんだろうけど、俺にはこれが精一杯だった。そして、治療を始めてから数分後、ライトの顔付きが少し柔らかくなったような気がした。
「何とかなったん……だよな?」
傷口を確認してみると、傷は治療前よりも遙かに小さくなっており、素人目にも良くなっているのが分かるほどに治ってきていた。
「よ、良かったぁ……」
俺だけでも何とか出来たんだな……。
ライトの様子を見ながら安心しきっていたその時だった。
『ルカ! ルーグ! 大丈夫か!?』
バトル中のユウトの声が、俺の耳に入ってきた。
……こうしちゃいられない。早くユウト達の方を手伝わないと……!
俺は立ち上がった後、フレイのモンスターボールを手に取った。そしてフィルへ視線を向けてから声をかけた。
「フィル、ライトを頼んだぞ!」
「ピー!」
フィルが頷いたのを確認し、俺はユウト達の方へと走った。
「ユウト!」
声の方を見てみると、モンスターボールを手に持ったレッドがこちらへと走ってきていた。
よし……どうやら治療は一段落したみたいだな。
その事に胸を撫で下ろした後、俺はレッドに声を掛けた。
「ライトの方は大丈夫なのか?」
「ああ、今はフィルに見てもらってるよ」
「そっか」
俺達が話していると、ロケット団員が話し掛けてきた。
「ん、そこのお前も参加するのか? まぁ、一人増えたとこで大して大差ねぇだろうけどな」
「油断をするな、足元を掬われるぞ」
「へーい、気を付けまーす」
ロケット団員達はそんな会話をしているが、油断できない雰囲気を出している。
「レッド、油断するなよ。アイツら中々強いぞ」
「わかった。行ってくれ、フレイ!」
『よっしゃあー!! やってやるぜー!!』
レッド達を加えた俺達のバトルは再開した後、俺達はそれぞれのポケモンに指示を出した。
「ルカ、片方のコラッタを『アイアンテール』で打ち上げろ! ルーグはそれに向かって『たいあたり』だ!」
『分かった。行くよ、ルーグ!』
『承知した!』
「フレイはもう片方のコラッタに『ほのおのキバ』だ!」
『わかったぜ!』
ルカは片方のコラッタに近づき、下から『アイアンテール』を当てて、上へと跳ね上げた。そしてルーグがそれに向かって、全力で『たいあたり』をした。そしてフレイは、もう片方のコラッタの方へと走り、『ほのおのキバ』で噛みついた。
『がはっ!』
『ぐあっ!』
『たいあたり』を受けたコラッタは地面へと落ち、『ほのおのキバ』を受けたコラッタは後ろへと吹き飛んだ。
「おい、お前ら! 大丈夫か!?」
「くっ、アイツら只者ではないようだな……」
コラッタ達は立っているのがやっとのようでそれを見たロケット団員の一人は少し考え込むと、コラッタをボールに戻しながら俺達に話しかけてきた。
「ここは退く事にしよう。だがお前達、ロケット団に楯突いたことを後々後悔することになるだろう。行くぞ!」
「了解! じゃあなー、お前ら!」
団員の内の一人がまるで友達と接するかのようなフレンドリーさで手を振ってきた後、ロケット団員達はそのままその場を立ち去っていった。
「俺達、勝ったのか?」
「正確には違う気がするけど、相手を退けたっていう意味ではそうかもな」
レッドからの問いかけに答えた瞬間、安心感からか体の力がゆっくりと抜けていった。
何とか出来たんだな、俺達……。
「よし、後はもう大丈夫だと思う」
「そっか。良かったな、フィル! ライト!」
『うん、ありがとう!』
『ありがとな』
ロケット団員とのバトルを終えて、俺達はライトの様子を見ていた。傷の様子も肉眼で見ても、波導で確認してみても、殆ど完治していた。この調子ならすぐにでも元気になるだろう。
「しっかし、ロケット団って言ったっけ。アイツら何のためにトキワのもりに来てたんだろうな」
「さあな。でも今回の事で俺達はロケット団に目を付けられたことになるだろうな」
「かもな。でも俺とユウトなら大丈夫だ。なっ!」
「そうだな……さてと、そろそろ行くか」
リュックを背負い直し、俺達が出発しようとした時、フィルとライトが俺達に近づいてきて、話し掛けてきた。
『あの……! ひとつお願いしたいことがあるんです……!』
『奇遇だな、フィル。俺もだ』
『てことはたぶん同じ……かな?』
『もしかしたらな。それじゃ一緒に言ってみるか?』
『うん! せーの……』
『俺達を旅に連れていってくれ!』
『僕達を旅に連れていってください!』
フィルとライトは声を合わせて言った後、俺はレッド達と顔を見合わせてから、代表してフィル達に理由を訊く事にした。
「俺達は構わないけど、どうしてだ?」
『今回、俺達が強かったらこんな事にはならなかった』
『だから強くなりたいんです! このトキワのもりを守れるように!』
「なるほどな……」
フィルとライトの眼には決して揺らぐ事のない決意の色が見え、二匹の頼みを断るのは忍びないと感じる程だった。
「分かった。それじゃあ……レッド、お前がフィル達を連れていくのはどうだ?」
「俺が?」
「お前が捕まえた方が、タイプ的にバランス良いからな。それに俺よりもお前の方がコイツらと心を通わせれると思うんだ」
「ユウト……わかった。お前らはそれでも良いか?」
『もちろん!』
『異論は無いぜ!』
レッドの声にフィルとライトが共に笑顔で頷くと、レッドは嬉しそう笑顔でモンスターボールを取り出した。
「よし、それじゃあ……行け、モンスターボール!」
レッドが投げた二つのボールがフィルとライトに当たり、二匹は共にボールへと吸い込まれた。
カタッ、カタッ、カタッ、ポンッ!
その音と共にボールの動きは止まり、レッドはそれを確認してから、ボールを拾い上げた。
「ピカチュウとキャタピー、ゲットだぜ!」
拾い上げたボールを上へと突き上げながら、レッドは声高らかに俺にとってとても聞き馴染みのあるフレーズを口にした。
うーん、やっぱり良いフレーズだよな、これ。俺もこれからやろうかな……。
「出てきてくれ。フィル、ライト」
レッドはボールからフィルとライトを出した。そしてフィル達が出てきたのを確認すると、笑顔で二匹に話し掛けた。
「これからよろしくな。そして一緒に頂点目指そうぜ! フィル! ライト!」
『うん!』
『当然だ!』
レッド達の目の奥にはやる気の炎が燃えているように見え、ちょっとやそっとじゃそれは消えないと思える程だった。
「これは俺達もうかうかしてられないかもな」
『ふふ、そうだね』
俺達はそれを眺めながら顔を見合わせて笑いあった。
「よし、それじゃあそろそろ森を抜けて、ニビシティに行くか。ルカ、案内よろしくな」
『うん、任せてよ!』
フィル達をボールに戻した後、俺達はルカの案内に従って、森の中を進んだ。そして出発してから一時間もしない内に、俺達は森から出る事が出来た。
「よし、後は少し歩けばニビシティのはずだ。ありがとな、ルカ」
『どういたしまして』
ルカにお礼を言った後、ふと空を見てみると、空は綺麗な橙色に染まっていた。
「この様子だとニビシティに着く頃には夜かもな」
「それじゃあジム戦は明日だな」
「だな。今日は色々あって疲れたし、ゆっくり休んで明日に備えよう」
「了解!」
『りょーかい!』
レッドとルカが揃って返事をした後、ニビシティへと向けて夕焼け空の下をゆっくりと歩き出した。
ユウト達の手持ち
ユウト
・ルカ(ピカチュウ)……LV.17
・ルーグ(ポッポ)……LV.14
レッド
・フレイ(ヒトカゲ)……LV. 14
・フィル(キャタピー)……LV.6
・ライト(ピカチュウ)……LV.9