「よし。行ってきてくれ、ルカ!」
『任せて、ユウト!』
「よし……! 出番だぜ、フレイ!」
『よっしゃあー!! やってやるぜー!!』
俺の声に応えながら肩から勢い良く飛び降りると同時に、レッドが手に持ったモンスターボールからヒトカゲのフレイが元気よく飛び出してきた。
……ん? レッドのヒトカゲ、元気良すぎないか? 心なしか尻尾の炎も勢いが強い気もするし……。
フレイのその元気の良さに少しだけ疑問を覚えたが、すぐに気持ちをバトルの方へと切り替え、俺はルカの方へと視線を向けた。
「先行はもらうぜ! ルカ、まずは小手調べだ! 『でんきショック』!」
『了解!』
俺の指示でルカがフレイに向かって、頬の電気袋に溜めている電気を放った。しかし、レッドはそれに動じる事なくそのままフレイに指示を出す。
「フレイ! 避けて『ひのこ』だ!」
『わかったぜ!』
フレイがジャンプで『でんきショック』を躱すと、そのままの体勢でルカに向けて『ひのこ』を飛ばしてきた。
「……やっぱりそう簡単には行かないか……! ルカ、『でんきショック』を『ひのこ』にぶつけて、相殺してくれ!」
『りょーかい!』
ルカは元気よく返事をしてから再び『でんきショック』を放ち、飛んでくる『ひのこ』を打ち消す。その瞬間、それによって生じた黄色と赤色の光がぶつかった場所に降り注いだ。
……つまり、威力は殆ど互角か。それなら……!
「よし、そろそろ本気で行くぞ! ルカ、『アイアンテール』だ!」
『うん!』
ルカが力を込めると、ルカの尻尾は徐々に銀色に変わっていき、『そぉー……れっ!!』とルカは気合の籠もった声を出しながら、その尻尾をフレイへと叩きつけた。
『ぐあっ……!』
「フレイ!」
フレイが『アイアンテール』を受けた衝撃で地面へと叩きつけられると、レッドはフレイのその様子に少し悔しそうな表情を浮かべてから、そのままの表情で俺に話し掛けてきた。
「くっ……何なんだよ、その『アイアンテール』って……!」
「『アイアンテール』は鋼タイプの技だよ、レッド。タイプの相性上、炎タイプのヒトカゲにはあまり効果は無い筈なんだが、今の一撃はそれなり効いてるみたいだな」
「おかげさまでな! フレイ、まだ行けるか!?」
『へっ……当たり前だ……!』
そのレッドの呼び掛けに応じて、フレイはゆっくりと立ち上がりと、やる気と闘志に満ちた視線を俺達へと向ける。
へー……このヒトカゲ、中々根性がある奴みたいだな。
俺がフレイのその様子に静かに感心していると、レッドは帽子を被り直しながらフレイに指示を出す。
「よし、反撃だ! フレイ、『ほのおのキバ』!」
『了解だ!』
レッドの指示にフレイが答えた瞬間、フレイは牙に炎をに纏わせながらそのままルカへ向かって突進してきた。
「『ほのおのキバ』まで持ってるのか……! ルカ、とりあえず避けてくれ!」
『りょーかい!』
俺がルカに回避を指示し、ルカがジャンプで上に避けたその時──。
「へへっ、避けようとするのは分かってたぜ! フレイ、そのままルカ目掛けてジャンプだ!」
『おうよ!』
フレイはルカの足元で一度止まった後、レッドの指示通りにルカへ目掛けて跳び、そのまま『ほのおのキバ』でルカに噛みついてきた。
『喰らい、やがれぇー!』
『……えっ!? うわぁっー!!』
油断していたルカは『ほのおのキバ』をもろに受けてしまい、そのまま地面へと落下したが、フレイは両足でしっかりと着地をした後、俺達へ向かって得意気に声を掛けてきた。
『へへっ……どうだ! 見たか!』
「フレイ……お前、凄いな!」
『へっ、当然だぜ!』
レッドのその言葉に、フレイは親指を立てながら元気よく答えた。
まあ、最初のバトルでうまくいったから、当然と言えば当然かもな。だけど、今は……!
俺はルカの方へ視線を移した後、ダメージによる痛みに耐えながら立ち上がろうとしているルカに声を掛けた。
「ルカ! 大丈夫か!」
『いたた……な、何とかね……』
「それなら良かった……しかし、まさかあんな風に来るとはな……」
さっきあんな情報を貰ったばかりなのに、フレイの事を無意識に過小評価してたのが原因かもしれないな……。よし、それならあの技で……!
俺は『ある技』を使う事を決めた後、再びレッド達の方へと視線を戻した。
「レッド! 今の『ほのおのキバ』は恐れ入ったよ!」
「へへっ、だろ? 俺達はお前達に比べれば、まだまだかもしれない。けど、このバトルに勝ちたいっていう思いなら、絶対に負ける気はしないぜ! な、フレイ!」
『レッドの言う通りだ! このまま俺達が勝利をもぎ取ってやるよ!』
「ほう……」
……なら、本当にアレを解禁するとするか……!
俺は帽子を被り直して気持ちを高めた後、ルカに技の指示を出した。
「ルカ、『あの技』で行くぞ! 『ボルテッカー』!!」
『うん、了解!』
俺が指示した瞬間、ルカは力を自分の中に込め始めた。そしてこめ終わった時、ルカの体はとても強い電気で包まれた。
「行け! ルカ!」
『うん!』
そして、そのままフレイへ向けて走っていくと、レッドは流石に危ないと感じたらしく、少し焦った様子でフレイに指示を出した。
「くっ、何かよく分からないけどかなりヤバそうだな……! フレイ、何としても避けてくれ!」
『わかって……』
そう言いながらフレイが避けようとした瞬間──。
『避けさせる、もんかーっ……!!』
ルカは走るスピードを上げ、まるで雷のようになりながらフレイへと走り続けた。
『なっ!?』
そして、それにフレイが動揺を見せる中、ルカは瞬時にフレイとの距離を詰める。
『これで、どうだぁーっ!!!』
『くっ……ぐあぁーっ!!』
気合を込めたルカの『ボルテッカー』がフレイの体にクリーンヒットし、フレイはその衝撃で後ろへと吹き飛ばされていき、そのまま近くの木へと大きな音を立てて激突する。
「くっ……フレイっ!」
レッドが急いでフレイに呼び掛けたが──。
『流石に……もう、無理だ……』
フレイは『ボルテッカー』のダメージによって力尽き、木にもたれ掛かる形で瀕死状態になっていた。
「そこまで! ヒトカゲ、戦闘不能! ピカチュウの勝ち! よって、勝者は……ユウトじゃ!」
そのオーキド博士の言葉と同時に、俺達はお互いのポケモンの元へと急いで駆け寄った。
「お疲れ様、ルカ。えっと……『ボルテッカー』のダメージは──」
俺は急いでルカの様子や波導の様子からルカの体力を調べた。
……うん、体力の大きな消費は見られるけど、瀕死状態間近って程では無いみたいだ。
「……何とか大丈夫みたいだな」
ルカのその状態に安堵しながら独り言ちると、ルカは辛そうな表情を浮かべながらもニコリと微笑んだ。
『あはは……正直ギリギリだけどね……』
「……みたいだな。あの場面は絶対に決めたかったから『ボルテッカー』を指示したけど……。あの時、『ほのおのキバ』が来た時にもっと上手く指示を出せていたら、もっと良かったんだけどな」
『でも、あれはしょうがないよ。僕も躱せたと思って、すっかり油断してたからさ』
「だな。相手の状態のチェックや技と動きの連携への警戒、これはこれからの課題だな」
『だね』
同時に頷いて早々に反省会を切り上げた後、俺達はレッド達の方へと視線を向けた。そして、肩にルカを乗せてから俺はレッド達の方へと歩きながら声を掛けた。
「レッド、フレイ、お疲れ様」
「……ん? ああ、ユウト達もお疲れ様だったな」
『あー……お疲れさん、お前達』
「ああ。それにしても……初めてのバトルとは思えないほど、レッドとフレイの息が合ってたのは驚いたな……」
俺が正直な感想を言うと、レッド達は誇らしそうな笑みを浮かべた。
「へへっ、だろ? けど……フレイが頑張ってくれたのに、それをあんなに軽々と越えられるとはなぁ……」
『はぁ……全くだぜ。もう少しで勝てると思ったのによ……』
「まあ、そう簡単には行かないし、俺達だって負けたくなかったんだよ。な、ルカ?」
『うん、もちろんだよ!』
俺の問い掛けにルカが元気よく頷いていた時──。
「二人とも良いバトルじゃったぞ」
オーキド博士が満足げに頷きながらグリーン達と一緒に俺達に向かって歩いてきた。そして、ルカとフレイの様子を真剣な様子で見ると、静かに頷きながら言葉を続けた。
「うむうむ。ルカはもちろんの事、三人のポケモン達も初めて会ったとは思えん程懐いておるし、初めてのバトルは大成功のようじゃな」
「はい。ただ……『ほのおのキバ』を受けた時に、もう少し良い方法があったと思ったので、そこは後でルカと話し合おうと思っています」
「俺達はもっとお互いを知らないといけないと思いました。性格とかは合ってたとしても、もっと息を合わせていかないと今回みたいに負けてしまいますから」
「俺ももう少しベルデとの絆を深めた方が良いって思ったかな……。今回は何とか勝ったとはいえ、それに満足してちゃあ、絶対にいつか負けちまうからな」
「私ももっとトルテの事を知りたいって思いました。トルテの癖とか得意な事とかが分かれば、バトルの時だけじゃなく他の時でもトルテのためにしてあげられる事が増えると思いますか」
俺達はさっきのバトルで感じた事、そしてこれからへの展望のような物をオーキド博士へと伝えた。すると、オーキド博士は満足そうに頷きながら静かに口を開いた。
「そうかそうか。どうやら、全員が今回のバトルで得る物があったようじゃし、皆にポケモン達を託した甲斐があったというものじゃ」
そして、オーキド博士はそこで一度言葉を切ると、真剣な表情を浮かべながら言葉を続けた。
「さて、これで四人とも立派なポケモントレーナーとなった。その事はしっかりと肝に命じておくんじゃぞ?」
『はい!』
オーキド博士の言葉に揃って返事をした後、今日のところはこれで解散となり、俺達はそれぞれのパートナーポケモン達と共に帰宅した。