「これからどんな出会いがあるんだろうね?」
「さあな。でも、これからの事はわからない方がワクワクしないか?」
「グリーンにしては珍しいな、そんなことを言うなんて。な、ユウト」
「まぁ良いんじゃないか? グリーンも初めての旅だから、テンションが高いんだろうし」
俺達はマサラタウンとトキワシティの間にある一番道路を話をしながら歩いていた。何故一緒になのかと言えば、アオイがトキワシティまでは一緒に行きたいと言い出したからだ。
「本当にゴメンね、私のわがままを聞いてもらっちゃって……」
「別に良いよ。ポケギアでいつでも話せるとはいえ、実際に会うとなると、そう簡単には行かなくなるだろうしな」
まだお互いに飛ぶことの出来るポケモンや『テレポート』が使えるポケモンがいないため、もしかしたらすれ違いなども起きることも考えられる。俺だけなら波導を辿れるけど、レッド達はそうもいかないしな。
「そういえば、今更なんだけどさ……」
突然、レッドがそんなことを言い出す。
「どうした?」
「ルカってボールに入らなくて良いのか?」
……あ。
「忘れてた、そもそもルカはモンスターボールに入れてすら無かった」
『そういえばそうだったね……』
なんというか違和感無かったから、すっかり忘れてたな。
「てことは、ルカのボール自体無いよね」
「そうなるだろうな」
グリーンとアオイも少し心配そうだ。
さて、どうしたもんかな……。
そんなことを考えていたその時、小さな音が手首の方から聴こえ、俺は手首に着けていたポケギアに目を向けた。
「ポケギアに着信か、掛けてきたのは……オーキド博士みたいだな」
相手を確認した後、俺はポケギアを操作し、博士からの着信に出た。
「もしもし……」
『もしもし。わしじゃ、オーキドじゃ』
「何かあったんですか?」
『実はな、トキワシティにワシ宛の荷物が届いたという報せが来ての。旅立ち早々悪いんじゃが、荷物を受け取ってきて欲しいんじゃよ』
「博士宛の荷物、ですね。分かりました。受け取り次第、研究所へと持っていきます」
「すまんな、それでは待っとるぞ」
プツッ、という音を立てて、オーキド博士からの電話が切れた。
「博士からだったんだよな、何かあったのか?」
電話が終わると同時に、レッドが聞いてくる。
「トキワシティに博士宛の荷物が来てるらしいから、それを持ってきて欲しいんだってさ」
「なるほどな」
「じいさん宛の荷物か。まあここまで準備してもらったし、それくらいはやるか」
「だね。じゃあ、早く行こっ!」
俺達は再びトキワシティへと向けて歩き出した。
「トキワシティに到着っと」
「昔だと遠く感じたけど、今はそうでもないもんだな」
「まあそんなもんだろ」
「ふふ、そうかもね」
久しぶりに来たトキワシティは昔と変わらず、とてものどかな雰囲気だった。……といってもここのジムリーダーは全然のどかじゃないけどな。もっとも、今は絶対に留守にしてるとは思うけど。
「さてと、まずはフレンドリィショップだな」
「だな。博士からの頼まれ事だし、早くしないといけないな」
俺達が早速フレンドリィショップを探そうとした時だった。
『僕が案内しようか?』
ルカが俺にそう提案してきた。
「ショップの場所が分かるのか?」
『一応ね。マサラタウンに来る途中に、トキワシティの中を少しだけ探検してみたから、大体はわかるよ』
「了解。それじゃあ、案内よろしくな」
『うん!』
ルカの案内で俺達は迷う事なく、フレンドリィショップに辿り着いた。
「ここか。ありがとうな、ルカ」
『どういたしまして』
ルカにお礼を言いつつ、俺達はショップの中へと入った。
「いらっしゃいませ! 本日はどのようなご用件ですか?」
店員が元気良く俺達に聞いてくる。
「あの、オーキド博士宛の荷物を受け取りに来たんですけど……」
「オーキド博士宛の荷物ですね! それでしたら、こちらです!」
店員が店奥から小包を一つ持ってきて、俺に渡してくれた。
「ありがとうございます」
「いえいえ、オーキド博士にはいつもご贔屓にしていただいてますので」
店員は笑顔で俺にそう答えるのを見て、俺はその姿から店員の人の良さのような物を感じた気がした。
中々感じの良い店員だな。一番近いからかもしれないけど、オーキド博士が贔屓にするのもわかる気がする。
俺がそんな事を思っていると、近くからどこか楽しそうな声が聞こえ、そちらに視線を向けてみると、レッド達が並べられた商品を見ながら楽しそうに話をしていた。
「なぁなぁ、これとか良くないか?」
「そうだな……幾つか持っといても良いかもな」
「備えあれば憂いなし、だねっ!」
全くあいつらは……。
「おーい、三人とも。用は済んだから、マサラタウンに戻るぞー」
バッグに荷物を仕舞いながら、レッド達に声を掛けた後、俺は店員に頭を下げた。
「それじゃあ、俺達はこれで」
「はい! またお越し下さいませ!」
感じの良い笑顔を浮かべる店員に見送られ、揃ってショップを出た後、俺は三人を見回しながら口を開いた。
「さってと、さっさとマサラタウンに戻るか」
「だな。博士も待ちわびてるだろうし」
「じいさんなら研究してて、時間忘れてる事とか多いから、大丈夫だとは思うけどな」
「博士は研究の事になると、人の声が聴こえなくなる程、集中してるもんね」
「前もあったな、そんな事」
「あの時は確か……」
俺達はそんな事を話しながら、マサラタウンへの道を戻っていった。
それから数十分後、マサラタウンの近くまで来た時だった。
『ユウトの兄貴! ルカの旦那! お疲れ様です!』
突然、近くからそんな声が聞こえた。そして声の方を見てみると、声を掛けてきたのは、木の枝に留まったいつものポッポの内の一羽、子分ポッポだった。
「珍しいな、お前だけなんて」
『はい、実は兄貴がお二方に話したいことがあるそうで……』
「話したい事?」
『何だろうね?』
これまた珍しいな。いつものアイツなら何かあったら自分から言いに来るのに。
「分かった、ありがとうな。えーと……」
……っと、そういえばこいつの名前を聞いた事が無かったな。これを機に聞いとくか。
「すまん、名前を教えてもらっても良いか?」
『はい、俺の名前はバドって言います』
「バドだな。了解、伝言してくれてありがとうな」
『構わないっすよ、ユウトの兄貴!』
バドとそんな事を話していたその時だった。
「ユウト、そのポッポは?」
放っておかれてた三人を代表して、レッドが不思議そうに聞いてくる。
……そういやお互いに会わせた事無かったな。
「こいつはバド、半年前からの知り合いなんだ」
バドの事をレッド達に紹介すると、レッド達は納得顔で頷く。
「そっか。俺はレッド、ユウトの幼馴染みだ。よろしくな、バド」
「俺はグリーン、同じく幼馴染みだ」
「私はアオイ、私もユウトの幼馴染みだよ、よろしくね」
『よろしくっす、レッドの旦那、グリーンの旦那、アオイの姉御』
バドは飛びながらレッド達に挨拶を返す。
バドは気の良いやつだから、レッド達が話せたら凄く仲良くなるだろうな……っと、そうだ。
「バド、ちょっと伝言を頼まれてくれるか?」
『もちろんっす、ユウトの兄貴』
「お前の兄貴に、俺達が初めて会った場所に来て欲しいって言っといて欲しいんだ。ちょっと今から博士宛の荷物を届けに行かなきゃ無くてさ」
俺がバドにそう言った時だった。
「ユウト、荷物なら俺達が届けるから、そっちの用事を優先してきて良いぞ」
レッドが突然そんな事を言い出した。
「え……良いのか?」
「もちろん、それに皆で行くことでも無いしな」
「それもそうか。じゃあ、任せたぞ?」
そう言いながらバッグから荷物を出し、それをレッドに手渡すと、レッドは荷物を大事そうに持ちながらニッと笑った。
「それじゃあ、後で研究所でな」
「あまり遅れるなよ」
「また後でね」
そしてレッド達は、研究所へと向けて歩いていった。
「さて、じゃあ俺達も行くか。バド、ルカとは反対の肩に留まっても良いぞ。さすがに疲れただろ?」
『そう……すね。それじゃあお言葉に甘えさせて頂きます』
バドが肩に留まったのを確認して、俺はバドに声を掛ける。
「よし、それじゃあ行くか。アイツはどこにいるんだ?」
『兄貴は初めて会った場所にいるって言ってたっす』
「となると……あそこだな」
そして俺は、バド達と初めて会った場所、マサラタウンの中心にある大木の元へと向かった。
「そういえば……」
大木に向かう途中で、俺はある疑問を思い出していると、バドは不思議そうに首を傾げる。
『どうかしましたか?』
「俺達が戻ってくる事を何で知ってたんだ?」
伝言を伝えるにしても、なにか用事があるにしても、俺達が戻ってくることを知ってなきゃ、出来ないと思うんだが。
「それなら、俺達がオーキド研究所の近くを通った時に、博士がユウトの兄貴達に電話してるのが聞こえたからです。その時に兄貴からユウトの兄貴宛の伝言を頼まれたんです」
「なるほどな」
謎が解けてスッキリした俺は、再び待ち合わせの場所へと歩いていった。
「おーい、来たぞー」
待ち合わせの場所に着いて早々、俺が大木の上の方に声を掛けると、木の上から落ち着いた声が聞こえてきた。
『待っていたぞ。ユウト、ルカ』
そう言いながら、兄貴分ポッポは木の上から降りてくると、俺達の近くの枝に留まり、俺の肩の上にいるバドに視線を向ける。
『バド、案内ご苦労だったな』
『へへっ、兄貴の頼みですから、断るわけないですよ』
バドは俺の肩から飛び立ち、兄貴分ポッポの隣に着地する。
「それで用事って?」
『それなんだがな……』
兄貴分ポッポは少し溜めてから、再び口を開いた。
『俺も旅に連れて行って欲しいんだ』