アーカイブには映らない   作:ミステイク

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ケイのお話。
難産でした。


拾い上げられた青春

『お母様をよろしくお願いします、アリス……』

 

『ダメですケイ!? 私が消えます! 私が消えるはずなんです!!』

 

『ダメ! 行かないで! 助けてお母様ー!?』

 

 ━━━━━いえ、さよならです。私のアリス……母……。

 

 ウトナピシュティムの本船、我々と敵対する船の内部でアトラハシースを起動すれば、どうなるかはわかっていた。

 

 アリスの悲鳴のような声が心苦しい、こんな形で別れて残念だ。

 

 ゲーム開発部との別れが辛い、ようやっと二人とは別の感情が湧いて来たような気がしたのに。もう少し一緒に居たかった。

 

 先生の生徒として、ミレニアムの生徒として、キヴォトスにもう少し居たかった。

 母の、子として……。

 

 

 申し訳ありません、母。

 生まれ変わっても、きっと忘れない。

 

 きっと、ずっと、私とアリスは貴方の子供として━━━━━━━━━━━━━━━━━。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━━━アトラハシースは二人を守るための最終兵器であり、光の剣の威力は最終編で絶対に必要になる。

 

 ━━━━その際、アリスとケイはとある事情から喪失の危機に遭う。

 

 ━━━━もしもの保険は用意したが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 意識が閉ざされ、軽い電流のようなものが全身を走った。

 身動きの取れない水の底へと沈むようだった意識は、突然何かに引っ張られたように目を覚ました。

 

「ケイ……? ケイ! うわーん!!」

 

「アリス? なぜ? 私は確か……」

 

 ベッドの上で目を覚ました私を、アリスは涙を流して抱きしめた。

 

 なぜ私は生きている。

 ウトナピシュティムの本船でアトラハシースを発動した反動で消滅したはず。

 

「むにゃ……なにアリスちゃ……ケイちゃん起きてる!? お姉ちゃん起きて!」

 

「へ? なに!? あああああ! ケイが蘇生した! 上手く行ったんだ!」

 

「良かったぁ……」

 

「上手く行ったとは……一体なにぐう!?」

 

 アリスだけでなくモモイやミドリ、ユズまで乗りかかるように抱きしめられた。

 い、息苦しい。

 

 もう一回死ぬ。

 

「あ、アリス……モモイも離れ……!」

 

「離れません! みんなずっと一緒です! もう二度と離れませんから!」

 

「……ええ、ごめんなさい。ただいま」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、なぜ私は生きているのでしょうか?」

 

 泣きつかれて眠ったアリス達を尻目に、様々なコードが付けられた機械の寝台で横になっている私は、先程からいたリオとヒマリへと問う。

 騒ぎを聞きつけてやってきたセミナーやエンジニア部、先生までそろって。

 

「それは、このキーホルダーのお陰だよ」

 

 ウタハは手に持っていたロボットの人形を、私の手に乗せた。

 これは私の予備義体。

 

 もしも私の身体に重大な損傷が起った場合に備えた、意識の転送先。

 しかし、あの時は肉体の損傷ではなく、プログラムから消滅しかけていたので転送しても無意味だった。

 

「これには君の人格データが転送されていた、もしも君の身体が傷付いた時の予備の身体として持たされていたんだろう?」

 

「はい、しかしあの時に転送する余裕なんて」

 

 そもそもウトナピシュティムの攻撃によって自我から破壊されていたのだ、転送も何も間に合わずその機能も奪われていた。

 

「うん、君にはなかった。ただこのロボットが自主的にそうした」

 

「自主的?」

 

「君の意識に危機があった場合、このロボットは自動的に君の意識データをサルベージするようにプログラムされていたんだよ。そして自動的に君のプログラムを元ある形へと修復させていた、あとは外部から操作して、このロボットからケイの身体へとデータを戻して」

 

「……蘇らせた?」

 

「凄まじい技術が使われているわ、ミレニアムでも解析できない謎の領域……ロドスの技術なのか、はたまた」

 

 口にはしなかったリオだが、間違いなく無名の司祭の技術が使われているのだろう。若しくはそれを応用したもの。

 

 私の自我プログラムが崩壊した時、予備義体が強制的に私を引っ張り出し修復させる機能。

 それを搭載したのは。

 

「母……」

 

「君達のお母様は末恐ろしい、本当に会ってみたくなったよ」

 

 母が、私を助けてくれた。

 ずっとそばに居てくれた、私を守ってくれた。

 

 胸に、温かい何かが浮かんで、目元が熱くなった。

 

「……ッ」

 

「あ! ケイが泣いてしまいました! リオの怖い顔をずっと見ていたからですかね?」

 

「私の顔は怖くないわ、貴方の消毒液の臭いが鼻を突いたのよ」

 

「もう二人共! こんな時まで喧嘩しないでください!」

 

 相変わらずなリオとヒマリの喧嘩と、それに仲裁に入るユウカ。

 本当に、相変わらずだ。だけど、その相変わらずな光景が、なんだか、悪くない。

 

「”ケイ、大丈夫?”」

 

 先生が私の目をハンカチで拭う。

 先生にも迷惑をかけてしまった、心配させてしまった。

 

 申し訳ない。

 

「なんだか……少し、恥ずかしいです」

 

「”恥ずかしい?”」

 

「アリスや皆の為に犠牲になったのに、こうしてまた生きている事にです。これでは、格好がつきません」

 

 自己犠牲の果てに人生を終えたと思えば、こうしてみんなの前に放り出された。

 まだ生きているという事に、嬉しさと恥ずかしさを感じる。

 

「いいじゃない。生きるとは、恥にまみれるということよ」

 

「それあの子の言葉でしょう! 偶には自分の言葉で喋りなさい頭アバンギャルド!」

 

「いい加減喧嘩を止めて来てください先生、アリス達が起きてしまいます。私も二度寝しますので」

 

「”あはは……”」

 

 私はアリスを同じ寝台へと乗せて目を瞑る。

 

「では……おやすみなさい、先生」




やっぱりポッド042の台詞はケイに似合う。

活動報告の方に次回作のことについて書いたので良ければ見て行ってください。
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