【完結】自称魔王ちゃんのごっこ遊び   作:千歳ふい

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料理を美味しそうに食べる女の子っていいよね


第21話

 緊急クエストが発令されてから、私の生活は一変した。

 

 手始めに私は冒険者ギルドに泊まり込むことになって、外出を禁じられた。

 そして、私を魔王から守るために、ギルドの人たちはこれまでにない団結力を発揮した。

 

 二十四時間体制での見張り。

 衣食住などの面倒。

 多種多様な退屈しのぎ。

 

 私のために、ギルドの職員や冒険者たちは献身的に働いてくれた。

 

 みんなが家族になったような和気あいあいとした空間が形成され、その中心にはいつも私がいた。

 それは心をぽかぽかさせる、どこまでも暖かくて、素敵な空間だった。

 

 まぁギルドって私にとって第二の家みたいなものだったし、当然うれしいよ?

 

 でもね、ニコニコしながら一日中話しかけてきたり、同性だからとずっとベタベタ触ってきたりするのはどうなの?

 

 鬱陶しいんだよお前ら!

 

 いくら拒否してもそれはお前の居場所を分からせるためだと言ってやめてくれない。

 それどころか馴れ合いが足りないだとか言って抱き着いてくる。

 

 それに、異次元な転移魔法を使う魔王は神出鬼没だからと、四六時中誰かと過ごす羽目になった。

 

 添い寝なんて当たり前。

 それこそ、トイレや風呂にも付いてくる始末。

 

 私にプライバシーはないのか!

 

 怒っても泣いてもかわいいと褒められる。

 殴っても微笑ましい顔で見られる。

 ちょっと微笑んだだけで大げさに卒倒される。

 

 もう嫌だこいつら頭おかしい。

 

 ずっと気になっていたエミリーちゃん保護条例が制定された経緯をいくら問い詰めても目を逸らされるだけだし、本当なんなんだよこいつら。

 

 でも、私が実はすごく注目を集めていて、みんな話しかけたくてうずうずしていたのは本当に驚きだった。

 

 かわいい娘が成長していくのを見守っている感じで人気が出たらしい。

 それも、私が王都に来て間もないころから。

 

 ちやほやしたいけど、純粋なままでいてほしい気持ちもある。

 そんな気持ちのせめぎ合いによって、私はマスコットではなく一概の冒険者として育つことができた。

 

 ......考えてみれば、私がルーカスと仲良くなっても勇者ファンクラブからちょっかいをかけられなかったのって、私も有名人だったからなのかな。

 

 ぐぬぬ、そこらへんの裏話をまったく教えてもらえない。

 

 私の居場所は、確かにここにある。

 それは、もう嫌というほど認識させられた。

 

 なんやかんやで私はギルドのみんなが大好きだ。

 

 だから、みんなとの共同生活によって私の心は満たされ、徐々に魔王への恐怖や不安が薄れていった。

 

 魔王の言う通り、私は変化を望んでいた。

 少し、退屈だったから。

 

 でも、その停滞は周りの人たちによる気遣いであり、そうした気遣いの中で私はぬくぬくとしていただけだった。

 

 だから、少し状況が変われば、少し手を伸ばせば、私の生活は慌ただしくなる。

 

 私は変化を望んだ。周りはそれに応えてくれた。

 そう思うと、すべて丸く収まった気がする。

 

 ......でもね、これはこれで嫌なんだよ!

 

 私は! もう! 十八歳の大人なんだよ! 立派なAランク冒険者なんだよ!

 

 何だよこの子ども扱い!

 

 私は激怒した。

 しかし、その怒りを表現する間もなく、シチューをたっぷり乗せたスプーンが顔の前に差し出された。

 

「はーい、あーん」

「あーん」

 

 もぐもぐ。

 うむ。うまい!

 

 やっぱりミラの手料理はうまい。

 

 いつもツンツンしている癖に家庭的なミラちゃん。

 そんなミラちゃんからご飯を食べさせてもらえるなんて幸せー。

 

 じゃないっ!

 何されるがままになっているんだ私!

 

 私は二歳も年上の素敵なお姉さんだぞ!

 何で年下にこんな子ども扱いされてるんだ!

 

 そう抗議しようとも、口の中がいっぱいでしゃべれない。

 代わりに目線で訴えかけても良い笑顔で次の一口を差し出されるだけ。

 

「もぐもぐ......ごっくん、あの、わ」

「はーいあーん」

「むぐっ!?」

 

 なに!?

 しゃべる暇さえ与えられないだと?

 

 くっ、今度は首を横に振って拒絶の意を伝える。

 

「何ですか? もうお腹いっぱいですか? でもだめです。ちゃんと食べてください」

 

 違うわ!

 何でこの状況に違和感を覚えないんだよお前!

 

 私は慌てて両手でスプーンを遮り、その間に頑張って口を動かした。

 

「ふふ、リスみたいでかわいいですね」

 

 うるせえよ!

 こっちは飲み込むのに必死なんだよ!

 

 ようやくシチューを飲み込んだ私は、ニコニコするミラに対してぴしりと人差し指を向ける。

 

「いい? 私はもう大人なの! こんな扱いを受ける筋合いはない!」

「やっぱりまだ愛が足りないみたいですね。まったく、悲しい限りです」

 

 ミラは悲しそうに眉をひそめ、そのまま次の一口を差し出した。

 

 おい!

 いい加減にしろよお前!

 

 ぐぬぬ、でもどうやって説得すればいいのか分からない......。

 

 向こうは楽しんでいるみたいだし、害があるわけでもないし。

 

 うーん。

 

 私がうまい方便を考えながら唸っていると、先にミラが口を開いた。

 

「エミリーさんの言いたいことは分かります。でも、私はエミリーさんの餌や、喜ぶ顔が見たいのです。多少我慢してもでも、他人の気遣いを無下にしないのは大人の役目ですよ?」

 

 確かに......。大人はみんな我慢強い気がする。

 

 でも、なんかうまく丸め込まれた気がするなぁ。

 

「はーいあーん」

 

 うん、おいしい!

 

 




見直したら意外と長かったため、6話を2つに分割しました。
内容に変更はありません。


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