【完結】自称魔王ちゃんのごっこ遊び   作:千歳ふい

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壁にぶち当たっても努力をやめない女の子っていいよね


第6話

 ルーカスとの決闘から数週間、言いつけられた労役を終えた私の生活にようやく平穏が戻ってきた。

 

 ルーカスは当初の予定を変更してこのまま王都に留まり、冒険者ギルドの日常は続いた。

 めでたしめでたしー。

 

 じゃないっ!

 

 そもそも私は変化を起こしたくてあんなことをしたんだ!

 自分の名誉を犠牲に奮闘したんだぞ!

 

 このまま日常に戻らせてたまるかー!

 

 いやね。最初は注目されたよ。

 知り合いには連日追いかけまわされたし、あちこちから視線を感じていた。

 

 やっぱりあの場で勇者が証言したことがかなりの衝撃になった。

 半信半疑だった者たちも私のAランク昇進を知って私が勇者に勝ったことを信じた。

 

 しかし、時が経つにつれてその話題性は薄れていった。

 それに続くアクションを起こせずにいたからだ。

 

 やはりまぐれだったのか、エミリーも勇者も誇張しているだけなのではないかと疑われ始めた。

 

 さらに私の二つ名が『まおうちゃん』になったことから、そもそもただの茶番だったなんて噂も出回った。

 

 実に良くない傾向である。

 

 せっかく勝てたんだ、今更後戻りはごめん被る。

 

 やはり世間に影響を与えて世の中を変えるには、勇者に一度勝つだけじゃ足りないのだろう。

 

 私の努力を無駄にしないためにも、私はもう一度勇者に勝つ必要がある。

 それも、誰もが認める形で。

 

 しかし、前回の戦いで彼我の実力差ははっきりした。

 

 どうあがいても、本気を出したルーカスに勝つことは不可能だ。

 正直、未だに思い出すだけで身震いするほどには強かった。

 

 であれば、私が強くなること以外に道はない。

 

 というわけで、修行するぞー!

 と意気込んだものの、どうすればいいのかまったく分からない。

 

 ルーカスと私の一番の違い、それは地力の差だ。

 単純な身体能力や魔法の出力、この差があまりにも大きすぎる。

 

 途方に暮れたまま、いたずらに時が進む。

 

 そうして悩みに悩んだ末に、そもそも私には知識がなさ過ぎると気が付いた。

 

 そんな状態でいくら考えても良い案なんて出るはずがない。

 

 というわけで、着いたぞ、王立図書館!

 

 王国内最大の図書館であり、あらゆる書籍が保管されているという知識の宝庫。

 利用するのには面倒な手続きが必要であり、庶民にはなかなか手が出せない施設だ。

 

 おかげで中はいつも閑散としており、上流階級のお昼寝スポットとして人気だとか。

 

 しかし、Aランク冒険者の特典で私はほぼフリーパスで入れる。

 格差を如実に表していて正直気に食わないが、使えるできるものは何でも使うつもりだ。

 

 さーてさて、どんなお宝が眠っているのかな?

 

 司書に軽く挨拶して説明を受けてから、早速図書館の奥に入っていく。

 

 天井近くまでそびえ立つ本棚を見ているだけで気分が高揚し、自然と足取りが軽くなる。

 

 ふふ、知識こそパワーだよ!

 

 私が図書館に来た最大の目的は、勇者に関する伝承を知るためだ。

 

 いくら元Aランク冒険者であっても、ルーカスの強さははっきり言って理不尽すぎる。 

 そんなに強くなれたのにはきっと何か理由があるはずだ。

 

 そもそも勇者とは何か、どうやって選ばれているのか、勇者になるとどうなるのか。

 

 こんな一見当たり前にも思えることが、案外謎に包まれている。

 

 ルーカスに直接聞いてもはぐらかされるし、ここは先人たちの知恵を借りるしかない。

 

 ......それにしても、こんな無知の状態でよくルーカスに勝負を挑んだな私。

 

☆★☆★☆

 

 おっ、あったあった。勇者のエリアはここだな。

 

 十分ほど館内を彷徨ってようやく目当てのエリアに辿り着いた。

 

 ふむ。

 

『勇者伝説』『勇者建国記』『勇者にまつわる七つの謎』『勇者は聖剣が七割』『勇者は魔法が七割』『勇者は拳で十分』『一日十分で勇者を目指そう!』

 

 ......なんだろう、王立図書館の割には蔵書がひどい気がする。

 前の二つはただのおとぎ話だし、それ以外は胡散臭いだけだし。

 

 その後も勇者に関する本棚を物色し回ったが、やはりおとぎ話か胡散臭い本しかない。

 

 くっ、仕方ない。

 何か思わぬ発見があるかもしれないし、とりあえず軽く目を通しておくか。

 

 そう思って私は目についた書籍を両手に抱え、閲覧室に向かう。

 

 どうしようもないタイトルの本であっても、手に持つとわくわくする。

 我ながら単純な性格だな。

 

 そんなことをぼんやりと考えながら歩いていると、前方に人影が見えた。

 

 自分以外にも利用者がいたことに感心した私は、やがて近づいてくるその人影に見覚えがあることに気が付いた。

 

 あ、やっぱりルーカスだ。こいつも図書館に来るんだな。

 

「奇遇だな、ルーカス。図書館になんか用か?」

「......ああ。用があった」

 

 無愛想にそう短く返したルーカス。

 

 この数週間の付き合いで慣れたが、ルーカスはいつもクールぶっていて、口数は少ないし発言する際になぜか間を開ける。

 

 それゆえに冷たい印象を他人に与えており、孤高のイメージを作り上げている。

 

 しかし、よく観察するとルーカスが他人を無視することはなく、聞かれたことには必ず答えている。

 

 だから、クールな印象は恐らくはただのコミュ障か、勇者らしく振舞おうとして空回りしているだけなのだろう。

 

「それで、用は済んだの?」

「......ああ。済んだ」

 

 何だか今日のルーカス、いつも以上に口数が少ないな。

 目が合わないのはいつものことだけど、それにしてもなんか目線変だし。

 何を見てるんだろう。

 

 いつぞやのようにその視線を辿ってみると、私の手元に行き着いた。

 

 あっ! 勇者の本を両手に抱えてるのばっちり見られた!

 

 まぁそうだよね、知り合いが自分について調べまくってたらそりゃ気になるよね。

 

 やらかしたー!




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