【完結】自称魔王ちゃんのごっこ遊び   作:千歳ふい

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仲間を増やす女の子っていいよね

もともと6話の後半部分でしたが文字数が意外と多かったため分割しました。
内容に変更はありません。


第7話

「い、いやね、この本は、その違くて、ちょっと内容を確認したかっただけで別に内容に興味があったわけでは」

「うん。そういえばギルド長が探してたぞ。みんなも心配してるし、そろそろ顔を出したら?」

 

 おおなんとかセーフ。

 うまく誤魔化せた。

 でも、そっか、ギルドかー。

 

「うーん、悪いけどギルドはまだいいかな」

 

 私は王都に来てから初めて一週間以上ギルドに顔を出さなかったし、寮にも帰っていない。

 みんな心配してくれているのかな。

 

 それでも、私はギルドには行かない。

 

 だって恥ずかしいんだもん!

 あんなロールプレイをばっちり見られてるからね。

 

 世直しの決意を一新することはできても、知り合いにごっこ遊びを見られる覚悟は一新できていない。

 

 一度正気に戻ったらもうギルドの人間とこの先どう接していくべきか分からん!

 

「Aランクは一か月以上依頼を受けてないとBランクに降格されるぞ」

 

 しかし、そんな私のくだらない悩みは、続けて発せられたルーカスの言葉によって吹き飛ばされた。

 

 Bランクへの降格......。

 

 ギルドの顔でもあるAランク冒険者には実力だけではなく、ギルドへの貢献も求められている。

 だから、一定期間活動をしていなければBランクに戻されるのだ。

 

 実力者ならもう一度昇進すれば済む話だけど、あいにく私は実力者ではない。

 一度降格されたらもう二度とAランクに戻れないだろう。

 

 くっ、もうこうなったらやけくそだー!

 

 不本意とはいえ、念願のAランクだ。何が何でも私は資格を維持するぞー!

 

「あっ、でも、どうしよう」

 

 しかし、いくら意気込んでも現実は厳しい。

 Aランク冒険者はAランクの依頼しか受けられないから、実力的にはまだBランクの私ではそもそも受けられる依頼がないのだ。

 

 あのババアは、これを見越して私を昇格させたに違いない。

 

 ああ、どうしよう。

 どうにか資格の停止を回避できないかなぁ。

 

 弱い私をおんぶにだっこで面倒を見てくれる実力者がいれば何とでもなるんだろうけど.......。

 

 あっ。

 

「ねぇ、ルーカスってさあ、パーティーメンバーが欲しいんだよね。だったら私が」

「断る」

 

 冷たく断るルーカスだが、こちとらもうあとがないんだ!

 

 恥も外聞もかなぐり捨てて私はルーカスに懇願する。

 

「ねっ、お願い! このままだと資格を失う!」

「あくまでも一時的な措置だ。強くなったらまた昇進すればいい」

 

 こいつぅ!

 そんな簡単に強くなれたら誰も苦労しねぇよ。

 

 他人の気持ちを考慮しないルーカスに対して腹が立つが、そんな苛立ちを私はグッと飲み込んだ。

 

 こんなやつでも、最適な人選であることに間違いはないのだから。

 

 ここは冷静に双方のメリットを吟味して、ウィンウィンの関係に持ち込まないと。

 

 そのために、私は自分にあってルーカスにないものを提示しなければならない。

 

「入れてくれたら私もパーティーの勧誘を手伝うから! ねっ、私の幅広い人脈を使って優秀な冒険者を」

「余計なお世話だ......!」

 

 悩んだ末、私はコミュ力とそれに付随する人脈を提示することにした。

 しかし、逆効果だったのかルーカスがだんだんと苛立っているのが声でも分かる。

 

 やばい! このままだと交渉決裂!?

 

「任期付き! 任期付きでいいから、私に色々教えてよ! それが終われば私はもうルーカスにだる絡みしないから!」

「......だる絡みの自覚があったのか」

 

 ジト目で見てくるルーカスの目を私は真っ直ぐ見返す。

 

 双方のメリットだなんてどうでもいい!

 私は! 絶対に! あきらめない!

 

「......はぁ。分かったよ。ただし、約束はちゃんと守れよ」

「やったー!」

 

 結局、私の強い意志を感じたルーカスは折れてくれた。

 

 代わりに私はだる絡みをしないと約束したが、絡まないと約束したわけではない。

 実質何も約束していないようなものだ。

 

 ふう、一件落着!

 ちょろいもんだぜ!

 

 興奮気味の私は全速力で本を本棚に戻し、再びルーカスのところに戻る。

 

 直接勇者に指導してもらえるなら、こんな本に用などないっ!

「じゃあ、さっそくギルドに行こう!」

 

 ルーカスの気が変わらぬうちにパーティー登録を済ませようと私はスキップ気味に歩き出す。

 その後ろをルーカスは追う。

 

 あれっ? そのまま歩き出したけど、そういえばルーカスって図書館の用事を済ませたのかな?

 

 うーん、黙って付いてきてくれてるってことは多分済ませたんだよね?

 

☆★☆★☆

 

「えっ! パーティー登録!?」

 

 ふふん。

 受付嬢が驚愕するのも無理ない。

 

 あの勇者がついにパーティーを組んだのだから。

 

「フハハハ! そんなに驚くことでもないだろうに。我は魔王だぞ?」

 

 ドヤ顔を浮かべる私に、さっきまでのがやがやがぴたりと止んだギルドの四方から視線が突き刺さる。

 

「......これを、受けたい」

 

 そんな中、空気を無視したルーカスは依頼書を受付嬢に差し出す。

 

 きっと私がドヤァとしている間に選んでくれたのだろう。

 

 うん。Aランクの依頼ね。

 

 異なるランクの冒険者によるパーティーはそのメンバーのランクに応じて依頼を選べる。

 例えば、私たちの場合はAランクとSランクの依頼を受けられる。

 

 まぁ、王都にSランクの依頼なんて滅多に入ってこないから、実際はAランクばかり受けるんだろうけど。

 

 で、ルーカスが選んだ依頼の内容は。

 

 うん? 遺跡の探索?

 

 でも、ここって少し前にBランクのパーティーが返り討ちに遭って探索が行き詰ってるって。

 そっか、強すぎるルーカスにはそんなの関係ないもんね。

 

「っ! かしこまりました! 少々お待ちください」

 

 受付嬢がようやく動き出したのに合わせて、ギルドが再び騒音に包まれる。

 

「あの子、エミリーちゃんだよね。いつの間にそんな」

「まぁ、わしはエミリーならいつかはって思ってたよ」

「やっぱりあの話は本当だったのか?」

 

 ふふ、これよこれ!

 謎に包まれた魔王候補ポジションに私はうまく収まった!

 

 あとは順調にいけばいずれ本物の魔王に......!

 

「行くぞ」

 

 依頼を正式に受注したルーカスは、短くそう告げるとスタスタとギルドを出て行ってしまった。

 噂されるのは苦手なのかもしれない。

 

 うん。

 それにしても今の私、最高に注目されているな。

 

 よし、魔王ごっこをやるなら今だ。

 

「それでは、みなさん、ごきげんよう」

 

 優雅に一礼をしてから、私もギルドを出る。

 ふふ、決まったな。

 

「なんだあれ?」

「さぁ?」

 

 背後で変な目を向けられている気もするが気にしない気にしない!

 

 ハハハ、今日の私は無敵だ!




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