全員覚悟ガンギマリなエロゲーの邪教徒モブに転生してしまった件   作:へぶん99

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一六話 効いたよね、早めのヨアンヌ

 メタシムの街の復興と改造作業が進んでいくと、新たなレイアウトの意味が素人なりにも掴めてきた。ここを新たな拠点にすると同時に、外壁の外にある畑や牧場を死体に運営させて、農作物を教団の食糧源にするつもりなのだろう。

 何せ教祖アーロスゆかりの街なのだから、神殿を造ったり立派な居住区を用意したり、『聖地』として様々な機能を持たせて発展させていくと考えられる。

 

 今のところはポークの死体が街の運営を担当しているが、ゆくゆくは賑やかな邪教徒の街として、生きた人間達によって回っていくことになるだろう。

 それまでの長い間、死体達は死してなお教団の支配から逃れられないということか。生き残った女子供に関しても、子供には洗脳教育、女には死ぬまで産む機械になってもらう的な処遇が待っているはずだ。得てして捕虜となった者達の行く末は凄惨そのものである。

 

 瓦礫の掃除などが終わるとヨアンヌがやって来たので、彼女の怪力を借りつつ新しい建築物の建造が始まった。

 正教幹部の襲撃に備えて塹壕を掘ったり、一般教徒の居住区を整理したり、神殿らしき巨大建築の土台が造られていったり……その他諸々の作業が粛々と進められていく。

 

 街の外壁の上にある大型弩砲(バリスタ)にも魔改造が施され、弦の部分がポークの棘に変えられていた。どんな追加効果があるかは分からないが、正教側にとって新たな悩みの種となることは間違いなかった。

 

 ……戦いが終わって既に五日が経過している。

 周囲の環境を見ると死体が動き回る地獄には変わりないのだが、俺は戦いのない平穏な日々に少しだけ安心していた。仕事をしながらでも、今後の立ち振る舞いや現状について(ある程度)安心して考えられる平和な環境なのは結構大きい。

 

(生き残るにしても邪教徒を滅ぼすにしても、今の俺には力が足りないな。純粋に戦闘力的な意味で……)

 

 手っ取り早く強い戦闘力を得るためにはアーロス寺院教団の幹部になればいいのだが、俺には実績も信頼もない。その実績や信頼を得るために、雑魚なりに戦闘力があるところだったり、俺はやれるんだぞって気概のある部分を見せつけなければいけない。

 信頼に関してはヨアンヌを利用してやれば何とかなりそうだが、戦闘力は地道な努力が必要になってくるだろう。身体を鍛えて技術を身につけて、様々な経験を積まなければならないのだから。それでもやらない手はないので、地位を高めて将来的には幹部に成り上がっていきたいところ。

 

 だが、正教も邪教も幹部の席は七名と限られている。原作でアルフィーが正教幹部になれたのは、幹部が敵に討ち取られて空席ができたからだ。そうでない場合は、年老いて引退する際に能力を受け継がせるとか、そういった手順が必要になってくるらしい。

 

 無論、殺されて空きが出る場合がほとんどだし、こっちの幹部は寿命とは無縁そうなので、俺が幹部になるためには邪教幹部が少なくとも一人は殺される必要がある。空席が生まれた上で俺が最も高い実績を持っていれば、教祖アーロスは次の幹部に俺を選ぶだろう。

 

 いずれ出るだろう幹部の犠牲者の後釜狙いで実績を積み上げていくのが今の方針か。もし幹部が全然死なないようであれば、個人的な理想を上げるならばフアンキロの脆弱性を突いて殺害したい。

 直接戦闘に限ればフアンキロが最も弱く、何なら今の俺でも手段を選べば勝ててしまうくらいには貧弱だ。クロスボウで遠距離攻撃するとか、爆薬を使ってぶっ飛ばすとか。その程度の戦闘力なので、正教幹部が本部拠点に攻め込んでフアンキロを始末してくれれば良いのだが……本部拠点には大抵アーロスかヨアンヌがいるし、そもそも拠点の場所は隠蔽されているので正教側は彼女の存在すら知らないのである。

 

 それに、フアンキロだってヨアンヌのように治癒魔法を備えている。彼女の首を刎ねたとて、「君は自分が今何をしたか分かってるのかしら」とか言いながら復活して絶望すること請け合いだ。

 仮に彼女を殺せる隙があって、俺が容疑者から除外されるだけのアリバイと信頼を用意できて、かつ爆薬や強酸などの準備が完璧に整った状況であるならば、フアンキロを殺し切って幹部席に居座るのも手ではある。こんな無謀すぎる作戦など夢物語に違いないけれど。

 

 纏めると、生き残るには幹部共の評価を稼ぎつつ自分自身を強くしていかないとダメってこと。最終的には邪教徒を裏切って滅ぼしたいんだが、そこまで上手くいくプランは今のところ思い浮かばない。

 

 ケネス正教の教会跡地で干し肉を食んでいると、背中に嫌な圧を感じた。冷や汗をかきながら振り向くと、そこには顔を顰めたヨアンヌが立っていた。

 

「オクリー、ここは教会があった穢らわしい場所だ。今すぐに別の場所に行こう」

「分かりました」

 

 俺がここにいたのは単なる偶然なのだが……ヨアンヌにとっては崩壊した教会すら嫌悪の対象らしい。そういえば、ここら辺にはポークの死体も徘徊していない。視線にすら入れたくないってことなのか。

 

「ペンダント出せよオクリー、そろそろマーカーを交換しようぜ。もうアタシの一部として感じられなくなってきた頃だ」

 

 物陰で俺を座らせ、膝の上に乗ってくるヨアンヌ。俺の首に手をかけた彼女は、宝物を扱うような手つきでペンダントを持ち上げると、以前のようにマーカーを交換し始めた。

 

(……強くなりたい、か。……そういえば気になったことがあるな、聞いてみることにしよう)

 

「ヨアンヌ様、質問があるのですが……」

「何だ? 何でも聞いてみろ」

 

 目の前で繰り広げられる猟奇的な自傷行為を引き止めてから、ヨアンヌのマーカーと他人の身体についての解釈を聞いてみた。

 

「私の手のひらの上にヨアンヌ様の薬指がありますよね」

「うん」

「例えばこれを――このように、私の薬指と入れ替える(・・・・・)ことは可能なのでしょうか」

 

 とぐろを巻いたヨアンヌの薬指を、自分の薬指の上に当ててみる。

 

「もし拒絶反応が無ければの話ですが、面白いことが起きるのではと思いまして」

 

 ――ヨアンヌの身体の一部が俺の身体と融合すれば、彼女の怪力や治癒の魔法が身につくのではないか。もしくは、それに準ずる何か特別な力が湧いてくるのではないか。そういう希望的な予想をしてみたわけだ。

 ただし、人間には血液型や相性というものがある。いくら魔法という便利な概念があったとしても、他人の身体と融合して拒絶反応が出ないかは賭けだ。

 

 ヨアンヌは目を丸くすると、服の下から持ち上げられて張り詰めた胸を押さえ始めた。瞳孔が開き、呼吸が荒くなっている。彼女の中の琴線に触れたようだが、努めて無視する。

 

「んっ……オマエ、やっぱり頭がおかしいよ。アタシは今までそんな発想に至らなかったけど、そういう手もあるのか」

 

 どこか嬉しそうに言うヨアンヌ。頭がおかしくて結構。狂人扱いされている限りは北東支部への異動が先送りになる。

 

「ということは、ヨアンヌ様もご存知ないのですか」

「あぁ。そんなこと試したこともない。何ならやってみるか?」

「!」

 

 ヨアンヌがワクワクした様子で俺の薬指を撫で回し始める。俺としては「試したこと無かったんだ〜じゃあこの話は終わりだね〜」って感じだったんだが……そういえばヨアンヌってこういう奴だった。

 

 しばしの間、考える。数秒ほどで答えが出た。

 

「やりましょう。左手の薬指、お願いします」

 

 今更何を躊躇う必要がある? 俺はとことんまで行くぜ。俺は左腕を差し出した。

 

 正常性バイアスのせいかもしれないが、彼女の身体の一部を受け入れても死なないんじゃないかと確信めいたモノを感じている。もし死んだら笑いものだ。

 ……なるほど、馬鹿な度胸試しや遊戯で人が死ぬのはこういう心理が働くからなのだろうか。

 

「ピリッと痛むけど、我慢しろよ」

 

 返答から間を開けず、小ぶりなナイフを取り出したヨアンヌは――何の躊躇いもなく俺の左手を撫でた。

 

 瞬間、激痛。あっという声が出たかと思えば、凄まじい痛みに膝を折っていた。顔面の毛穴という毛穴から汗が滲み出し、強烈な後悔に苛まれる。

 そりゃそうだ、指を切れば痛い。切り落とすのはもっと痛い。常識である。

 

「――――ッ……てぇ……!!」

「ゴ、ゴメンな? 本当にすぐ終わるから……」

「くッ……はは、お上手ですヨアンヌ様。関節の間に刃を通して一瞬で切り落とされるとは」

 

 地面を転がる俺の指。何よりも優先してそれを拾い上げたヨアンヌは、俺があげたローブのポケットに指を隠してしまった。

 めちゃくちゃ痛いから早めにやってほしいんだが、と悶絶していると、ヨアンヌは俺の指の切断面に彼女自身の薬指を当てがった。そして治癒の魔法。俺の切断面の皮膚が逆再生されていくかのように回復したかと思えば、ヨアンヌの薬指と繋がっていく。ミチミチという音を立てて、細胞の一片――いや原子同士に至るまでが融合していくではないか。

 

「――――ッ!」

 

 突然ヨアンヌの腰が跳ね、ビクンと痙攣する。いや、それどころではない。俺はとんでもないことをしてしまったのかもしれない。

 

「まっ、待って……おくりー、アタシの身体、なんか……熱くなってきた……」

 

 黙れヨアンヌ。俺とお前の身体が繋がっちまったんだ。性的に興奮するよりも、もっとこう何かあるだろ。

 俺は痛みの引いた左手を持ち上げ、まじまじと見つめてみる。太陽の光に透かすようにして患部を観察すると、少し日に焼けた俺の肌と病的に白い彼女の肌とで色の境界線が生まれていた。

 

 では、神経はどうか。恐る恐る指を曲げてみる。

 ――動く。何の問題もなく、元々俺の身体だったみたいに。

 

(どうなってんだ、コレ……)

 

 下腹部を押さえて内股になるヨアンヌを無視して、俺は自らの行為によって生まれてしまった歪な現象に思案を巡らせるのだった。

 

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