「……お前の名前は?」
「ジョン・ドゥ」
「ふざけているのか!」
「巫山戯た事を抜かしてるのはお前達だ。
アメリカにおいての身分がないのだから、
ジョン・ドゥだろ?」
殴ろうとしてきた男の腕を返し、そのまま制圧する。
尋問するにしても、やりようはあるだろうに。
「チッ…チッ…チッ…」
煽るように人差し指を揺らしながら尋問してきた男の頭を掴む。
そして何度もマジックミラーへと叩きつけた。
赤いシミが付いているが、俺の知った事じゃない。
「それ以上はよして貰おうか」
「……貴方は?」
「アダム・ベンフォワードだ。凄いな、君はまるで諜報員だ」
「クレムリンからペンタゴンまで、
はたまたアンブレラの機密情報もなんのその。
レオンから聞いたのでは?
アダム・ベンフォード戻るか陸軍准将」
「……知っているのか?」
「陸軍退役後政治家へと転身、軍人という経験から
現役軍人、退役軍人からの支持が厚い。さらに言えば、
汚職とは無縁の人物。合衆国の宝だ」
「合衆国の宝は私ではない。
君が今掴んている男を含めた国民だ」
「……そうか」
男を地面に落とす。完全に気絶しているのか、動くことはない。
「おっと、そんなアダムにも言っておこう。
……脈はある、鼻が折れてるな」
「判るのか?」
「まぁ、独学ですがね」
「レオンと君の相棒にも伝えたが、
君達は特殊な立ち位置にいる。
特に君は色々とやらかしてくれたな」
「何のことで?」
「ペンタゴンにハッキングしたな?
どうやってか知らないが、まったく察知不可能な方法で。
……そこでだ、取引しよう。
君をエージェントとしてスカウトしたい。
無論、此方の国籍は用意する。便宜も図ろう。
JAPANのご家族の保護の用意もある」
それが人質であると理解するのに時間はかからない。
だが、原作を知っている身分からすると
この人〘アダム・ベルフォード〙は信じられる。
「Yes, sir!」
整った敬礼を返す。
マジックミラーだから姿は見えないが
きっと笑っていてくれるだろう。
「でたまえ、君の仲間が待っているぞ」
尋問室の扉が開かれると
アメリカ陸軍の兵士が警備をしていた。
「あ〜〜俺を尋問した奴はお仲間?」
「陸軍じゃない、FBIだったか……」
「なら良いな」
そのまま手錠をかけられ、別室に案内された。
「鷹宮!」
「東雲か、なあ手錠外してくれないか?
……伍長」
「ベンフォード長官の指示があるまで待て」
「了解」
よく見れば東雲の方は特に拘束はされていなかった。
やはり危険度で見ればと言う話なのだろうか。
「やぁ、待たせたな。
レオンの勧誘に時間がかかってしまった」
「……お前もアメリカ政府に付くのか」
「別に日本に何かあるわけじゃない。
家族を連れてきてもらえるなら何でもいいさ。
まぁ、マービンとSTARSに合流しても良かったが、
一緒にアンブレラを潰したいって言われたらな」
そう話す俺にレオンは苦笑いを浮かべる。
「さて、それでは君の拘束も」
「伍長、手錠は返します」
「お前……いつの間に!」
俺は手錠を伍長に返した。
警戒心が強いのか、伍長は即座にベレッタを構える。
「おっと……伍長。これを」
「……お前」
伍長のベレッタのマガジンを手渡す。
それだけじゃない、チェンバーに入っていた弾丸も一緒にだ。
「何時抜いた」
「手錠をかけてくれた時に。駄目だぞ、俺はマジシャンだ」
煽るような口調だが、伍長は警戒を解かない。
そうだ、伍長に与えられた情報を鑑みれば目の前の存在は、
何処かの国のエージェントと言っても過言ではない。
「そうだ、ベンフォード准将。パソコンはありますか?」
「あるが……一体何を」
「信じてくれるなら、
ラクーンシティでのデータのサルベージを行います」
「……良いだろう、伍長。コンピュータルームに」
「准将!はっきり言いますが、この少年いやこの男は
エージェントだ!確実に!」
「アメリカ政府に帰属する気持ちはありませんが、
ベンフォード准将、貴方の部下なら面白そうだ。
だから価値がある事を示します」
「皆、付いてこい。行こうか、ジョン・ドゥ」
そのまま基地のコンピュータルームに入る。
1998年と言えば、インターネットも普及してきた時代だ。
更に言えば、アンブレラに関しては既に
クラウドネットワークを構築していた。
「っと………笑ぇねぇ」
「何を見た?」
「彼奴等…これ幸いにと観察してやがった!
自分の部隊も観察対象かよ………」
それは監視カメラの映像だ。
どれも断片的に過ぎないが、ハンターが市民を殺害する。
STARSと思われる隊員が殺される。
UBCSと言うなの部隊が降下後から、壊滅まで。
恐らく、断片的だからこそ監視者等と言う存在が
必要不可欠なのだろう。
「……ハックしたし、データもコピーした」
アンブレラデータベースから脱出する。
必要なデータの大半は回収できたと思う。
「ホーク、お前」
「なんだよ、レオン」
レオンは何か言いたげな顔でモニターを見ていた。
そこにはティーンエイジャーと思われる日本人が、
無惨に喰われ、死んでいく姿が映っている。
「……皆…………」
「東雲、気にするな。彼奴等を見捨てる選択をしたのは俺だ。
実際、俺もお前以外を助けるつもりは無いし、
助けるつもりはなかった。最初から奴等は死ぬ。
だから気にするな」
「おい、そんな」
「奴等は仲間じゃない、同じチームだっただけだ。
俺にとって仲間は東雲、お前だけだった。お前にとっても、
俺だけだろ。猫を被り、苦しんで、良いな。忘れろ。
高校の事なんてお前には、百害あって一利なし」
「…………」
「ホーク、誰一人見捨てない。あの言葉は」
「そうだ、嘘だレオン!
とっくの昔に俺はチームメンバーを見捨てた。
俺はエマやお前達の言うようなヒーローじゃない!
俺は」
「なら!何故エマ、ロバート、マービン、シェリー、
それに俺達を助けた!」
「……罪悪感だ。罪悪感が少しでも薄れると思った!
実際違った、考えてみたら彼奴等どうでも良かったし、
嫌いだった。でも、あんたらは好きになった。友人として、
仲間として。そんな我儘な理由だ!」
「それでも良い」
レオンと口論しているとベンフォード准将が口を開いた。
「君は子供だ、誰かを守る責任もなければ立場でもない。
本当なら、これは我々アメリカ政府が対応するはずだった。
それができないため、1万人以上のアメリカ市民が犠牲になった。タカミヤ、そうならない為に改めて私の下で働かないか?」
「……既に話しているはずです。
自分は、貴方の部下でなら存分に働きます」
「わかった、シノノメ。君は」
「鷹宮が行くなら私も参加する。私の居場所は鷹宮の隣だ。」
レオンは何か言いたげな様子だったが、言葉を見送った。
「宜しく頼むよ、タカミヤ、シノノメ、レオン」