ブルーアーカイブ 〘 PROJECT_∑ 〙   作:ファイズ大好きなポンコツ

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スイヤセン……


6話 アビドスの秘密

 

「お帰りなさい。皆さん、お疲れ様でした」

 

 ヘルメット団との戦闘を終えて、アビドスに戻った俺たち。

 任務を終えた俺たちを迎えてくれたのは、先程までシロコちゃん達の方でオペレーターをしてくれてたアヤネちゃん。

 労いの言葉がありがたいったらありゃしないよ。

 

「ただいま〜」

「戻っ゙でぎだよ゙〜……」

 

 因みに今の俺はホシノちゃんに背負われてる。

 一回の作戦で2連エクシードチャージは負担がデカかったもんで、帰りはホシノちゃんに運んでもらったのだ。

 そん時のセリカちゃんの目線ときたらもう……。

 あれは人を殺せたね。

 

「ほら、先生も早く降りてよ〜重いよ〜」

「待ってくれ……さっきから腕の感覚が無いんだ……もうちょいこのままで……」

「え〜……おじさんだって休みたいよ〜」

「ん、だったら私が……」

「甘やかさないの!ほら!先生も降りてください!」

「うへぇ〜………」

 

 ホシノちゃんが口癖のように言う「うへぇ〜」が口から流れ、厳しいセリカちゃんに引っ張られる。

 無論抗う力など無く、そのままホシノちゃんから剥がれた。

 

「さーて、それじゃおじさんはここで寝ようかね」

「あ、俺もー」

 

 俺が離れたことにより床で眠るホシノちゃん。

 その隣にほふく前進で動いてきた俺。

 どちらもとてもだらけきっている。

 

「あーもう!そんなとこで寝ないの!ほら、早く起きる!」

「うへぇ〜……セリカちゃんお母さんみたい」

「まだもう少し眠らせてくれよ母さん……」

「だーれーがお母さんよ!!」

 

 母親適性の高い子だ。 

 ……っていうか、生徒を“母親”扱いするのってヤバくないか……?

 …………まぁいいか。

 

 セリカちゃんにこれ以上怒られんように、俺は体を無理やり起こし、ホシノちゃんを近くのソファーまで運ぶ。

 

「お、気が利くねー先生」

「これでも先生だからな」

「流石だねぇ〜、おじさんの好感度上がっちゃうかも〜」

「やめとけこんな男」

 

 好意を持たれるのはありがたいが、面倒だ。

 

「……とはいえ、ヘルメット団との戦闘お疲れ様だ」

 

 取り敢えず、これでアビドスの問題は解決だな。

 これで俺のハッピーエンドに一歩近づけた。

 

「はい!火急の事案だったカタカタヘルメット団の件が片付きましたね。これで一息つけそうです」

「そうだね。これでやっと、重要な問題に集中できる」

「うん!それこそ、先生のおかげでね!これで心置きなく全力で借金返済に取り掛かれるわ!」

 

 俺がみんなに労いの言葉をかけると、ちょくちょく不穏な要素を交えた言葉で返し、その不穏の正体をセリカちゃんが明かしてくれた。

 

「ありがとう、先生!この恩は一生忘れないから!」

「俺の力なんて大したもんじゃないさ。……んで、借金?どういうことだ?」

「……あ、わわっ!」

 

 まだハッピーエンドに至るには遠いようだ。

 借金とかいうそこそこデカイ問題がありやがった。

 

「そ、それは……」

「ま、待って!!アヤネちゃん、それ以上は!」

 

 なにゆえ隠すのか。

 俺が知って不味いことなのか?

 ……それにしても、ただならない焦り方だ。

 何か裏があるのか?

 …………まさかスマートブレインか?

 

「いいんじゃない、セリカちゃん。隠すようなことじゃあるまいし」

 

 妙に真剣な口調で、ソファーから起きたホシノちゃんが意見を述べる。

 凛々しい顔立ちになっている。

 

「か、かといって、わざわざ話すようなことでもないでしょ!」

「別に罪を犯したとかじゃないでしょー?それに先生は私たちを助けてくれた大人でしょー?」

「ホシノ先輩の言う通りだよ。セリカ、先生は信頼していいと思う」

 

 ホシノちゃんの意見に、シロコちゃんが賛同する。

 

 自分で言うのも何だが、ホシノちゃんの言う通りではある。

 第三者視点で見れば、何の報酬も得ずに戦地へと赴き、窮地を脱する手伝いをしたのだ。

 となれば、既に信頼に値するのではないか。

 

「そ、そりゃそうだけど、先生だって部外者だし!」

 

 これも、まさしくその通りなのである。

 たとえ自分たちを助けた存在だとしても、ただそれだけ。

 あくまで俺は部外者の1人でしか無いのだ。

 多分だが、何も知らない俺が簡単に踏み込める問題ではないんだろう。

 

「確かに先生がパパっと解決してくれるような問題じゃないかもしれないけれどさ。でも、この問題に耳を傾けてくれる大人は、先生くらいしかいないじゃーん?」

 

 ……?

 耳を傾ける大人が“俺”しかいない……?

 この世界の大人は何やってんだよ……。

 

「悩みを打ち明けてみたら、何か解決法が見つかるかもよ?それとも何か他にいい方法があるのかなー、セリカちゃん?」

「う、うう……」

 

 なんの反論もできないのか、スカートをギリギリと音が鳴るほどに握るセリカちゃん。

 どうやら策は無いようだ。

 そうだとしても、抗えるすべが無いとしても、俺……もとい大人は信用するのは難しいだろう。

 

 ……それは、俺が一番良くわかってるつもりだ。

 

「でっ、でも、さっき来たばっかりの大人でしょ!今まで大人たちが、この学校がどうなるかなんて気に留めたことなんてあった!?」

 

 さっきのホシノちゃんの発言、そしてセリカちゃんの言葉で、疑いは確信に変わった。

 この世界でも俺の世界でも、大人はクソみたいなやつしか居ないみたいだ。

 

「この学校の問題は、ずっと私たちだけでどうにかしてきたじゃん! なのに今更、大人が首を突っ込んでくるなんて……」

 

「私は認めない!!」

 

 当たりどころのない怒りと信頼できないという思いが募った言葉が炸裂し、自分の荷物を持ってセリカちゃんは部室から抜け出した。

 

「セリカちゃん!?」

「私、様子を見てきます」

 

 荒々しく部室から飛び出ていったセリカちゃんを引き留めようとするも声は届かず。

 そんなセリカちゃんを心配した表情を浮かべたノノミちゃんがセリカちゃんを追いかける。

 

「……まぁ、信頼できねぇよな」

「あはは……ごめんね先生、ウチのカワイイ後輩が」

「いいんだ。……さっきまでの話を聞いた感じ、ああなるのも仕方ない……まぁなんだ。事情を説明してくれないか?」 

 

 傷ついたのは事実ではあるが、そんなことより事情が知りたいんだ。

 かくして、俺は部室内に残ったホシノちゃんからアビドスの抱える問題、借金について話を聞かせてもらったのだが……。

 

「……すまん。もう一回言ってくれないか?」

「この学校、9億円の借金があるんだよ」

「気は確かか?」

 

 とんでもねぇ金額が出てきてしまったのだ。

 何がどうなったらそんな法外な金額を出されるんだよ。

 

「学校が廃校の危機に追いやられたのも、生徒がいなくなったのも、街がゴーストタウンになりつつあるのも、実はすべてこの借金のせいです」

「甘く見てたな……それで、その借金ができた理由ってのは?」

 

 取り敢えず、そんな重荷を背負った理由を聞かねぇと。

 根本さえ分かれば、何かしらの解決策を見つけれるかもしれない。

 

「……数十年前、この学区の郊外にある砂漠で、砂嵐が起きたのです。この地域では以前から頻繁に砂嵐が起きていたのですが、その時の砂嵐は想像を絶する規模のものでした。学区のいたる所が砂に埋もれ、砂嵐が去ってからも砂が溜まり続けてしまい」

「……それを撤去するために借金しなけりゃいけなかった……と」

「……はい」

 

 ……大方、こんな片田舎の学校に支援する銀行は見つからず、悪徳金融業者に頼らざるを得なかったって事だろう。

 

「そんで、砂嵐は毎年発生して、学区の半分くらいが砂漠になったって事か」

「そうしてく内に、借金も膨れ上がっちゃったって訳だね」

「そうか……」

 

 理不尽ここに極まれりって感じだな。

 考えるだけで腹が立つ。

 

「……まぁ、そういうつまらない話だよ。で、先生のおかげでヘルメット団っていう厄介な問題が解決したから、これからは借金返済に全力投球できるようになったってわけー。とりあえず、話だけでも聞いてくれて嬉しかったよー、先生」

「そうだね。先生はもう十分力になってくれた。これ以上迷惑はかけられない」

 

 ホシノちゃんとシロコちゃんが、善意からか、張り付いたような笑顔で俺に笑いかける。

 相当無理してんだな。

 

 ……仕方ない。

 

「ホシノちゃん、ちょいと聞きたいことがあるんだがいいかな?」

「ん?なーに、先生」

「ここ、顧問って居ないよな?」

「うん、居ないよー……まさか」

 

 そのまさかだ。

 

「だったら、俺がやる。俺がここの顧問になってその問題、一緒に背負ってやるよ」

「そ、それって……!」

 

 やるからには、徹底的に。

 

 一度助けて、まだ問題があることが判明した状態で、「はい、そうですか」なんて言って帰れるかっての。

 

「こんな事情聞いて、帰れるわけねぇだろ。それに、その大人とやらに一矢報いてぇからな」

「先生……」

「……どの世界でも大人はクソなもんだ……俺の居た世界でも、この世界でも」

 

 みんなを守りたいってのは勿論の事、大人をぶっ潰したいってのも俺の本心だ。

 

――――――――――――

 

『君が僕の代わりにハッピーエンドを迎えてよ……僕の見たかった、幸せな大団円を……』

 

――――――――――――

 

 ……それに、アイツとの約束もあるもんな。

 

 幸せな大団円のためにも、苦しんでる生徒は全員助けてみせる。

 たとえそれがただの夢物語だとしても、叶うはずのない理想だとしても、俺は現実にしてみせる。

 

「……うへぇ〜、わかりきってた事だけど、先生も変わり者だねぇー」

「良かった……「シャーレ」が力になってくれるなんて。これで私たちも、希望を持っていいんですよね?」

「そうだね。希望が見えてくるかもしれない」

 

 諦めなければ願いは届く。

 それは希望も同じようなものだ。

 

「それじゃ改めて……これからよろしくね、先生」

「あぁ、よろしく」

 

 こんな感じで、俺はアビドス対策委員会の顧問として、正式に活動することが可能になった。

 

「……それと先生」

「おん?」

「ちょーっと話したいことがあるからさ、今夜会えない?」

 

 ……それと同時に、生徒からデートのお誘いも貰ってしまった。

 

————————————

 

 一方、アビドスの廊下にて、教室から出ていったセリカちゃんが、現れた大人――シグマの事を考えていた。

 

「……」

 

 正直な話、セリカちゃんは多少なりともシグマの事を信頼しているはずなのだ。

 なんせ、アビドスを守るために戦っていたから。

 

 しかし、一度与えられた“偏見”というのは、そう簡単には変えられない。

 

「……ちぇっ」

 

 セリカちゃんにとって、シグマはまだ、ただの大人なのだ。

 




Don't miss the next ∑

「俺の過去…?」

「ホシノちゃんも随分とまぁ、物好きだねぇ」

「抗えなかったんだよ。……俺が、弱かったから」

「アイツから託された使命。それを果たすまでは俺は死なないんだよ」
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