No.0 若槻亮介
『お隣の子の亮介君が泣いてたわ』
『可哀想に…』
『旦那さんと離婚したって聞いたけど…』
『……純日本人の夫婦に、金髪金眼で日本人離れした容姿の子供』
『…子供に罪は無いのにねぇ』
蜂蜜色の美しい金髪金眼の美貌の少年__若槻亮介。彼が生まれた時、母親の顔は青ざめ父親からは喜びではなく怒りの叫びが上がったという。
◇◇◇◇◇
自分が望まれぬ子供だと理解したのは、いつの頃だっただろう。
日本人なのに、金髪金眼の子供を授かるだなんて……母さんも父さんも、きっと俺が生まれて絶望したことだろう。
母さんは結婚前から風俗で働いていて、父さんはごく普通の会社員。どう見ても、俺は望まれて生まれてきた子供じゃなかった。
物心着いた頃には離婚していて、俺の親権は母さんに行った。父さんは多分、俺と会いたくなかったんだと思う。だから、俺は父さんの顔も声も覚えていない。
でも、母さんは違う。俺を見る度に『ごめんね』って泣くんだ。本当は、俺の事を愛してくれていたんだと思う。母さんは、俺が大きくなってからは風俗の仕事を辞め、ずっと家にいてくれた。優しくて綺麗な母さんを俺は自慢に思っていたし、大好きだった。
そんな母さんが、ある日を境に家からいなくなった。俺が学校に行っている間にお金だけがテーブルの上に置かれている。俺はすごく悲しくて寂しくて……でも同時に、ホッとしたんだ。
俺のせいで、母さんまで悪く言われるのは嫌だったから。
「お前、ちょっとモテるからって調子に乗んなよ?」
小学校の頃、俺はクラスの男子のいじめの対象になった。金髪金目で日本人離れして整った容姿をしている俺は、クラスの女子を次々に虜にしていたし、他の子には無い超能力の様な力を持っていた。それに嫉妬した男子達が、俺をいじめるようになったんだ。
当時、俺は『お前は愛されてなんかいない』って言葉の意味が分からなかった。だって、俺がちょっと笑うだけで、クラスの女子は喜んでくれるし、お菓子をくれたり遊びに誘ってくれるから。愛されてるに決まってるじゃん?
だから、俺は男子達の嫌がらせをはねのけてきた。毎日飽きずに俺に喧嘩を売ってくる男子達を返り討ちにしていたら、いつの間にか誰も俺にちょっかいを出さなくなった。クラスの女子は、俺をまるで王子様のように扱うし、男子達は俺を畏怖するようになった。
中学に上がった時、俺はちょっとした有名人になっていた。その頃には超能力も使いこなせるようになっていたから喧嘩は高校生相手でも負け無し。
おまけに、日本人離れしたこの容姿に文武両道。あっという間に俺の周りには女の子達が寄ってきたし、同級生から先輩後輩の女子達に告白された。
だけど、俺は全部断った。だって、何か足りない気がしたから……俺の中は、いつも空っぽだった。
ある放課後の事。
その日はたまたま気が向いたから、部活を見て回って帰ろうとした時、俺は図書室で1人勉強している女子生徒に目が止まった。
黒のショートカットに鋭いツリ目、凛とした顔つきの綺麗な少女。制服のリボンの色からして、どうやら1年生らしい。彼女は一生懸命に勉強していたけど、シャーペンの芯が切れてしまったのか、小さく舌打ちをした。
「ん?どうしたの?」
思わず声をかけた俺に、女子生徒は怪訝な表情を向ける。
「…いえ、シャーペンの芯が切れたので」
「あ、そうなの?はい、これ使って」
俺は鞄からシャーペンの芯を取り出して彼女に手渡す。
「え……でも」
「いいからいいから。こんな可愛い子に舌打ちは似合わないよ?」
俺がそう言うと、彼女は中学1年とは思えない大人びた微笑みを浮かべた。
「……ありがとう」
「どういたしまして」
俺は微笑んで答えると、その場を後にする。
「若槻、真木さんにちょっかい出したの?」
「真木さん?ああ、図書室の?いや、ただシャーペンの芯を貸してあげただけだよ」
「ふーん。それにしても、どうしてあんな美人と仲良いんだか……」
友人達が不思議そうに言うが、俺は肩をすくめる。別に、彼女と特別仲が良い訳じゃない。たまたま、図書室で会っただけだし。だけど、それ以来、彼女はよく俺に話しかけてくるようになった。
「君って凄いよね」
「そう?」
「うん、何か……ずっと観察してたい感じ」
ある日の放課後、図書室で勉強していた彼女が、ふと俺を見つめて呟いた。
「ふーん……」
俺は興味無さげに答えると、鞄を持って立ち上がる。
「あ、じゃあ俺帰るね」
「……待って。私も一緒に行く」
彼女は急いで勉強道具を片付けると、俺の後をついてきた。
「そう言えば、君の名前って真木ちゃんだっけ?」
「ええ、そうだけど?」
「ふーん。俺、若槻亮介っていうんだ」
「知ってるわ」
「そっか、じゃあ……」
「でも、君は私の下の名前を知らないでしょう?」
真木理佐は挑発的な笑みを浮かべながら言った。俺は思わず苦笑してしまう。
「あはは、確かに知らないや」
「……だったら教えてあげるよ。私の名前は真木理佐って言うの」
「へえ、そうなんだ」
「そう。だから、これからはちゃんと覚えておいて」
真木理佐はそれだけ言うと、足早に去っていった。残された俺は、ただ首を傾げるばかりだった。
「お、ワカ、やっと見つけたよ」
帰りの河川敷を歩いていると後ろから声をかけられた。振り返ると、そこには見覚えのある男が立っていた。
「その呼び方やめろよ、迅」
ヒロインについて(真木理佐は確定です) ※参考にさせてもらいますが、結果が反映されるとは限りません。
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純愛こそ至高 (真木理佐)
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面食いの末路が見える… (香取葉子)
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小南が泣く (小南桐絵)
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でろでろに甘やかされる (三上歌歩)
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全て背負ってこそ……漢だ