暖かい目で見守ってください。
やはりと思った。
俺の相手は元々あの神から貰ったものだ。篠ノ之束が作ったものでは無い。
元々、ISにはコアネットワークが構築されているが俺達のISはそうでは無い。それに俺達のISはデータストームの影響により変質しており独自のネットワークを築いている。データストームの向う側のような。
まあ今は関係無い話だ。
「それで?何が聞きたいんだ?」
「ん〜何故男なのに乗れるのかは調べれば済む話だし、やっぱりあのISの事を聞きたいかなぁ?」
はあ?調べれば済む話だって?コイツなに当たり前のように言ってんだ。それにコイツにモビルスーツ関連の事なんぞ教えたら何をされるかわからん。
「断る」
「は?」
その一言で篠ノ之束の空気が変わった。へぇ?戦場にでてないのにこの殺気とは流石は天然の究極の人類という事か。
「お前、拒否権があると思ってるの?」
「は?そっちこそ各国に指名手配される一介の科学者の癖に国の要職についてる俺をどうにかできると思ってるのか?せめて対価を持ってきな」
俺がそういうと同時に篠ノ之束は俺に襲いかかって来た。
俺に対して振るわれる右手を掴み取り止めると同時にマドカが右拳を篠ノ之束の頬に食い込ませる。
「あぐっ!?」
篠ノ之束は吹っ飛び倒れ込む。
「ちっ、馬鹿力が俺の右手が壊れたらどうする気だ」
究極の人と言うよりは強化人間や突然変異と言われた方がまだ納得できるな。こんなにも幼稚な人間だとは。
「こんなのがインフィニット・ストラトス、〈無限の成層圏〉、宇宙へ羽ばたく翼を作ったとは思えないな」
「っ!?お前!!」
起き上がった篠ノ之束はこちらを睨むが先程までの殺気も迫力もない。
「お前が昔作ったインフィニット・ストラトスの論文は読ませて貰ったよ」
紛争が終わり余裕が出来た頃、俺の持っていた技術をこの世界でも使えるようにする為に研究を重ねていた時、インフィニット・ストラトスに興味を持ち調べた事がある。
「あの論文には人類が未だに見上げる事しか出来ない宇宙圏に近づく希望にも見えた。宇宙圏で必要とされるであろう能力を込めたあのISは素晴らしいの一言だった」
まあ、ガンダムの技術には劣るけどな。だが、それでも一個人が作ったものとしては破格すぎる。
「だが、ISはその翼をもがれ今や兵器やスポーツの一種だ。何故かわかるか、篠ノ之束?それはお前のせいだ」
「うるさい!!お前に何がわかる!?」
そう言うと再び篠ノ之束は襲いかかって来るがそれを避る。
「アイツらが悪いんだ!!私の発明を兵器にしたアイツらが!!」
「白騎士事件」
俺は篠ノ之束の攻撃を避けながらとある事件の事を話す。
「日本を射程距離内とするミサイルの配備されたすべての軍事基地のコンピュータが一斉にハッキングされ、2341発以上のミサイルが日本へ向けて発射されるも、その約半数を搭乗者不明のIS「白騎士」が迎撃した上、それを見て「白騎士」を捕獲もしくは撃破しようと各国が送り込んだ大量の戦闘機や戦闘艦などの軍事兵器の大半を無力化した事件。
あの事件はお前が起こしたんだろ篠ノ之束?」
「そうだよ!!あのクソみたいな低脳共にISを認めさせる為に!!」
ああ、やっぱりこいつは幼稚、いやガキだな。
コレが究極の人類とは聞いて呆れる。精神が他のスペックに吸われたんじゃないか?
「ああ、お前は認めさせたなISを兵器として」
「は?」
その言葉と共に篠ノ之束は動きを止める。
やっぱり気づいていなかったのか。
「当たり前だろ?既存の軍事兵器を凌駕する力を見せつけたんだ。それは兵器以外の何物でもない」
「あ、ああああぁぁぁ!?」
叫びと共に篠ノ之束は崩れ落ちる。
「嘘だ。私はただISをインフィニット・ストラトスを……」
「認めて欲しかったか?宇宙への翼として?はっ!笑えてくるよ、他ならぬ生みの親でその翼を握り潰されるとは」
「じゃあ……」
「ん?」
「じゃあどうすれば良かったんだ!!」
どうすれば良かった?そんなこと――
「ガキでもわかる事だろ?認められなかった?なら認めてもらえるまでがんばれよ。証明しろよ?ISが宇宙へ羽ばたく翼だと、簡単だろ?」
「はっ、そんな事で――」
「お前歴史学んだ事ねえのかよ?
例えばダーウィンの進化論は今でこそ世界的に知られているが昔は馬鹿にされて来た。本人の顔に猿の体をくっつける絵まで書かれて馬鹿にされた程にな?
過去には例え認められずとも声高らかに既存の概念をぶち壊す真実をこの世にさらけ出し世界を進めてきた偉人達がどれだけいると思っている?
てめぇは一回失敗しただけで癇癪を起こして自分の発明を貶めたクソ野郎だ」
発明が軍事転用されるのは別に俺は構いやしない。いつかは起こる事だ。
元々、ノーベルが作ったダイナマイト。あれも掘削作業に役立ちもするし爆弾として人の命を奪う。
包丁だって料理する為の道具だ。だがそれで人を殺す事も出来る。
結局は使い手次第なんだ。
だが、生みの親が意図した事以外で使われるようにさせちまうのは違ぇだろ。
「生みの親だけは発明の正しい使い手を願ってやらなきゃならない。誇ってやらなきゃいけない。てめぇはそれが出来なかった」
その言葉を聞いた篠ノ之束は泣き出した。
ちっ、気に入らねぇ。まるで悲劇のヒロインだな。
「おい、篠ノ之束」
俺が名前を呼べば篠ノ之束は顔を上げる。
それと同時に俺の右手の義手を投げつける。
「っ!?お前、これ」
そして左目も外して手の中で転がす。
「お前、今世界で一番不幸とでも思ってるだろ」
確かに不幸だろうさ。でもな――
「お前のその状況はお前が招いた結果だ。お前よりも不幸なやつなんてこの世に五万といる。
俺はプロジェクト・アドステラ、マドカはプロジェクト・モザイカの生き残りだ。俺達はお前よりも不幸だと確実に言える」
生まれた時から自由だったお前と生まれた時から消費される運命の俺たちじゃあスタートラインから違う。
俺は左目をはめ直しながら言葉を続ける。
「俺たちより大人で幸福なくせにいつまでもうずくまってんじゃねえぞ。お前の宇宙への情熱がホンモノならここで止まってる暇なんてありゃあしないはずだ」
そう言って義手を篠ノ之束からとりあげ自身の腕にはめ込む。
「俺からは以上だ。今日は部屋を貸してやる明日には出てけ」
そう言って俺は部屋から出る。
「お前は優しいんだな」
部屋から出てしばらくして突然にマドカからそう言われる。
「はっ?……だろうな」
そうだなお優しいこった。怒るってのは期待の裏返しだからな。
本当に嫌いなら無関心が一番だ。
まだ俺は篠ノ之束に期待してるって事か。
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