ts転生者の生徒が、頑張るだけのお話。   作:おにっく

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すみません。上手い区切りが見つからず、結構長くなりました。(6000字くらい)



爆裂せし凶弾

 防弾チョッキを体に着け、その上からコートのようなものを身に纏う。

 弾薬入れを肩から下げ、爆弾を肩から下げる。

 リロード用の弾丸をショットガンに取り付け、戦いの準備を完了させる。

 

「スオウちゃん、準備できた?」

「…うん。問題ない」

 

 シアンもまた同じように装備を身につけ、こちらに確認を取ってくる。

 

「あ、防弾チョッキコートの下に着たんだね?」

「ああ、こっちの方がバレづらいからな」

 

 俺のアドバンテージである、一見するとただのロ、いや非戦闘員である事。

 それを装備をわかりやすく着て、むざむざ捨てる理由もない。

 

「シアンは…サブマシンガンを使うのか」

「うん!私の力で撃てば一発一発が凶悪だよー!」

「はははっ…」

 

 シュタタっと銃を撃つフリをするシアン。

 普段と変わらないテンションの彼女に、少し安堵を覚える。

 

 ああ、自分は思ったより緊張しているのだな。

 内心彼女に感謝しつつ、ふとそんなことを考えた。

 

「あ、それよりごめんね。スオウちゃんの装備、ちょっとオーバーサイズだけど…」

「構わないよ。むしろ、俺が使えるサイズの装備がこんなにあることに驚いたくらいだ」

 

 正直、今の俺の体は同年代の子供に比べても少し小さいくらいだ。

 そんな俺が扱えるような装備が、かなり選択の幅がある程度にあることには驚かされた。

 

「そっか、ならいいんだけど…あとスオウちゃん、これ」

「…?なにこれ」

 

 明らかに俺にはオーバーサイズの、拳銃のような武器。

 しかし拳銃ではあり得ない程にゴツい見た目と重厚感があった。

 

 なんだっけ、前世で見たことある気がする…えーっと、えー…。

 

「ハンド、キャノン…?」

「そう。よく知ってたね。すっごい威力が高いんだけど、反動が強いの。でもスオウちゃんでもギリギリ扱えるサイズだから、護身用にって。できれば使わないでね」

 

 ふむ、お守りみたいなものか。

 確かにハンドキャノンは威力も反動も桁違いと聞いたことはある。

 きっと、攻撃力が乏しく決め手に欠ける俺のために考えてくれたのだろう。

 

「…ありがとう」

 

 シアンに感謝を伝え、俺の体には不釣り合いな大きさのその銃を、コートの内側に仕舞い込む。

 

「じゃあ、改めて今回の作戦の目的を確認する」

「うん」

「つっても、そんな複雑じゃない。俺たち二人で行く目的は、アンナが穏健派の戦力をまとめ上げるまでの時間稼ぎ。その過程で、相手の戦力を削る、もしくは頭である副会長の拘束。大まかに分けてこの二つだな」

「わかった…でもサリアちゃん、今どこにいるんだろう…」

「うーん、そうだな…」

 

 アンナから事前に渡されていたアリウス内の地図を見て、考える。

 

「普段はどこにいるんだっけ?」

「ここと、ここ。こっちが生徒会室で、こっちが古い大聖堂」

「うーん…ん?」

 

 よく見れば大聖堂とやらは、俺も行ったことがある場所だった。

 ベアトリーチェが色彩に触れるために利用しようとした、その施設。

 一度破壊できないものかと赴き、失敗し、こっぴどく怒られた場所。

 

 だからこそ、知っている。

 

「これ、地図には写ってないけど…隠し通路がある」

「そ、そうなの?一応、信用できる地図のはずなんだけど…」

「間違いない。何回か行った事がある」

 

 俺が小さな体を駆使して探し回った結果、見つかったものだ。

 実際、そこへ行くためには隠し通路を使用した。

 というか、たまたま見つけた隠し通路が繋がってただけなんだけど。

 

「多分、爆破された居住地に行くならこっちからのほうが早いし、見つかりにくい。それに、副会長もこの通路を使ってる可能性もある」

「なるほど…じゃあ、そっちから行ってみようか!」

「オーケー、案内する」

 

 そうして、シアンと共に隠し通路の方へと駆け出した。

 

 

 

 

 薄暗い通路の中を、シアンと共に全力で走り抜ける。

 

 …シアンが滅茶苦茶早すぎて、ぶっちゃけ俺はもう息が切れてるけどねっ!

 

「ちょっ…!ゼェ…!し、シアン、早…!」

 

 なんとかシアンにそう伝えるものの、シアンは不思議そうな顔をし。

 

「そんなに早くないと思うけどなー」

 

 と、そう返すばかりだ。

 

「クソッ…!このゴリラめ…!!」

「最近スオウちゃんも私のことゴリラ扱いするようになったよねぇ!?」

 

 だってゴリラだし。

 というか、やっとこさ緊張が解けてきたな。

 …ひょっとして、気遣っておちゃらけてくれているのだろうか?だとすると申し訳ないな。

 

「でも、あんまりのんびりしてる暇もないし…」

「わかってる…足手纏いになるつもりはない」

 

 息を整え、走る準備を始めたところで。

 

「あ、そうだ!じゃあ私がおぶってあげるよ!!」

「はぁ…?」

 

 本格的にゴリラとしての本能に目覚めたのか、そんなことを宣い始める。

 

「いいか、何度も言ってるように俺は体だけなら幼女だが、中身は23歳の大人、それも男だからな?おんぶとかされたら普通にアレだし、下手すりゃ警察行きだからな?」

 

 この世界に存在するかもわからないどこかの先生にダメージが入った気もするが、多分気のせいだろう。

 

「関係ないよ。困った時は助け合い、ね?それに、スオウちゃんって言うほど大人っぽくないし」

「うるさいよ」

 

 自覚はあるけどさぁ!!

 

「それに、さ。今はもう子供じゃん。少しは、頼ってもいいんだよ?」

「っ…!?ち、違う…!」

「…スオウちゃん?」

 

 なぜだろうか。否定したくてたまらない。

 体だけなら、まだいい。

 でも俺がもう子供って、それを認めてしまえば、俺が俺でなくなってしまうような、そんな感覚。

 

 違う、俺は、子供じゃない。そうであっちゃいけない、それじゃあ、それじゃあ『俺』は、

「スオウちゃん!!」

 

「…っは、え?」

「大丈夫…?息は荒いし、顔が真っ青だったよ…?」

「…そう、かな?ごめん」

「ううん。私こそ、ごめんね、変なこと言って」

 

 なんだったんだ、さっきの。あんなの初めてだ。

 なんか急に…まあ、今は落ち着いてるし大丈夫か。

 ともあれ、だ。

 

「とにかく、俺はおんぶとか絶対やだからな!!」

「…うーん。じゃあ、これでいっか!!」

「えっ?」

 

 突然シアンに腹の部分を抱きかかえ上げられ。

 

「じゃあ、全速力で!!!」

「ちょ、まさか!?離」

「いっくよー!!!」

「ああ゛あぁああああああぁぁぁああああ!!?」

 

 そのままジェット機もかくやという勢いで、一気に運ばれるのであった。

 

 

 

 

「はーい、とーちゃく!」

「っ、はぁ…!!し、死ぬかと思ったぁ…!!!」

 

 前から裏へと景色が一気に移り変わるわ、アホみたいに揺れるわ、風圧はやばいわでもう最悪だったよ!!

 

「結局、副会長はいなかったねー…」

「なあ、俺の身を案じてくれても良くない…!?」

 

 いや状況把握は大事なんだろうけどさぁ!!

 

 …まあいい。

 にしても、だ。

 

「ひどい状況だな…」

 

 建物は所々崩落しており、火の手が上がっている部分もある。

 耳を澄ませば一部では銃声が聞こえ、争いが起こっている事がわかった。

 

「こっちの人たちと協力するんだったよね?」

「ああ。まずは銃声のする方へ…バレないうちに、戦ってる相手を攻撃しよう」

「うん」

 

 そうして銃声のする方へと歩みを進めてみれば、十人ほどの生徒が争いあっていた。

 うち三人が穏健派、七人は過激派だ。

 過激派は大きく分けて後方二人、中距離三人、前衛二人といったところ。

 

「絶対味方撃つなよ?」

「わ、わかってるよぉ…!!」

 

 そんな軽口を叩きつつ、一応顔が割れないようにガスマスクをつけ、目深にフードを被る。

 

「私が四人もつ。多分二人くらいならあの三人でなんとかなるから、スオウちゃんは状況説明した後に残った一人をやって」

「わかった」

 

 シアンと左右に別れ、敵の中距離一人に爆弾を投げつける。

 

「なっ…!?増援か!?」

「お、おい!!三枝シアンだぞ!!」

「なっ!?本当にきたのか!?報告を…!」

 

「ねぇ」

「ぐっ…!う、うぅ…!!」

 

 シアンが逃げようとする前衛二人に小石を投げつけ、倒れたところを首を掴んで持ち上げる。

 

「逃すと思うのかなぁ…?」

「ひっ…!!ぎゃあああ!?」

 

 その首を掴んだまま回転し、後方支援の二人に思いっきりぶん投げた。

 

「じゃ、私はアイツらやるねー!」

「…あ、うん、はい」

 

 いやこっわぁ…悪魔か何かか…?スッゲェ遠くまで飛んでったぞ…。

 

「あの」

「ひっ!?」

 

 穏健派の味方も怯えてる!?

 

「あ、あの、味方だ…一応。よく見てアレ、生徒会長」

「あ…本当だ…」

「一人は俺が受け持つから、残り二人をやってくれ」

「え…でもあなた、こど」

「子供じゃない。とにかく、任せてくれ」

 

 三人は顔を見合わせ、こちらに向き直り頷く。

 

「…わかった、お願い。気をつけて」

「まかせろ」

 

 先程の爆発で分断した一人の元へ向かい、相対する。

 

「っ、やはり増援か…先程はよくもやってくれたな…!」

「いやー、悪いけどこれ戦争なのよ。奇襲闇討ち、なんでもござれってね」

「っ…!」

「そんじゃ、やりましょ、かっ!!」

 

 相手を煽りつつ手早く距離を詰める。

 

「なっ…!!」

 

 小さい体格を利用し、懐に潜り込んで腹にショットガンを放つ…が、しかし。

 

「っ、たぁ…!」

 

 相手も一切怯むことなく、逆に横からマシンガンの銃身で打ち付けられてしまう。

 

「フンッ!」

「ぐっ…」

「フー…」

 

 負けじとショットガンを放って、一旦距離を取る。

 今度は腹ではなく腕に当たった。少しはダメージが入ったようだ。

 

 あー、防弾チョッキ着てやがんなぁ、アレ。

 今の俺じゃブチ破れねぇか。

 じゃあ狙うのは関節、手元、足元だな。

 

 考えをまとめて今度は爆弾で遠距離から攻撃を始めるも、特に躊躇う様子もなく空中で撃ち抜かれ、僅かに距離を詰められる。

 ダダダッ、とマシンガンで撃たれ、体に痛みが走る…が、耐えられないほどではない。

 

 そう判断し、可能な限り銃弾を避け、滑るようにして相手の足を通り抜け、膝裏に銃を撃つ。

 

「くそっ…!」

 

 体勢を崩し倒れたところで、頭を横から蹴って吹き飛ばし、手榴弾のピンを抜いて投げつける。

 

「かっ、ゴホッ……!!」

「な、まだ…!」

 

 倒し切れなかったのか、反撃を喰らいかけた所で。

 

「ただいまー!って、あ、まだ終わってなかったんだ?」

「っシアン…」

 

 どうやったのか空から降ってきたシアンに潰され、完全に意識を失っていた。

 

「ふー…ありがとう…正直、助かった…」

「うーん?あんまりダメージ受けてないように見えるけど」

「多分少し弱めの生徒だったからかな…それでも、反撃喰らってたらちょっと苦労した」

 

 初めての実践に未だ激しく動悸する心臓を抑えつつ、周囲の様子を伺う。

 どうやらあの三人も無事勝利したようだ。

 

「その、ありがとうございました。助けてくださって」

「気にしなくていいよー!」

「えっと、アンナから通信が来てないか?」

「あ、はい、確認し終わった直後に見つかってしまって…ひとまず、状況をお伝えしますね」

 

 そうして話を聞いたところ、やはりと言うべきか過激派からの急襲を受けたらしかった。

 多くの穏健派の生徒が倒れ、今この場で戦えるのは十人ほどなのだとか。

 

「そうか…して、その残りの七人はどこに?」

「えっと、向こうでまだ戦っています。敵の勢力は二十人弱…できれば、そちらの方も──」

 

 と、そこで突然俺の後ろから銃声が聞こえる。

 

「し、シアン…?」

「そこの生徒…まだ意識があったみたいだね、通信してた。…多分、私がきた事がバレたよ」

「ッ、マジか…!」

 

 まずいな…シアンが来ている事がわかっているのなら、相応の戦力を準備をしてくるはず。

 

「どうする?」

「…ひとまず、その七人を助けて、一旦撤退」

「うん、わかった」

「ッ、ありがとう、ございます…!」

 

 シアンと三人と共に、戦場へと向かう。

 

 …しかし、少々きな臭いな。ただでさえ向こうが有利な状態で、そんなにもここに戦力を割く必要があったのか…?

 

 

 

 

 戦場に着けば、七人とも意識はあるものの、ほとんど満身創痍といった様子だった。

 

「いた。基本的に私が戦うから、四人は七人の手当と、撃ち漏らした奴らをお願い」

「了解。頼んだぞ」

「まっかせといて!私最強だし!」

 

 戦いへ赴くシアンを尻目に、集まって敵の襲撃をなんとか凌いでいる七人の元へ向かう。

 

「みんな無事!?助けが来たよ!」

「…っ、なん、とか…!」

「よかった…」

「感動の再会中悪いんだけど、怪我人はいる?」

「みんな相応にしてますけど、重症の患者はいないです」

 

 …うん、不幸中の幸いだな。

 

「その、増援はどのくらい…?」

「今は俺ともう一人だけだけど、安心して。片方は…」

『あははははは!!!弱い弱い!!その程度で倒せると思ってるのかなぁ!?』

「ひっ!?」

 

 …悪役のセリフにしか聞こえねぇ。それも考えうる限り最悪のタイミングで。

 

「…と、こんな感じにめっちゃ強い生徒会長だから」

「え、あ…ほんとだぁ…」

 

 気が抜けたのか、何人かは意識を失うように倒れてしまった。

 

 こっちは、問題なさそうだな。そう判断し、周囲の警戒をしつつ、シアンの戦闘を見守る。

 

 最初は二十人ほどいた敵も、すでに五名が倒れている。

 銃を放てば敵は倒れ、爆弾を投げた場所はチリも残らず、一切の攻撃を受け付けない、完成された暴力。

 これはあまり時間がかからなそうだ。

 

 …そう、思ったのだが。

 

「くっ…!!今だッ!!!」

「!」

 

 突如として敵の一人がシアンの体を捨て身で掴み、掛け声をする。

 次の瞬間爆発物が投げられ、シアンに着弾、しかけたところで。

 

「せいっ!」

「なっ…ぐ…っ!!」

 

 右手に持った石を投げて勢いを落とされ、結局地面に着弾する。

 

「…なんだろ。それ、ヤな予感がするなぁ。当たらない方が良さそう」

「っ、怯むなぁ!!!」

 

「…ん?」

 

 おかしいな。爆発された場所、焦げ跡が一切ない。

 まるで、爆発の効果を受けつけてないみたいな…。

 

「クソッ、当たらない…!!」

「あと何発だ!!?」

「三発です!!」

「うーん、しつこいなぁ…どんなものでも、当たんなきゃ意味ないでしょ?」

 

 そんな思考をよそに、シアンは五人、十人と敵の数を減らし…。

 

「君で、最後だね」

 

 そして、とうとう敵はいなくなった。

 

「シアン、お疲れ」

 

 怪我人を抱え、皆と共にシアンの元へ向かう。

 

「うん。思ったより苦労しなかったね」

「あ、あの…生徒会長、ですよね!?」

「え?あ、うん」

「さ、サインください!!!」

「えぇ…?」

 

 …シアン、やっぱ人気あるんだなぁ…。

 威厳のある口調も忘れちゃってるけど、大丈夫なんだろうか?

 

「ところで生徒会長、そんな喋り方でしたっけ?」

「…ん?あ゛っ」

 

 …やっぱダメじゃねぇか!?

 やべー、帰ったらアンナにドヤされる…!

 いや、誤魔化せばいける!!!

 

「と、とりあえず、増援が来る前に急いで戻らないと───」

 

 と、そこで、目に映るのは。

 満身の敵が震える指で、先程の爆発物を投げる様子。

 

「…えっ?」

 

 視界がスローモーションになり、ゆっくりと、ゆっくりと、爆発物が迫ってくる。

 

「っ、危ないっ!!!」

 

 あまりにも予想外なその動きに、俺の体は反応する事ができず。

 されるがままに、シアンに突き飛ばされ。

 

 

 轟音と爆炎が、俺の目の前に広がった。

 

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