「み、ミカ!?」
ミカが電話をかけてくるのは、まあそんなに珍しいことでもないけど……大体はメッセージで前置きをするし何より、こんな時間にいきなりかけてくるのは初めてだ。
『やっとお仕事終わったよ……でも明日も仕事……明後日も、その次も……ぐすん……』
そんな疑問を読み取ってか、仕事の愚痴を溢すミカ。どうにも、この時間までティーパーティとしての公務に勤しんでいたらしい。
『もうやだ……私このお仕事辞める……あとのことはセイアちゃん達に任せて、スオウちゃんとミレニアムで畑を営みながらのんびり暮らすんだ……』
……なんかシアンみたいになってきたな、ミカ。元々少し似てるところはあったけど、余計に似てる。
「おつかれさまです、ミカ。こうして声で話すのも、久しぶりですね」
『優しさが沁みる……でもね、ナギちゃんとセイアちゃんも色々教えてくれてるから……やっぱり言い方はムカつくけど、それはそれで嬉しかったり……』
……うん。セイアとも、ある意味では仲良くやれてるみたいでよかった。少なくともあの一件より前のミカなら、教えて『くれて』、だなんて、言えなかっただろうし。
しかし、そのくらいの愚痴なら時々聞くことはあるわけで。
「それより、珍しいですね。こんな時間に電凸なんて」
『で、でんと……?なにそれ……』
「む……」
こんなところでジェネレーションギャップ……人生一回分くらい跨いでるギャップだけど。なんでこういう余計なことばっかり覚えてるかな。
『それよりスオウちゃん、モモトークのメッセージ見たよ!海に行かないか、だっけ?』
「あ、はい!」
参加予定のメンバーを聞いた時点で、ミカやセイア、それからマユミにも連絡は入れていた。セイアは今回パス、マユミは……サボりすぎてユウカに絞られてるらしい。
で、残る一人がミカ。しかし、わざわざこうして電話で連絡をするということは。
『ごめんね……誘ってくれて嬉しいんだけど、今回は難しいな……』
「……そっか」
まぁ、そうだよなぁ……かなりいきなりな話ではあったし。トリニティの重鎮であるミカは、そう簡単に予定を空けることもできないだろう。
「すみません、いきなりの話になって……」
『しょうがないよ。元々、補習授業部とアズサちゃん、それからアリウスのみんなで、って話だし。ナギちゃんから話を聞いた時は、ちょっとびっくりしたけど』
あー、なるほど。仮にもアリウス分校との交流なわけだし、一応上層部……ナギサに、ヒフミから連絡があったのか。
……あの子達も、以前より打ち解けた関係になれてるみたいでよかったな。
『それより水着だよ、水着!!』
「っ、え?」
横道に逸れて思考をしていると、ミカの包み込むような高音が耳を劈いた。なんて?ミズギ?
「な、何か不都合が……?あ、ひょっとしてファッションとしては微妙だったり」
『ううん、それは良いの。すごく良い、可愛かったよ!頑張ったね、スオウちゃん』
「……!」
……あれっ、なにこれ超嬉しい。いや違う、これは……あれか。ミカはファッション詳しいし、それで認められたのが嬉しいってだけの話で。
別に可愛いって言われたのが嬉しいとか、そういうんじゃない。断じて……いや、断じれないけど。多分違う。
『でも、だからだよ!』
「へ?」
『私だってスオウちゃんの水着決めたかった!色々出したい意見もあったし……!いくつか候補も考えてたのに!』
「あー……は、はは……」
……それに憤って連絡してきたと?流石にそんなことないと信じたいけど。
「まさかとは思いますがミカ、そのためだけに……?」
『いや、それもあるけど……それだけじゃないよ』
それもあるんかい。
『もう二、三個くらい理由は……ううん。むしろ本題はここからだね』
先程の怒りを感じさせる声とは打って変わって穏やかな声になり、何か真剣な声色に変わるミカ。俺も姿勢を正すべきかとベッドから椅子に座り直すと、「崩してくれていいよ」と窘められた。
『そんなに難しい話をするわけでもないからさ。……あ、でもね。大事なことだよ』
難しくないけど、大事なこと?なんじゃそらよ、と疑問を呈するよりも先に、ミカが口を開いて。
『……アリウスと、トリニティの会合。覚えてる?』
「……忘れるはずが、ありませんよ」
あの日。初めて、日の元へ向かって。光の在るところへと歩き始めることができた、あの日。
……生きていることを。生きたいということを。幸せでありたいということを、肯定できたあの日。きっとこれからの人生で、忘れることなんてできないだろう。もう、二度とだって。
『そっか……そうだよね。うん。じゃあ、これも覚えてる?交流会の話なんだけど』
───それであなた達が何の問題もなく、私たちの学園で仲良く過ごしながら幸せになれるってことを証明するの。
「……はい」
ミカが示してくれたのは、希望だった。微かな、けれど確かにそこに生まれた、希望。
……サオリも、こんな気持ち、だったのかな。
『ステップワンだよ、スオウちゃん。今からスオウちゃんにするのは、ティーパーティ、パテル分派代表の聖園ミカとしての指令』
「し、指令?」
なかなか大仰な……いや、おおごとなのは間違いないんだけど。ミカらしからぬと言うべきか、なんて言葉にしてしまえば、怒られちゃいそうかな。
『そう……今回話を聞いた後で、ナギちゃんを通して補習授業部にはあるものを渡してるの』
「あるもの……?」
返事はなく、少し待っていると、ミカから一枚の写真が送られてくる。
そこに写っていたのは、少しお高そうなデジタルカメラが数台。これは。
『良い?まず私たちが欲しいのは、実績。なにもなく、いきなり交流会なんてできないからね。だからトリニティとアリウス、両校が仲良くしている様子を写真に収めてくること。できることなら、交流会の説明にも使いたいかな』
「……なるほど」
要するに、表向きの資料作成と、裏向きの実績作り。その両方をこなして来い、ってことだろう。なるほど、理にかなっている、しかし。
「……補習授業部の皆さんが危険すぎるのでは?」
要するに、俺たちが信に値するか。それを確かめるために、補習授業部を……悪い言い方をするなら、餌にするようなものだ。
だとしたら、ナギサが黙っているはずもない。何より、そんなことを黙認するティーパーティでもないだろう。
『あははっ、大丈夫大丈夫☆本人達たっての希望だし、何より……』
「……何より?」
『……うーん……いや、これはナイショかな。とにかく、その辺は心配しなくて大丈夫だよ!』
「……?」
監視でもつくんだろうか……そうなってくると、事情を知ってるツルギとかが来るわけで……ヨセが可哀想だな。
……まあ、ミカが問題ないって言ってるんだ。信じるとするか。
「わかりました。でも、仲良くしている様子と言われても、具体的には……」
『そこについても任せておいて。私たちで撮って欲しい写真はまとめておいてから……まあ簡単に言うと、ミッションかな?それに取り組んでる様子を撮ってくれれば大丈夫だよ!』
「……至れり尽くせりですね?」
おかしいな、海に行く話が決まってからまだ数日も経ってないのに……いくらなんでも、用意周到が過ぎるような?
『いつか、こういう日が来るってわかってた……ううん。信じてたからね』
「……」
『だから私たちも、このくらいの協力はさせてもらうよ!』
……信じてた、か。
一体、いつから?そんな野暮なことは、聞くつもりはない。でも、きっとミカは……ずっとずっと、そう願ってくれていたんだ。
あの日、出会った瞬間から。
「ありがとう、ミカ」
『あははっ、なぁに、改まって……お礼を言うなら、私もだよ』
「はははっ……」
……みんな、早いなぁ。ちょっと目を離したら、すぐに遠い場所まで行っちゃうんだから。少し、寂しい気もした。
でも、成長は喜ばしいばかりで……なんだか最近、俺の方が子供っぽいような……というか、子供扱いされてるような。俺がそうして欲しい……いや、そうして欲しくはないけど。そう扱われても良いかって思えるのなんて、まだ。
───“スオウの……みんなの、先生だからね”
『わぁっ!?な、何の音!?』
「あ、いえ、お気になさらず。ちょっとかっこよさの過剰摂取で」
『かっこ……え、えぇ……?』
ちょっと息苦しいな。窓を開けるか。
『……こほん……と、とにかく!写真の件、よろしくね?スオウちゃん』
「あ、はい!おまかせを!」
写真か……俺も最近こだわってるけど、アツコもそういうのは好きらしいし。どうせなら、二人で色々撮ってみるか。デジカメはアツコに渡して、俺はスマホで写真を撮って……あとインスタントカメラで、せっかくだし海で焚き上げるかな。
アウトロービーチは火遊び可だったか……いや、アウトローなんだから別に大丈夫か。アウトローだし。
『うんうん、安心したよ……それと、ね。スオウちゃん、海に行ったことはある?』
「え?……えぇっと……一応……?」
海は……青くて……広くて……あとなんか、磯臭い……あれ。だ。確か。
ダメだ、ほとんど思い出せない。ノートに書いてる情報程度だ、もっとしっかり書いておくべきだった。
『そっかぁ……意外と髪がベタついたりするから、気をつけてね。それと、土産店とか出店は高いから、しっかりお金を持って行くこと。タオルの予備は多めの方が良いし、それから日焼け止めも……ダメだ、言い切れないや。あとでまとめて送っておくね』
「お、おぉう……!?」
ひょっとしてまたミカ直々に色々教えられることになるのか……!?というかもう、言ってることが母親じみて来ているような……。
「心配し過ぎですよ。私なら、大丈夫ですから」
『心配しなかったらどこか行っちゃうような性格してるのに、よく言うよ』
「わ、私ってそんな認識なんですか!?」
もうそんなことするつもりないんだけど……!?
『……でもね、一番忘れないで欲しいのは。目一杯、みんなで海を楽しんできてね。これは、スオウちゃんの……桐花スオウのお友達としての、ただのミカからのお願い』
「っ……」
『それだけは約束して。……ね?』
「……はい。もちろんです」
不安なことだらけ、わからないことだらけ。この交流がなにをもたらすのか、それは俺にさえもわからない。でも、ミカの言葉で……少しだけ、気持ちが楽になった気がして。
きっとこれが、誰かを頼る……ってことで、良いんだと思う。
「……ミカ。次はミカも、必ず一緒にいきましょうね」
『あははっ、うん!楽しみにしてるね!……それと、ちょっとしたサプライズもあると思うから。お楽しみに!』
「サプライズ?あ、ちょっミカっ!?」
切られた……一体、なんだったんだ?
◇
そうして迎えた、約束の日。俺たちアリウス組は、一足先に海についていた。トリニティの面々に比べて人数が多いし、まあこんなものだろう。
「アツコ、カメラは?」
「持った」
小さなデジカメを両手でしっかり持ちながら、アツコは少し自慢げにそれを見せつけてくる。かわいい。
それじゃあ、早速海に行く……前に。
「みんな、出発前に言った事は覚えてますね?一般のお客さんに迷惑をかけない事、調子が悪くなったらすぐに休むこと、溺れそうになったらできるだけ大きい声を一瞬でも出す事。すぐにお姉ちゃんが駆けつけます。それから、施設の占領は良くないので、事前の班分けに在る程度従って動きましょう。あとは、えっと」
「もー!!小隊長話長すぎ!!待ってられないよ!!お先っ!!」
そんな話をしていると、ヨセが先に浜辺に向かって飛び出してしまう。
「あ、コラ!」
ヨセが耐えきれないのは予想通りだったけど、他にもこっそり行った子達がチラホラいるなぁ……?
「テメェヨセ!!まだ小隊長が話してる途中だろうが!!ったく……失礼しました、小隊長。私の方から言っておきますので、ここは穏便に」
「あ、はい……」
うん、ヤコ。足がね。向いてるよ、浜辺の方に。早く行きたいんだろうか。
「……ヤコも行きますか?」
「っ……!?い、いえ、私は……」
……ま、いっか。
「まあ、御託はさておき!全員海を楽しみましょう!!はい解散!!自由行動!!」
瞬間、みんなから歓声が上がる。中には「小隊長最高」とか「今だけお姉ちゃん並みの頼もしさ」とか現金な声も聞こえ……あ、シオがブチ切れた。
ともあれ、やっぱり長い話を聞くよりも先に、さっさと海に行ってみたかったらしい。
「しょ、小隊長!?よろしいのですか!?」
「ん?あー、まあ大丈夫です!私の愛する妹達は、お姉ちゃんとの約束を覚えて、しっかり守れる子だって信じてるので!」
ま、何かやらかしちゃったらきちんと叱るけどね。やらかすより前に止めるけど。出先だし、何より……見たことのない海が、今こうして目の前にあるんだ。それを抑えるのも、酷ってもんだろう。
一度アリウス居住区で、しっかりみんなに釘は刺した。きっと大丈夫さ、ってことで。
「サウ、この子連れてってあげてください!」
「っ!!?」
ヤコ、少し重くなったかな?前より身長も伸びてるみたいだし……そのうち、サウにも追いつくかもしれない。
「お、おおおぉおどおど、お、お姉ちゃん!?それ!!それ私にもやって!!お願い!!」
「はははっ、良いですよーシオ。水着もよく似合ってます」
「っ……!あぁ……!!ここよ……!ここがエデン……楽園……存在の証明なんて簡単だった……!!此処に在るんだもの……!!」
「……昔のお前みたいなこと言い始めたぞ。笑えるな」
「黙れ。つか、さっさと下ろせ」
シオをお姫様抱っこして軽くクルクル回っていると、苦虫をまとめて噛み潰した顔で、ヤコが低い声を出した。昔……実はサウからちょこっとだけ話には聞いてたり。本人嫌がりそうだから、しばらくは知らないふりをしておく。
「小隊長、再確認だが、19時……予約したホテルの夕飯までには、そこへ戻ればいいんだったね?」
「あ、トウ。はい、その通りです。基本は自由行動、祭りはまた明日なので!」
「トウ……!今私は愉しんでいるのよ……!!邪魔をするなら消えてちょうだい……!!」
「こいつ殴ってもいいかい?」
……シオ、ちょっとトウと仲良くなったのかな?あのシオが下の名前で呼び捨てるとは。
確かに……トウが抱える痛みは、シオと似てるところがある。それに、昔の話を聞くに、トウは面倒見がいい方みたいだし。
その調子で他の子達とも仲良くなってくれると嬉しいけど……まあ、その辺は追々。
「小隊長……私……浮き輪……作りたい……」
「あー……フィリは水中活動が苦手でしたね。向こうで作れますよ」
「うん……小隊長……チビ……一つ……あげる……」
「……あ、ありがとうございます」
俺、水中訓練は得意な方だったんだけど……妹の厚意だ。受け取っておこう。
「さて……シオはトウに預けるとして」
「あ、ちょ、お、おねぇちゃぁん……!!」
「もう充分楽しんだろう……ほら、海に行くぞ」
「お姉ちゃんが来るまで、パラソルの下で城を建てるわ……」
ただでさえ日が苦手なのに、強い日差しに当てられて干からびちゃってるな……シオ。あとで飲み物を差し入れてやろう。
「あ、小隊長!あとで泳ぎ方教えてね!私あんまり知らないし!」
「もちろん。また沢山、
「ひっ!?さ、寒気が……ご、ごめんやっぱいーや!私サーフィンしてくる!!」
「あ、その手のレンタル料は個別で……行っちゃった。あとでいいですかね」
うぅん……いかんせん人数が多いから、まとめるのが大変だ。あらかじめ予定を組ませておいて正解だった、これなら問題なく……と。
「みんな、お待たせしました」
「ううん。そんなに待ってないよ。それに、助かった」
「ああ。あの分隊長達をまとめ上げれるのはお前くらいだからな……」
サオリ、自分もその分隊長の一人なんだけど……いやまあ、サオリは手間のかからない子だったけどね。比較的。
「ヒフミ達はいつ頃?」
「もう少し……一時間程度かかるらしい。一足先に海で待っていよう」
「そ、それがいいですね……えへへ、海……ここからでも、磯の香りがしてきます……!」
「……確かに。ちょっと臭い」
臭いって……否定はしないけど、風情というか。表現というかさ。
「……ところでスオウ、その髪型はどうしたの?」
「ん?あ、あー、これですか」
アツコに指摘されて、自分の後頭部に軽く触れてみる。髪が少し持ち上げられるような、引っ張られるような感触。
「ミカに教えてもらって、ちょっと結んでみました。最近、少し伸びたのもあって、その……へ、変じゃないですよね?」
「うん。かわいい」
「へ、ヘアアイロンを使ったんでしょうか……わ、私には難しくて無理です……器用ですね……」
……少しパーマがかったヒヨリか。アリだな。髪は下ろして、少しブカブカな服を着てもらって……そうと決まれば、今度早速アレンジを……!
「また自分の世界に入ってる……どうする?置いてく?」
「流石に可哀想だよ」
「海に投げよう。きっと目が覚める」
「余計酷くはないか……?」
妹達が物騒な提案をしてきたところで草案がまとまったので、急いでちょうど近くにいたサオリと、それからアズサの手を結ばせる。
「お、おい!何をする!」
「まあまあ……全員、こんな感じで手を繋いでください。せっかくなので、みんなで初めて海に行く瞬間を……浜辺に行く瞬間を、写真に収めましょう」
「……?どういうこと?」
「こう、みんなで手を繋いでですね……浜辺の直前まで行って、そしたらジャンプして、宙に浮いてる瞬間を撮るんです。みんなで来たぞ、って証……みたいな……」
前世でも、こういう事はやったことがなかったように思える。通行の妨げになりかねないし……でもここは、アウトロービーチ。幸いにして、あまり人通りは多くない。
だったら、こういうこともできるだろう。
「た、楽しそうです……私は、アツコちゃんの隣で……!」
「……じゃ、余ったヒヨリの横もらうね」
「そしたら、私がサッちゃんの隣で……スオウはどこがいい?」
「え?あー、私は……」
……本当は入りたいけど。
「このやり方、撮影者が一人必要なので……」
「……スオウ。見てて」
「……?」
「みんな、上見てね」
ふとアツコがそんなことを言って、デジカメを宙に放り投げて……デジカメを宙に放り投げて?
「ちょわっ!?な、ななななっ!!」
久々で、ちょっとできるか不安だけど……!この程度なら、爆弾がなくても!
「よし、っと!」
足に力を込めて跳躍して、放り投げられたカメラをキャッチした。
「セーフ……あ、アツコ!ダメじゃないですかこんなことしちゃ!」
デジカメって結構高いし、それもティーパーティから受け取ったやつだぞ!?一体どのくらいの値段がするのか……!
「スオウ、中身見て」
「へ?」
「良いから」
言われるがままにフォルダを開いてみると、見覚えのある顔が一人。そう、アリウスの白い悪魔こと最高峰のお姉ちゃんたるこの俺……ってこれ、さっきカメラをキャッチしようとした時の?
「時間経過でシャッターを切る機能があるみたい。試してみたくて」
「あ、アツコ……次からは、ちゃんとやるより前に行ってくださいね?」
「うん、ごめんなさい……でもおかげで、良い写真が撮れた」
アツコが見せてくれた写真は、俺が手を伸ばしてて。その後ろに穏やかな笑顔のアツコと、絶望してるヒヨリ。驚いたサオリとミサキ、それから知っていたのか、カメラに向けてピースをしているアズサ。
……なるほど。確かに。良い写真だ。
「これなら、スオウも一緒に撮れるよね?」
「……そうですね。ありがとう、アツコ」
「ううん。良かった」
お姉ちゃん、新しい技術がすごくてついていけないよ……というかよく考えたら、スマホで動画撮ってあとでスクリーンショットすれば良いだけだったな。デジカメの横に置いておくか。
「さて……スオウ、お前はどこに入る?」
「え?う、うぅん……!?」
難しい……非常に難しい問題だ、これは。楽園の証明より難しい。
どの妹にも貴賎はなく、愛情は皆平等に注いでいるつもりだ。みんな大好きだよ。だが、だからこそこういう選択する場面は困っちゃって……うぅん……!?
「あ、煙吹いてる……決めれないなら、私とサッちゃんの間に入ろうか」
「え……あ、はい……それで……」
でもよく考えれば、アツコはまだしもサオリは身長差が……まあ良いか。行こう。
「それじゃあ、20秒でセットするね。急いで」
「……なんというか、作戦準備を思い出すね」
「うぅ……!なんで余計なことを思い出させるんですかぁ……!」
「基本的にはあまり変わりない。決められた時間で決められた準備とタスクを終える。いつも通りだ」
「……なるほど。そう考えると少し気が楽になるな」
そんな会話をしているうちに、あっという間に時間は過ぎて。
「あ、みんな!掛け声決めましょ!というか決めてあります!」
「はぁ!?今!?」
「いいですか、こんな感じで……!」
「……なんだそれは。まあ、別に構わないが……」
みんなと掛け声を共有したら、そのまま浜辺の入り口へと駆け出す。
「じゃあ、行きますよー!?サン!!二!!イチ!!せー、のっ!!」
一斉に、思いっきりジャンプして。なんなら俺は飛び上がり過ぎて、少しサオリとアツコを引っ張っちゃったけど。とにかく、青い空いっぱいに、その体を投げ出して。
『アリ夏っ!!来たぁあっ!!』
一斉に、浜辺に辿り着いて……俺たちの夏が、幕を開けた!
色々切羽詰まってて機会を逃してましたが、ファンアートの紹介です!遅れてしまい申し訳ないです……!
一つ目はkukuru(https://x.com/kukurumiko)さんからいただきました!ドスケベスオウちゃんです!桐花スケベとも言います!
【挿絵表示】
ドエッロ……!(ストレート)
半泣きなのがとてもかわいいです!男の子なら上裸くらい恥ずかしくないはずなのにね、不思議だね。
肌の塗り方にこだわりを感じて、とてもえっちな感じです!ありがとうございます!
二つ目が火焔茸(https://x.com/trich0derm4)さんから!
【挿絵表示】
前々回のわさびを食べたスオウちゃんです!ちいかわになっちゃいました!小さくてかわいいので間違っちゃいません。
姉やWABI SABIの小ネタがすごく好きです!あと何気にタイトルが秀逸!
ほのぼのとしてて、つい何度も見返したくなりますね……ありがとうございます!