ts転生者の生徒が、頑張るだけのお話。   作:おにっく

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【後日談】海と推理とお姉ちゃん

 騒ぎになる前に海の家へと歩いて、数分。俺たちが遊んでいた浜辺から少し離れた位置に、海の家が見えてきた。

 しかしながら、どうにもそちらでもトラブルが起こっているようで。

 

「だーかーらー!!別に、別にね!?私はタダでちょーだいって言ってるんじゃないんだよ!?ただもう少し安くならないのかって言ってるの!!わかる!?」

「だから、ならないって言ってるだろうが!ウチはずっとこの値段でやってるんだ、嫌なら他の店に行きな!」

「どーせそのお店も買収したり襲撃したり、ろくに使えない状態にしてるクセに!サギだよ!!こんなのサギだー!!」

 

 悪質なクレーマーかと思ってよくよく目を凝らしてみれば、それは見覚えのある影で。

 

「“……あの子って”」

「……はい……アリウス分隊長の一人……第六分隊長の、伏貫ヨセです」

 

 ヨセ、何やってるんだあんなところで……うちの妹はあんなことする教育をした覚えがないんだけどな。何かおかしなことでもあったか、はたまたヨセが食事を抑えきれなくなったのか。

 いずれにせよ、双方話を聞く必要がありそうだ、っと。ちょっと待て。

 

「ヨセ、いい加減にしなさい」

「そうだ。ギャーギャー見苦しいぞ、もっと胸張って冷静になれ。じゃねぇと付け入る隙を与えることになンぞ」

「ヤコ、サウ……」

 

 あの二人がいるなら、まあ大丈夫、か……?妹達も、なんだかんだと言ってもう高校生。お姉ちゃんの手から徐々に離れていく時期だ。

 

 だから、俺が介入するのは簡単だけど……此処は三人の力を信じて、きちんと話し合いに持ち込んでくれるとしんじよう。大丈夫、俺が思ってるより妹達は成長してるさ。

 

「言葉は要りません。あるのは暴力による支配。それだけです」

「そうだ、この手の輩に容赦する必要はねェ。いっぺんボコボコにしねェとわからねェんだ、こういうクズは」

「二人がそんなんだから私が代わりに怒ってんじゃん!!いいからおとなしくしてて!!暴力沙汰なんてごめんだからね!!」

 

 うん、ダメだこりゃ。というか、むしろヨセが抑えてる側だったんだな……まあ、ああ見えてヨセは周りをよく見てるもんなぁ。

 

「あ、あの……あれ、大丈夫でしょうか……?」

「ダメですね。ちょっと待っててください、私が落ち着かせてきますので……」

 

 ヒフミに財布を預けて、ヨセ達の元へ向かおうとして。

 

「わ、私もお手伝いします!できることは少ないかもしれませんが……」

「……はははっ。相変わらず、すごい勇気ですね。ありがとうございます、私に何かあったらお願いしますね」

 

 やっぱりこの子は、平凡とはほど遠い。優しい子だ。ちょっと危うさも感じるくらいに、ね。

 

「いい加減しつけぇな……!どれだけ言われようと値段は変えねぇ!!私たちをボコるだぁ!?やれるモンならやってみろ、口だけの雑魚が!!」

「んだと……!」

「テメェ……ホテルの予約はキャンセルしとくんだな。代わりに良い病院を紹介してやらァ」

 

 わー、ちょっと見ない間に一触即発……!?これはちょっと急がないと……!

 

「だー!!二人は黙ってて!あのね、別に私たちは喧嘩がしたいんじゃなくって」

「うるせぇ!!やらないってんならこっちから……!!」

「っ……!って、あれ……?」

「……うちの妹達が何か?」

 

 ……夏だけあって、血気盛んなことで。流石に無抵抗なヨセを殴りつけようってんなら、こっちも容赦する理由は特にないな。

 

「な、なんだァこいつは!?」

「しょ、しょうたいちょもがっ!?」

 

 いつも通りに俺のことを呼ぼうとしたヨセの口をギリギリで押さえつけて、小声で声が届く距離まで顔を近づける。

 ヨセ、今普通に俺のことを小隊長って呼ぼうとしたよな。

 

「しー……アウトロービーチと言えど、お尋ね者はお尋ね者。人前で小隊長は無しで、ね……?」

 

 コクコクと頷いたヨセをみて、パッと手を離し。

 

「代わりにお姉ちゃんで。ねっ?」

「え、あ、ちょっ」

 

 有無を言わせるより先に、屋台の従業員へと向き直った。

 

「先ほどは失礼しました。ですが、無抵抗な私の妹に暴力を振おうとしているように見えたので」

「……チッ。悪かったよ。だが、先に煽ったのはソイツらだぜ?」

「ええ、それはこちらとしても把握しております。その点については、妹達がご迷惑をおかけしました」

 

 とはいえ、先に向こうが手を出したのは事実。いざとなったらこれを存分に使わせてもらうとして、今はひとまず話し合いだ。

 

「はぁっ……はぁっ……!やっと追いつきましたぁ……!」

「“スオウ、みんな、大丈夫?”」

 

 と、先生達も追いついたか。

 

「シャーレの先生だぁ……?それに、その身なり……なるほど。お前ら、一般客か」

「……あー。まあ、はい。そうです」

 

 別にヘルメット団は関係ないし、一般客って言っても嘘ではないだろう。これでもかってアウトサイダーなのはさておき。

 

「それに、妹達……五人姉妹か?大所帯だな……はっ!?さては先生の隠し子……!?良いネタになるぞこれは……!」

「あー、勘違いしないんで欲しいんですが、妹はこっちの三人だけですよ」

「そ、そうか……それは悪かった……」

「いえ、別に」

 

 側から見たらわからないだろうし、そこについては特に憤るつもりもない。しょうがないことだしな。

 

「私たちも妹じゃねェ」

「シオナさんのことはお慕いしていますが、それはそれとして妹ではありません」

「うん、違うよ」

 

 後ろの妹達の囀りは聞こえない。聞こえないったら聞こえない。

 

「……ああ言ってるが?」

「聞こえません。あの子達は私の妹です」

「……イカれてる……」

 

 ……落ち着け。怒ったら負けだ、冷静に。ここで俺まで怒り出したらいよいよストッパーがヒフミと先生しかいなくなってしまう。

 

「まあ、事情は人それぞれだからな……で、うちの妹が何か、だったか?どうもこうも、ソイツらが私たちの商品の値段にケチがあるってんでな。だったら他の店に行けば良いてって教えてやったんだよ」

「そんな言い方じゃなかったよ!よくわかんない事ばっかり言って誤魔化そうとして、んむぅ!?」

 

 ナイスヤコ、ヨセはそのまま抑えておいてくれ。流石に話が進まなくなっちゃうのは困るし。

 

「えぇと、その点だけ聞けば確かにこっちに非がありますね……失礼しました」

「いやいや、構わないさ。だが迷惑をかけられたのは事実だ。詫びにと言っちゃなんだが、ウチの商品を幾つか買っていってくれよ」

「……」

 

 胡散臭い。こっちを騙してやろう、利用してやろうって空気がこれでもかってくらいに伝わってくる。手放しに受け入れない方が良さそうだ。

 

「……ちなみになんですが、おすすめの商品なんかはありますか?」

「そうだな……これなんかどうだ?アウトサイド焼きそば。こう見えて、ソースは手作りだぜ」

「へぇ、おいしそうですね」

 

 本当に美味しそうだ。海で遊んで少し汗をかいたから、体がこういう栄養素を欲してる感じがする。せっかくならいただきたい、ところだけど。

 

「お値段は?」

「七千円になります」

「……はぁ」

 

 どうせそんな事だろうとは思ったけど、予想以上に酷いな、これは。七千円って、一体どんだけ円の価値が下がったらそうなるんだって話だ。何か別の通貨単位と間違えてるんじゃないか。

 ……キヴォトスに別の通貨単位があるのかは知らないけど。

 

「むぅ、むー!!ぷはっ!!だからおかしいでしょって!!なんでただの焼きそばが七千円もするのさ!!どんな高級レストランだよ!!」

「だから言ってるだろ!!需要と供給だ!!海の家で食事をしたい奴は多いが、こっちは移送費用も人件費も馬鹿にならねぇ!!だったらちょっとくらい高くなってもおかしくないだろ!?」

「じゃあそこにあるクーラーボックスと業務スーパーの袋は何さ!!原価率言ってみなよほらほら!!」

「文句があるならここで売るものは一つもないな!さあ帰った帰った!!」

 

 どうしたものか。向こうが暴論を振り翳してるのは明らかだとして、じゃあここで喧嘩でもすれば解決するのかと言えば、それも違う。なぜならあくまで売り手はあちら。『この値段でしか売らない』と選択されてしまえばそれまでなわけだし。

 ……しょうがない。ここは一旦引くか。

 

「そうしましょうか。帰りますよ、ヨセ、ヤコ、サウ」

「あ、ちょっとしょ、じゃなかったシオナさん!私焼きそば食べたいんだけど!」

「それならお姉ちゃんがひとっ走りして買ってきてあげますから。ここではやめておきましょうね」

 

 あの袋があるなら、少し足を伸ばせばスーパーやコンビニくらいは見つかるだろ。幸いにしてアシリもいるし、キヴォトスロボのトリニティ機を出してもらって……あれ、よく考えたら修理って終わってるのかな。

 

「おっと待った、詫びがまだだぜ?」

「別に買うなんて一言も言ってませんよ。私はおすすめの商品と値段を聞いただけです」

「そういうわけにもいかないなぁ。こっちも商売なんだ、きちっと迷惑料くらいはとらせてもらうぜ。無理矢理にでも、な」

「……喧嘩しに来たわけではないんですけどね」

 

 無用なトラブルは避けるべきだけど。こっちもぼったくられかけて……何より、妹を殴られかけて。ちょっと怒ってるわけで。

 

「お前ら!!新しいお客様(カモ)だぞ!!」

「おお!」

「……しょうがないですね……先生、指揮を」

 

 やろうってんなら、完膚なきまでにボコボコにする。

 

「た、戦うしかないんでしょうか……!」

「“……うん。あいにく、お金を払ったところで無事に返してはくれなさそうだし”」

 

 敵も味方も、全員が準備万端。一触即発。今にも開戦しようかという空気の中、一人の甲高い声が空気を裂いた。

 

「た、大変だぁっ!!」

「わぁっ!?い、いきなり脅かすな!!今良いとこだったんだぞ!こう、いかにもアウトローって感じで……!」

「そんなことしてる場合じゃないんだって!!小遣い稼ぎならあとでやれ!!大変なんだよ!!」

 

 誰だろう、あの子。ヘルメットを付けてるあたり、ヘルメット団の一員ではあると思うんだけど。

 それより、この互いに振り上げた拳をいったいどうすれば……?

 

「いいか、よく聞け……!!」

 

 そんな俺の疑問を置き去りにして、赤いヘルメットを被った少女はスウっと息を吸って。

 

「DJ B.o.Bがいなくなったんだ!!」

「……はぁ!?」

 

 勢いよく吐き出すように、そんな大事件を口にした。

 

「DJ B.o.Bって、ひょっとしてさっきの……ですか?」

「は、はい……明日のステージのメインイベントを担当していた、はずです……」

 

 メインイベント……たしか、サオリが強く興味を示していたと思う。

 特段趣味と呼べる趣味も、まだ見つけていなくて。バイトも当たり障りのないもの、それも稼ぎがいいものを選んで、暇があれば俺たちの趣味に付き合ったり、家事をしたり、銃の手入れをしたり。そんなサオリにしては、珍しい反応だったと思う。

 

「なっ……!!何故だ!!何か機嫌を損ねるようなことをしたのか!?まさかバイトが反抗でも」

「違う!!確かにさっきまでステージにいたんだ!!楽屋に行くと言って、その姿を見たっきり最後だ!!行方不明なんだよ!!護衛も眠らされてた!!」

「そんな……!B.o.Bのイベントはこの祭のトリ……そう言えるだけの金もかかってる……!!今から代役を見つけたって、ランクダウンは避けられないぞ……!?」

「んなことわかってんだよ!!さっさと探すぞ!!」

 

 ……DJ、ねぇ。俺はそんなに詳しくなかったけど、どうにもB.o.Bはその筋でもかなりの有名人らしい。裏の世界の住人だってのに、この話題性。正しく今、身をもって体感できてる。

 ま、俺も有名人っちゃ有名人だけどさ。

 

「……なーんか、あちらさんも大変そうだねぇ。じごーじとくだと思うけど」

「ヨセ、そういう言葉遣いは」

「あはっ。じゃあ身から出たサビの方が良かった?それともじじょーじばく?」

「……まァ、同情するつもりにはなれねェな」

 

 ヨセも相当イラついてるし、それは充分に理解できる感情だ。立場を利用して一方的に有利な取引を進めるなんて、まるで……教員やベアトリーチェのようで、気に食わないんだろう。

 でも、それでも。

 

「あの」

「あ、あの!」

 

 俺が口を開くより先に、誰かが口を開いた。聞き覚えのある声だ。ずっと前に。数少ない、俺の前世との繋がりを示す声。

 

「ああ!?なんだ!?悪いがこっちはこれ以上お前達に構ってる暇がないんだ!さあ帰った帰った!!」

「そ、その!私にも、B.o.Bさんを探すお手伝いをさせてくれませんか……?」

「……なんだと?」

 

 これでもかと平凡な優しさを持った、妹の親友。ヒフミの声だった。

 

「正気か?何の利があってそんな提案をする?お前達がB.o.Bを攫ったってオチじゃないだろうな」

「ち、違います!わ、私は、その……そんなに、B.o.Bさんに興味があるわけではないです。けど……」

 

 ヒフミは何かを思い出すように、グッと拳を作って。

 

「……まだ、お友達とは言えないかもしれないですけど……その人のことは、私のお友達のお友達が楽しみにしていたんです……だから……!」

「……はぁ……悪かったよ。要らない疑いをかけた」

 

 ……友達の友達、か。手放しに「もう友達だ」、なんて言葉よりも、よっぽど信用できる。素直で、愚直で、真っ直ぐなヒフミらしい言葉だった。

 ヒフミなら、もしかしたら……サオリの、トリニティでの初めての友達に。

 

「ヒフミちゃん、ホンキ?コイツら最低だよ?」

「な、なんだとぉ!?大体、私たちはまだ認めてねぇからな!!テメェ如きに何ができる!!悪いが情報は渡せないし、渡すつもりもない!!ゼロから私たちより役に立てるってのか!?」

「あ、あぅ……それは……」

 

 ま、なんにせよ、だ。このイベントは、サオリの趣味を作るのに一役買うかもしれない大事なもので。探したいと名乗り出てるのは、妹の大切な友達候補ときたものだ。

 

「……フランクフルト」

「……あぁ?」

「かき氷に、アイスバー……それに、これは……うぅん……あ、わかった!レインボーアイスですね!全く冷たいものばかり食べて、お腹壊しちゃいますよ?」

「何の話だ!!」

 

 だったら俺は、何者であるよりも先にまずお姉ちゃんとして。

 

「ああ、あなたじゃなくて、そっちのあなたです」

「何の話を」

「な、なぜ……」

 

 妹の友達と協力して、全力で妹の役に立たないとな。

 

「なぜ、私が食べたものを正確に……!?」

「感覚は鋭敏な方なんです。私たち(・・)なら、必ず役に立ってみせますよ。B.o.Bさんを見つけるために、ね」

 

 持てる力を、全て尽くしてね。

 

「す、スオウさん……!」

 

 それはそれとしてヒフミ、本名で呼ばないでくれるとすっごく助かる……って、この場で言うわけにもいかないけど。

 

「……仕方ないですね。シオナさんは昔から言い出したら聞きませんから。私たちもご協力させていただきます」

「はいはーい!しょうた、シオナがやるなら私も!!ねっ、サウちゃん!」

「……チッ。足引っ張んなよ、ヨセガキ」

「ヨセガキってなに!?お見舞い!?」

 

 なんだかんだ、ヨセ達も一致団結して手伝ってくれそうで助かった。特にヨセの野生の勘みたいなものは、明らかに理論を超越してる時があるし……ひょっとして、これも神秘に由来する能力だったり?

 ……ダメだ、わからん。

 

「……良いのか?私たちは、お前たちから金をぼろうと……」

「あー、もちろん。協力させてください。たーだーしっ!!」

 

 ヘルメットのシールドを開けて、しっかりと目を見合わせて。鼻と鼻の先がくっつきそうなくらいに、顔の距離を近づけてから。

 

「商品は適切な値段で売ること!!多少のお祭り価格なら許しますけどね!」

「っ……あ、ああ……ああ、わかった!可能性は少しでも高い方がいい!私たちも時間と金をかけて、ようやく用意した祭なんだ……!B.o.Bを頼む!!」

 

 しっかりと約束を取り付けた。これならきっと、もう同じことは繰り返さないでくれるだろう。

 万が一約束を違えたなら、その時には悪魔に喧嘩を売るというのが何を意味するのか、『学び』を身をもって……と、いけないな。倫理観がキヴォトス寄りになってきた。暴力は良くない。

 

「そ、その……ありがとうございます。ごめんなさい、私のわがままで……」

「気にしないでいいですよ。こちらこそありがとうございます。妹のために協力してくれて」

 

 本当に、アズサのことにしろ、アシリのことにしろ、ナギサのことにしろ、そのほかのどんな場面でも、ヒフミには世話になりっぱなしだ。きっと本人は何のことやら、としか思わないんだろうけど。

 

「そーれーにっ!大切な妹のお友達候補ですからね!よしよし、暑くないですか。アイス買ってあげますよ、それとも海に潜りましょうか。私が浮き輪を引っ張ってあげるので、お水が冷たくなるところまでゆっくりいきましょうねぇ」

「あ、あぅ……え、えっと……」

「あーズルーい!!私だってそういうことして欲しい!!」

 

 おっと、妹からの嫉妬が。全く、モテるお姉ちゃんは辛いぜ。

 

「……それで?大口叩いたのはいいが、結局これからどうすンだ?」

「ひとまず、サオリたちのところへ戻ります。人手は多い方がいいですし」

「そうですか。では他のアリウス分校の面々には、私の方から伝えておきましょう」

「ありがとうございます、ヤコ。よろしくお願いしますね」

 

 軽くキュッと手を握って笑いかけると、小さなハーフツインをひどく荒ぶらせた後、何事もなかったかのように踵を返した。途中何かを囁いたヨセを強く蹴っていたのは、多分気のせいだと思う。海まで吹っ飛んでたし何なら水飛沫が俺の方まで飛んできたけど、多分気のせいだ。

 

「……さて。私たちもいきましょうか」

「は、はい!」

「あ、それと……」

 

 と、それよりも先に。誰よりも最初に頼りたくって、頼らせてくれる人に、まだ頼んでなかった。

 ……ちょっと難しいし、恥ずかしいし、照れ臭いけど。これもきっと練習だから。

 

「……その、先生。ああは言ったんですけど……やっぱり、私だけの力だけじゃその、難しいかもしれなくって……え、っと……今回も、なんというか……助けて、くれますか……?」

「わ、私からも、お願いします!」

「“もちろん!みんなでイベントを見るためにも、絶対見つけようね”」

「……はい!」

 

 わかりきってる。ああ、わかりきってたさ。先生がこう言ってくれることくらい、俺にはとっくにわかってた。

 けどやっぱり、こうして肯定してもらえると……安心する。この人は頼っていいんだな、って、そう思わせてくれる。背中を預けていいんだな、って、そう思わせてくれる。

 これ以上考えたら、きっとまたまともに顔も見れなくなっちゃうな。さっさと移動するとしよう。

 

「ふっふっふ……B.o.Bさん、必ず見つけて見せます。今日限り、私はただのお姉ちゃんじゃありませんよ!」

 

 そう、ただのお姉ちゃんじゃない。夏の海、それも水着の、妹の楽しみにしていたイベント、その主演者を探し偵察するもの。題して。

 

「今日の私は……水着お姉ちゃん探偵です!!」

「“……”」

「……あ、あはは……」

「なんですかそのクッソしょうもないものを見る目は!!」

 

 な、何はともあれ!DJ B.o.B、絶対見つけてみせる!

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