急転直下、突如として新たな課題……DJ B.o.Bの捜索が議題に上がり。俺たちは、サオリ達の元へ戻って大まかな事情を説明していた。
「ね、ねぇ、スオウちゃん……カメラ返してもらってもいい……?」
「あ、はい。どうぞ」
先生と俺が写ってたあの写真はパソコンを借りてスマホにデータを移したし、もう返しても問題ないだろ。
「……なるほどね……相変わらず、厄介ごとばっか抱えてくるんだから」
「は、はははっ……」
厄介ごとって……いや、否定はできないけどさ。
「ご、ごめんなさい!最初は私が言い出したことでして、その」
「気にしなくていいよ。コイツの無茶には慣れてるから。それに……せっかくの祭りのイベントを一つ潰されるのも癪だし」
でもまあ、その無茶やら厄介ごとになんだかんだといいつつ協力してくれるのも、ミサキなんだよな。今回も、頼りにさせてもらうことになりそうだ。
「しかし、B.o.Bさんですか……私はお姿を拝見したことがないのですが、いったいどのような……」
「マルチーズとヨークシャテリアを足して二で割った感じです」
「なるほど……でしたらその特徴に合致する人物の目撃情報を探すことが先決ですね」
「……え、みんな今のでわかったの?わかってないの私だけ!?」
いや、流石に今のじゃ情報不足なのはちゃんとわかってるけどさ……とは言っても、他に表現しようがないんだよな。
あとはサングラスをかけてるのと、ヘッドホンをしてるのと……なんというか、成金のような風貌というべきか……あ、そうだ。
「似顔絵を描いてみますね。言葉で説明するより、そちらの方がわかりやすいと思うので!」
「名案ですね!私、紙とペンなら持ってきてます!」
「ありがとうございます、お借りしますね……どれ……」
確か、こう……こんな感じで、髪を上で結んでてだな。
「……ねぇ……スオウが描くの……?」
「ま、まずいですね……!」
「ああ……あいつはああ見えて、確か……」
あ、そうだ、確か後ろの方でも結んでるんだった。それでそれで、服はちょっとむっちりしてる感じで……あ、描き間違えた。まあ上から描き直せばいいか。
「えぇと、こういった場合ですと偏ったイメージが固着してしまうことがあるので、できれば特徴を書き出したり、写真を掲載するのが一般的かと思いますが……」
「その点については、むしろ心配いらないんじゃない?」
「その通りだ、そこに着いては心配いらない。ただそれ以前の問題ってだけ」
それで、最後にサングラスを掛けさせて……よし、できた!
「こんな感じです!!」
「……何これ、変なの」
「へ、へんなの!?」
ちょ、ちょっと予想外の反応が……?
「覆面でも被ってたの?この、目出しのマスクみたいな……」
「そこはサングラスですね。下の部分はその、毛の色が変わっていたので」
「……な、なるほど。これは中々、その……」
ふふん、お姉ちゃんたるものお絵描きだってある程度はできるのだよ。もちろんちゃんと練習したわけじゃないから、そんなにうまいわけでもないけど。
……うん、我ながらいい出来栄えだ。結構上手に描けた方だと思う。
「ヒフミさん、どうですか?」
「え!?……えっと、ですね……その……」
ヒフミ?なんで絵じゃなくて先生の方を見るの?現物を見てるヒフミと先生には、しっかりと見比べて描き落としがないか精査して欲しいんだけど。
「“……スオウ。本人のSNSに、今日の写真があるみたいだけど……”」
「……あらら」
むぅ、残念。せっかく描いたのに……でもまあ、それならこれは必要ないかな。
「……アズサちゃん。ひょっとしてスオウさんは、その……」
「うん、絵が……ド下」
「ど、独創的!独創的なんですね!」
アズサとヒフミが何やら話しているけど、何かあったんだろうか。というより、先ほどと比べて視線に、こう……生温かさと、少々の距離を感じるのだけど、気のせいだろうか。
多分気のせいだ、心当たりがないし。
「でも、写真があるならそれを使って聞き込みすればいいのよね?それなら」
「いや、それはまずい。B.o.Bの失踪は、主催者側としては外部に漏らしたくないはずだ。最悪、イベントの中止さえもあり得る」
「あ、そ、そっか……」
そこなんだよなぁ……単純な捜索なら聞き込みが出来るけど、今回の場合はそういうわけにもいかない。
とはいえ、幸いにして最後の目撃情報はすでに入手してる。
「ヘルメット団の方々曰く、彼女らが最後にB.o.Bを見たのはステージの上。楽屋に行くと聞いて、それっきりだそうです」
「なるほど……であれば、まずはステージから楽屋へ向かってみるのが得策でしょうか」
「け、けどその場合、不審がられないように気をつけないとですね……私たちの行動でB.o.Bさんの失踪がバレたら、本末転倒ですし……!」
「あ、そっか……」
ヒヨリに言われなければ危なかったな。なるほど、その辺りにも気をつけないと……うぅん。
「ま、そのあたりは行ってから考えるとしましょう。今はとにかく、何より行動です!えいえいおー!」
「お、おー!」
ヒフミとアズサ、ついでにアツコ。いつもよりも乗ってくれる妹が少ないことに一抹の寂しさを覚えつつ、ステージの方まで踵を返した。
◇
「んー……パッと見は、特に変わらないですね」
というか、むしろさっきより作業が進んでる気がするんだが。あの横暴さじゃしょうがないけどさ。
サオリのためだから特にやめる理由はないけど、設営の最中はいない方がかえって本人のためになる気がしてきた。
「おそらく、裏で動いているんでしょう。この場で彼の失踪を知っているのは、おそらく数人……」
「あぁ、なるほど……」
この中の大半はアルバイト、実際の運営とは無関係な側だ。それに、制御できる人数には限界がある。
だからこそ、敵を騙すなら味方から。末端の構成員には情報を与えずに、ひとまずは取り繕っているわけだ。それに淡い期待だけど、構成員に犯人がいた場合も炙り出せるし。
「……それで、聞いた話だと楽屋はこっちの道に向かうらしいですよ」
「海と真逆……」
「せ、せっかく海にきたのに、ちょっと残念だねぇ……」
それはそうだけど、かと言ってイベントを潰すというのも……そもそも、裏の世界とはいえ人が一人消えてるんだ。このあとも何も起こらない、だなんて根拠は、一切ないわけで。
「仕方ないです。足元に気をつけて、ゆっくり向かいましょうね」
ひとまとまりになって、林の方……楽屋へ向かう道を辿り、実際に歩いてみる。
「も、もう人がいっぱいいる……」
「ヘルメット団の人間ですね……下手に行動すると因縁を付けられかねないですし、少し様子見を……」
と、ここでタイムロスか……一筋縄で行くとは思ってないけど、ミカから与えられたミッションもこなさないといけないわけで。あんまり時間はとりたくないんだけ、ど……いや、待て。
「……サオリ。ミサキ。ヒヨリ。アツコ。前にやったあれ、覚えてますか?」
「……?一体、なんの話を……」
「あ……あれ……」
アツコは察してくれたみたいだ。さすが妹、ツーカーの仲ってやつだ。
「きっとあれ。あの、アズサの試験の時の……」
「……え……ま、待って。まさか『あれ』をやるつもり……!?」
「た、確かに理には適っています、けど……!あの時の服なんて、今持ってるわけ……!」
「今回は水着で大丈夫ですよ、きっと!見てください、あの中にも水着を着たヘルメット団がいるくらいですよ!」
そうそう、確か前世では不良の子にも水着イラストがあったくらいだし……きっと大丈夫だ。
「そんなこと言ったって、肝心のヘルメットは?」
「間に合わせですが、私とアツコには仮面がありますし……あとは、他のアリウスの子達から借りてきましょうか!」
「え、えっと、先ほどからなんのお話を……」
「いえ!ちょっといいアイディアが思い浮かんだので、ちょっとこっちで待っててくださいね!」
これなら今すぐにだってあそこのヘルメット団を退かすことができる。捜査の邪魔をすることにはなっちゃうけど、こっちには妹達にハナコ、先生だっているんだ。それに、アシリなら空中からの偵察もできる。
きっとただのヘルメット団員よりも効率的な捜索ができる、はず……!
「ちょっと……!私、やるなんて言ってない……!」
「ダメ……ですかあでででで!?じょ、冗談です!冗談ですから撃たないでください!!痛いです!!」
「ごめん、ちょっとムカついた」
くっ……!マユミとアシリ、あとヤコとかならこれで許してくれるのに……!
「……?みんなさっきから何の話をしているんだ?」
「あのね、サッちゃん……の時の、あれを……」
サオリは未だになんのことかよくわかっていなかったらしい。あの子はあの子で、察しがいいのやら悪いのやら。俺の正体を見破った慧眼はどこへ行ってしまったんだろうか。
「……なるほど、な……確かに、それなら……ミサキ、私からも頼む。手伝ってはくれないか?」
「……はぁ……サオリに頼まれたならしょうがない。いいよ、一緒にやってあげる」
ちょっとミサキ?お姉ちゃんのお願いはスルーなのにサオリは即オーケーってどういうことかな?
「と、とにかくっ!そうと決まれば、ヘルメットを借りにいきますよ!」
若干の不満を抱きつつ、アズサ以外のスクワッドを連れて林を離れた。
◇
それから、数分後。林の中にて。
「クソッ!!!どうなってやがるんだ、手がかり一つ見つかりゃしねぇ……!!」
「そう焦るな。そう簡単にわかりゃ苦労しねぇよ」
木へ拳を打ちつけ、苛立ちを露わにする赤いヘルメットの生徒。それを宥めながらも、焦る気持ちは同じく、互いに冷静であるとは言えなかった。
B.o.Bの失踪から、すでに一時間が経過しようとしている。癇癪や急用だとしても、まだ戻らないのはあまりに遅い。
なにより、彼はその態度はともかく、金に対しては誠実だ。既に報酬を支払われた依頼を反故にするなど、断じてあり得ない。
「本当に、最後に見たのはここなんだな?」
「は、はいっ!ここまで追いかけたところで、私たちも気絶させられて……!」
徐々に現実味を帯び始めた、最悪の結末。
「てめぇら、もう一回だ!!今度は人海戦術で、林の奥まで向かうぞ!!絶対迷子になるなよ!!」
振り払うように、強引な選択肢を取りかけたところで。
「ちょっと待ってください!」
「……な、なんだぁ?おまえら」
突如として現れた、多種多様な水着を着るヘルメットの集団。彼女たちに話かけられ、一瞬静止した。
「ヘルメット団です!!」
「みりゃわかるんだよ!!所属はどこだ!!」
「わ、ワタシタチハ、ソノ」
「パタパタヘルメット団です!」
明らかな嘘をつこうとした黒ヘルメットの生徒を遮り、代表して白髪の、ヘルメットと呼べるか怪しい仮面をつけた白髪の女が話しかけてきた。
「パタパタヘルメット団……トリニティのか!!話は聞いているぞ!!温泉開発部、そして不良集団との抗争に勝利し、ゲヘナまでシマを広げたというあの!」
「……まあ、間違ってはいないね」
無論、これらはヘルメット団ではない。ヘルメット団に扮しただけのスオウたちだ。
だが、パタパタヘルメット団は現実として存在する。
彼女たちがゲヘナでの一件の手柄を自分たちのものにしたこと。偽りが露見しないように、その時特に目立ったスオウ、サウ、サオリたちに寄せた服装をしていること。それらはアリウス分校にいた頃の時点で、調べがついていた。
「その白髪……そうか!お前が枯水の英雄か!」
「こす……?そ、そうです!!私が七十七番街の戦いを制し、温泉開発部を下した英雄です!」
「そ、そうなのか?そこまで詳しい場所は知らなかったが……」
「ま、また変なあだ名増やしてますね、スオウさん……」
若干のすれ違いは起こしながらも、なんとかヘルメット団を演じきり、かろうじて信頼を勝ち取った。
「しかしパタパタヘルメット団が来てくれるとは心強い。実は今」
「事情はわかっていますよ!だから情報を教えにきたんです!」
「一体、どんな……」
「B.o.Bさんの新しい目撃情報です!場所へ案内します、私たちに着いてきてください!!」
「ほ、本当か!?助かるよ……お前ら、着いてこい!」
多少強引ながらも話を進め、強制的にヘルメット団を連れ出すスオウ。
本来であればまだ疑うべきところだろうが、彼女たちは人を疑うことを知らなかった。よく言えば純粋であり、悪しように表現するなら賢くないのだ。
「チョロい」
「ん?なにかいったか?」
「いーえ、なんでも!さっ、行きますよー!」
そうして林を離れた隙に動く、数人の怪しい影。
「ほ、ほんとにうまく行きましたね……」
ヒフミたちを始めとする、捜索組の別働隊である。
「もちろんだ。スオウだから」
さも自分の手柄であるかのように、誇らしげに慎ましやかな、スオウよりも僅かに大きい胸を張るアズサ。その翼はパタパタと小さくはためいていた。
「“ヘルメット団に変装するなんて、考えたね”」
「以前も同じことをしてたから、その時の知識を使ったのかも。アリウス分校で学んだことが、こんなところで役に立つとは思わなかった」
呟きながら、林の奥へ、奥へと歩みを進める。そう大きくもない、風を凌ぐためだけに植えられた人工林といったところだらう。
しかし、入ってきたはずの道はすでに光が小さく映し出されるだけ。夜ならば、もしくは明らかな道がなければ、迷子になることは容易い。不安感をあおる、不気味な雰囲気だった。
「……ねぇ。ひょっとして、試験の時助けてくれたのって……」
「ああ、スオウたちだ。わざわざヘルメット団に変装してまで、私たちが無事に試験を受けられるように、って」
「……そうだったんだ」
コハルにとっては寝耳に水、あまりにも予想外の事実。なにせ、彼女たちは何も語らなかったからだ。
もしかすれば、彼女たちが助けたのは自分なんかではなく、アズサただ一人だけなのかもしれない。それでも恩に着せることもなく、ただ何事もないかのように接していた。
「……意外と、優しいヤツらなのね」
「意外……そうか、意外だったか……」
「あ、ごめ、そ、そういう意味じゃない!ただその、びっくりしただけっていうか……!」
少々焦りながら否定していると、その会話を嬉しそうに、少し生暖かい目で見ていたアシリが、ふと何かに気づく。
「……ん?あれ……ね、ねぇ。じゃ、じゃあなんで、私って爆発させられたのかな……?わ、私も、その……助ける対象に、入ってたりは……」
思い出すのは、ぬいぐるみを持ち帰り、そしてそれが爆発物であったという苦い記憶。
スオウたちの強さは、他でもない自分がよく知っている。何せ、それを目の前で見てきた。だからこそ、思わずにはいられないのだ。
あの場面、自分も助けられたのでは?と。
「……私は、その場にいなかったから……言及は避ける」
「うぇーん!!?」
アシリが誤解に誤解を重ね、いよいよ大泣きし始めたところで。
「何変なこと言ってんですか、アズサ」
「あ、スオウ。おかえり」
スオウが戻ってきた。無論、サオリたちも一緒に。
「ただいまです。まったく……あの時は私も、ちょっと予想外のことが起こってたんです。爆弾の場所がわからなくて……」
「そ、そうだったんだねぇ……じゃ、じゃあじゃあっ!わざと私を助けなかったわけじゃないんだよね!?」
「当たり前じゃないですか……というか、あの場面ではアシリのばくは、んん。行動に、私も助けられました」
危うく「アシリが爆発してよかった」という意味に捉えられかねない言葉を訂正しつつ、各々仮面とヘルメットを外した。
「ヘルメット団の方々は?」
「適当な林で撒いてきました。電波こそ通じますが、今頃みんな迷子ですよ」
少し申し訳なさそうに微笑みながら、スオウはいきなり地に両の手をつけ。
「それじゃあ、捜査を始めましょうか!」
そんなことを言いながら、這いつくばったまま道を進み始めた。
「“……えっ……と……す、スオウ……?”」
「どうしました?」
はっきりと、一言で言おう。側から見れば変態である。
「あら、素敵ですね。私もご一緒させていただきます」
そんなことは気にすることなく横で同じく変態行為を始めるハナコ。最初はスオウも特に気にしていなかったが、ハナコの生暖かい視線に気づき、その意図を理解する。
「ちがっ、違います!!違うんです!!」
今のハナコを見てみれば、四つん這い。しかしその頭が地面によっていることにより、まるで臀部を強調し、突き出しているかのようなポーズ。
ただでさえ露出が多く、下着と判別がつかない水着に身を包んでいるというのに、加えて恥ずかしいポーズまでしていた。何より、今それを指摘したのは先生だ。
先生にも、『少し危ういポーズ』として見られていたという事実に、スオウは羞恥から顔を真っ赤にした。
「そ、そのっ……!B.o.Bさんの匂い、残ってないかなって……直にかげば、かろうじてわかるので、ほ、本当にそれだけなんです!別に私はそん、そんな、変態みたいなことがしたかったわけじゃ……!!」
「……なんか私、あの人見てると落ち着くかも」
「同意だよ……」
真っ当な
「いいんですよ、恥ずかしがらなくて。大丈夫ですから、もう少し趣向を凝らしてみませんか?実は私の荷物の中に犬用のくび」
「ダメーッ!!!」
エスカレートし始めたところで、コハルの静止が入った。
「アンタ馬鹿じゃないの!?なんで他校の人にも迷惑かけてるのよ!!そういうのはその、私たちの間だけならまだ冗談で済むけど……!」
「あら、独占欲でしょうか」
「真面目に聞け!!」
「……そ、その……どうでしたか?匂いの方は……」
コハルのお説教が始まったところで、ヒフミが話を進めるべく動き始めた。顔を赤くして惚けているスオウに声をかけてなんとか現実まで引き戻し、何か手掛かりがないかと尋ねてみる。
「え、は、はいっ!え……と……ほとんどは海水や、土や、人の足の臭いでしたが……それらに混ざって、焦げたポップコーンのような香ばしい匂いが……おそらく、B.o.Bさんはここを通ったはずです」
少々独特な表現ではあるが、端的に表すと犬の肉球の匂いだ。
明らかに常人のそれを超えているスオウの分析に少々驚きつつ、ヒフミも何か匂いがしないかと試しては見るのものの、ただ土臭さを返すだけだった。
「ヒフミ、アレは真似しようと思って真似できるものじゃない。スオウは元々身体能力が高い上に……複雑な事情で、五感は特に鍛えられてるから」
特別な事情。アリウスでベアトリーチェを欺き、そして殺すため。そんな苦い記憶に由来するものであるため、アズサは少し言葉をはぐらかした。
「そ、そうなんですね……今はアテがそれしかありませんし、頼らせてもらいます!」
「はははっ、もちろんですよ!お姉ちゃんに……いえ、水着お姉ちゃん探偵に任せてください!」
「いきなり何言い出したの、この馬鹿」
そう言って、スオウは再び四つん這いになり。
「……でもその、できればあっち見てくれてると嬉しいです。……特に、先生は」
半目で顔を赤くして苦笑しつつ、そっと反対側を指差した。
◇
「すんすん……すんすんすん……」
んー……この辺はまだ匂いがする……ゆっくりとした進行だけど、今の所はこれが確実だし。もう少し、進めるとこまで進んでみるか。
……ハナコめ……余計なことに気づかせてくれやがって。あれがその、ちょっと……えっ……もういい。
「……ん?」
ん、この感じは……匂いが、薄い……?なくなったわけじゃない、多分左に……でも、こっちは。
「あら……?匂いはそちらに向かっているんですか?」
「はい。まず間違いなく」
「で、でもそっちって……」
俺の目の前にあるのは、草むら。道から外れて、林へと向かう道だ。
「わざわざ道から外れたってこと?一体なんのためにそんなこと……」
「マーキングのためとか……ご、ごめんなさい!なんでもないです!!」
……まあ、アシリのおかしな、もとい可笑しな発言はさておき、だ。道を外れたのは事実として、それがなんでか、っていう話だ。正直、俺も確実に嗅ぎ分けができてる証拠なんてないし。
「……やっぱり、私が間違えたのかも」
「あ、あのっ!……そこ……土の色が、変わってます……」
「……え?」
遮ったヒヨリの言葉に、地面の方。草むらの奥の奥まで目線を送ってみれば、よく目を凝らすと、そこには掘り返されたような、もしくは何か強い圧力がかけられたような。そんな跡があった。
「……本当だ……よく気づいたね。ヒヨリ、お手柄」
「え、えへへ……」
「ってことは、こっちの草むらに、っと」
草むらをかき分けようと触ってみると、明らかに本物の草ではない、人工物の感触が混ざっている。これは。
「……作り物の草が混ざってますね」
「あら……つまり考えられる可能性としては、こういうことでしょうか?」
パン、と、ハナコが軽く手を叩き、草を枝ごとパキ、と折って話し始める。
「本来のB.o.Bさんの道はあちら、楽屋の方です。一本道、迷う余地はありません。ですがここに道を拓き、新たな一つの道とした」
草を軽く押しのけると、その奥には確かに、いくらかわざとらしい痕跡がある。道のような痕跡が。
ハナコの考察が的中している、そのことを裏付けていた。
「そして残った正しい道は、人工の草で塞いでしまった。バレないように、徐々に、徐々に変化させながら」
あった枝を道のど真ん中にぐさっと突き刺して、こんなふうに、と言わんばかりに、両手を軽く広げて見せた。
「“……だとしたら、こっちに”」
真っ先に道へ入った先生に追従し、道のような痕を辿り続ける。杜撰なことに、幾らかの足跡が残されていた。肉球のような足跡も、等しく。
歩き続けていると、そのうちに道は消え、行き止まりに辿り着き。
「……決まりだ。お前の言うとおりだったな、浦和ハナコ」
「あら、当てずっぽうでしたが……予想外ですね」
そこに残されるのは、幾らかの銃痕。
「あ、こ、これ……!」
砕け散った銃弾の破片や、明らかに生徒のものではない、獣人の毛の一部が見つかった。つまり、そういうことだろう。
「B.o.Bはここで襲われ、そして誘拐された……!」
……まずいな。これ以上痕跡や証拠は発見しづらい。これじゃあ、ここで一旦手詰まりだぞ……!?
新年、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
新年早々更新遅れて申し訳ないです……!!ちょっと……!!実家の方で、やることたくさん……!!
新年の抱負は、更新頻度を戻すこと!頑張ります!