「うーん……」
まずいなぁ……B.o.Bが誘拐されたって事実が確認できたのは良いとして、道はここで途絶えてるわけで。時間と人数をかければ一応見つけれはする、けど。
「……誘拐である以上、あまり悠長にはしていられませんね」
なんだよなぁ。かといってヴァルキューレに任せることもできないわけで。
「……うだうだしてても、しょうがないですね。痕跡をたどりましょう。多少時間がかかれど、それで確実に」
『ピィっ!!』
途中まで話して、合成音声のような機械音に阻まれる。鳥の鳴き声を模した、煩わしい囀り。
「ちょっ、ぴ、ピーちゃん!?」
『ピィイッ!』
「痛い!突かないで!?痛いよぉ!?」
……あの機械、本当は中に人が詰まってるんじゃないだろうな。サイズ的にはあり得ないけど、あまりに振る舞いが人間らしすぎるというか……まあ、アンドロイドが普通に生活してるキヴォトスじゃ今更か。
「だ、大丈夫ですか?」
「わっ、わかんない……この子がマユミちゃん以外の人をつつくなんて、今までほとんどなかったのに……」
マユミは一体何をしたんだろうか。話を聞いた感じ相当恨まれてるっぽいけど……というか、だ。
『ピィイイイイ!!』
「どう、どう。大人しくしてください……えっと、話を続けて大丈夫……ですかね?」
「う、うん……ごめんね……?」
話を遮るとは不届な鳥だ……今夜あたり、焼き鳥にして食ってしまおうか。そうだ、海の家にあった七輪を借りて……。
『ピギャアアアア!!ピアアアアッ!!』
「ぴ、ピーちゃんが今まで聞いたことない声で鳴いてる……!?」
「ブチギレてますね……ほれ」
「触るんじゃねぇよ穴ぶち抜くぞ」的なニュアンスを感じたので手をぱっと離してみると、怯えた様子でアシリの元へ向かい、そしてカメラを手渡した。脚で渡すことを手渡すと言うのかは知らないけど。
「な、なんで今カメラ……?ひょっとしてピーちゃん、何か見つけたの……?」
『ピィ!』
「ちょ、ちょっと時間もらってもいい……?」
アシリの質問に頷いて返すと、カメラを操作する電子音が静かな空間に響く。ピピっと二回、三回ほど操作する音が聞こえたところで。
「……なにこれぇ?」
アシリが気の抜けた声で、そんなことを呟いた。
「私にも見せてもらっていいですか?」
「あ、待ってね、今モモトークで共有するから……」
少し待機してシャッター音の後、アシリから全員に向けて写真が送られてくる。カメラの画面をそのまま写した、簡易的なスクリーンショット。少し画質に問題があるように思える写真。とはいえ、それは特段問題にならなかった。
問題なのは、被写体そのものの方で。
「……なに、これ……森?」
「た、多分、私たちが今いる場所……だと、思う。それを真上から撮ったら、こんな感じに……」
ああ、なるほど……ここの林を全体が入るように撮ったのか。相当高くまで飛ばなきゃできないだろうに、いつのまに……しかし、だ。
「こ、これがつついてまで見せたかったもの……なんですか?」
「みたいだね……」
「え、えっと……それは、なんと言いますか……」
ヒフミが言葉を選ぼうと四苦八苦していると、コハルが横から容赦なく口を開いて。
「故障してるんじゃないの?そのポンコツ」
『ピィッ!?』
情け容赦ない言葉を言い放った。なかなか酷いこと言うな、コハル……いや、気持ちはわからんでもないけどさ。
「うん、そうかも……あとでマユミちゃんに見てもらった方がいいのかな……ピーちゃん、大丈夫?」
『ピィッ!!ピィイッ!!』
「い、痛い痛い痛い!突かないでぇ!?」
アシリが半泣きになるのを傍目に、ふむ、と、口元に手を添えて考える。
あのピーピー鳴いてる鳥の戯言だと言うなら別に問題ないけど、仮にもあのマユミの発明品だ。そう簡単に故障するとも思えないし、そもそもセーフティくらいつけておくだろう。
であれば、この写真には何か意味がある、はずで……なんだけど、やっぱり眺めてるだけじゃイマイチわからないなぁ。
「……ここは、想像よりも狭い林なんですね」
うんうんと首を捻っていると、ハナコの呟きが耳に入ってきた。
……想像よりも狭い林、か。確かにそうかもしれない。浜辺から随分と歩いてきたけど、この先をもっと歩いていけば林が途切れて……道路がある……あ。
「そっか……なるほど、そういうことですね……」
「何かわかったのか?」
「はい。というか、考えてみれば単純なことでした」
真っ先に思いつくべき、というよりも、周りの環境で思い込まされていたかな。それとも、相手を舐めてかかってたか。
「この写真ので私たちの現在地が、ここ。で、私たちが来たステージ側の道がここなので、このまま真っ直ぐ進めば写真で言うところの上向きに進むことになります」
「……そうだな。そうすれば、道路に面して……ああ、なるほど。そういうことか」
うん、妹のみんなは気づいたみたいだな。あとはヒフミ達に説明すれば。
「B.o.Bさんが行方不明になったとして、その事実が共有されるまでにはラグがある。その時間までには、この場を離れたいはずですよね?」
「は、はい……」
「かつ、浜辺へ戻るのもリスクがある行為。それに、堂々と元の道を使うわけにもいきません。あそこは人通りも多いので。可能な限り、誰にも姿を見られたくなかったはず。であれば……」
スマホに指をそわせて、現在地から上に一直線。スゥーっと伸ばしていけば。
「あらかじめ用意させた車に乗り込んで、そのまま一気に場所を移動。恐らく、これが犯人達にとって理想的な動きのはずです」
「なるほど……よくわかんないけどなんとなく合ってそう!!」
「よくわかんないなら黙っとけばいいのに」
「酷い!?」
ミサキの酷い毒舌に苦笑いしつつ、ハナコの方に目を向ける。しばらくじっと見つめていると、誤魔化せないと悟ったのか、こっそりと人差し指を唇に当てて微笑んだ。
ハナコ、絶対わかってて言ったよな、あれ……見落としてたから、助かったことには助かったけどさ。
「で、でも、B.o.Bさんが車を使って誘拐されたなら、もう追跡することはできないんじゃ……!」
「……それは……まあ、確かにそうです」
せいぜいが、防犯カメラ等の情報から不審な車を特定したり……そんな捜査は、俺たちが可能な範囲を逸脱している。
……いや、シオならもしかしたら……かもしれないけど、妹に犯罪なんてさせたくないし。
「“一旦、ステージの方に戻ってみる?”」
「むー……そうですね。これ以上、ここで得られるものは多くはなさそうです」
ここを調査してたヘルメット団が戻ってくる可能性もあるから、あまり長居することはできないし。
ひとまず得た情報をヘルメット団に伝えて……その後の対応は、彼女達次第かな。偉そうなこと言っておいて、結局B.o.Bの発見には至らなかったけど……。
「……」
「サオリ」
「あっ、ああ!どうした!?」
……可愛い妹のためだ。お姉ちゃん、ちょっと一肌脱いじゃうとしようか。
「それにしても、物騒な場所ですね……」
「アウトロービーチだからねぇ……私やマユミちゃん、サユリちゃんも、ここに来たことがあるよ」
「……はぁ!?待って、あんた何やらかしたの!?」
思わぬアシリの爆弾発言に大声でツッコミを入れるコハル。でも多分、アシリが来た理由はそうじゃなくて。
「あ、う、ううん!えっとね、その……アリウス分校に近づくためには、やっぱり綺麗な手段ばっかりじゃ難しくて……ブラックマーケットと繋がりを得るために来たんだぁ」
懐かしいなぁ、などとぼやきながらどこか遠くを見つめるアシリ。その瞳は濁っていた。多分マユミ達に巻き込まれたんだろう。
というか、そこまでして俺を……いや、アシリはお姉ちゃんの一件も大きいかな。でもまあ、マユミはあの感じだと……ちょっと申し訳ないと同時に、照れ臭い。
「その時も誘拐事件なんていうのはあったね……不良間で抗争が起こって、その報復のために、みたいな」
「……なんていうか……古典的?」
「は、ははは……そうかもね。古風ゆかしいスケバン同士の争い、って感じで」
気になるなぁ、アシリ達の昔の話。この機会に、ちょっと詳しく聞いてみようか。
「“だとすると、この一件もB.o.Bへの報復……って、ことなのかな”」
「それは……どうなんでしょう……?」
「んー……ま、確かに各方面に恨みを買っていそうではありましたね」
横柄な態度といい、その肩書きといい……仮にも裏世界で長く生き延びてるんだ、汚いことも少なからずやっているだろう。裏世界で綺麗であり続けるなんて相当な覚悟か、目標がなければできないだろうし。
恐らく、あの人はそのどちらでもない。だから、B.o.Bが恨みを買ってても何も違和感はないんだけど。
「それにしても、また随分と回りくどい方法をとりましたね」
「回りくどい……た、確かに、誘拐するよりもその場で集団リンチにしてしまった方が楽ですもんね……!」
「ヒヨリ?」
どこで覚えてきたのそんな言葉。集団リンチって。
「邪魔されたくなかったんじゃないの?」
「……うぅん……?」
そんなことでわざわざ誘拐なんてするかな。
「誰かからの依頼、とかですかね……私もペロロ様のグッズがどうしても確保できない時は、近場にいるファンのお知り合いの方に確保してもらうことがありますし……」
「ああ、なるほど……」
ブラックマーケット内で出回ってる依頼のひとつ、と考えれば、そう違和感はないな。元々、互いに後ろ暗いことがある同士だ。その程度、平気でしてしまえるだろう。
「……もしくは……誘き寄せるためのエサ、とか」
「それは……ないんじゃない?私なら、不自然にならない程度に痕跡は残す」
「そ、それもそうですか……」
「会話が物騒すぎる……なんでヒフミとアシリまでそっちに馴染んでるのよ……」
コハルが真っ当な不満を漏らしながら、小さくため息をついて。
「大体、それならアウトロービーチでやる必要なんてないし。ただ祭りをめちゃくちゃにしたかったとか、そういうのじゃないの?」
「……ん?」
確かに、いくらアウトロービーチ……各自治区が手を出しにくい立地といえど、車で移動しているのだから、『捕まりにくくなるから』、なんてことは理由にならないだろう。むしろ自治区を跨ぐ分、そのリスクは増大するとさえ言える。
それだけの理由なら、ブラックマーケットで決行すればいい。
「……」
にも関わらず、この場所、このタイミングを選んだ。それも、入念な準備を整えて。ってことは、アウトロービーチだからこその理由があったってことだ。海を跨いで遠くまで連れて行ってしまうとか……ああいや、この辺から船は出てないんだっけ。
そうじゃなければ、コハルの言う通り祭りを滅茶苦茶にするため……なんのために?
「……コハルさん、コハルさん。犯人って、どんな人だと思います?」
「え、えぇ!?なんで私……」
「予想でいいですから」
「ん、んん……普通に不良なんじゃないの?というか、それ以外ないんじゃ……」
「私間違ってないよね?」と不安がるコハルを傍目に、再び思考を戻す。コハルの言う通り、『普通に不良』だったとしよう。だとすれば、そいつはヘルメット団である可能性は……そんなに、高くないはずだ。彼女達の真剣さを見れば。
だったら、ヘルメット団以外の不良ってわけで……それなら、祭りをめちゃくちゃにしたがる理由は。
「報復……」
アシリが言っていたように、報復。ってわけだ。にしても、ヘルメット団が大量に集まるイベントでそれは分が悪いと思うんだけど……ああ。だから誘拐なのか。
「スオウさん?先程から何か考えていらっしゃるようですが……」
……いや、まさかな?考えすぎだよな?一連の会話の起こり、記憶が正しければハナコだったんだけど……まあいいや。
「なんでもないですよ浦ワトソンさん」
「う、うらわとそん……?」
「わかった気がするんです。犯人の動機」
訝しみながらも、先ほどまでの思考をみんなに向けて説明し始めた。
◇
話し込みながら林を出て、浜辺に辿り着く。
「と、いうのが……皆さんの意見を加味した、私の考察です」
「“今の会話で、そこまで……本当に探偵みたいだね”」
「えへへ……」
勿論、他の可能性……それこそヒフミが言っていた第三者からの依頼や、もしくはB.o.Bへの私怨で、突発的に実行した計画の可能性も捨てきれない。けど、一番現実味と充分な根拠があるのはこれだと思う。
「……なるほど。確かに、筋は通っている……だとすれば、やることは決まりだな」
「はい」
犯人像が予想通りだったとして、じゃあ結局、B.o.Bはどこにいるのか?可能性としては、三つ。
一つ、とっくにアウトロービーチから遠く離れた、犯人達の拠点に連れ攫われた。二つ、林や海、どこか適当な場所に捨て置かれた。そして三つ、最も可能性が高いのは……人質として、犯人達が今も近くの臨時拠点で捕らえているか、だ。
「ここら辺にいない可能性は考えたってしょうがないし、ひとまず『近くで捕えられてる』って前提で動いて良さそうだね」
「はい。であれば、先の林の先にあった道路沿いの道から手分けして……」
手分けして、とは言うが、相手も戦闘慣れした不良である可能性が高い。何せ、こんなにも集まったヘルメット団に堂々と喧嘩を売るくらいなんだから。相当な手練がいたっておかしくないだろう。
それに、人質がいる以上下手には動けないわけで……可能な限り、大人数で動いた方が良さそうだな。
「ね、ねぇ!それなら、B.o.Bは見つかったってことにしておいた方がいいんじゃない……?」
捜索の手筈を整えていると、アシリが大きな声でそう言った。B.o.Bを、見つかったことに?
「どういうことですか?」
「あ、いやその、見つかったことにって言うか……元々影武者だった、ってことにしちゃって……それなら、犯人の人も焦るかなぁって……うぅ……!?ご、ごめん、やっぱり忘れて!!」
「いえ、良いアイディアです。ぜひそうしましょう!」
焦って向こうから姿を見せてくれるなら万々歳だ。現状の敵は、情報の少なさなんだから。
ヘルメット団は元々顔を隠してるからスパイも入りやすいし、そうさな……さっき海の家で話したあのヘルメット団の子に手伝ってもらうとするか。多くても、確実に自分の知り合いだと言い切れる人間にだけ事情を説明してもらって……ヘルメット団以外には、妹達に協力して噂を流布してもらおう。
内容は、『B.o.Bが連れ去られたけど影武者だった』として……よし。
「よし、それじゃあ今からやるべきことに合わせて組み分けをします!まず私と先生、ヒフミさんは海の家へ!事情を説明して協力してもらいましょう!」
「は、はいっ!」
「“わかった、協力させてもらうね”」
それと、犯人達の拠点探しだけど……これについては、やっぱり。
「犯人達の拠点の発見はサオリ、ヒヨリ、ハナコさん、アシリにお願いします!」
「あら、私もですか?」
「はい!」
「……そうですね。微力ながら、お力添えさせていただきます」
サオリはもとより分隊長、敵との読み合いには慣れている。ヒヨリも後方支援で独立して行動する時はその手の能力が必要になるし……アシリについては、ピーチャンとかいうので偵察ができるから選んだ。ハナコは言わずもがな。
「残るミサキ、アツコ、アズサ、コハルさんで妹達との情報の共有を!」
「い、イモウトタチ……?」
「コハル、スオウの言う妹達はアリウス生という意味だ。この程度で混乱していては今後が危うい、今のうちに慣れてくれると助かる」
「……ねぇ、あんたのお姉ちゃんって、本当……」
何やらアズサとコハルがヒソヒソ話していたが、聞こえんな。俺は何も聞かなかった。
本当ならアズサに拠点探しへ加わってもらってもよかったけど、人数比と……それから、コハル。人見知りなところがある彼女は、アツコとミサキだけではきっとうまく話せないと判断した。アズサを加えることで、コミュニケーションが円滑に……なるといいなぁ。
「それじゃあ、皆さん!やるべきことを終えたら、ビーチの荷物置き場……パラソルの下に集合でお願いします!」
とにかく、ようやく一歩先に進めそうだ。前提が賭けにはなるけど……今やれることは、きっとこれしかない。抗えるところまで抗ってやる。
◇
「いらっしゃいませー!!……って、なんだ、お前らか。何の用だ?」
うんうん、元気よく営業してるようで何より……まだ食べてないけど味は普通に良さそうだし、やっぱり最初から適正価格で売った方が良かったと思うんだけどな。
「まさかもう尻尾巻いて逃げ出してきたんじゃないだろうな?」
「い、いえ、そうではなくてですね……」
態度が威圧的なのは相変わらず、と……ちょっとは軟化すると思ってたんだけど。まあ、不良は舐められたら終わりなのだとサウが言ってたし、そういうものなんだろう。
それはそれとして。
「妹の友達を怖がらせないでくれませんか……?」
「わ、悪かったよ!気が立ってたんだ……というか、ヘルメット団に入ったのも元々こういう喋り方だったからで……」
「わかってくれたなら大丈夫です。それで、何の用か、ですか」
ため息を吐きながら焼きそばを作り始めたのは、お詫び代わりのつもりなんだろうか。少し期待しながらも、相手の反応を待って涎を抑えた。
「ああ。まさかまだB.o.Bは見つかってないとは思うが……なんでも良い、情報は得られたか?私たちの方は散々だ、捜索部隊が遭難してな……」
「“……あれ?それって”」
「わ、わーわーわーわー!!ソーナンデスネー!!」
ちょっと申し訳ないことしたなぁ……まあでも、それを補って余りあるだけの成果は手に入れて来た。
「それがですね……誘拐された場所と、おおよその犯人像がわかりました」
「……ほ、本当か!?正直ペテンかと思ってたけど、お前達本当にすごいんだな!?」
「う、疑われてたんですね、私たち……」
まあ、側から見ればだいぶ怪しくはあったと思う。ただそれは、あまりに都合がいいタイミングだったってだけで、だからヒフミ、そんなに落ち込まなくていいと思うの。
「それで?場所ってのは?」
「ステージから楽屋に向かう道に、隠し通路が作られていました。B.o.Bはそこに誘導され、連れ去られたものかと」
「なるほど、な……」
パック焼きそばを三つドーンと置かれ、「食って良いぞ」と言われたので、遠慮なく頂くことにする。
海での運動で疲れた体に、甘さもしょっぱさも、その両方が強いソース。内側から腹と心を満たしていくような味に、ほっと一息ついた。
「ふぁふぁふぃふふぇ」
「飲み込んでから喋れ」
「んっ……あんまり驚かないんですね?」
予想外の出来事だったろうし、もっと驚くかと思ったんだけど。
「まあ、予想してた可能性の一つではある……私たちでは、それを発見する手段に乏しかったってだけだ」
「ふむふむ……ヒフミさん、このソースいっぱいついてるお肉あげますね」
「あ、ありがとうございます……?」
おかしいな、ヨセやヒヨリならこれで喜ぶんだけど……妹の同年代とのコミュニケーション方法がわからなくて、お姉ちゃん不安……。
「何やってんだお前ら。それで、犯人ってのは誰なんだ?」
「お茶ください」
「あんまり調子に乗ってるんじゃねーぞ……!?」
「す、スオウさん、強請るのは流石に……」
「あ……そんなつもりじゃ……」
確かに今の流れだと強請ったように聞こえちゃうか。
「えーっとですね、正確に誰ってわけじゃないんですが……犯人はおそらく、ヘルメット団以外の不良。戦闘慣れしていて、参謀がいる。かつ、ヘルメット団に恨みを持っている集団だと思われます」
「……理由は、あとで文面に起こしておいてくれ。今聞いてもわかる気がしない」
「はい、そうさせてもらいますね」
実際口頭で説明するのは大変だったし、助かる。
しかしこの焼きそば、おいしいな……一人前だと俺にはちょっと多いかと思ったけど、この分なら食べきれそうだ。それはそれとして胃のスペースは残しておきたいし。
「先生、ちょっと食べてもらえませんか……?」
「“いいの?”」
「先生さえよければ」
……一瞬『あーん』みたいな動作が頭によぎったのは、もう考えないことにする。今はそんなことに心を乱されてる余裕なんてないんだ。
先生の皿に焼きそばを少し移し終えて、改めて向き直って。
「心当たりはありますか?」
「……ない、わけじゃない……というか」
「というか?」
「多すぎて逆にわかんねぇ……!」
「あ、あはは……」
だろうなぁ……ヘルメット団、相当大規模な団体だし。どこから恨みを買ってるかなんて、わかったもんじゃないだろう。
「……まあ、めぼしい団体はリストアップしておくから、それでいいか?」
「はい、助かります」
「こちらこそ、協力に感謝する。私たちじゃ、こんなにも早くここまで辿り着けなかっただろうし……それで、他に何かあるか?」
「あります」
というよりも、ここに赴いたのはむしろそっちが主な理由だ。
「簡単に言うと、ヘルメット団の中で攫われたB.o.Bは影武者だった、ということにして欲しいんです」
「……なんだそりゃ。どういうことだ?」
「犯人の方々が焦って行動する可能性があるから……でしたっけ?」
「そうですね。ヘルメット団の中にスパイがいてもおかしくないので、知っている人間にだけ実情を話してください」
「ふむ……わかった、善処してみよう」
あとは……まあ、こんなものか。特にヘルメット団側で入手できそうな情報はないし、ひとまずはこんなところで、と。サオリ達から連絡が。
『おおよそ、犯人達が身を潜めた場所に見当がついた。パラソルまで戻る』
……はっや。選りすぐりのメンバーだったとはいえ、いくらなんでも早すぎると思う。なんだろう、が一時間くらいで車の移動可能な範囲で絞ったのかな……なんにせよ、それならここにこれ以上いる意味もないな。
「それじゃあ、私たちはこれで。また何かわかったら教えますね」
「ああ、ありがとう。それじゃあ……お会計、千二百円になります」
「……は?」
今なんて言ったこのヘルメット団員。お会計千二百円?
「焼きそば一個四百円。祭りと考えれば、まあ良心的な値段だろう?」
「お金取るんですか……?」
「食って良いとは言ったが、金を払わなくて良いとは言ってないだろ?」
「……」
潰れれば良いと思う、この店。
「わ、私たち、お財布持ってなくって」
「冗談だよ。助けてもらってるヤツから金なんて取れるか。私の奢りだ」
「よ、よかった……」
タチの悪い冗談だなぁ……ま、焼きそばも食べたし心機一転。本腰入れ直して、また頑張るとするか。