ts転生者の生徒が、頑張るだけのお話。   作:おにっく

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You are my sisters!

 内乱から、一年近くの時が流れた。

 俺は今七歳。

 

 あの日以降、生徒会副会長…橘サリアの姿は、一度も見ていない。恐らく、殺されたのだろう。

 それだけじゃない。生き残り、拘束されていたであろう穏健派も、見せしめのように何人か殺された。

 

 ほとんどの人間が反抗することなくベアトリーチェに従い、反抗した人間は痛めつけられた。

 

 怒りで頭がどうにかなりそうだった。

 拳から滴る血も、歯にヒビが入る音も、何の役にも立たない。

 それでも、俺の正体は包み隠さなくては。

 

 配給される食料は少なく、七歳のこの身にはなんとか栄養こそ足りているものの、決して満足のいく量ではなかった。

 恐らく、負の感情を増長する目的もあるのだろう。

 

 目下の問題として、食料難もあるな。食事とは、幸福だ。

 

 俺のしばらくの目的は、みんなの苦しみを少しでも減らすこと。

 ベアトリーチェを殺す機会は、そう簡単にやってこない。それまでの間、何もせずに指咥えて見ているわけにもいかない。

 そのためには、アリウス自治区外の外に出る…最低限、食料の回収を任せられる程度に地位を得なくてはならない。

 

 戦力として認められ、地位を得るのは、本格的な訓練が始まったタイミングでいい。

 訓練などで、ベアトリーチェが視察することもあるだろう。

 そこでトリニティへの怨みか…もしくは、人生への諦めか。

 とにかく、ベアトリーチェにとって『使いやすい駒』である事さえ示せればいい。

 

 今下手に動いて、わずかにでも疑いをかけられるよりよっぽどマシだ。

 

 と、いうことで。

 今俺にできることを考えた。

 

 アリウス全体にとっての、最大の問題。

 『頼りになる存在』がいないこと。憎しみを植え付けられること。

 この二つだ。

 

 例えば、アリウススクワッド。

 サオリが姉のような立場だったらしいが、それ故にサオリは苦しみ…その苦しみをミサキが知り。

 自死によりサオリの負担を減らそうとするも失敗し、それがまた…という悪循環をもたらしていた。

 それをトリニティへの怨みに挿げ替えられ、結局は使い捨ての駒として利用されてしまった。

 

 つまり、ただ頼りになるだけの存在ではダメだ。

 

 おちゃらけていて、苦しみなんて感じることもなくて、でも皆を助けることができる。

 そういう『私』が必要だ。

 

 ベアトリーチェに、バレることなく。

 

「…まずは何にしても行動が大事、だよな」

 

 そうして、自室の扉を開ける。

 まあ自室とは言ったけど、廃墟を利用しているだけだ。

 一応、あのノートを隠す仕組みも完成してある。ノート以外にも、『例の物』が隠してあるけど。

 

「…これで、よし」

 

 足に枷と共につけられた発信機は、この一年で自力で外せるようになった。

 結構リスクのある行為だったが、最悪バレそうになったら爆弾で自爆して誤爆して壊れただのなんだの言い訳をするつもりだった。

 

 外出自体は問題ないが、俺があの場所に行っているのがバレたら、疑いをかけられかねないからな。

 ようやくある程度自由に行動ができるようになったわけだ。

 

「よい、しょっと」

 

 発信機部分だけを外した足枷を再び付け直し、目的の場所へと向かった。

 

 

 

 

 少し歩いていけば、ボロボロの荒屋が見えてきた。

 子供四人が暮らすには満足な、しかし決して大きいとは言えない小屋。

 その小屋の中でも特にボロボロな扉をノック…しようと、したのだが。

 

「あ゛っ…」

 

 力の加減がうまくいかず、穴を開けてしまった。

 メキッ、という音と共に指がめり込む。

 

「……ご、ゴホン…ごめん下さーい!!」

 

 返事は、ない。

 しまった、警戒されたか?

 

「…はいり、ますね?」

 

 そうして、勝手に扉を開けようとして。

 

「何者だ」

「…っ」

 

 後ろから銃を突きつけられる。

 前世で聞いたものを、少し幼くしたような声色。

 

 …この世界は、本当に『ブルーアーカイブ』の世界なんだな。

 先生が来るかは、まだわからないけど。

 

「何者だと聞いている」

 

 しかし、こりゃまずいな。

 第一印象最悪もいいとこだ。

 

 …いや、まだだ!今のうちに、『私』のキャラクターを定めろ!

 

「…お尋ね者です」

「意味合いが変わってこないか、それ…?」

「はははっ…ナイスツッコミ」

 

 いい。これでいい。

 大切なのは、コイツならまあ何があっても大丈夫だろうと、そう思われることだ。

 

「冗談ですよ。私の名前は桐花スオウ。あなた達に用があってきました」

「そうか。両手をあげて、ゆっくりと後ろに下がれ。素性がわからないうちは、通すわけにはいかない」

 

 しっかし、警戒心強いな。

 こういう生真面目さというか、みんなを守ろうとする思いが強いから、本編でああなっちゃったところもあるのだろう。

 

「…そう警戒しなくても、あなた達に危害を加えるつもりはありませんよ」

「信用できない。もう一度言うぞ。両手をあげて、ゆっくりと後ろに下がれ」

 

「まーまー…そう言わずに。お土産も持ってきたんですよ?爆弾、とか!!!」

「っ!!」

 

 手榴弾のピンを抜かずに(・・・・)、後ろを向いたまま少女…錠前サオリへと投げつける。

 一瞬怯んだ隙に振り向き、銃を蹴り上げて家の屋根の上にぶん投げる。

 

「はい、物騒なものは回収。改めて初めまして、サオリ。私の名前は桐花スオいたぁ!?」

「姉さん、無事!?」

「馬鹿!戻っていろ!」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ…何コイツ、危険人物?」

「き、危険人物ぅ!?」

 

 あんまりと言えばあんまりな呼ばれ方に若干素面でショックを受けながらも、なんとか体勢を立て直す。

 なるほど、棒で後頭部を殴られたのか。

 

「ち、違いますよ!!ミサキ!私危険人物じゃないです!」

「っ、なんで私の名前を知ってるの…?」

「お前だけじゃない…私のも知られていた。本当に何者だ…?」

「え、そんなの」

「う、うわぁああ…!?一体全体何が起こってるんですか…!?」

「…」

 

 …アツコはすでにハンドサインで喋っているのか。

 いや違う、状況を分析している場合じゃない。

 

 はっきり言って大混乱もいいところだ…!!とにかく、場を納めないと…!!

 

「す、ストーップ!!私敵じゃないです!!ほら、超安全!!」

 

 両手をあげて安全アピールをするものの、警戒心は解かれない。

 

「気をつけろ。さっきは後ろから銃を突きつけてる状態でも反撃された」

「え、えぇえええ…!?それってすごく強いんじゃ…!?」

「…」

「そうだね。反撃しつつ、逃げることも考えた方がいいかも」

「わぁ、まるで信じてないですね…!?」

 

 いや、落ち着け。

 こんなところで躓いてどうする。

 

 だが、第一印象造りとしては悪い方ではない。

 こんな一触即発の状況でもヘラヘラしてる、図太いやつ。

 そういう存在に『私』を仕立てあげればいいんだ。

 

「お、落ち着きましょう?人間は話し合える生き物です」

「お前が人間である保証がない!」

「酷い!?…いいですか、とりあえず自己紹介をします。銃を突きつけたままでいいから、話を聞いてください」

「…足りんな。ミサキ、縄を持ってきてくれ。両手足を柱に縛りつける」

「え、えぇ…!?容赦なし…!?」

 

 そんなこんなで大人しく柱に縛られ、銃を突きつけられながら会話が始まる。

 

「じゃ、じゃあ自己紹介から…改めて、私の名前は桐花スオウ。年齢七歳…です」

 

 …シアンとアンナの時は、二人の力を頼ろうとしていた。

 もう二度と、同じ過ちは繰り返さない。

 俺一人で、なんとかしてみせる。

 だからこの四人に、前世のことは伝えなくていい。

 

「そうか…で、何者だ。なんの目的でここにきた?」

「…私の目的、ですか」

 

 …頼れる存在。

 たくさん考えた。たくさん悩んだ。

 

 それでもやっぱり、これしかないと思う。

 大丈夫。きっとうまくいく。

 

「私の、目的は…」

 

 だから、これでいいはずだ。

 

「………皆の、姉になることです。というか、今なりました」

 

「……」

 

 流れる沈黙。

 サオリは何も言わずに、ゆっくりと銃を構え…。

 

「待ってぇ!?撃たないで!?ふざけてるわけでも嘘ついてるわけでもないんです!!」

「……ねぇ、姉さん」

 

 お、ミサキ…!?止めてくれるのか…!?

 

「下手に刺激するべきじゃないよ。二日も放っておけば、体力も落ちるはず。その後拘束を強めて」

「外道!?ダメでしょ、そんなことしたら!!」

「なんで私叱られてるの…?」

 

 …いや、仕方ない。

 ここは多少力を示しておくべきだ。

 元からそのつもりだったしね。

 何度も言うようだけど、この子達に必要なのは『頼れる存在』。だったら、ある程度強いやつじゃないと。

 

「フンッ…!!」

 

 手足に神秘を込め、思いっきり縄を引きちぎる。

 

「な、コイツ…!?」

「え、えぇ…!?」

「縄を…!?」

「……!?」

 

 ブチブチ、と音を立てながら縄が千切れたところで立ちあがり、改めて四人に向き直る。

 

「っ、三人とも、逃げろ!私が時間を稼ぐ、その間にこの化け物から…!!」

「いや化け物じゃないんですって…というかサオリ、人に化け物とか言っちゃダメですよ」

「だったら貴様は何者だ!!!」

「姉です!」

「違う!!!」

 

 即断された。

 まあ別に、これはそんなに急いでいるわけではない。

 ただ徐々に、徐々にでいい。信頼を勝ち取らないといけない。

 

 これは、アリウススクワッドのみんなに限った話ではない。

 アリウスの生徒…できれば同年代だけでなく、すべての子ども達を。

 

「絶対に、私の妹にしてみせます…!!」

 

「…くっ、ここまでか…!」

「大丈夫、姉さん。一蓮托生…私も一緒だよ」

「わ、私は逃げたいですけど……!」

「……」

「え、ええ…アツコちゃんも残るなら…!!」

 

 だから、今はこれでいい。

 

 大丈夫。

 

 俺はまだ、大丈夫だ。

 

「とにかく!!私の話を聞いてくださーい!!」

 

 大丈夫。必要なのは、頼れる『私』。俺になら、それが作り出せる。

 

 ベアトリーチェにバレないようにしながら。

 

 少しだけでも、絶対皆を救ってみせる。




すみません、更新が遅れました。
ぶっちゃけスオウちゃんの内面描写が結構難しいです。ふざけすぎてても、病みすぎててもダメなので…。

あと、今回の話を最後に毎日投稿ではなくなると思います。
読後感を損なってしまう恐れがあるので、詳しい説明は活動報告でします。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=300382&uid=431636
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