第15話、『八つ当たり』についてです。
あそこのスオウちゃん、追手を殺していないんです。
もうとっくに殺している、というのは、シアンとアンナを無茶な計画に巻き込んで殺したということです。
そのことを命乞いをする追手を見て思い出し、あの二人だって生きたかっただろう、子供だったのにという罪の意識と、怒りに任せて人を殺そうとしたという自己嫌悪で吐いてしまった感じです。
コメント欄を見返していたらふと、アレ?これ追手殺したって思われてる?と思いました。
そんなことなかったらすみません。私の早とちりです。
今はもう書き直しましたが、元の文ではこんな感じでした。
ショットガンで、頭を撃ち抜く。
気絶した。これだけでいい、はずだった
(中略)
もうとっくに。
ころしてるん、だった。
…いや、コレ普通に読んだら怒りに任せて気がついたら追手を殺してた、って思いますよね。
完全に私の描写不足、実力不足です。
言い訳になりますが、スオウちゃんの心情に臨場感を持たせるために状況の描写を減らしたことも描写不足に拍車をかけました。
この展開、いいね!となってお気に入り登録や評価をしてくれた方がいたら、申し訳ございません。
スオウちゃん、流石に命乞いをする子供を殺してしまうほどではないんです…そういう描写も入れておくべきでした。
第15話でもこの件については後書きで書いています。
話を読む前にお目汚しをしてすみません。前書きで触れておいた方がいいかと思ったので。
改めまして、本当に申し訳ございませんでした。
サオリたちと初めて接触してから、一月が経過した。
この一ヶ月間、俺はというと…。
『はじめまして!!姉です!』
『この地に眠る妹を求めてきた!!』
『お前も妹にならないか?』
『姉です!』
『姉です!!』
『姉でーす!!!』
…我ながら大分おかしなやつみたいになっていたと思う。
とはいえその甲斐あって、何とか現在俺が活動可能な範囲内で、全てのアリウスの同年代の子供に接触することに成功した。
反応はまちまちといった具合。邪険にされることもあれば心配されることもあったし、姉として認めてくれる子もいた。
今はこれでいい。信頼とは、実績の積み重ねだ。直ぐに成るとは最初から考えていない。
むしろ、フォローが必要なのは最初から姉として俺を認めてくれた子達。
それほどまでに、庇護してくる対象を求めているのか、家族に飢えているのか。いずれにせよ、とてもじゃないが健全な状態とは言い難い。
一人一人に合わせた対応が必要になってくる。
それから、ベアトリーチェ。アイツを殺すのは、今は無理だ。
アイツが持つ化け物のような形態に、おそらくは神秘の反転した恐怖…その複製品である、ミメシスに由来する頑丈さ。
少し強いアリウス生程度の力しか持たない俺では、返り討ちもいいところだ。
もし俺が負けたら?勝ったとして、逃げられたら?
そしてそうなれば…残ったアリウスの生徒たちはどうなる?殺せるかどうか不確定な状態でベアトリーチェに挑むのは、あまりにリスキーだ。
なら、いつなら殺せる?いつまでに殺さなくてはならない?どのタイミングが最適だ?
「…ふー」
自宅で『ノート』を捲りながら、情報を見返して考える。
わからない。わからないが、ただ一つ言えることは…ベアトリーチェ殺害の実行には、先生の存在の有無が大きく関わってくる。
この世界に、先生は訪れるのか?連邦生徒会長はどうなる?
先生が来るのならば、俺が万が一失敗し、ベアトリーチェに…殺されたと、しても。先生が、きっと皆を助けてくれる。
先程のリスクを、無視することができる。
だが、安心できる保証はない。
『…私のミスでした』
『私の選択、そしてそれによって招かれたすべての状況』
『結局、この結末にたどり着いてはじめて、あなたの方が正しかったことを悟るだなんて…』
連邦生徒会長と呼ばれる、キヴォトスのトップのセリフ。
このセリフから察するに、連邦生徒会長がいれば先生がいたとして、本編とは違う道筋を辿り…そして、破滅する可能性がある。
それらの事を統合して考えた場合、ベアトリーチェを殺す最適なタイミングは…。
「エデン条約締結のための、話し合いの時。ここしかない」
エデン条約。トリニティとゲヘナの不可侵条約。
原作では、発案者たる連邦生徒会長の行方不明により延期となっていた。
結局本格的に話し合いが始まったのは、先生が来て連邦生徒会長が行方不明になった一年後の話だ。
つまり連邦生徒会長が行方不明にならなければエデン条約は締結され…そして、先生の預かり知らぬところで、ベアトリーチェの悲願は達成される。
連邦生徒会長が行方不明になるか、否か。
前者であれば、どこかしかで先生と接触し、アリウスの生徒の庇護を求める。
後者であったとすれば、エデン条約が締結されたタイミングで先生と接触し、万全の戦力を以てアリウスの生徒を守ってもらう。
あと九年後か、十年後。先生と連邦生徒会長がどうなるのかわかるまで、ベアトリーチェの殺害は見送らなければならない。
ベアトリーチェの殺害に、子供を巻き込むつもりはない。
『ヘイローを破壊する爆弾』を使用されるリスクがある。
…もう二度と。二度とだって。誰一人子供を、死なせはしない。苦しませはしない。
「…ああ。そうだ。そうでなくちゃいけない」
絶対に。
だから、もしも先生が来なければ、その時は…俺一人で、この計画を強行する。
俺が一人で、なんとかしてみせる。
「…もうそろそろ、行かなきゃだな」
身に滾る不安も、焦燥も、恐怖も、全てを無視して『ノート』を閉じた。
◇
ノックをして、荒屋の扉を開く。
そこには藍色の髪の少女が立っており…。
「サオリ!!お姉ちゃんが来まへぶぅっ!?」
「帰れ!!!」
「み、水をかけないでください水を!!貴重な生活用水ですよ!?」
「…そこなの?怒るところ」
あ、ミサキもいた。
しかしこの水、なんか臭くないか…?
「大体!今日は来るって事前に言ってあったでしょう!?」
「だからこうして追い返せるように待機していたんだ!ミサキ!」
「はいはい…はいコレ」
そう言ってミサキから渡されたのは、火のついたマッチ棒…?
「え?なんですかコレぇああああああ!?熱い熱い熱い熱い!?」
このガキども!?さっきかけてきたの水じゃなくて酒かよ!!
どこで拾った!?
「はぁ…はぁ…人にいきなり火を点けてはいけません!火傷したらどーするんですか!!」
地面を転がって鎮火させ、しっかりとサオリとミサキを叱る。
「なんでしていないんだ…?」
「諦めなよ…そういう生き物なんだって、コレは」
「そ、そういう生き物…?お姉ちゃんですよ…?」
「違う」
「酷い!?」
…まあ、悪くない傾向だ。
『コイツならまあこのくらいしても怪我一つしないだろ』、くらいに思われてる方がいい。
「…ミサキ、火薬の残りってどのくらいだ?」
「多分、コイツを気絶させることもできないと思うよ…」
「そうか…残念だ」
俺への当たりは強くなる一方だけどね。
でもまあ、今日はその程度で引くつもりはない。
「さて、二人とも…アツコとヒヨリを呼んでもらえますか?」
「断る。お前のようなヤツに会わせるわけにはいかない」
「お姉ちゃんですよ?」
「ミサキ、やっぱり火薬を持ってきてくれ。ここから皆で逃げよう」
「いいけど、絶対何かしかの手段で見つけてくるはず…」
「…クソッ!」
いや、結構会わせてもらえないと困るんだけど…信頼を得るために目的も無しに会っていた今までと違って、しっかり目的があるからな。
「…まあ今回は、二人だけでもいいですけどね」
「…何をするつもりだ?」
「なーに、難しい話…いや難しい話ではあるんですけど。内容は単純ですよ」
「…?」
「お勉強のお時間です」
◇
「…と、いうわけで。こんな風に、掛け算を活用すれば簡単に計算ができるんですね。今日の授業はここまでです」
「………」
「……サオリ、生きてる?」
頭から湯気が出てるな…少しやり過ぎたか?
でもなぁ…あんま一人一人に時間かけられるわけでもないし。
教員に見つかる危険性がある上、他の子達にも同じことをしなくちゃいけないんだから。
「………なにをやらされたんだ…?わたしは」
「勉強ですよ、べんきょー。学生の本分でしょう?」
「いみがわからん……なんでこんなことを……」
いかん、サオリが疲れ過ぎて舌足らずになっている。
「なんのやくにたつんだ…?」
「え、料金の計算とか」
「……いらないでしょ」
ミサキが口を開く。
「なんで?」
「………それは」
「自分達は将来普通に生きられないって、そう思ってます?」
俺がそう口にした瞬間、サオリとミサキはその表情を翳らせる。
「…事実じゃん」
「………まあ、そうかもしれないですね」
ああ、その通りさ。
アリウスの自治区内で、ストリートチルドレンで。その上内乱が起こって…まだ知らないだろうが、トップは洗脳教育を施そうとすると来た。
確かに、普通に生きるのは難しいだろう。
でも。
でもな。
「無意味?無価値?えーそうですよ。その通りですよ」
「……はっきり言うのもどうなんだ?」
……やめておくか?
いや、言うべきだ。
「でも、そのために努力を辞めちゃ……最初から諦めてちゃ。できるはずのことまで、できなくなっちゃいますよ」
それは、掃いて捨てるほどある綺麗ごとで。
「足掻いてみりゃいいじゃないですか。その先に、何かつかみ取れるかもしれませんよ?」
慰めの言葉以上のものではなくって。
「それに、いつか役に立つもんですよ!こういうのも!」
具体性なんてなくって。
「…だからね」
それでも。
「………何をしても無意味って言うのは。何もやらないことの理由にはならないんですよ」
それでも…きっと、大切な言葉。
それでも、未来の、原作の彼女達が出した結論。
『
それでも、一歩前へと進むための言葉。
「……なにそれ」
「まったくわからん…」
「はははっ…まあ、今はそれでもいいと思いますよ。いつか、わかります」
この子達が、希望を持って生きられるように。
この子達が、『生徒』であれるように。
この子達が、トリニティへの怨みを、植え付けられないように。
『……それでも。私たちが育った、青春の学舎……なんスよ。それを顔も知れねえババアと、戦いが全てだと思ってるアホ共に……人殺しの養成施設に、変えられてたまるかっつーの』
……彼女の願いを。叶えるために。
「…また来週、やりますね?」
「……はぁ…わかったよ。今度は、アツコとヒヨリも呼んでくる」
「…そうだな」
先生の真似事だって。自称姉だって。全てが嘘だって構わない。
それでも。今の俺に、できる事を。
連邦生徒会長
・連邦生徒会という、キヴォトスの運営の中央を担う組織のトップ。
・先生がキヴォトスに来てから行方不明になっている。
・シャーレを設立したのも、先生を呼んだのもこの人。
恐怖
・神秘が反転したもの。
・曰く、神秘へと不可逆であり、表裏一体である。
・神秘と近しい性質を示す。