ts転生者の生徒が、頑張るだけのお話。   作:おにっく

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VS正義実現委員会

 爆弾を起動して数分も経たないうちに、校舎内から大量の正義実現委員が出てくる。

 

「…なァ。多くねぇか?」

「こんなもんですよ。腹立たしいことに、トリニティはキヴォトス最高峰の規模を誇りますから」

「わ、私たちだけでなんとかなるかな…?」

「あははっ。ツムギちゃん、リラーックス。…あの中に、強そうな奴はいないね」

 

 …ヨセは空気作りがうまいな。

 いるだけで、周囲の緊張をほぐしてくれる。

 

「さて…先ほど言ったように、今回の私たちの目的は時間稼ぎです。まずは圧倒して、ツルギ達を呼び寄せますよ。手前の半分は任せます」

「了解」

「まっかせといて!」

 

 最低限、ツルギを呼ばないと勝てないと思わせることが必要だ。

 だから…初撃は、ド派手に。

 

「いき、ますかぁっ!!!」

 

 地面を思いっきり踏み込み、加速して正義実現委員の集団へと向かう。

 

「は、早っ!?」

 

 目の前の生徒に軽く神秘を込めた爆弾を投げ、爆発する前に跳躍して踏んづける。

 

「ふんっ!」

「ぐぇっ!?」

 

 爆発の衝撃で空中へと大きく飛ばされ、正義実現委員の集団の真上に来る。

 

「ひー、ふー、みー…数え切れないですね。ゴミのように集まった、手羽先どもが」

 

 右の掌に握った、大量の小石。

 その小石に神秘を込め、耐久を上げる。

 

「でも、ま…面攻撃なら、関係ねぇでしょっ!!」

 

 そのまま下方向へと、小石を全力で投げつけた。

 

「痛っ!?痛い!!何コレ!?」

「ぐっ…!こ、小石を、投げたのか!?」

「なんて、馬鹿力…!」

 

 散弾状に広げられた小石の多くは正義実現委員の生徒に当たり、傷つけ、意識を奪う。

 シアンの戦い方を参考に作り出した、雑兵を処理するための技。

 

「っ…」

 

 罪悪感。その三文字が、ふと浮かぶ。

 ダメージを受けづらいキヴォトス人の肉体であろうと、子供を傷つけるなんて…絶対に、してはいけない、はずなんだ。

 

「ふぅっ…!」

 

 しっかりしろ。それでもやらなきゃいけねぇんだろうが。俺が。

 

 俺は…俺にできる、最善を尽くすだけだ!

 

「せいっ!」

 

 爆弾を使い、下方向へと加速する。

 

「う、撃てっ!」

 

 迫り来る銃弾を、片端に重りをつけたヘアロープをぶん回して防ぎつつ、地面へと着地する。

 

 衝撃で地面がひび割れ、舞い散る瓦礫。その瓦礫を横に蹴り、周囲の生徒へと当てる。

 

「なっ…こ、この化け物め!」

「ば、化け物ぉ?」

 

 随分といえば随分な言い草に軽くショックを受けつつ、ショットガンで残りの生徒の意識を奪う。

 

「さて、皆のフォローに…って、え?」

 

 皆の方を見れば、既に倒された正義実現委員達。

 

「…こっちは終わったから、小隊長のフォローに向かおうと思ったんだが」

 

 …アレ?今ので最後?

 

「小隊長、やり過ぎだよっ!」

「全くだ…どうすんだコレ」

「す、すみません…」

 

 まずい…数人はあえて意識を残しておいて、ツルギ達を呼ばせる作戦だったのに…!

 

「ま、まあ待っていれば増援が来るでしょう。問題ないですよ」

「小隊長…お前な…」

 

 サウが呆れたような視線を向けてきた、次の瞬間。

 

「サウちゃん、危ないっ!」

「あ?」

 

 ヨセがサウに体当たりをして倒し、先ほどまでサウがいた場所を銃弾が掠める。

 

「…っ、狙撃!?」

「第6分隊長、よく気付きましたね」

「なんかヤな予感がしたから」

「…」

 

 着弾した地点を見れば、地面が抉れるように削れていた。

 いくら神秘を使って武器を強化できる生徒でも、それに合わせて頑丈に作られているキヴォトスの地面をここまで破壊できるとは…これは…。

 

「お出ましですね。副委員長、羽川ハスミ」

「ッ…まずいな。テメェら、警戒しろ」

「先ほどは北から狙撃されたと考えられます。物陰になるように、建物へ隠れますよ」

 

 一見すると不利であるこの状況。

 しかし見方を変えれば、ハスミは今の一撃で誰一人倒せないまま自身の方角を把握されたことになる。

 

「第6分隊長、ハスミの場所はわかりますか?」

「うーん…ごめん、ちょっとわかんないや」

「大丈夫です。多分、もう狙撃位置は変えたでしょう」

 

 だとすれば、次の一撃は

「痛い!!?」

 

 いってぇ!!?撃たれた!!?

 もう狙撃場所を変更?否、であればコレは…!

 

「静山、マシロ…!」

「す、スオウさん!!?」

「ま、待ってて!今治療を…」

「し、心配ないですよ、ツムギ。大したダメージじゃないです。屋内へ入りますよ」

「そ、そう…」

 

 軽くドン引きされた。失礼な。

 

 屋内へ退避し、傷の様子を見る。

 

 マシロは力が強いだけあって、神秘を込めるのもうまいな。

 強がってはいるが、当たりどころが悪ければ少しの間無力化されたかもしれない。

 少なくとも銃弾の威力だけなら、ハスミともいい勝負ができる。

 

 …仮面は…割れてない、か。これなら問題なく使える。

 内部の発信機と盗聴器は、まあ無傷ではないだろうが、一応まだ警戒はしておくか。

 

「まずいですね…思ったよりも対応が早い」

「どうすんだ、小隊長。多分、戦力をこっちに寄越すだろ」

「さっきのは囮、という事でしょうか…?」

「どちらかといえば、戦力分析ですね。いずれにしよ、第1分隊長のいう通り一気に詰めるつもりです」

「んーっと、とりあえず私はどうすればいいかな?」

 

 ここに正義実現委員会の最高戦力を、最低限二人集中させたという事は…他の爆破地点、および自警団等との情報共有も既になされているはずだ。

 だからこそ、脅威であると判断したここを早く終わらせようと動く、はず。

 であれば、総合的に見れば計画の第一段階は成功、か…。

 

 まあ地形的に正義実現委員の本部付近だしな、ここ。

 そりゃ対応しやすい場所から対応するだろ。

 

「オーケー、問題ないです。まずは煙幕を焚きましょう。煙に紛れ、第6分隊長とサポート二人、あとスナイパーを数人を残して私たちは外へ出ます」

「…なるほどな。んで、敵の注意が私たちに逸れたところで…」

「私がハスミとマシロを叩くんだね!」

 

 …ヨセはこういう、戦いに関する事への理解力は高いよな。

 正直、敵に回したくないタイプだ。

 

「そういう事です。スナイパーは私たちと、発見次第ハスミ、マシロへの攻撃。私もできる限りのサポートはしますが、ツルギが相手になった場合できる余裕があるかはわかりません。頼みましたよ」

「りょーかい!じゃあマイちゃんとツムギちゃんが私のサポートね!」

「え、ええ!?嫌!」

「私が前線で戦うから、マイちゃんは敵戦力の分析と指示!ツムギちゃんは回復支援ね!」

「ま、まるで聞いてない…!!」

「マイちゃん…諦めよ?」

 

 …マイ。ツムギ。頑張れ…!!

 

 心の中で二人にエールを送りつつ、煙幕弾の用意を終え、外へ出る準備を終える。

 

「よしっ、準備完了。私が先に出ます。ヨセは狙撃を見て、大体の方角を確認してください」

「小隊長は大丈夫なのか?」

「頭に防御を集中させりゃ、気絶はしないですよ」

「…そうか。じゃ、任せたぞ」

「それじゃ、いっきますよー!!」

 

 そうして意気揚々と建物を飛び出した、次の瞬間。

 

「ツルギ先輩!!敵勢力を発見したっす!」

「ヒャハハッ!!?殺す!!!」

 

「……ワァオ。やっべぇ」

 

 即座に爆弾を取り出し、前方の集団へと神秘を込めて投げつける。

 

 僅かに怯んだ隙に敵集団の中に紛れ、狙撃を避け、ツルギへとショットガンを放つ、が。

 

「ヒヒッ…!速えじゃねぇか!!!」

「わー、化け物みたいすね…」

 

 あえなく避けられ、即座にこちらに向かって反撃をしてくる。

 

「くっ…!」

 

 ツルギとイチカ、同時は流石にまずい!!?

 

「第1分隊長!!!支援を!!!」

「わかってるっつーの!!!テメェら、行くぞ!!」

 

「のあっ!?まだいたんすね」

「イチカァ!!この白髪女は私がやる!!残りはテメェと他ので対処しろ!!」

「了解っす。任せたっすよ」

 

 オーケー、イチカとその他正義実現委員の注意はサウに逸れた!!

 

「皆、ハスミとマシロの狙撃には注意して下さい!!!他の正義実現委員の狙撃も警戒は必要ですが、多少ダメージになる程度です!しかしその二人の狙撃では、恐らく皆一撃で気絶します!!」

「ギヒヒッ!!!しっかり情報は収集してやがったかァ!!」

「お前は、一旦落ち着きやがれ、ですッ!!!」

 

 ツルギに突きつけられたショットガンを掴み、そのまま引っ張る。

 地面を蹴り上げ、宙に浮いて、ツルギの首に足をかけ、体重を乗せて地面へと叩きつける。

 

「ヒャハッ…!」

「一旦、場所を移しましょうかァ!!?」

 

 即座に自身の体勢を立て直し、ツルギを横へ蹴り飛ばす。

 

「フンッ…!!」

 

 神秘で強化した爆弾で加速し、吹き飛ぶツルギへと追いつく。

 聖堂のような建物にぶつかり、止まったところをさらに爆弾で追撃し、建物の壁を崩して奥へと吹き飛ばした。

 

「ふー…!さて、って、なぁ!?」

 

 瓦礫の奥から、いきなり大量の銃弾が飛んでくる。

 砕かれた建物の瓦礫が目に入り、一瞬怯まされてしまう。

 

「ヒヒッ!!」

 

 その隙を狙い、ツルギが建物の中から飛び出してきた。

 

「くっ…こなクソォ!!!」

「ヒャハァ!!!」

 

 これがツルギの厄介さか!!バーサーカーみてぇな性能してやがるくせに、戦い方がクレバー!

 さらには、肉体の治癒速度!!!

 

「お、らァ!!!」

「ヒヒヒッ…!!」

 

 お互い攻防を続けながら建物の中へと入り、様子を伺う。

 

「思ったよりも、強いですね…!」

 

 だがやるしかない。ツルギを消耗させる。

 俺の目的は時間稼ぎ。ただそれだけだ。

 

 室内では、ハスミとマシロの支援が届くことはない。

 で、あれば。一定の距離を保ちながら、攻撃を続けるしかない!

 

「よっしゃ、かかって」

「ケェハハハハハハっ!!?殺すっ!!!」

「っ、やばっ!?」

 

 飛んでくる銃弾を、柱の裏に滑り込んでなんとか避ける。

 すぐに柱は粉砕されて使い物にならなくなった。

 

「ヒャハハハアハっ!!!」

「近接戦闘をお望みですか…!!」

 

 迫り来るツルギの銃身をしゃがんでよけ、ショットガンを腹に突きつける。

 

「このっ…!」

「ギ…ヒッ!!」

「ぐぁ!?」

 

 撃った瞬間、顎下から強烈な膝蹴りを喰らわせられる。

 脳が揺れ、視界が揺れ。その衝撃のままに、宙へ吹き飛ばされる。

 

「くっ、そ!」

 

 空中で体を捻り、ツルギの横に蹴りを入れる。

 銃身で防がれるがそのまま押し込んで反作用で距離を取り、一時的に退避する。

 

「ギィっ…!!」

「ふっ…!」

 

 ツルギと同時に地面を蹴り出し、互いに距離を詰める。

 銃身で殴りかかるツルギに対し、一気に姿勢を低くして鳩尾に拳を入れる。

 

「ガッ…!」

「はぁぁあっ!!」

 

 一瞬怯んだツルギを、その場で一回転して蹴り上げる。

 地面を爆破し、その爆風で空中へと飛び上がる。

 

「まだまだっ!!」

 

 そうして追撃をしようとした、その瞬間。

 

「…ヒャハッ!!」

「ぐっ…!?」

 

 突然虚空に銃弾を放ったツルギが、その反作用により予想以上の早さで距離を詰め、ラリアットをするような形で地面に叩きつけられてしまった。

 

「死ねっ!」

「くっ、そ…オラッ!!!」

 

 馬乗りになって攻撃してきたツルギを自爆して吹き飛ばし、互いに距離をとる。

 

「ふぅぅ…!」

「ヒヒヒッ…!」

 

 互いに一歩も譲らない睨み合い。

 …やっぱり、キツいな。決着がつかない。

 

『小隊長、百合園セイアの居場所がわかった。どうする?』

「っ、第8分隊長」

 

 ツルギにバレないようにサオリの通信に応える、が。

 

「何、余所見してんだァッ!!?」

「ぐっ、はっ…!」

 

 意識を逸らした隙に懐に潜り込まれ、銃撃を喰らわされる。

 

『っ、戦闘中か…!相手は、ツルギだな?』

「え、え…!少し、待って下さい…!」

『了解した』

 

 このままでは、サオリの通信に応答する余裕もない。

 一時的に、ツルギを戦闘から離さなくては…だったら…!

 

「温存しときたかったけど…!」

 

 懐からハンドキャノンを取り出し、神秘を込める。

 ツルギにハンドキャノンを放って怯ませ、警戒しながら二階の座席のような場所へ移る。

 

「ヒャッ…!」

「来やがって下さいよツルギさん…!空中戦と洒落こみましょうや…!」

「ヒヒヒッ…!」

「ッ…!!」

 

 速いッ!だが、空中では…!

 

「でも、まぁこれで…!」

 

 流石に空中では何の策も思いつくまい。

 

 爆弾を取り付けたヘアロープを、空中のツルギに絡ませる。

 遠隔で爆弾を起動し、一瞬怯ませた。

 

「クッ…ヒャハハハ!!」

「く、そ…!」

 

 痛みに耐えながら頑丈さを活かしてツルギに爆弾を取り付け、その足にロープを結ぶ。

 ロープの端を持ち、ブンブン回して空中に浮かせる。

 

「ぐゥッ…!」

「チートキャラはっ…!ご退場!!しやがってくださいよぉ!!」

 

 遠心力ですっぽ抜けさせ、建物の窓ガラスを割ってそのまま吹っ飛ばした。

 

 トリニティの敷地外で爆発が見える。

 倒せちゃいないだろうが、時間稼ぎにはなるだろ。

 

「はぁ…しばらく戻ってこないでくださいね!いてて…!さて…」

 

 軽く応急処置をしながら、ヨセに通信を繋げる。

 

「第6分隊長、ハスミとマシロはどうですか?」

『マシロって方はなんとか気絶させたよ!!でも、ハスミはまだ!』

「了解しました。戻ってきて、ツルギの相手をお願いできますか?」

『え、ええ!?ちょっとツルギは厳しいよ…!?やられちゃうかも…』

「私がスクワッドと合流したら、スクワッドを向かわせます。それまでの時間稼ぎをお願いしてもいいですか?」

『それなら大丈夫!でも、ハスミは…?シオちゃん呼ぶ?』

「いえ、大丈夫。問題ないです」

 

 建物の外に出て、あえて屋上で姿を見せる。

 

「さて…」

 

 ツルギが負けたと考えたのか、即座に頭へと狙撃が飛ばされる。

 

「…流石、狙いが正確ですね。でも正確すぎて、かえって防ぎやすい」

 

 あらかじめ頭へと神秘を込めていたお陰で、気絶せずに済んだ。

 

 一度直接受ければ撃ち込まれた角度、狙撃箇所がよくわかる。

 

「…そこですね」

 

 ある建物の屋上。

 神秘で強化した目に、月明かりを反射するスコープが一瞬見える。

 

「ふー…」

 

 視線を向けず、悟られないようにしながら、ヘアロープを手持ち投石器の形へと結び、鉄の塊をセットする。

 

「お、りゃああああっ!!!」

 

 神秘を込め、全力で振り回して、ハスミのいる屋上へと思いっきり投げつけた。

 

 衝撃で屋上の大部分が削れ、抉れ、ほとんどその原型を留めなくなる。

 

『な、何今の音!?』

「今の音がした場所にハスミがいます。かなりダメージを負ったはずなので、残したスナイパーの皆でも対処可能です。ヨセは、ツルギをお願いできますか?」

『わ、わかった!!』

「あとはお願いしますね!」

 

 ヨセとの通信を切り、仮面を分解して盗聴器と発信機が壊れたことを確認した後、サオリに通信をかけ直す。

 

「第8分隊長、お待たせしました」

『お、終わったのか…!?』

「いえ、一時戦線離脱させただけです。私と合流したら、こっちのサポートに向かってもらえますか?」

『わかった。今から場所を伝える』

「お願いします」

 

 サオリに指示された順路を辿りながら、百合園セイアの元へと急いだ。




掲示板回、更新しました!
https://syosetu.org/novel/323622/2.html
今回はパヴァーヌ一章の感想スレになります。
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