これから、どうするのか。原作に従うのか、改変でもするのか。
前者なら、俺は何もしなくていいし、逃げたっていい。ただし、それは個人的な感情であまりやりたくはない。
後者は…後者はなあ…。いくつか…というか、かなり懸念点がある。はっきり言って、確実性が皆無だ。
まずそもそも、ブルアカ本編がギリギリの綱渡りすぎる。生徒の脚舐めなきゃ即バドエンとか、銀行強盗しなきゃバドエンとか予想できるかあんなもん。
…つまり、原作改変を行った場合何が起こるのか全く予想できない点が一つ。
そして、これが一番大きな懸念点なのだが…。
俺が今いるここは、『どの』世界線なのか、だ。
ブルーアーカイブの世界は、最低一回は繰り返している。プレイヤー間でよく予想されていたことだ。
実際、それを裏付けるだけの演出があったし、公式からの匂わせも多かった。
…俺が今いるこの世界は、本編なのか?どこかのループなのか?それとも…全く別のどこかなのか?
もし。もしも、この世界が本編以外のものなら。俺にできることは、きっとほとんどない。何より情報が少なすぎる。
一応、ここがどの世界なのか、確認する手立てがないわけではない。ただし、それがわかるのは十三、四年後。先生がキヴォトスに来たその時に、連邦生徒会長が行方不明になるか否か。
それも確実とは言えず、さらによしんば予想が合っていたとして、ここが本編の世界であることは保証されない。
正直…その条件で原作改変を実行するのは、怖い、な…。
「うぅぅぅうん…!」
どうすればいいんだ、これ…!?割と詰んでないか…!?
「大人しくしとくしか、ねぇのかな…でもなあ…いやけど…うがああああああ!もう知るか!」
もういい!どうせ原作通りにことが運ぶ保証なんざありゃしねえんだ!だったら最初っから大幅変更するつもりでやってやる!
もしそれに何の意味もなくても、何もやらない理由にはならない。ばにたすばにたす。ばにたすの心って大事。
「やってやんよド畜生…!」
そんなこんなで原作を改変することに決めた。そんじゃ、まずやることは…。
「内乱、やめさせてみっか!」
◇
内乱の打ち止め。ベアおば対策に、最も確実な方法。そもそもアリウスにこさせない。
ただし、それだけではあまり意味がない。ベアおばはここの施設に目をつけてるわけだから、何かしかの手段でアリウスを我が物にしようとするはず。クソババァめ。
多分、未然に防ぐのは無理。三歳にも満たないこの体じゃ何もできることなどないだろう。
かと言って三、四年後、内乱中だろうと子供であることには変わりないわけで…うーん、どうするか。何をするにも、時間が足らないな。
そもそも、ベアおばはどうやって内乱を収めたんだ?怪獣よろしくな巨大化能力でも利用して、過激派についたのか?物資の支援でもしたのか?
なんとなく本人の性格から考えて後者な気がする。
で、あれば、だ。物資の支援。それが俺にできるかもしれない、最大のライン。あらかじめアリウス内の物資を集めておく。それを内乱早々に提供して…。
「あ、多分ダメだわ」
今まで話したことがある人間を見るに、体感で過激派と穏健派は半々ぐらい。穏健派がやや少なめ。
物資の提供ができれば、そりゃ内乱は早めに終わる。ただし、ベアおばに知られる前に終わる保証がない。
万一ベアおばに知られたとして、そうなれば戦況は一転。あとは原作通りに話が進む。
「そうなると…なんとか、始まる前に止めたいな」
それができる方法は…トリニティにアリウスの居場所を教える、とか…?
…これは、できるだけ避けたいな。アリウス生のトリニティに対する負の感情を増長する恐れがある。つーか、多分そうなる。
「うーん…?」
結構難しいな、これ。
と、そこまで考えて、ドアがノックされた。
「ご飯の時間だよ〜」
「あ、はーい」
もうそんな時間だったか。今日はここまでだな。
ま、内乱の開始まで時間がないとは言っても、だ。あと三、四年はあるわけで。時間をかけて考えてみるか。
「…スオウちゃん?」
「い、今行きますっ!」
◇
食事を終え、自室に戻って一人考える。
…そういや、こうして十分に飯が食えるのって、この学校ではかなり幸福なこと…なんだろうな。
アリウススクワッドのみんなはストリートチルドレンだったわけだし。
三歳児の体由来の胃の容量の小ささも理由だろうけど。
「しーかーし、ねぇ…」
近くの棚から、ノートを引っ張り出す。
一歳になった時にお絵描き用に与えられた、表紙に何も書かれていないノート。
パラッとページをめくれば、ブルーアーカイブの時系列やら情報やら地形やら何やらが書かれている、この世界で一番の危険物。
原作の知識をできるだけ忘れないために、俺がメモしておいたもの。
地形に関してはスケジュール実行画面に載っている各校のイラストを参考にしたので、あまり信憑性はないけど。
「これがバレたら1発アウトだよな…」
死神のノートを使う某新世界の神とかってこんな気分だったんだろうか。
ノートが燃えるあの仕掛け、うろ覚えだけど後で作ってみようかな…。
まあ、今はそんなわけにもいかないし、ちょーっと拝借した遠隔爆弾を仕込んでるだけだけど。
「とにかく!」
バッと自室のトイレの中に入り、しっかりと鍵を閉める。
…いや、別に尿意を催したわけじゃないけどね!?
「んしょ…」
トイレの窓を開けて、外へとこっそり抜け出す。
この時間なら、三歳児である俺は寝ていると思われるはずだ。滅多に人が部屋に来ることもあるまいて。
しっかりとノートを手に持ち、アリウス分校の校舎へ向かう。
「情報集め、やったるぞい!!!」
そうして、頬を叩いて気合いを入れたところで。
「ぐえっ!!?」
近くで諍いでも起こっていたのか、頭に流れ弾に当たってぶっ倒れた。
「…はぁ」
ズキズキと痛む頭を抑えながら立ち上がり、再び歩みを進める。
こんな幼女も歩けば銃弾に当たる、住まうにはクソみてぇな世界だけど!頑張っていくしかねぇんだ…!!!
少し察している方もいるかもしれませんが、スオウちゃんは最終編を知りません。
時期で言えば大体2022年末〜2023年1月くらいに死んで転生した感じです。
今後わかるような描写を入れるつもりですが、一応ここで明言しておきます。
私は全編通して読んでいますのでご安心ください。