「ふ、ふぃー…あぶねーとこを助けられたッス、幼女。危うくあの怪力メスゴリラに殺されるとこでした。いいスか、近寄っちゃダメッスよ、やつの周りでは一定以下の筋肉量の者は塵芥と化すッス」
「ね、ねぇ!?何でそういうこと言うの!?この娘子供だよ!?信じたらどうするの!?」
「え、えーっと…」
どうしよう…!!
とりあえず止めたは良いものの…!
この人たちに見つかったのは非常にまずい!
ここからどこに漏れるかわからないんだ、最悪の想定としてしばらく部屋に監視がついたりしかねないぞ…!?
「んで幼女、何でこんなところにいるッス?」
「そ、そうだよ!この時間ここの子たちって外出禁止…だったよね?あなたは、どうしてこんなところに?」
…うん、ひとまず幼女のフリをしておこう。
「え、えっと、その…すごい音がしたから怖くなって…原因を、確かめようとして…ご、ごめんなさい…」
「…。ひゃー、逞しい子ッスねー。ほらどーすんスかシアンちゃん、アンタのせいでいたいげな幼女が怯えてるッスよ」
「私のせいなの…?」
そういえばこの生徒会長、新入生挨拶の時の威厳ある口調はどこへ消えたのだろうか?
こうしてみると、随分と印象が違って見えるが…。
「あの」
「うん?なんスか?」
「そちらの方って、生徒会長…なんですよね?その、ずいぶん印象が違うと言いますか」
「…う゛ぇ」
「あ゛」
んー?なんだろう、この妙な…やべーもんを見られちまったみたいな反応は。
「よ、幼女ぉ?ちょーっと待っててもらえるッスか?」
「え、はあ…」
後ろをクルッと振り向き、何やらコソコソ話し出す2人。
フッ、普通の幼女なら聞き取れないだろうが…キヴォトスつよつよロリ…うん、ロリ…の俺を舐めないで欲しい。
聞き耳を立てれば、その程度聞き取るの朝飯前だ。
「ね、ねぇどうするの?思いっきり私が威厳ないことバレたよ?」
「落ち着けッス…いいスか、内乱を止めるためにはアンタの緊張してる時に発するあの謎のカリスマが不可欠…穏健派をまとめ上げれば過激派にも対抗できるんスから…あの幼女にバレるわけにはいかねーんスよ…!」
「そ、そんなの私だってわかってるよ!でもでも、あの子すっごーい変なものを見る目でこっち見てたよ?漫画の、あの、ジト目だっけ?あれみたいな感じになってたよ?」
「だーから落ち着けっつってんスよ!!私だって必死に自分に言い聞かせてるんス…!!」
「そ、そうだったんだ…!」
…うん、事情は大体察した。というか説明してくれた。
でもこの2人…なんというかこう、色々おかしいな。
いや悪口とかじゃなくてさ。さっきのスライムA発言やらコブラツイストやら…アリウスの人間がそんなもの知っているものなのか…?
「どーするどーするどーする…!いっそここで始末してやろうッスか…!?」
「だ、ダメに決まってるじゃん!?相手子供だよ!?」
「じゃあなんかいい策でもあるんスか…」
「そ、それは…」
…ねぇ今なんて言った!?始末!?俺始末されるの!?
こいつらやっぱ信用できないぞ!!
どーする!?こっそり持ち出した煙幕弾で逃げるか!?
「ま、まァいいッス、相手は所詮幼女…しっかり言って聞かせりゃ問題ないはず…それに、幼女の言うことと生徒会長の言うことなら後者が信じられるはずッスし」
「そ、そうだよね!うん、きっと大丈夫!」
「シアンちゃんが言うと不安になるッスね…ま、気になることもあるッスし。ひとまず話して見るッスよ」
…うん、始末はされない、か。
よかったぁ…!!!
と、そこで二人はクルッと振り返り、こちらに向き直す。
「待たせたッスね、幼女。まずは自己紹介から始めるッスか。アリウス分校二年、生徒会庶務の
「え、えーっと…同じくアリウス分校二年、生徒会長の
「あ、はい、えと…」
これ、俺も名乗らないとまずいかな…?
さっきまで俺を始末するか否か相談してた奴らに名乗りたくないんだけど…?
いや、それ以前に。信用できるかもわからない人間に、俺がここにいたということを覚えられるのがまずいんだよな…。
「な、内藤…イクル、です…」
苦し紛れに出てきたのは、前世の名前。
もう二度と使うこともないのかと…いや、よそう。悲しくなってきた。
今は考えなくてもいいことだ。
「イクル…?ねぇアンナちゃん、そんな子この学校にいたっけ?」
「いねーッスよ。この子は
「なっ、え…!?」
こ、こいつカマかけやがった!!?
というか口ぶりから見るに全校生徒把握してる!?
小中一貫学校みたいなモンだから、結構人数いるってのに…なんつー暗記力だよ…!?
「えっと、あのね?スオウちゃん、だったよね。私たちは別に告げ口しようとか、そういうつもりはないの。だから、正直に話してくれると嬉しいな…」
「幼女が、偽名ねぇ…咄嗟に出てくるもんスかね…」
まずい。まずい!なんか疑われてるっぽいぞ!!?
…いや、冷静になれ。疑われてようがなんだろうが、今の俺は見た目だけなら幼女。
非常に不本意かつ俺にとってショッキングではあるが、事実は事実だ。
そして見た目が幼女なら、基本的に積極的に怯えさせようとは思わないだろう。変態不審者なら話は別だけど。
つまりここでの最適解は…!
「ひっ…!?ち、近寄らないでください…!!塵芥にされる…!!」
これだ!!さっき言ってたこと信じちゃった作戦!
「ねぇアンナちゃんどーすんの!?信じちゃってるじゃん!!!」
「…おい、幼女。アンタが何を誤魔化そうとしてるかは知らねーッスが…ここにいるのは一年生にして生徒会長の座に着いた
…やっべー…アンナとかいったけ?
完全に演技なこと見抜かれてる…こりゃ正直に話すしかないか…?
…いや、まだ早い。
「…えー、はい。その通りです。お、私のホントの名前は桐花スオウ。そして外にいたのにも、理由があります」
「へぇ…一体、何のために…?」
「…先にこっちに質問させて下さい」
「そりゃ内容次第ッスねぇ?現状アンタに関しちゃ意味不明ッス。私たちは、万が一だってイレギュラーがあったらまずい状況にいる…おいそれとはいもちろん、だなんて答えれねーッスよ」
「ねぇアンナちゃん、私完全に蚊帳の外」
本当のことを言うなら、この二人の人となりを知ってからでも遅くない。
いや、ぶっちゃけ生徒会長、シアンの方は裏表なくこれだろうけど。
だから、最初にしたい質問は…。
「スライムAってどこで聞いたんです…?」
「…ん?」
「え?」
「…そんな質問?」
「はい」
「…はー…緊張して損した気分ス」
気が抜けたと言わんばかりにわざとらしく両肩を落とし、深い溜息をつくアンナ。
いや、でもこれは滅茶苦茶重要な質問だ。
貴重なアリウスの外との繋がり。その一端を示す可能性だってありうる。
「んー…多少私たちの身の上話でもするッスか」
「はいはい!!!私がしたい!さっきから置いてきぼりだもん!」
「いいけど、余計なことは話すなッスよ」
「わかってるって!スオウちゃん、私たちはね!!昔、すっごく昔なんだけど…アリウスのちょっとだけ外に出た時に、とある漫画を拾ったんだ!!!」
「へぇ、漫画を」
…多分期待していたものは得られそうにないけど、一応続きを聞こう。
「それでね!その漫画がそれはもう、すっごく面白くってね!!?それをアンナちゃんに見せたらもうどハマりしちゃって!!王子様がやさぐれたお姫様を助けるお話なんだけど、普段王子様なんているわけないとか言ってるくせにアンナちゃん意外と乙女だよね!それから、二人でこっそり外に漫画とか、ゲームとか探しに行くようになったんだ!!生徒会長になったのも、それがもっとやりやすくなるようにってだけなんだけどね!」
「余計なこと言うなつってんでしょ!?」
あー、なるほど。大体わかった。この二人がおかしい理由。
本当に偶々だったのか。
偶然漫画を拾って、偶然ソレにハマった。
だから、普通のアリウス生とはズレている。
「でもっ、ここ一年くらい物騒でさ!みんなピリピリしてるんだよね!!」
「ちょっ!?」
「そしたら伝統を重んじる過激派と、逆の穏健派で摩擦が起こってたみたいでさぁ!!内乱が起きかけてるみたいで!」
「おい!!それ以上は」
「それじゃあ私たちも下手に外出れないじゃん!?それに子供たちが巻き込まれかねないし!だからなんとか、内乱止めようって思ったんだぁ!」
「このクソゴリラ…!!余計なことまで全部言ってくれやがったッス…!!」
…なんつーか、苦労してそうだなぁ、アンナさん。
でも、そうか…ちょっと自分本位なところもあるけど、この二人は…本気で内乱を止めようとしているのか。
「…なるほど…そうだったんですか」
…まだ、完全に信用できるのかはわからない。
この二人が、何か嘘をついている可能性だってないわけじゃない。
「…だったら、目的は私…いや、俺と一緒だな」
でも。
それでも、こうして目の前で見たものは、決して嘘ではない。
そもそも過激派はこういう偽り方をしようとしたって、無理だろう。
ただ漫画を読んだり、ゲームをしたいから内乱を止めるって、そんなの思いつくはずがない。
「同じ…?幼女、それホントッスか?つーか口調…」
「幼女じゃない」
だから。この二人に、賭けてみるべきだ。
ここがきっと、ターニングポイント。
どこかで誰かを選ばなきゃいけない。
アリウスの生徒会長に、頭が切れる庶務。それも内乱を止めようとしている。
こんないい条件、これから見つかる保証だってない。
だから、俺の全てをここで明かす。
「俺の名前は桐花スオウ。年齢六歳。精神年齢二十三歳。二人と同じで、内乱を事前に止めるってのが目的だ。協力してくれないか?」
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