「俺の名前は桐花スオウ。年齢六歳。精神年齢二十三歳。二人と同じで、内乱を事前に止めるってのが目的だ。協力してくれないか?」
「…は?」
「…え?」
「いやだから」
「いや聞き取れなかったわけじゃねーッス。…幼女、それ本気で言ってるんスか?ありえねー、嘘くせーとしか思えねーッスけど」
まあ、そうなるよなぁ…普通に考えて、信じる方がどうかしてる。
「マジマジ、大マジだよ。というか幼女って呼ぶな。証拠出せって言われたって難しいけどさ。話だけでも聞いてくれない?」
「ねぇねぇアンナちゃん!!ちんまいのに生意気な口調なのすっごくかわいい!」
「アンタちょっと黙ってろッス」
「静かに話し聞ける?」
「二人とも酷い!?」
いやマジで、最初はアンナの方が性格アレかと思ったけど、シアンの方が圧倒的に空気が読めない…というか、多分アホ。
真面目に話をするならアンナの方がいい。
「何を説明するにしても、俺の方の身の上話をしないとなんだけど…コレがなかなかオカルトチックっつーか、うん…」
「…まあ、とりあえず話してみろッス」
よしよし、話を聞いてもらえるだけでも僥倖だ。
「えっとね…俺、この世界とは別の世界で死んで…転生って言って伝わる?まあ、この世界にもっかい生まれたんだよ。元の世界の記憶を持ったまま」
「そういう漫画見たことあるよね!!」
「あることにゃあるッスが…そりゃフィクション、御伽話ッス。幼女の話を信じる理由にはならねッスよ?」
「わ、わかってるよぉ…!」
キヴォトスにも転生モノとかあるのか…なるほど、そういう基礎知識というか、前提があるのはありがたい。
話が進みやすくなるしね。
「んで、それだけなら良かったんだけど…その別の世界では、この世界で起きることをほんのちょっと観測できたんだ。それこそ、ゲームみたいに」
…うん、流石にこの世界が元々ゲームでーす、はまずい。
ただでさえあってないようなリアリティが削がれるし、よしんば信じたとして、恐らく本人たちの精神衛生上とてもよろしくない。
「観測…?」
「うん。軽くどんな出来事が起こったのかくらい。今から十年後くらいの出来事を知ることができた」
「十年後かぁ…私ももう二十七歳…きっと仕事とかしてて…」
「それで夜中一人安酒を飲みながらいつ結婚できるんだろとか言うんスよね」
「なんでネガティブな方向に持っていくの!?ねぇ!!?」
シアンが叫びながらアンナにつかみかかる。
…大丈夫かな?
アンナの肩からゴキって聞こえたんだけど。
「はーいはい、どーどー…んで、十年後とやらはどうなってるんスか?」
若干青い顔をしたアンナがシアンをあしらいながらこちらに向き直る。
「…内乱は、結局止められずに。ベアトリーチェという『大人』によって、この学校は支配されることになる」
「えっ…!?」
「んー、繋がりがわかんねーッスね。内乱が起きることとその、ベアトリーチェ?に何が関係あるんスか?」
「内乱で情勢がガタガタになったところを、ベアトリーチェが治めた感じ。多分過激派についたんじゃないかな?で、その後この学校は恐怖政治で、ソイツの目的に利用されることになる。人死にも出かけたよ」
「なーるほど…で、それが嫌だから、アンタも内乱を止めたい、と…ふむ、理解はできたッス」
「ねぇアンナちゃん。私全然わかんない」
横でシアンが頭から煙を出しているが、ひとまずアンナに理解してもらえたのは助かった。
…でも、問題なのが。
「理解はしたッスが…証拠はあるんスか?」
「…」
「この際、アンタがただの幼女じゃねぇことは認めるッス。精神年齢二十三歳ってのも、多分嘘じゃねーんでしょう。でもそれとこれとは話が別、私たちにとって未だ幼女が得体の知れないモンなのは変わらないッスよ」
…そこなんだよなぁ。
結局のところ俺が話したのは、何の意味もないものだ。
この二人は原作には登場しないし、原作では十年前のアリウスはほとんど描写されていない。
証拠を提示しようにも、なかなか難しいんだよな…。
「そう、だな…」
でも…!!これは本当に賭けだけど…!!!
この二人になら通用するかも知れない…!!!
「英雄神話シリーズ、って知ってる?」
「英雄神話?たしか七年前くらいから発売されてるゲームだったよね!」
「そうッスね…確かそんなモンッス」
「アレの最新作。今は零の軌跡だと思うんだけど」
「それは知らねッス」
「私たちが拾うゲーム、捨てられてるだけあって古いのが多いもんね…」
…計画がうまく行った暁には、この子達にはたくさんゲームを教えてやろう。
ミレニアムに転校したっていいかも知れない。
「えっと、そうなんだよ…そして、来年には新作が発売される…」
「…まさか」
「そう。来年発売の最新作、その名も英雄神話、碧の軌跡…!その内容は!!!」
「や、やめろォ!!?ネタバレすんなッス!!?」
「私たちまだ白き魔女くらいまでしかやってないよ!!!?」
そう、これこそが賭け。
原作、時計仕掛けの花パヴァーヌ編でモモイがアリスに勧めていた英雄伝説シリーズ……の、パロディである英雄神話シリーズ。
一応この世界はパヴァーヌ一章の十年ほど前であるから、パヴァーヌ一章が追加された2021年の十年前の英雄伝説シリーズ最新作が今この世界、この瞬間での英雄神話シリーズの最新作である…はずだ…!!!
まだ発売されてないゲームの予言をすることによる証明!!!この二人相手なら、それが通用するかもしれない…!
「お、おのれぇ…!!そうやって話をうやむやにしようったってそうはいかないッスよ!!」
「ほー、いいんだそんなこと言って?いいかよく聞け、碧の軌跡ではまたしてもクロスベル自治州が舞台になっていて…」
「や、やめてぇ!!?私は信じるから、確認するならアンナちゃんがして!!」
「なっ、このクソゴリラ!!!私に押しつけるつもりッスか!?」
…思った以上に効果てきめんだぁ…って、ちょっと待て、そんなに騒いだら…。
『何者だ!!!そこで何をしている!!!』
「!!やべっ…ゴリラァ!!お前のせいッスよ!」
「はぁあああ!?アンナちゃんの方が先に叫んだんじゃん!!」
「いや、言ってる場合じゃないだろ!?どーすんの!?二人はまだしも俺は見つかったらまずいんだけど!?」
「…ああ、それに関しちゃ問題ないッスよ。シアンちゃん」
「…はーい」
「貴様ら、一体なにも、ぐぇっ……!」
「………え?」
おかしいな。今の、教員だったよな?
結構強いはずなんだけど…シアン、銃すら使わずに一撃で気絶させたんだけど……!?
「…なんで、ここまで頭の弱いシアンちゃんが、一年生にして生徒会長になれたと思います?」
「頭の弱いは余計だよ!!」
「この子、緊張すると謎のカリスマを発揮するんスけど…それ以上に。アリウス分校で、最強だからッスよ」
「……ええぇぇ…!?」
迷いなく最強と言わせしめるって…どんだけ強いんだ…!?この人…!
「…まぁとりあえず、今日は解散するッス。また見つかってもまずいッスし。幼女、明日は訓練学校の視察と称してここに来るッス。昼間に校舎内にいるから、そこに来いッス」
「幼女じゃないっつってんだろ。…でもまあ、わかった」
「まだアンタのこと、全部信じたわけじゃないッスが…ただの幼女じゃないってのと、未来のことをちょっと知ってんのと…多分、悪いやつじゃねぇってことは信じてやるッス」
「私は全部信じていいと思うんだけどなぁ…」
「シアンちゃんは人を信用しすぎッスよ…」
「………ありがとう」
それだけでも、充分すぎるくらいだ。共犯者『候補』を作れただけでも、一気に行動が起こしやすくなる。
「そんじゃ、また明日ッス」
「じゃあね、スオウちゃん」
「…うん。また明日」
しかし…どちらも変人とはいえ、ゴリラ力最強の生徒会長に、自称超天才の生徒会庶務かぁ…。
ひょっとすると、これは…とんでもない二人に正体を明かしてしまったのでは……?
「…ま、いっか」
ちょっとした期待と不安を胸に抱きながら、自室へと急ぎ帰った。
◇
翌日。朝礼にて。
「えー、昨夜校舎内に不審人物が発見された。教員が一名気絶させられており、本人の供述によるとゴリラに殴りかかられたような衝撃が…」
「…」
シアンとアンナが、不審者として伝達されていた。
……やっぱとんでもない二人に正体を明かしてしまった…!!!
幼女の証明:幼女である完全な反証がなければ幼女であるということ。
時計仕掛けの花パヴァーヌ編
・ブルアカのメインストーリーの一つ。
・ミレニアムサイエンススクールと呼ばれる学校が舞台であり、ゲーム開発部という部活に焦点が当てられる。
追記:誤字報告ありがとうございます…!とても助かります…!