ts転生者の生徒が、頑張るだけのお話。   作:おにっく

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うそつき

 場所は少し離れて、トリニティ自治区内にて。

 

「アズサちゃん……」

 

 ヒフミが心配げな表情で、スマートフォンを見つめている。画面に映し出されるのは、モモトークのグループ。付けられた既読の数字は、たったの三だった。

 

「……今は、信じるしかありません」

「わかってます……でも……」

「……未読スルー。会ったら絶対文句言ってやる」

「コハルちゃん、面倒な女みたいになってますよ」

「わけわかんないこと言うなっ!!」

 

 いつもより少し火力が抑えられた、ハナコの冗談。緊張の糸が張り詰めていた場の空気が少し緩むのを感じた。

 

「アシリさん、柏有さんはまだ?」

「う、うん……トリニティ自治区にはもういるけど、設備の確認って……今は部室だよ」

「……流石ですね」

 

 これから起きるであろう事態。この調印式を利用して、アリウス生がトリニティに接触してくるはず。それを手助けし、追手や障害を払うのが自分たちの役目だ。

 

「山海経の子は、向こうで待機させてる。ヒフミちゃん、アビドスのお友達は……」

「せ、先生と一緒に連絡してあります!事態が事態ですし、ひとまずは受け入れてくれるらしいですが……そのあとどうするかはわからないって」

「……うん。それだけでも十分ありがたいよ」

 

 そうして最終確認をする二人を見守りながら、浦和ハナコは考えていた。

 今回の、アリウス分校の一件。調印式を利用して逃げ出す、それはいい。もしかすれば、調印式そのものを……破壊して、そのうちに逃げ出すつもりかもしれない。

 だが、違和感が拭い切れない。なにか、なにか大事なものを見落としているような。

 

「あれ。マユミちゃんからモモトークが来てた」

 

 そんな思考も、アシリの声で空虚に溶け出してしまう。

 

「マユミさんから?」

「う、うん……モモトークだし、そんなに大事なことじゃないかもだけど……」

 

 マユミとアシリ、加えてサユリには緊急回線が繋がれている。いついかなる時であろうと、情報を共有するためだ。

 そんなマユミがモモトークを使う状況は、大きく分けて二つ。アシリにとって、この上なくどうでもいい状況であるか。

 

「っ……!?」

「ど、どうしたの?何が書いて」

「スオウ脱獄。追跡中」

「っ……!」

 

 通信ができないほど切迫した状況であるか、だ。

 

「そんな……なぜこのタイミングで……!?」

「き、救援部隊が出されるかもって話だったんでしょ?それと一緒に逃げたんじゃ……」

「ですが、それは断ると本人は言っていました。勿論、心変わりしたという可能性も考えられますが……」

 

 場に再び、今度ははち切れそうなほどに満ちる緊張。

 

「とっ、とにかく私、マユミちゃんに連絡してみる!そしたら」

 

 それからくる静寂を打ち破るように、アシリが言葉を発しようとして。

 

「あ、あの」

 

 けれども震え上がるようなヒフミの声で、それは遮られてしまい。

 

「アレ……なんですか……?」

 

 次の瞬間遠方へ向けた瞳が、包み込むような赤と黒に染め上げられた。

 

「っ……!あの方角……!!古聖堂が……!」

「なっ……せ、先輩たちが!!」

「コハルちゃん、落ち着いてっ!今は外に出ちゃダメです!」

「で、でもっ!!先輩たちが!!!それに、先生も……もしかしたら、アズサだって!!」

「っ……」

 

 あの爆発の瞬間。誰もが頭の片隅で思い至りながらも、考えないようにしていた。キヴォトスの外から来た先生は、あの爆発には耐えられない。

 正義実現委員会の生徒。先生。場合によっては、白洲アズサ。その全てが危険に晒されている今、コハルにとって心中穏やかでないのは当然と言えよう。

 

「……状況が把握できないことには、動くのは危険すぎます」

「っ、で、でも!!こんなの、いつまで待ったって状況なんてわかるわけ……!」

「……コハルちゃん、任せて」

 

 その瞳を潤ませていくコハルに、アシリは優しげに話しかけて。

 

「ピーちゃんっ!!」

『ピィ!』

 

 どこに隠していたのか、機械でできた黄色い鳥を呼び寄せた。

 

「え……そ、そいつものが言えたの!?」

「う、うん、マユミちゃんが……ちょっとだけ自己判断できるくらいには、人工知能も搭載されてるって」

『ピィィ』

「……本当に?」

「うぅ、優先順位が私から離れないことになってる……!」

 

 肩に止まった黄色い鳥を優しく撫で付け。

 

「ピーちゃん、先生の座標を追って」

『ピー!!』

 

 アシリがそう言葉で伝えると、何かを察したかのように飛び去った。

 マユミが作り上げた音声認識さえ可能とする、彼女にとっての最高傑作。ミレニアムの部長各位に頭を下げ、技術を少しだけ習得し作り上げた一品。この鳥に秘められた機能を知るものは、そう多くない。

 

「……マユミちゃん。無事でいてよ……!」

 

 彼女のことを思いながらも、空へと向けた視線をみんなの方へ戻した。

 

 

 

 

「……よし、あった!これが今回の調印式の……!」

 

 燃え盛る会場の中、アリウスの生徒が瓦礫を退かしながら会場を漁っていた。

 

「ツムギちゃん、こっち!こっちにあったよ!」

「マイちゃん!流石っ!」

 

 燃え尽きていなかったかと、『契約』を司どるその薄っぺらな紙切れを覗き込んで。

 

「よ、よしっ、これに書き加えて……っ……?」

「ど、どうしたの……?」

 

 けれどもそこに書き加えられた内容を見て、当惑してしまった。

 

「もうすでに、書き加えられてる……!?け、けど、これって……!?」

 

 ただし、エデン条約機構を担うのはアリウス分校の代表者、桐花スオウ。

 マイの目にはそんな文面が映し出されていた。

 

 

 

 

「まあ簡単に言うと、黒幕登場☆?……なーんちゃって」

「“っ……!”」

 

 困惑を深める先生。なんとなくボーッと見てたら、周囲をいつの間にやら正義実現委員会の生徒に囲まれてた。

 

「……はー……かったるいなぁ」

 

 仕方なく右足を上げて。

 

「全員、ぶち殺してやるよ」

 

 それを思いっきり振り下ろし、周囲に散らばっていた瓦礫を吹き飛ばした。

 舞い散る岩石、木片、金属。それらを髪の毛ロープで散らし、視界を奪って銃弾を逸らす。

 

「っ……」

「はい遅ーい」

 

 その隙を狙って距離を詰め、ショットガンで腹、足、頭を打って意識を奪った。全員ボロボロだからか、大した神秘を込めなくても簡単に気絶させられる。

 

「ひゃ、ハッ……!」

 

 だが、そうはいかない生徒が一人。

 

「はははっ、剣先ツルギじゃねぇか?随分苦しそうだなぁ?ええ?」

「グッ……!」

 

 爆弾で自分ごと巻き込んで爆破し、地面を抉り取る。バランスを崩したツルギの首元にロープをくくりつけ、大回しで地面に叩きつけた。

 

「が、ぁっ……!!」

「あんときゃよくもボコスカ嬲ってくれたな?いや本当に、本当ならジワジワと苦しめながら消し去ってやりてぇが……お前如きに構ってる時間もねぇんだ」

 

 怯んだ隙を狙って、ツルギを空中まで蹴り上げ。

 

「悪いがここでお前は……レッドカードッ!!!だ!!」

 

 神秘を過剰に込めた爆弾を投げつけて、遠方まで吹き飛ばした。

 

「さーて……これで俺たちを邪魔するものは、もはや何もない」

 

 先生の方へと近づいて、手に抱えたシッテムの箱をひったくり。

 

「“スオウ、何を”」

「……我々は望む。七つの嘆きを。我々は覚えている。ジェリコの古則を」

「“っ……!!?”」

「……んー、無反応。やっぱりダメか」

 

 まあこれについては最初から期待してない。生体認証が必要らしいし……先生の腕でも持ってきゃいけるかもしれないけど、そんなことするつもりもないしね。

 

「じゃあいーらねっ」

 

 タブレットをポイっと投げ捨て、未だ驚愕のやまない先生の方へと近づいていく。

 

「……どーしたよ先生?そんな悪魔でも見たよーな顔しちゃってさぁ?」

「“……”」

 

 ……うーん。自分で言っておいてなんだけど、全然そんな顔してないな。まだ俺のことを『生徒』だと思ってるのか。怖い顔はしてる。多分、少し怒ってもいるんだろう。でも、違う。

 

「あはっ、ひょっとしてさぁ……信じてたのか?俺のこと」

「“……あの時の、スオウの表情は……嘘じゃなかった”」

「……プッ。は、ははっ……はははははははははっ!!!」

 

 先生が、まだそんなことを言うから。俺も大層可笑しそうに、嘲笑するように笑って見せた。

 

「あーっはははっ……!や、ごめんごめん、まだそんな馬鹿みたいなこと言うなんて思わなくって!」

「“……”」

「お馬鹿な先生にもわかるように教えてやるよ。俺の正体」

 

 と、そこまで話して。後ろから、射殺すような闘志を向けられていることに気づく。恐らくは、正義実現委員会の生徒。

 

「……お前と同じだよ、先生。キヴォトスの外から来た、不可解な存在……お前とは違う領域で、な」

 

 ペラペラと喋りながら後ろを見ないままに銃弾を放って、無力化させる。

 

「“っ……”」

「聞いたことがある口上だろ?」

 

 黒服の言っていた台詞。キヴォトスの外から来た存在。先生が俺の前世と同じところから来たのか、それはわからないけど……嘘は言っていない。

 

「……つっても、ゲマトリアじゃねぇけどな。むしろ逆、アイツらはいずれぶっ殺すつもりだよ」

「“あなたは……一体……”」

「……キヴォトスの新たな支配者。それを成すためには、まずアイツらが邪魔だ」

 

 うまく起き上がれない先生に、そっと手を伸ばして。

 

「協力しろ、先生。じゃなきゃ殺す」

「“っ……!”」

「何、その目?ひょっとしてまだ信じてるーとか、そんなことほざくつもりか?」

 

 それは困る。それを残したままじゃダメなんだ。だってそうじゃなきゃ、先生は……きっと。

 

「俺はな、先生。こことは違うところで十七の時を過ごした。その過程で、この世界の未来を知ったんだ」

 

 だったら、ここでほとんど全部を明かしてやる。

 

「吐き気がしたよ。生徒たちが青春を過ごして、日常で小さな奇跡を見つけ出す。くっだらない、装飾された物語」

「“何を、言って……”」

「だからぶち壊してやることにした。そのためにキヴォトスに来て……さらに十七年も、馬鹿みたいな姉妹ごっこを続けた。わかるか、先生?」

「“……わからない。あなたが何を言っているのか”」

 

 意外と物分かり悪いのな、先生……いや、困惑するようなこと言ってる自覚はあるけどさ。まあいいや。

 

「あの牢屋で、お前に子供扱いされた時。はらわたが煮くり返るような気分だったよ。すぐにでも殺そうと思った。押さえつけるのは大変だったなぁ」

「“……全部、嘘だった。そう言いたいの?”」

「あ?まだわかんねぇのか?みんなを助けたいですー、自己犠牲ですー?そんな馬鹿なガキはいねぇんだよ」

「“……アリウスの子のことも?”」

「っ……!」

 

 違う。そう認識されるのはダメだ、それだけはあっちゃいけない。

 

「先生、嘘をつくコツを知ってるか?」

「“……?”」

「本当に嘘をつきたいこと以外……真実を語ることだ。計画に利用させてもらったよ。アリウス分校のガキどもも、な……」

「“……そっか。わかったよ”」

 

 ……やっとわかってくれたか。これでやっと。

 

「が、ぁっ……?」

 

 右腕に走る痛み。相当な威力だ、これは。

 

「先生から、離れろ……!」

「お出ましか、空崎ヒナ」

 

 これで問題ない。ゲヘナ、トリニティ、両校の主戦力。それらを無力化してしまえば、みんなもうまく逃げ切ってくれる……はずだ。

 

「確かに普段のお前なら手間だったかもしれない、でも今は……牙をもがれた、獣だ」

「ぐっ……!」

 

 発射される機関銃。一撃一撃が凄まじい威力、回復に神秘を回さず全て威力上昇に使っている。短期決戦でケリをつけるつもりだ。

 

「でも……弱いねぇ。悲しいまでに」

「っ……」

 

 ショットガンの銃弾に神秘を込めながら、銃弾を弾いてヒナの方へ向かう。当然彼女も棒立ちなはずもなく、距離を取ろうとする。

 

「甘い」

 

 その足元をハンドキャノンで撃ち、ノックバックでバランスを僅かに崩したところを髪の毛ロープで捕まえて。

 

「っ……!?」

「はい、おしまい」

 

 そのまま、神秘を過剰に込めたショットガンで三発。完全に意識を奪い取った。

 

「……で、どーする先生?」

「“……”」

「その目は……ダメそうだな」

 

 先生を抱え上げて首元に手刀を加え。

 

「“っ、スオッ……!”」

「おやすみ、先生。セイアちゃんのところへ、行ってらっしゃい?」

 

 だらんとした先生を抱えながら、地下のカタコンベの元へ向かった。

 

 

 

 

 場所は変わって、古聖堂の地下。大規模なカタコンベにて。

 二つの頭を持つ人形が、ギシギシと。腐食した、噛み合いの悪い木材の軋むような音を立てていた。

 

「ひ、っ……」

 

 壊れかけたように大きな音を出した途端、その場にいたアリウス分校の生徒が堪えきれなくなったかのように恐怖心を漏らす。即座にしまった、と口元を抑えるが、木の人形に存在しない目で呆れられたように見られ。

 

「……恐怖を抱くのは理解できるが、いささか無作法だな。私の名前はマエストロだ。呼びたければそう呼んでほしい」

 

 責め立てるわけでもなく、注意されるようにそう言われる。

 

『ごめんなさい』

 

 アツコが手話によって謝意を伝えようとしたものの、マエストロは理解する手段を持たなかった。

 

「そなたらにはまだ、芸術の何たるかは尚早なようだな……すまないが、楽しい会話は成り立ちそうにない。知性、品格、経験……注力する意思は伺えた。それらをさらに身につけてくるがいい。キヴォトスの生徒たちよ、どうか私を落胆させてくれるな」

 

 出来の悪い子供を叱るように、軽々しいため息をついて。

 

「……されど」

「妹たちが失礼しました、マエストロさん」

「……そなたは?」

 

 言葉を遮られ、苛立ちながらも声のする方に視線を向ける。そこに佇むのは、白い髪の少女。

 

『スオウ!』

「アツコ、みんな、久しぶりですね」

 

 全員に視線を巡らせたのちマエストロの方へと歩みを進め、顔と思しき場所に目線を合わせる。

 

「申し遅れました。アリウス分校所属、小隊長の桐花スオウです」

「……ふむ。最低限、会話は可能なようだ。失礼した」

 

 桐花スオウの手元に、先生はいなかった。姿を表す直前、岩陰に隠していたのだ。もし気絶した先生を携えてマエストロの元に向かえば、ろくな会話も成り立たなかっただろう。

 

「買い被りです……それよりも。守護者の『威厳』を複製(ミメシス)していただける。しかし、それにはロイヤルブラッドが必要になる。その認識でよろしかったでしょうか?」

「……その通りだ、桐花スオウよ。『戒命』を動作させなければ、戒律を起動することはできない」

「……その役割。私が代わりにすることはできませんか?」

「っ……!?スオウ?何を言ってるの……?」

 

 スオウの言葉に困惑するアツコをよそに、マエストロは桐花スオウと視線を交わす。暫くして。

 

「……これは……確かに、そなたは……しかし、混じっているな。如何にして知った?」

「そこです」

 

 正解、と言わんばかりに、スオウは反応を返した。

 

「これから起こる全てを、ベアトリーチェには報告しないでいただきたいのです」

「……我々は、確かに協力するわけではない。しかし今回の件でベアトリーチェには借りがある」

「あなたに利がある提案です」

「……なんだと?」

 

 緊張を誤魔化して、スウっと息を吸いながら。その視線を外すことも、その場から離れることもせずに、言葉を続け。

 

「……私にとって、あなたの芸術は未だ理解しがたい観念です。無論、その努力はしたいと考えていますが……察するに、あなたは理解者が欲しい。芸術を理解することのできる人間が」

「……」

「一人、知っています。私も、あなたも……シャーレの、先生を」

 

 一切の動揺を見せることなく、そう言い放って見せた。

 

「……して?それが私とそなたの対話、それらにどう影響し、変化をもたらす」

 

 少し興味を持った、と、その体を軋ませながらマエストロは疑問を投げかける。

 

「……私が協力します。先生に貴方の芸術を披露する、その手伝いをさせていただきたい」

「……ふむ」

 

 そしてその疑問に対する回答は、彼にとって満足のいくものであった。

 

「いいだろう。もしその条件がなされたのであれば、私もそなたの条件を受け入れ、遵守すると約束する」

「……ありがとうございます」

『スオウ……さっきから、何を言ってるの?』

 

 マエストロとの対話を終えたスオウの元に、アツコは恐る恐る近づき、まるで安心を欲しているかのように指を震えさせながら言葉を紡いだ。

 それを見たスオウは、仮面をとって穏やかに笑いかけ。

 

「大丈夫ですよ。ごめんなさい、怖い思いをさせて」

 

 安心させようと、アツコの体を抱きしめた。

 暖かかった。覚えのある暖かさだった。何度も、何度も。最初にこの暖かさを知ったのは、いつだったろうか。

 

「……」

 

 一番古い記憶は、十年前。サオリたちが自分を守ろうと、無茶ばかりしていた頃。次の記憶は、一年後。言葉を封じられた自分を、解き放ってくれた時。十年前のような、笑顔を取り戻させてくれたとき。

 

「スオウ……」

 

 身長差につき少しその頭部を見下ろしながら、アツコは少し強めにスオウを抱きしめ返した。

 マエストロと自称した木の人形の、あの発言。あれが虚偽を述べたわけでなければ、スオウは……ロイヤルブラッド。自分と同じ血縁だということになる。

 

「いつから知ってたの?」

「……ごめんなさい、秘密にしてて。私とアツコ、遠縁かもですけど……血が繋がってるみたいですね」

 

 抱擁を解いて少し離れながら、スオウは照れくさそうに笑った。

 

「……どう思えばいいのか、わかんない」

「何も変わらないですよ。私にとって、アツコはこれまでも、これからも。大切な妹です」

「……そっか。そういえば、スオウ」

「はい!なんですか?」

 

 離すべきではなかったかな。そんな少しの後悔を浮かべながらもサオリが言っていた言葉を思い出し、その疑問を口にする。

 

「スオウって、私たちと会う前……内乱の前は、何してたの?」

「っ……!」

 

 そこで起きた、ほんの一瞬の困惑。普段のアツコなら気付かなかった。気付けなかった。

 しかし、今は違った。サオリが抱いた疑問、疑惑、それをそのまま聞かされていたから。

 

「割とのんびりやってましたよっ!でもまあ、結構色んな場所行ってましたね」

「……何で、私の……ううん。私たちのお姉ちゃんを名乗ったの?」

「……それはみんなが、私の妹」

「誤魔化さないで」

「っ……」

 

 いつもなら誤魔化せていた、ほんの少しの疑念。それを詰められて、スオウは動揺したように身を引き。

 

「アツコ……それは……全部、終わってから。みんなに話させてください。みんな、一緒に……」

「……」

 

 肯定を返すことはしなかった。逃げられてしまう気がしたから。けれども、沈黙はいつだって金とは限らない。

 

「……行きますよっ、みんな!」

 

 その隙を狙われて、誤魔化すようにマエストロの案内を始められてしまった。

 

 

 

 

「……さて、と」

 

 ミメシスは手に入れた。あとはやるべきことをするだけ。

 

「これももう、いらねぇな」

 

 通信機をバラバラに砕き、踏みつける。瓦礫の中の、比較的破損が甘い場所。少し離れた地点。

 そこに、大きなカメラを見つける。

 

「おー、あったあった。クロノス報道部のかな?」

 

 カメラに灯されたランプを見るに、まだ生きている。遠隔で状況を撮影して、キヴォトス中に発信しているのだろう。リポーターはすでに逃げ出したのか、もういない。

 

「ま、好都合だったね」

 

 カメラのレンズの前に赴いて、仮面とフードを外し。

 

「やーやー!!キヴォトス諸君!!」

 

 とびっきりの笑顔で、そんなことを言って見せた。




kaigeneさんからスオウちゃんのファンアートをいただきました!
https://d.kuku.lu/458egrjs3
全体的に細かく描写してくださっていて、何だかスオウちゃんが本当にブルアカのキャラになったみたいで……嬉しい、嬉しい……!ありがとうございます!
私はキャラデザに自信ないので、こうしてデザインまで考えていただけるのはすごくありがたくて……嬉しいものなのです

あと要望をいただいたので、オリキャラの学年、大雑把な大きさをまとめておきます!
桐花スオウ 140 cm後半 17歳
甘川アシリ 大の小    3年生
柏有マユミ 中の大    2年生
広土サユリ 中の中    2年生
赤江サウ  大の小    3年生
嵐咲フィリ 小の大    1年生
余羽トウ  中の小    2年生
安照レイ  中の中    3年生
高東ヤコ  中の小    2年生
伏貫ヨセ  小の小    1年生
阪抱シオ  小の大    2年生
マイ    中の小    1年生
ツムギ   中の小    1年生
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