突如としてどこからか飛来した、青い機械。円柱から手足が生えたようなその姿は、紛れもなく人の形を装っていて。
「ロボット……?」
なんだ、こいつ?原作にこんな機械がいたか?
ウタハ?違う、こんな形ではない。アバンギャルド?小さすぎる。俺の記憶にない存在、不確定なモノ。
……いや、なんにしろ。
「誰だッ!!!テメェはァ!!!」
イレギュラーはぶっ壊す。たった一つの不穏分子だって見逃すわけにはいかないんだから。
『っ、シールド展開ッ!!』
「猪口才なッ!!!」
展開されたシールドごと拳を振り抜き、そのまま吹き飛ばす、が、そこで。
「誰か知らないけど、助かったよ」
「っ!?」
ミカの顔が、先ほどよりも近くなっているように感じる。否、おそらく実際にそうなんだ。感じ取れるのは爆音、爆風。
「真似させてもらったよ」
「しまっ……!」
直後、切り裂くように迫る脚。対応しきれず、その脚は腹部に強くめり込んだ。
「がっ……!!」
ミカだって、もう体力は限界なはず。今のわずかな隙を狙って、神秘を足に集中させたんだ。ほんの僅かでも立ち上がって、俺を止めるために。
「甘いんだ、よっ!!!」
「っ……!!」
今度はミカの足をショットガンで撃つ。悲鳴を上げることもせず、痛みが通じる前、己の足が限界を迎える前に急ぎこちらに迫ってくる。
「ら、ァ!!!!」
そのミカの腹部に拳を放ち、敢えて吹き飛ばないようにそのままめり込ませた。
「っ……か、はっ……!!げほっ……!!っ、おぇ……!」
「……」
ミカの口から腕に溢れ落ちる、血。内臓の一部を損傷している証拠。今までのダメージとも通算して、相当な負担になっているであろうことはわかった。
「……ほんの一瞬でも、思ったかよ?あの程度の隙で、俺に勝てるって」
「っ、く……あ、ははっ……なんだ、せっかく本音で話してくれるかと思ったのに……もうやめちゃうの……?」
「……」
何がおかしいのか、呼吸さえも許されない体で笑い始めるミカ。戦いの決着を予感して、そのまま腕を引き抜こうとして。
「……っ!?抜けない……!?」
「私じゃ、スオウちゃんにはもう勝てないけど……止めることはできるよ……」
腕をいくら動かそうと、全くと言っていいほど動かない。もうとっくに限界なんて超えているはずなのに。
右腕は骨がイカれている。左手は貫通した銃痕が、生々しく残されている。もはや力なんて出るはずもないその拳で、俺の腕を全力で支えていた。
『よくやったわ、聖園ミカ……!!』
「っ……!テメェ、さっきの……!」
先ほどの、青いロボット。バチバチと体から電気を迸らせながら、こちらへと歩いて近づいてくる。
『急いで飛ばしたけど……ギリギリ間に合ったみたいね』
「っ……!!」
『本当なら、今すぐにでも気絶させたいけど……』
青い機械がこちらに触れた瞬間、体中を痺れるような感触が駆け巡る。俺の拳を抑えているミカも同様だった。
だが、俺たちの体には大したダメージにはならない。
『この体じゃ、生憎そういうわけにもいかないわ』
そのことを察したのか、スッとその手を離して距離を取る。
「……何者だ」
『ああ、質問は慎重にね……こっちには人質がいるのよ?』
「人質……?」
『スオウ……』
「っ!!?」
サオリの声だ。間違いない、機械越しにだろうと俺が聞き間違えるはずがない。
「……はははっ、それがどうした?放送を見てなかったのか?俺はアリウス分校を利用し続けただけで」
『あら、ならこれはどう?』
『っ、ぐ……!!』
時間を置かずに、銃声が聞こえる。サオリと……他のスクワッドのメンバーも。うめき声が届いた。
「っ、お前……!!」
『声に焦りが見えるわねぇ……動かないでちょうだい。それなら何もしないわ』
「っ……!!」
最悪だ。ここに来て、最悪の展開だ。キヴォトス中を敵に回す覚悟はあった。だがそれが、ここへ来て裏目に出るなんて……いや、待て。
おかしい。どうして俺の弱点が、サオリたちだと知っている?あの放送を見た、ただそれだけならそんなことほんの少しだって思わないはずだ。
であれば、アリウスの状況をある程度詳しく知らなければこの脅しはできない……試してみるか。
「……下手な演技はやめろ。お前如きにサオリたちが捕まえられるはずがない……そうだろ?元アリウスの、誰かさん」
『っ……!』
「大方、サオリたちも協力しているだけと見た……ったく、そんなことするような教育をした覚えはないんだがな……」
『……バレちゃ、しょうがないわ。まあ最初っから無理があるやり方ではあったし、仕方がないわね』
機械の腕で掌を上方に向け、駆動音を鳴り響かせながらやれやれと言わんばかりの動きを返される。器用なやつだ。
『……スオウ……何をやっているんだ、お前は』
「おいおい、放送は見ただろ?俺はお前たちを利用し」
『黙れ!!!』
「っ……」
突如、大声で反論をかき消される。感情的な反応。よほど怒っていなければ、サオリはここまで感情的にはならない。
『今更、そんな下手な演技が通用すると思うか……!?嘘でもそんなことを言わないでくれ……!!』
「……」
怒り、だけじゃない。どこか涙を飲んだような声で、弱々しくも奥底は力強く話しかけてくるから。何も言えなくなってしまった。
『この胡散臭いやつからお前の計画を聞いた……!!ふざけるなよ!!お前は……お前はッ……!!ずっとそんなことを考えて生きていたのか!!?』
「……」
『……ねぇ、スオウ。昔私たちに言ってたよね?無意味でも諦めるなって。意味があるかもしれないからって。なのに生きることを真っ先に諦めるって、何それ。言葉にくらい責任を持ちなよ』
……違う。違うんだよ。諦めるとか諦めないとか、もうそんな段階の話じゃないんだ。こうしないといけないんだ。こうじゃなきゃいけないんだ。俺が、俺がやらなきゃいけないんだ。
『そ、そうですよ……!スオウさんがいなくなるなんて、その……私だって嫌です……!!』
『スオウ……何があったのか知らないけど……気持ちはわかる。多分私も、同じ選択をすると思う。自分一人で、みんなを助けれるなら、って……でも多分、スオウは。真っ先にそれを否定するんじゃないかな』
「っ、あ……っ……」
……そう、だな。もし俺以外の誰かがこんなことしようとしてるって、そう思ったなら……俺も全力で止めると思う。でも、それとこれとになんの繋がりがあるって言うんだ?
『……スオウ……私から言えることは……あまりない。私も、勝手をしようとしてるのは同じだから。でも、お願い……死なないで』
「……ほら。やっぱり、そうじゃん……」
アズサが最後に言ったタイミングを見計らって。少し体が回復したのか、ミカがゆっくりとその口を開く。
「みんなスオウちゃんがいないと、ダメなんだよ……?」
「……だから、なんだよ。俺が知った事じゃない」
「だったらなんで……そんなに、辛そうな顔してるの……?」
「っ……!!」
……もう、いい。もういい。もうこれ以上話すようなこともないし、話すつもりもない。伝えたい事ぐらい、そのくらい準備はしてある。問題なんて一つたりともありはしない。
「……先生。そこにいるんだろ?」
『“っ……!!”』
「まあ少し遅かったが、構いやしないさ。これ以上時間稼ぎに付き合ってやるつもりもない」
『“スオウ……何を、するつもり?”』
先生の疑問に答えないままに、口で爆弾のピンを抜いてミカの体に押し付ける。可能な限りの神秘を込めて、離れるように吹き飛ばした。
「ぐっ……!!」
「最初から、こうすれば良かったんだ。対話なんて必要なかった。先生がそこにいることなんてわかりきってるんだから、必要なんてなかった」
ペラペラと。本当に思っているんだか、嘘なんだか。自分ですらわからない言葉を吐きながら、マエストロに信号で合図を送る。
「まあアイツは嫌がるかもしれないけど……代わりにご紹介させていただこう」
後ろから、爆発するような神聖な光が木漏れ日みたいに溢れ出す。地面の一部が崩壊する音が聞こえる。
「お急ぎのところ申し訳ないが、ここいらでゲームオーバーだ。この口上をもって、冥土への手土産とさせていただこう」
徐々に、徐々に。その光はまとまって、人の形を表し始めた。
「神秘と恐怖、それらは『崇高』が指し示す側面の一部に過ぎない。しかし崇高はゲマトリアにだろうと扱い切ることはできず……複製された恐怖にしか近づけなかった……こんなふうにね」
何かを察したのか、殴りかかってくるミカ。その一撃を、先生を守っていた聖徒会を出して肉壁にして防ぐ。
「しかしこれはそのどれにも属さない。神秘でも、恐怖でも、崇高でもありはしない。崇高に近づき得るナニカ……この教義は受肉し、行動し、証明を続ける」
人の形が明瞭になりその姿を表すよりも先に赤いヴェールを被り、その素顔は覆い隠されてしまった……あるいは。素顔なんていうものは、存在しないのだろうか。
「紹介しよう。これこそが受肉せし教義……証明を続ける、創り上げられた天使。ヒエロニムスだ」
祈りを捧げる両の手と、その神性を指し示すかのような光輪。その存在感に僅かに戦慄しながらも、青い機械のカメラの方を見つめ直す。
「って、マエストロが言ってたよ。アイツ先生にこれ見せたかったんだってさ、傍迷惑なやつだよな……」
ミカに対応させていた聖徒会を引っ込め、カタコンベの奥へと向かう道へとヒエロニムスが動き出すより先に逃げ出す。
「……これは俺にも制御できない。俺が生み出したものじゃないから。ゲーム的に言うなら、チートってやつ?そこにいるミカにも勝てないよ」
最後にミカと、そして先生に向けてとびっきりの笑顔を向けて。
「大切なお姫様のこと、キチっと守ってな?せーんせい?」
『“っ、スオウ!!”』
崩落する天井。俺とミカの戦闘で既に限界を迎えていたのか、その勢いは止まらず、いよいよ完全にミカと俺を分断した。
「……」
みんなの言葉が、胸の中で渦を巻く。
「……ごめんな」
誰に向けたわけでもない。深い意味があったわけでもない。けれども確かにナニカに対する謝罪が漏れる。
不可思議な気分に苛まれながらも、道を進む。暗い、暗い、その道を。アリウス分校へ……ベアトリーチェへと向かう、その道を。
◇
「っ……!止めきれなかった……!」
タブレットを見ながら、マユミは苛立ちをその足で地面にぶつける。
予め桐花スオウを追跡させておいた、青い機械。そのカメラによる映像が伝えたのは、紛れもない敗北。
ここでミカを失うのは惜しい、何よりスオウ自身も弱っている。ここで捕らえられる。その判断から姿を見せたが、結論としてそれは失敗だった。
「だが、時間は稼げた!」
「時間は稼げたって、カタコンベの道は塞がっちゃったのよ!!?……っ、ああもう……!ごめんなさい、八つ当たりね……」
「大丈夫……アリウス分校への入り口は、カタコンベだけじゃない。スオウの居場所さえわかれば追いつける」
「……んん!?マジで!?」
ミサキの言葉に目を見開いて驚き、突如として明るさを取り戻す。
「だったらミカを助けてさっさと行くわよ!!スオウの場所は追跡させてるドローンでわかってる!!」
「いつの間に……」
「一応、あのロボットは後から追い付かせた事にしたから警戒も薄いままなはず……!」
先程の会話に混ぜ込んだブラフ。いくら化け物といえども、手負いの化け物だ。そこまで頭を回す余裕はないはず。その考えに従って、発信機を搭載した小さなドローンをスオウに追跡させておいたのだ。
「まずあのロボットを治さないとね……それと、聖園ミカ!私たちがそこに行くまで、そのバケモンからなんとか逃げてちょうだい!!」
『……あ、あー。これ、そっちに聞こえてるのかな?』
「“……ミカ?”」
どことなく、いつもと雰囲気の違うミカ。不審に思った先生がその名を呼ぶも、返答はない。
『……アズサちゃんって、そっちにいる?』
「……いや。いない、今は別行動だ」
現在アズサは先生に正体が露見せぬよう、フードを目深に被り顔にはガスマスクをつけている。実際には先生にとっくにバレているが、サオリ含めスクワッドは全員バレていないつもりでいた。
『そっか……伝えておいて欲しいんだ。これから言うことを……もちろん、あなた達に向けた言葉でもあるから』
「……待て。何をするつもりだ」
映像はうまく受信できないが、銃をリロードする音が聞こえる。固い、重い、銃の音が。
『……ごめんね。こんなつもりじゃなかった。こんな風にしたいわけじゃなかった……ただ……スオウちゃんが、あんまり自分勝手で、哀しい目をしてたから……助けなきゃって……』
「謝らないでいい。事情はもうわかった。カタコンベにはもう向かっている、あと少し持ち堪えてくれ」
『……うん。それなんだけどさ……別の場所から行けるよね?』
突如として、物が爆ぜるような音が、崩れるような音がスピーカーの奥から鳴り響いた。
『……ここは私が食い止める。あなた達はすぐにスオウちゃんを追って。間に合わなくなる』
「っ、なっ……!?」
弱々しい声。吹けば飛んでしまいそうな、小さな声。
「“ミカ、それはダメだ”」
真っ先に反応したのは、先生だった。
『……先生。私、約束したよね?スオウちゃんを選んであげてって……それは、天秤にかけるのが私でも一緒だよ。スオウちゃんを選んで……あの子のことを、助けてあげて』
「“……!”」
『私ってさ、結構性格悪いんだよ?本当ならセイアちゃんも、ちょっと痛い目に合わせてやろうとか思ってたし……ゲヘナの事だって、今でも大っ嫌い。でも、あの子はそれを止めてくれて……そんな私も、肯定してくれた』
一言、一言。大切な思い出を噛み締めるように。スオウのことと……自分のことも。少しずつ、少しずつ語り始める。
『あの子は私よりもずっと優しくて、強くて、でも弱くって……だから、先生。みんな。絶対助けてあげて。私のことなら大丈夫、これでも結構強いんだよ?』
「ダメよ!!一人だって見捨てられるわけないでしょう!!」
『……いいから!!早く行きなよ!!』
マユミのタブレットから、物が砕けるような音が響く。それがミカが青い機械を握り、ひび割れる音だと気づく間も無く……青い機械は、遥か彼方に投げ出された。
「っ……!あの、アホ……!本当にティーパーティなの!?脳筋にも程があるわ!!」
暗転する画面を見つめながら、マユミは不満をこれでもかと吐き出した。
「どーする……!!」
直後、悩む。今からミカを助けに行っていたのでは、間に合わないのも確かだ。かと言って放っておくわけにもいかない。あれは恐らく、『ヘイローを破壊する爆弾』と同質のもの。
自分たちには作ることはおろか再現することもできない、外法の力を用いて作られた兵器。それをミカ一人に任せておくことなど、できるはずもなかった。
「……私たち以外のアリウス生に向かわせれば」
「無理だね。間に合わないよ……今はトリニティ領の近くで、補習授業部と待機状態らしいし」
「……」
手詰まり。はっきり言って今は、悩んでいる時間さえも惜しい。
「……二手に別れよう。他のアリウス生が合流するまで、時間稼ぎをするしか方法は……」
「“待って”」
突如として先生が、その口を開く。
「“……私に任せて欲しい。すぐに向かうから”」
その掌には、黒いカードが握られていた。
◇
「あーあ。これでおしまいかぁ」
体中から血を吐き出しながら、聖園ミカは引き金を引く。虚しくも、空砲が放たれる音だけが響き渡る。
目の前には依然としてその姿を保つ、巨大な赤色の化け物が一人。祈りを捧げていた。
「……これは、無理だね」
そう考えた瞬間、体から力が抜けていく。血を流し過ぎたか、などと頭の奥底でぼんやりと考えていた。
スクワッドと先生はこれで説得できたかわからないが、それでも自分が死ぬかもしれないことは認識していないはずだ。この化け物の脅威を認識するよりも先に、通信を絶ったから。
「これ……外に出たら……すごい事になっちゃいそうだよね……」
最後の力を振り絞って、岩を握り込む。残り滓のような神秘をありったけに込めて、壊れた肉体に鞭打って。震えるように、体を立ち上がらせた。
「あなたを外にはいかせないし……スオウちゃんも死なせない……」
足を踏み込んで、地面が砕ける。その勢いと威力をそのまま投擲のパワーへと変換し、古聖堂からカタコンベへと向かう道へ岩を投げつけた。
破壊され、崩落し、地下空間はその巨大さを保っても生き埋めにされるような形になってしまう。
「スオウちゃんと……一回でもいいから、遊んでみたかったな……お茶を飲んだり……ケーキを食べたりして……」
遠い目でぶつぶつと呟きながら、体を硬い地面に投げ出すように倒れ込む。もはや指先の一つすら動かす事はできなかった。
「……私も、少しは……あの子みたいに……なれたのかな……」
迫る光。己の体が滅されようと、死へと近づくのを感じる。恐怖と不安を押し殺すように、その瞳をゆっくりと閉じて。
「“危ない!!”」
感じたのは熱でも衝撃でもなく、柔らかな抱擁だった。
「……せん、せい?」
「“……”」
その整った顔立ちをぼーっと見つめ、状況を理解する。先生は助けに来たのだ。スオウではなく、自分なんかを。
「っ、なんで……!」
感じた安堵に自己嫌悪を抱き、それは怒りとなって体外に排出される。
「私じゃ……私なんかじゃなくて……あの子を……!」
「“ミカ。あなたは二つ勘違いをしている”」
掌に黒いカードを握り締め、赤い巨人には見向きもせずに、ミカの方を見据えて話を始める。
「“私には誰かを選択する権利なんてない”」
赤い巨人……ヒエロニムスは容赦なく攻撃を開始するが、それらは薄い半透明な青色のバリアで阻まれた。
「“特別な人間なんかじゃない。誰かを審判する権利もないし……全員の苦痛を消し去ることなんてできない。全ての罪悪を無くすこともできない”」
「っ……!だったら……!」
せめて選んでくれ。正しい者を選んでくれ。そう口に出そうとして。
「“私は生徒たちのための先生だよ。私は選ぶことなんてできない。生徒が間違った選択を……後悔のある選択をしないように、苦しみに寄り添うことしかできない”」
「……」
ふと、先生はミカに背を向ける。ヒエロニムスの方を向き、人差し指と中指の間に黒いカードを……『大人のカード』を挟み込む。
「“けど……どんな生徒だろうと……ミカがミカの言う通りに、性格が悪い生徒だったとしても……たったそれだけで、生徒を見捨てる先生なんて絶対いない”」
「っ……!」
「“私は生徒とともに歩んで、最善だと思う選択を共にするしかできない”」
黒いカードを掲げる。突如として、カードから光が漏れ始める。その光は先生に反射して、美しく輝いていた。
「“私一人でできることなんてほんの少しだ。だから、みんなの事も頼るんだよ”」
スオウの元へ向かわせたスクワッド、そしてマユミ。彼女達のことを思い出しながら。その光は最高潮へと達する。
「“ミカ。ありがとう。ここまで戦ってくれて。スオウのことを、止めようとしてくれて。きっとスオウのこともなんとかしてみせる。だからあとは、私
「……っ……うん……!」
「“……”」
振り向いて。ミカの返答に満足気に頷き、その体を見る。ボロボロに、傷だらけになった体。焦げた部分はヒエロニムスによってつけられたものであることは、容易に想像がついた。
「“私の……”」
ヒエロニムスの方へと向き直り。抱くのは、怒り。
「“……私の大切な生徒に、何してるの!!”」
「え、えぇ……!?」
どこか間抜けなようにも感じ取れる、怒りの言葉。
「……あははっ……わーお」
その怒りをぶつけるように、カードから漏れた光は形となり。彼の聖人へと襲い掛かった。