ts転生者の生徒が、頑張るだけのお話。   作:おにっく

82 / 175
最適な行動

 もはや原型を留めない程荒れ果てた古聖堂。ただ歩く、それだけの行為にさえ苦心するであろうその道を、先生は息を切らしながら走っていた。

 

「“急がないと……!”」

 

 焦り。サオリと、ミサキと、ヒヨリと、アツコと、マユミと……本人はアレでバレていないつもりなのかもしれないが、アズサとも。約束した。頼られたのだ。必ずスオウを救うために、協力してくれと。

 

「“ここからなら、そう遠くはないはず……”」

 

 キヴォトスの外から来た先生は、その身体能力……走る速度一つとっても、生徒より大きく劣る。それでも無我夢中に走って、走って、走って。抓られるように痛む脇腹を抑え、走り続ける。

 体力の限界を迎えかけていた故だろうか。前を通る影に気づくこともできず、そのまま激突してしまった。

 

「“うっ……!”」

「……ごめんなさい。大丈、夫……っ……!先生!?」

 

 反作用で後ろに吹き飛ばされ、激突した頭を摩りながら上を見上げればそこにいたのは……ボロボロで。それでも尚何かを探していたのか、疲れ果てた様子の空崎ヒナ。

 

「“ヒナ!!無事だったんだね!”」

「それはこっちの……良かった……」

 

 先生を見つけて安心したかのように、ふらふらとその場にへたり込んでしまう。その足元を見ると、滴り落ちる血がその軌跡をはっきりと伝えていた。

 

「“ヒナ……”」

 

 恐らくヒナは目が覚めて、すぐに。探していたのだ。先生のことを。

 

「……本当に、よかった……無事で……先生、今すぐここを離れて。あの黒い連中はいなくなったみたいけど……それでもまだ、ここは危ないかもしれないから」

「“……”」

 

 どの口が言うのだろうかと。先生は真っ先に、そう思った。今すぐここを離れるべきなのも。危険なのも。他ならぬヒナであることは、火を見るよりも明らかだったからだ。

 

「うん、大丈夫……先生を送り届けるまでは……きっとまだ、やれる……今度は、失敗しないから……」

 

 おぼつかない足取り、焦点の合わない目、蒼白に染まった顔。満身創痍。端的に表すならそんな様子で、それでも尚立ち上がって。その小さな体躯に似合わない大きな機関銃を持ち上げた。

 

「“ヒナ、お願いだから一度休んで。それに……ごめん。私には、行かなきゃいけない場所がある”」

「え……?」

 

 行かなくてはいけない場所。こんな状況で。彼らしいといえば、彼らしい。どこか遠い思考でそんなことを考えて、残された脳のリソースを少し割いて。ヒナはようやく、先生が何を言っているのか理解した。

 

「……ダメ」

「“……”」

「私は、もう……私には、できない……」

 

 せっかく搾りカスの力で立ち上がったのに、その努力を無に帰す行為だというのに。身体中から力が抜けて、その場に倒れ伏すように。ヒナは再びへたり込んでしまった。

 

「お願い、先生……私と一緒に……ううん。一緒じゃなくていい……だから、帰って……安全なところに。じゃなきゃ、じゃなきゃ私は……」

 

 口を閉じようと、その圧倒的な力を持つ肉体で努力しても……溢れた思いには、敵わなかった。

 

「……私は……安心して、休めない」

「“ヒナ……”」

 

 一度溢れ始めてしまったのだから。その思いは、勢いを強く増して……霞む視界を、潤ませていく。

 

「もう、無理なの……私は……これ以上、頑張れない……先生が何をするのだとしても……協力することはできない……」

「“ヒナ、無理はしなくて大丈夫。私たちの力でなんとかしてみせるから”」

「っ……!」

 

 恐らく、否、予想するまでもなく。先生なりに考えた、ヒナへの気遣いの言葉。けれどもヒナにとっては、その言葉が今は呪いのように重く感じ取れて。お前は相も変わらず彼女のようにもなれず。役にも立てず。期待も、理解もされていないのだと。そう言われたように感じ取れて。

 

「なんで……」

「“……?”」

「なんで責めないの……!?」

「“っ……!”」

 

 いっそ期待していたのに、頼りにしていたのにと。罵倒されてしまえば、それでも辛くとも……幾分かはマシだった。こんな醜い一面を……ただ、ただ先生に見てほしいがための我儘を。口にすることもなかっただろうに。

 行き場のない気持ちを破裂しかけた自分の中に追いやりながら、ガラガラになった声で続けていく。

 

「私は……本当は私が、やらなきゃいけない……!誰にも分かってもらえなくても、私が……!なのに、なのにまた……!私は、あいつに負けて……!先生のことも守れなくて……!!」

 

 先生の前に居た、白いコートを羽織る小さな生徒。一目見て分かってしまったのだ。あの時の自分に勝ち目がないことも。もし万全の状態で戦おうとも、確実な勝利を得られないことも。

 ゲヘナを、みんなを、先生を守るだけの力がある。頑張り続ける限りは、彼女の様になれる。ヒナにとっては、それが最後の防衛ラインだった。

 

「私は……!!小鳥遊ホシノのようにはなれない……!!あれだけの苦しみを味わって、それでもアビドスで……私は、たったこれっぽっちのことで……!!」

「“……ホシノ?”」

 

 それが最も容易く壊れてしまう、薄氷だと知りながら。

 

「こうしてまた先生を困らせて……!!その優しさに甘えることしかできない……!!それを嫌だって思ってても、やめたいって思えない……!!」

 

 いつもの自分なら、冷静な自分なら。こんな風に取り乱して、愧死してしまいたくなる様な無様を晒すこともないだろうに。それを知りながらも、止まることはできない。

 

「“……ひ”」

「でも私だって……!!私だって頑張った!!いつも頑張って、どうにかしようとして……!!でも結局、こうして……!!」

 

 目元から小さな、小さな。雫の様な涙を、地面へと落とし続けて。壊れた口元は、嗚咽を奏で続けるだけだった。

 

「“……ヒナ”」

「ごめんなさい……こんなこと言ったって……先生を困らせるだけなのに……私はただ構ってほしい、褒めてほしいって……それだけで……」

「“ごめんね。酷いことを言ってしまった”」

 

 耳を塞ぐ様にうずくまって。けれど、聞かないこともできなくて。鼓膜へ届いた意外な言葉に、耳を傾ける。

 

「っ……なんで、先生が謝るの……?」

「“大丈夫。ヒナが頑張ってることは、ちゃんと分かってるよ。いつも頼りにしてる……私も含めて、きっとたくさんの生徒が”」

「……そう。だから、本当は私が……」

「“いつも頑張ってくれて、ありがとう。だけど……ううん。だから、今は休んで欲しい”」

「……!」

 

 責めるわけでもなくて。見限られるわけでもなくて。たった一度の『ごめん』と『ありがとう』を連ねられて。たったそれだけでも、少しだけの気力が湧いてきた。

 

「“そうじゃなきゃ……遊びに行く体力も無くなってしまうからね”」

「え……?」

 

 訳がわからなかった。何を突然と、疑問を口にしようとして。

 

「“予定はいつ空いてる?どこか行きたいところは?”」

「あ……」

 

 先程自分が、先生に構ってほしいなどと口走ってしまっていたことに気づいた。

 

「い、いや、さっきのは……その……」

「“海なんてどう?いや、それならまずショッピングに……”」

 

 照れ隠しに取り繕っても、お構いなしだった。もう決まりだと言わんばかりに。急いでいたのではないのかと指摘したくなるくらいに。

 

「“だからもう、頑張りすぎなくても大丈夫だよ”」

「……」

 

 不器用なのやら、器用なのやら。精一杯に伝えられる一つ一つの言葉は、どこか奥底で望んでいた様な言葉で。

 

「……せん、きゃあっ!?」

 

 考えるよりも先に何かを言いかけたが、轟音で掻き消されてしまって。

 

「“……ごめん、もう行かないと。格好良い迎えが来たみたいだ”」

「……ふふっ。なにそれ」

 

 なんだか力が抜けて、満たされた様な気分になってしまった。

 

「……先生。本当に私がいなくても大丈夫?」

「“今回だけは。いや、その、本当はいて欲しいんだけど……”」

「大丈夫、分かってるから。何か私がいるとまずい事情があるんでしょ?」

「“……うん”」

 

 降り立った巨大な機械の上に見える、白いコート。無機質な銃。アリウス分校の者だろう。何故先生がアリウスに協力しているのか、それはわからない。けれど責めるつもりも、無理について行くつもりにもならなかった。

 たったそれだけの言葉で。会話で。約束で。どこまでも、安心し切ってしまったから。

 

「……でも、じゃあ……約束。絶対無事で帰って来て」

「“うん、そこは任せて。行ってくる”」

『先生ッ、迎えに来たわよッ!!さっさと乗りなさい!!』

 

 スピーカーの音に呼ばれて、少し慌て始める先生。いつの間にか涙も止み、ようやく機能を果たす目で先生の背を見つめる。

 

「先生、登れるか!?」

「“ごめん、ちょっと難しいかも……!”」

「……」

 

 言っている側から不安を煽る様な姿。けれども約束したのだ。きっと大丈夫だろう。

 

『コックピットに乗りなさい!!ギリギリだけど、二人は乗れるわ!!』

「そ、それって密着する形になるんじゃ……?」

「“コックピット……!”」

「思いの外乗り気だね……」

 

 後ろの瓦礫に、背を預ける。辛うじて無事だった通信機を思い出して、震える指で取り出す。

 

「アコに連絡しないと……行方不明の捜索も……」

 

 ほんの少しだけ軽やかになった肩。背中。体。

 その感覚を反芻するように味わいながら、飛び去って行く青い機械……大きなロボットを見つめた。

 

 

 

 

 迫る巨大な火球。擲つは、一枚の切り札。時限式、爆発は着弾の直前。

 

「っ、これ、は……!」

 

 眼前に降り立つ炎に、体中が熱を伝える。衝撃に備えようと、神秘を全身に迸らせ。

 

「……?」

 

 思っていた衝撃は来ない。断末魔も聞こえない。ベアトリーチェは、まだ生きている。

 

「っ……!」

 

 殺さなきゃ。トドメを刺さなきゃ。強迫観念の様な殺意に流されるままに、地面に埋もれた状態から飛び上がる。ベアトリーチェは、地面から這い出てすぐそばに居た。ヘイローのような赤い光輪は、未だその姿を保っている。

 

「……」

 

 幾ばくかの観察の後、光輪はその姿を縮め……ついには、姿を消した。ベアトリーチェの体が、崩れ去ってゆく。

 

「……殺、った?」

 

 殺せたかもしれない。その可能性に勘づいた全身の細胞から、喜色が伝わって来て。けれども頭だけは、妙に冷静だった。

 

「あっけなさ過ぎる」

 

 ふと、後ろを見やる。戦闘により崩れた地面、壁面、交戦を続ける聖徒会。……交戦を続ける聖徒会?

 

「はぁっ!!」

「がっ……!!」

 

 まだ終わっていない。その事実に気づいた時には、もう遅かった。醜くも血潮に染まった、大きな両腕。その両腕に勢いをつけて挟み込まれる。

 

「このまま潰して差し上げます……!」

「っ……!」

 

 全身へと圧力が加えられ。体の中身がひっくり返るような感覚。ギシギシと、骨が嫌な音を立てるのが耳の奥に伝わって来た。

 

「かぁっ!!」

 

 遠のく意識を振り払って、ベアトリーチェの掌に噛み付く。血は出ずに、ひび割れるようにして手の外殻を破壊した。

 

「っ、野蛮な……!」

「はははっ……サンキュー、ミカ」

 

 噛み付くってのは、存外有用な攻撃の一つらしい。否、そんなことはどうでも良い。それより問題なのは。

 

「テメェ、まだ生きてやがったか」

「……」

「効かねェのか?」

「……なんのことやら」

「シラぁ切るんじゃねェよ」

 

 白々しく口元を隠すような動作をしたベアトリーチェ。一瞬の油断を見逃さず、爆弾を用いて飛び上がらず(・・・・・・)、地上を這うようにして走り出す。今までと違った動きに反応できなかったのか、無数の目はこちらを追うも体は緩慢に動いていた。

 

「ふっ!」

「っ……!?」

 

 辿り着くのは、ベアトリーチェの根本。そのまま足、もとい根のような部分を破壊しても良いが、一時的な攻撃を望んでいるわけではない。欲しいのはわずか一瞬でも良い、時間だ。

 

「でけェ弱点引っ提げてんなァ!!総合格闘技じゃ髪を掴むのは御法度だって知ってたか!!?」

「この……!」

 

 急ぎ振り払おうとするベアトリーチェよりも先に地面へ足を埋め込み、巨大化に伴って体積を増した髪の毛を掴んで思いっきり引っ張った。

 

「ぐっ……!」

 

 上体を逸らす形で迫る胴体。感覚の抜けた左腕で辛うじてショットガンを握り、神秘を込めて数発。か細い枯れ枝のようなその体は、されど撃ち抜くことはできなかった。

 

「潰れなさい!」

「っ!」

 

 振り払うことは諦め、その巨体を活かして質量攻撃を仕掛けるベアトリーチェ。丁度手の届く位置に来た胸と下半身を繋ぐ、人間で言うところの背骨に当たる部分を掴み取り。

 

「お、おぉおおおぉおおおお……!!」

「……は?」

「ら、あああああああっ!!!」

 

 そのまま右腕で持ち上げて、横方向へ投げ捨てた。

 

「フー……ナイッピー」

 

 本来であればこのまま追撃を仕掛けるところだが、それはせずに通信機で信号を送る。聖徒会がある程度の信号を見極められるのは把握済みだ。

 

「おのれ……よ、よくも!!よくも投げ飛ばしてくれましたね!!」

「さーて、どうなってるんだか……」

 

 体勢を整えこちらに向かってくるベアトリーチェに相対し、考える。

 何故光輪(ヘイロー)が消えたはずのベアトリーチェが生きているのか、これは簡単だ。一時的にあの化け物へ変貌するような変身を解いたのだろう。俺が殺したと勘違いして油断する、その一瞬を狙った。

 じゃあ、次の問題だ。ベアトリーチェに『ヘイローを破壊する爆弾』は効かなかったのか?

 

「ジワジワと炙りながら葬ってあげましょう!!」

「……」

 

 瓦礫でベアトリーチェの炎を遮り、反撃の隙を狙いながら片隅で思考を深めて行く。

 答えは『わからない』、だ。ベアトリーチェが爆破される現場は、確かにこの目で見た。あの効果範囲、あの距離。爆風の影響を受けたであろうことは確かだ。

 だが、防がれなかった保証があるわけではない。ただでさえアツコの仮面や『ヘイローを破壊する爆弾』のような訳のわからぬ兵器を生み出しているんだ、それが自分に牙を剥くとあればその対策くらいは講じているだろう。何より、爆破の直前に炎弾が消えた。俺に手痛いダメージを与える絶好の機会、意図的にだろうと逃すとは考え難い。

 じゃあどうする?警戒を強められる前に、もう一発『ヘイローを破壊する爆弾』をぶちかますか?

 

「……否ッ!!!」

 

 こちらに迫るベアトリーチェの体に髪の毛ロープをかけ、それを引っ張って宙へと浮かび上がる。即座に解き、また別の場所へ引っ掛けて。空中を機動するように移動を繰り返し、ベアトリーチェの攻撃を避けていく。合いの手のように時折カウンターの要領でショットガンを使いダメージを加え、確実に体力を削っていく。

 『ヘイローを破壊する爆弾』がベアトリーチェに効かない可能性がある以上、それに依らない殺し方が必要になる。

 

「ぐ、ふっ……!ちょこまかと!!」

 

 そんなもの、織り重ねた想定の範疇だ。『ヘイローを破壊』する方法。ベアトリーチェの頑強さを破りその命を奪う方法。

 こいつも、俺も、この世界のあらゆる生き物が。たとえどれだけおかしな耐久を持っていても、異常な腕力を持ち合わせていても、信じがたい回復力を持っていても。それが生き物である以上、必ず弱点があり。限界があり。死がある。

 肉体に取り返しがつかないほどのダメージ与え続ける。銃弾によるダメージの蓄積でも可能だと、そう習った。他には病死。餓死。窒息死。失血死。凍死。これらの共通点は……致命傷に至ってからの、継続ダメージだ。

 

「はあっ!!」

「っ……そう来たか……!」

 

 自身も巻き込んだ、広範囲の炎弾。引き伸ばされたように肥大した炎。爆弾で回避するよりも、受け切ってしまった方がダメージは小さい。

 髪の毛ロープで可能な限り散らし、受ける。感じるのは熱よりも衝撃。なるほど、これは。

 

「ノックバックのためか……!」

 

 一時的にであれ距離を取り、体勢を整える。それが狙いだ。であれば、それだけ追い詰められているという事。

 

「素直に従ってやる理由もねェなぁ!!?」

 

 吹き飛ばされた方向と逆方向に爆弾で再加速し、一気に距離を詰めようとして。

 

「ぶっ……!」

 

 突如として、何かに激突した。ベアトリーチェの体ほどではないが、硬い感触。

 

「岩……!?」

「あまり美しい方法とは言えませんが……あなたには有用でしょう」

 

 ミカがやっていたのと同じ。その大きな体躯を活かして、擬似的に再現するかのような攻撃。純粋な質量攻撃。

 

「なるほどね……!」

 

 炎の球と混ぜ込まれると、これが中々に厄介だ。それでいて、先ほどのようにベアトリーチェの体にロープをかけ翻弄しようとしても、岩で妨害され吹き飛ばされてしまう。

 

「足りねぇ脳味噌で考えたじゃねぇか!!」

 

 爆弾を入れている袋から取り出したのは、催涙スプレー。ベアトリーチェの目の前に投げつけ、ショットガンで複雑な穴を開け、中身を散らす。

 

「ぎゃっ……!」

「お前には中々有用だろ!!?」

「くっ……げほっ!!」

 

 その痛みを抑え込むかの如く花を閉じ、空いた両手はそれでもこちらを逃さない。どうやってこちらを観察しているのやら。

 ……だが。二つ、分かったことがある。

 今使用した催涙ガスは、CSガス。人工的に合成した化学物質を主成分とした、毒物だ。炎症を起こす類の。そしてたった今、咽せた(・・・)。攻撃を加えた際も呻き声を上げ、苦しんでいるのが分かった。

 その手の器官は一見すると見当たらないが……こいつは呼吸をしている。そして全てとは限らないが、毒物も有用である。

 

「っ……!これは……!!」

「あちゃ、バレたか」

 

 本当は暫くバレないようにしたかったんだけど……まあ、しょうがないか。

 

「毒ガス……!」

「大正解。上から落としてもらったぜ」

「そんなことをすれば、あなたも……!」

 

 まあ確かに、仮面をしているとは言っても毒物は毒物。今までの戦闘でガスマスクとしての機能は怪しいし、完全に防ぎ切れる保証はない。けどな。

 

「悪いが、この毒には慣れてる(・・・・)んでね」

「っ……!まさか……!」

 

 この毒は、微量ながら人間の体内で分解することが可能だ。だったら少しずつ摂取して、分解可能な量を増やしていけばいい。本来そんなことをすれば先に体がイカれちまうかもしれねぇが、そこはキヴォトスの生徒の肉体。無理矢理にでも耐えられた。食事に混ぜてしまえば、違和感なく摂取することだって可能だ。

 

「ま、もちろん相当に消耗するが……」

 

 致命ダメージを与え続ける。その一助。加えて。

 

「幸い、武器も物資も異常なまでにある」

「っ……!」

 

 空から落ちてきた弾薬を掴んでショットガンに装填、再び構え直す。

 飛行船から物資の支援。毒ガスの支援。この二つをフルに活用して、こいつに対し優位を保ち、隙をみてベアトリーチェ側の聖徒会の『ヘイローを破壊』、数的有利によって確実に死まで追いやる。

 これが俺の第二の矢。『ヘイローを破壊する爆弾』が使えない、その時の保険。本来なら、こちらの方法は避けたかった。殺しきるまでに、ベアトリーチェをゴルコンダに回収される可能性があるから。

 楽観的に考えるのであれば、ベアトリーチェは先の一撃で『ヘイローを破壊する爆弾』を使い切ったと思っているはず。セイアの暗殺は表向きに成功し、ナギサを殺すために与えられたものを使っていると、そう思ったのであれば。

 

「……」

 

 だが、最悪の想定をするならば。残り二発(・・)の『ヘイローを破壊する爆弾』の存在がバレているはず。だから、なればこそ。確実に隙を探る。今度は防ぐ余裕すら与えずに、確実に屠る。

 

「さあ!!第二ラウンド開始だ!!!」

 

 焦るな。逸るな。見極めろ。こいつを確実に殺すための、最適な行動を。




読者の方からファンアートをいただきました!

【挿絵表示】

オーバーライドパロのスオウちゃんです!キラキラとした目が彼女らしいですね……指にほっぺを当てているあざとさは姉モードのようで、とても可愛らしいです!ほーら、こんなにお姉ちゃんと言う幻聴が聞こえてきました!
ありがとうございます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。