ts転生者の生徒が、頑張るだけのお話。   作:おにっく

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戦闘訓練と、内乱開始

 俺がシアンとアンナと協力関係を締結してから早一ヶ月と少し。

 戦力を整え、内乱を可及的速やかに終わらせる、その準備。

 結論から言ってしまえば、驚くほどに順調だった。

 今まで争いを是としなかった穏健派達も、シアンがもう内乱は避けられないであろうことを交えて説得すれば、殆どの人間が納得し、戦う決意を固めてくれた。

 

 アンナが言っていたシアンのカリスマって、こういうことなんだな。そりゃ確かに本来のあのアホさバラしたくないわ。

 

 で、そんなこんなで。俺も一応色々手伝ってはいるものの、時間が余ることもある。特に休日などはその傾向が顕著だ。

 正直言って睡眠時間を削っている節もあるので、六歳のこの肉体にはかなり堪えるのだが…そう言ってる場合でもない。

 最善を尽くすに越したことはないんだから。

 

 と、いうわけで。そんな時、俺が何をしているのかと言うと。

 

「そらそらそらそら!!!避けないとダメージを受ける一方だよ!!」

「いやこんなの無理に決まっ、いったぁ!?」

 

 はい。こんな感じで、アリウス児童訓練学校の訓練場で、シアンと戦闘訓練をしています。

 殆どボコボコにされてるだけだけど。

 シアンの方は銃の代わりに大量のゴムボールを投げてくる。俺は実銃と爆弾。

 

 …ゴムボールなのにキヴォトス人の肉体にダメージ与えてくるのヤバすぎないか?

 

「ほぉら!!反撃してみなよ!!頭を回して、工夫して!!全部相手より劣ってるんだから!!」

「こなっ…!クソッ!!!」

「砂で目潰しって、舐めてるのかなぁ!?呼吸ひとつで全部吹き飛ぶよ!?」

「そっちはブラフッ!」

 

 砂を拾う時に地面に設置した爆弾を背にし、その爆風で一気に距離を詰める。

 

「へえ!!悪くないけど…あまーい!!!」

 

 このクソゴリラッ!?ショットガン受けても一切怯みやがらねぇ!?

 

「今度はこっちから、いっくよー!!」

 

 シアンに腕を掴まれ、空中五メートルほどの高さまでぶん投げられる。

 そのままシアンは腰にグッと拳を構え…おい待て。

 

「耐えてみなよ!!!」

「ちょっと待って本気で殴られたら俺死、ぐへぇ!?」

 

 体を捻って避けようとするも、おそらく亜音速はあるであろうその拳に追従され。

 結局避けること能わず、そのまま訓練場の壁まで吹き飛ばさた。

 

 

 

 

「流石にあれは大人気ないと思うッス」

「ほんとほんと」

 

「いや実戦に向けた訓練でしょ!?アレくらいやらないと意味ないよ!」

 

 夜の冷たい外気に触れてひりつく頬を抑えながら、アンナと共にシアンを糾弾する。

 

「つーか、あんだけ戦えてる時点で幼女も十分やばいッスけどね…すでに私じゃ勝てないッスし…多分、平均的なアリウス生より少し強いくらいじゃないスか?」

「いやだからそこに関しちゃ幼女じゃねぇし」

「…確かに、幼女の戦術には目を張るものがあったッス。でも、本気なんスか?内乱に参加するって」

「…ああ。俺は見てるだけ、ってのも嫌だからな」

 

 そう。もうすぐこちらから攻撃を仕掛け、始まるであろう内乱。そこには俺も参戦する。

 実際、俺の体は闇討ち、奇襲などに向いているはずだ。

 一見すると幼女の体、見た目であり、それゆえ狭い空間を通り抜けることだってできるし、何より見た目で警戒心を解かせることだって可能だ。

 しかし中身は六歳児ではあり得ない戦闘力、知能を持ち合わせて…る、よな…?ちょっと自分でも不安になってきた。

 

 まあ、何より、だ。自分だけ戦わずに安全圏から見てるだけって、そんなの俺自身が納得できない。

 

「…実際問題、ちょっと助かるのは事実ッス。副会長、サリアにはダメージ与えれないくらいでしょうけど…シアンちゃんの道中のサポートと、可能なら過激派の中でも強めの連中を闇討ちできるッスし」

「ねぇ、本当についてくるの?危ないよ?私一人でも十分なんだよ?」

「頭脳面はヒャクパー不十分だろ」

「ええ、ホントその通りッス…」

「二人してひどくない!?私結構真面目に心配してるんだよ!?スオウちゃんのこと!見た目だけならちっちゃい子だし!」

 

 …心配してくれるのはありがたいけどさぁ。

 

「そのちっちゃい子の顔面を殴り飛ばしたのはどこのどいつだと…」

「え?それは別に良くない?訓練だし、本気でやって届かないくらいじゃないと意味ないよ?」

「…」

 

 ……いや、頼んだのは俺だけどね。ちょっと倫理の基準がわからん。

 

「それに…スオウちゃん、まだ実力が足りてないと思うの。特に、攻撃力が甘いかも」

「攻撃力、ねぇ…」

 

 よく言われるけど、イマイチどうすればいいのかわかんないんだよなぁ…。

 

「うん。スオウちゃん、体に力込めるのは得意でも、武器に力込めるのは苦手みたい。だから、素早く動けるしちょっとやそっとじゃないやられないけど…決め手にかけると思うんだ」

 

 …武器に力を込める。よくシアンが使う表現だが、これがよくわからない。

 いつものアホさを発揮しているのかと、以前アンナにも聞いてみたところ。

 

『え?あー、はい、そうスね。生徒は大体みんなやってるッスよ、それ。で、力をどんくらい込めるかによって銃や爆弾…武器の威力は変わってくるッスし、体に力込めりゃ強くなるッス』

 

 とのことだったので、シアン特有のものではないようだった。

 

 ひょっとすると、これが原作で言うところの神秘、なのか…?

 体の方も特段意識してやってるわけじゃないんだけどなぁ…。

 

「だから、やっぱり今のスオウちゃんにはショットガンが向いてるんだと思う。体術で距離を詰めて、翻弄して、体勢を崩して、撃つ。威力が高いから、よりダメージを与えれると思う」

「…シアンちゃん、戦いに関して話す時はアホじゃないッスよね。生まれながらの戦闘狂ッスか?月見たら巨大化しません?」

「戦闘民族じゃないんだから…」

 

 …ドラゴンボール的なのあるんだ、この世界。

 

「あっ、あと!!!目潰しの後のアレ!!爆弾で加速するの!アレ、絶対ダメだからね!?すごく危ないことをしてるんだよ!?」

「あー、それは私も言おうと思ってたッス」

「えっ、そうなの?別に死ぬワケでもあるまいに。効率的だし、使いやすいと思うんだけどなぁ」

 

 自分より相手の方がスピードがあっても、アレなら補うことができる。

 

「それとコレとは話が別でしょう…確か、幼女は別の世界から来た、って言ってたッスよね」

「うん。銃で撃たれたら普通人は死ぬ世界」

「…そうッスね、サッカーってあるじゃないスか」

「あるけど、津波にボールで穴あけたりしないよ?」

「知ってるッスよ!?確かにサッカーも漫画で知ったッスけど、フィクションと現実の区別はついてるッス!…とにかく。アレでボールに足を伸ばしても届かないからって、膝の関節外して届かすようなものッス。命には関わらないけど、危険だし普通はやらない」

「あー、なるほど?」

 

 確かに、常識的な人間ならそんなことはしないな。

 滅茶苦茶痛いし、何より危ない。

 

 …俺のアレも滅茶苦茶痛いし、確かに良くないのかもな。

 

「それにね?もしスオウちゃんが武器に力を込めるのがちゃんとできるようになったら、自分で考えて武器の威力も調整しなくちゃいけないから、余計危ないの。一歩間違えれば大怪我だよ?」

「でもすぐ治るじゃん」

「痛いものは痛いでしょ…傷跡だって、残っちゃうかもしれないんだよ?」

 

 うーん、確かにそうだけどさぁ…そう言ってる場合じゃないのも確かなワケでさ。

 まあ、一応心には留めておくか。

 

「…ひとまず、今日の訓練はここまでだね」

「そうッスね。それと、そろそろ奇襲作戦…内乱を仕掛ける計画を始めるッス。つっても、私の中では大体仕上がってるんスけどね」

「じゃあまず、その計画とやらの──」

 

───共有をしてくれ。

 

 そう、言葉を紡ごうとした、次の瞬間。

 

 耳を劈くような、臓器を震わせるほどの爆発が起きる。

 一つや二つではない。幾つもの重なり合った、爆発の熱気がこちらにも伝わってこようかというほどの轟音に、耳を抑える。

 

「ぐっ…!」

「ね、ねぇ…この音がしてる方向って…!」

「…アリウス分校の寮と、生徒の居住域があるッスね。こんな夜中に、ただ喧嘩が起こっただけとは考えにくいッス」

「っ、まさか、このタイミングで…!?」

「…だとすりゃ、悪手もいいとこッス。奇襲だろうとなんだろうと、そういう時のために穏健派の戦力の居住地はバラけさせてる。シアンちゃん、今の爆発、何回起こってました?」

「六回。そんなに離れた場所では爆発してないよ」

「その程度じゃ多少戦力が削がれる程度ッス。今の戦力なら、立て直せれば問題なくこっちが勝つ…一体何を考えて…?」

 

 …なんだか、嫌な予感がする。

 そもそも、シアンは向こうが内乱を仕掛けてくるのは早くても三ヶ月後と予想していた。

 あと二ヶ月弱もある。無論、俺たちの戦力増強で焦った可能性がないワケでもないが…なぜ、このタイミングで仕掛けてきた?

 

「…いずれにせよ、もう覚悟するしかない。戦いの火蓋は切られた。内乱が、始まるッス」

「ッ、じゃあまず私はみんなを集めないと」

「いいや、シアンちゃん。それは私に任せろッス。アンタは幼女と一緒に…できることなら、副会長を倒してほしいッス」

「っ…!」

「今この瞬間においては、こっちが不利なのも確かッスからね。立て直しと、戦力を集めるための時間を稼ぐ意味もあるッス。でも、アイツも姿をくらませてるはずッスから、基本的には戦力を削ぐ感じでお願いするッス。アンタら二人ならそう簡単にやられやしねぇでしょ」

 

 …大丈夫。覚悟していなかったワケじゃない。

 ただ少し時期が早まって、予想外の事態が起こっている。それだけ。

 

「…ねぇ」

「ついていく。今更、やっぱやめない?だなんて、言わないでくれ」

「…絶対、私から離れないでね」

「…わかってる」

「状況判断は現場の幼女に任せるッス。とりあえず今回の爆発を起こした連中を、現場にいる穏健派と連携して倒してくれッス。現場にはこっちから通信しておくんで。私たちも戦力を整えたらすぐに向かうッスが、副会長の姿が見えたなら最優先で倒して拘束して欲しいッス」

「わかった」

「うん、任せて」

 

「…いいスか。やばくなったら、いや、やばくなる前に絶対帰ってこいッス」

「ああ」

「うん、アンナちゃんも…気をつけて」

 

 アンナとシアンと一旦別れ、戦いの準備を始める。

 初めての実戦。ぶっつけ本番。絶対に失敗はできない。

 

 

 銃弾を装填する手が震えて、入れづらい。

 

「…っ、しっかりしろっ…!」

 

 両頬を叩いて、震える手をもう片方の手で抑えて、準備を進める。

 

「…絶対に、勝つ」

 

 誰に向けたワケでもない決意が、虚空へと溶けていった。




※第4話「計画と現生徒会長」の前書きにもあるように、矛盾が生じていたので若干セリフを修正しました。

修正前ですとシアンが内乱を止めるために生徒会長になったと言っています。
しかし生徒会選挙がある一年前の時点では、サリアは自分が生徒会長になれると思っているので、内乱を本格的に起こそうとする人間がいないんですね。
そのため、前後関係に矛盾が生じてしまいます。

以上が今回の修正の理由になります。今までもちょこちょこ直したい部分とかは直していたのですが、今回は自分では結構大きなミスだと思ったので後書きで書かせていただきました。

以後、このようなことがないよう注意します。申し訳ございませんでした。
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