ts転生者の生徒が、頑張るだけのお話。   作:おにっく

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巡る想いを託されて

 アリウス自治区内に突如として出現した、三位一体の巨大なロボット。目を輝かせる先生の傍で、アンブロジウスを二体、掴んで投げ飛ばし。

 

『稼働限界が近いね……!マユミ!!アシリ!!一気に決めるよ!!』

 

 通路の奥側まで聖徒会を飛ばし、掴んでは投げ、その強大と言って差し支えない質量を武器に飛ばし続ける。

 

『ハンッ!!言われるまでもないわっ!!アシリ!!』

『う、うん!!』

 

 ロボットの中で制御を行うアシリがレバーを引けば、先程まで右腕の装甲となっていた部分が輝く黄色の剣へと変わる。

 

『T-T-T-TRINITY!! ARE YOU READY!?』

『切り払えっ!!』

 

 そして、マユミがそう命令を行った瞬間。

 

『SPARKIIIIING……!!! SLURSSSSSSSS!!!』

 

 聖徒会の複製たちは、一人として残らず飛ぶ電撃に行動不能にさせられた。

 

「っ……!凄まじいな……!」

 

 僅かながらその被害に巻き込まれ、少々苛立ち気に呟くサオリ。だが、あれの力があれば、あるいは。

 

「ベアトリーチェにも、余裕を持って勝てるかもしれない……!」

『ごめんっ!!それは無理なのっ!!』

 

 そんなサオリの言葉を強化された聴覚で拾ったアシリが、急いでそう返す。

 

『マユミちゃんの機体は動かなくなってたし、サユリちゃんのももう限界……!私のも、過重積載でオーバーヒート直前!!次の一撃が最後!!』

「……そうか」

『だから道はッ!!!私たちが切り開く!!!』

 

 残念そうに口にするサオリが、何かを言い出すよりも早く。

 

『M-M-M-MILLENIUM!!! ARE YOU READY!?』

『十年前から!!!』

『MAXIMUM……!!!RAAAAAAAY!!!』

 

 青い光線がアリウス自治区の建物を吹き飛ばし、バシリカへ向かう道を作り出した。

 

『SYSTEM-DOWN……』

『くっ……!』

 

 と、同時に、キヴォトスロボもその姿を保つことができず、バラバラに崩れ去ってしまう。

 

『……ありがとう。ここまで戦ってくれて』

 

 同情、そして感謝。物言わぬ作り物に人間へ向けるそれと違わぬ言葉を、誰かが口にした。

 そして、マユミ、サユリ、アシリがその残骸から脱出を果たしたところで。

 

「っ……!急げ、三人とも!!」

 

 聖徒会が復活を始める。このままでは、先の状況に前戻り。キヴォトスロボもいない今、それは避けたい。その考えから急かしたのだが。

 

「あー……良いこと?よく聞きなさいアリウス諸君、あと補習授業部、ついでに先生」

 

 マユミが取り出したのは、バックルが抜け落ちたようなベルト。それを腰に巻きつけている。否、マユミのみではない。サユリとアシリも同じようにしていた。

 

「コイツらは私たちが足止めする。先へ進むのよ」

「っ……!正気か!?」

 

 サユリの強さは知らないが、アシリはあまり強くないとアズサから聞き及んでいる。マユミとて、サオリに比べればその実力が劣るのも確かだ。

 

「あ、アシリさん!?ダメです、そんな……!」

「ヒフミちゃん、ありがとう。……で、でも、これが私たちの役割なんだと思う」

「アシリ……」

「て、手伝ってくれ、って言ってたのはアズサちゃんだよ。私たちだって、あの人を助けたい」

 

 声は震えていた。強い緊張を伝え続けるような声色。それが由来するところは、想定するまでもない。

 

「違う……!私は別に、自分を犠牲にしてまでそうして欲しいわけじゃ」

「あはっ。何か勘違いしてるみたいだね」

 

 説得を試みようとアズサが口を開くも、それはサユリによって遮られてしまった。

 

「そうよ……切り札(Joker)は一枚だけじゃないんだから!」

「三人でやるのは久しぶりだねー」

「うぅ……!あれほんとにやらなきゃだめかなぁ……!?」

 

 三人が、何かを取り出す。それぞれの髪の色に適応するような、手帳サイズのナニカ。模様が刻まれた、光沢のある金属板。

 

「あら、じゃあやめる?」

「や、やだっ!!私だって役に立つもん!!」

「はいはい、いーからさっさとやるよ!」

 

 それらをベルトのバックルに当たる部分に差し込み。

 

『変身!!!』

『ACCEPTED!!! LEADY? LAZY? SUPER LADY!!!』

 

 生誕を祝福するような、場にそぐわない音声。それとともに強い光に包まれ。全身をタイツのような布と金属の装甲に包まれた、それぞれ赤、青、黄色の姿へと変貌した。

 

『CHANGE!!! THE BEGINING!!!』

「赫き炎は自由の導!!ゲヘナレッド!!」

「蒼き清流は智慧の証!!ミレニアムブルー!!」

「き、黄の雷は慈愛の兆!!トリニティイエロー!!」

『キヴォトス戦隊!!ここに参上!!』

「“……”」

 

 謎の宣言と共に、後ろで爆発が起こりそうなキレのある動きを披露した。

 あまりに唐突な出来事に、その場の全員が何も言えないまま静まり返る。

 

「……ね、ねぇマユ、ブルー!!やっぱりこれよくないって!!」

「というかこれじゃあ戦隊なのかヒーローなのかわかんないだろ!?統一性出せよ!!」

「やかましいわよ厄介オタク!!正体を隠せればそれで十分でしょうが!!」

 

 そんな周囲を置き去りにし、三色の変態たちは口喧嘩を始める。その隙を狙うように、聖徒会の一人が動きを見せ。

 

「っ、甘いよぉ!!」

 

 瞬時に気づいたアシリが、目に止まらぬほどの素早さで殴り飛ばした。

 

「なっ……あ、アシリ!?あんたそんなに強かったの!?」

「ふ、ふっふっふっ……マユミちゃんが開発したパワードスーツ……!!これをつけてる間だけなら、私も戦えるよぉ……!!」

「イエロー、笑い方悪役みたいになってるわよ」

 

 徐々に、徐々にその数を増やす聖徒会。アンブロジウスも先ほどより数を減らしたとはいえ、復活の兆しを見せ始めている。スオウの安否がわからない以上、ここで足止めをされるわけにもいかない。

 

「……さ。もうあまり時間もないわ。ここは私たちに任せて、先に行きなさいッ!!」

「っ……!頼んだぞ!!」

「アシリさん。必ず、ご無事で」

「……うん!」

「……私たちの、大切な……憧れの恩人(ヒーロー)のこと!よろしくね!」

 

 後ろ髪を引かれる気持ちをグッとこらえ、三人を除いた全員がバシリカへと急いだ。

 

「さーて……マユミ、アシリ。全力で行くよ。足引っ張らないでね」

「勿論。アシリ、オーバードライブは慎重にね」

「わ、わかってるよぉ……!!」

 

 どこか、いつもよりもさらに弱々しく感じ取れるアシリ。表層こそ取り繕っているが、付き合いの長い二人にはわかる。アシリの異常が。

 どこか、マユミとアシリが大喧嘩をしたあの時に近い雰囲気を感じとっていた。

 

「それじゃあ……いつも通り!!三人力合わせて、戦うわよ!!」

 

 一抹の不安を誤魔化すように、戦いが始まる。彼女たちが待ち侘び続けた、恩返しをするために。

 

 

 

 

 そして、青い熱線により削れた地形を走る一同。未だに一部が赤熱し、ガラスのようになっている場所さえあった。

 

「と、とんでもないね、あれ……」

「あれを警告なしで撃つとは……ヨセ、あなたはまだ報告ができる分優良ですね」

「ヤコちゃん?それ褒めてないよね?」

 

 最悪の結末から目を逸らし、前へ進むためにくだらない話を続けながら走り続ける。

 

「はぁ……はぁ……!」

「コハル、無理はしないで。私が背負う」

「も、問題ないわよっ!まだ走れるし!」

 

 戦闘のために訓練を積んだわけではない補習授業部はわずかながら体力面で劣るものの、根性でなんとか追いついていた。

 

「……お前が阿慈谷ヒフミか」

「え?わっ!?は、はい!」

「アズサが随分世話になったらしいな」

「え、えぇっと……!」

 

 いよいよ体力が限界を迎えかけたヒフミを担ぎ上げ、サオリは軽い挨拶を交わす。一方のヒフミといえば、疲労と緊張によりそれどころではなかった。

 

「リーダー、言葉選び最悪。ヒフミだっけ?他意はないよ、そのままの意味。安心して」

「は、はい……!」

「す、すまない、怖がらせるつもりは……」

 

 冷静なように見えてどこか掴みどころのない、天然が入った雰囲気。少しアズサに似ている気がした。

 

「私の名前は錠前サオリ。アズサが所属するアリウススクワッドのリーダーだ。よろしく頼む」

「は、はい!わ、私は阿慈谷ヒフミです!特に肩書きがあるわけではありませんが、補習授業部の部長を務めさせていただいていました……!アズサちゃんにはいつもお世話になっていて……!」

「……そうか。アズサは昔から人当たりが良かった。だが、誤解されることも少なくなかった。うまくやれていたのなら、何よりだ」

 

 アズサに聞かれないよう少し距離を離しながら、ヒフミと会話を続ける。

 体力に余裕が生まれてきたため周りを見てみれば、コハルはすでに限界を迎えてアズサに背負われていた。ハナコもそう余裕があるわけではなさそうだ。先生はもはや満身創痍に成り果てている。

 

「おい、先生とか言うの。お前も体力ねェだろ、キヴォトスの外の人間なんだから。背負ってやる、来い」

「“ゲホッ……あ、ありがと、グフッ……!”」

「……」

 

 見かねたサウが先生を背負う。図体の割に体力がないやつだとぼやき、小さなため息を吐いた。

 

「……ったく。小隊長は何を考えてこんなのを頼らせようとしたんだか」

「そうでもないよ。力が全てではないんだ。シャーレが持つ繋がりは凄まじいものさ。小隊長も、どちらかといえばそちらが目的だったんじゃないかな?だろう、シオ」

「……私の調べでは、そうなってるわ」

 

 そうして、バシリカに向かって走る。ただ、ひたすらに。走り続ける。そうして、いよいよマユミの光線の効果範囲も途切れたのだろう。その景色は、見慣れたアリウス自治区の景色へと戻って行った。

 そして、その地に足を踏み入れて。

 

「っ……お出ましだな、聖徒会」

 

 存在にベアトリーチェが気づいたのか、聖徒会が現出する。それも、一体や二体ではない。先ほどまでマユミ達に割いていたリソースも使用しているのだろう。大量の聖徒会が。

 

「ま、まずいですね……!この量の聖徒会は、流石に……!」

「大丈夫。分隊長も揃ってるし、逃げることに徹すれば問題ないよ」

 

 この戦いは、間違いなく時間との勝負。ベアトリーチェがスオウ、もしくはその遺体を生贄に儀式を完了させるのが先か。サオリたちがバシリカに辿り着くのが先か。これはそういった戦いだ、そのことを理解していた。

 

「まァ、とにかくぶっ飛ばす!!それができりゃあ問題ねェだろうよ!!」

「っ、第一分隊長、待ちなさい!!」

 

 だからこそ、誰よりも早く第一分隊長、サウが動く。続くようにしてレイ、ヨセも武器を構え。

 

「……あ?っ!?」

 

 直後現れた、明らかに異質な聖徒会。彼女により、サウは吹き飛ばされた。

 

「っさ、第一分隊長!」

 

 彼女のフォローに回るようにして、準備を整えたレイとヨセが間に割って入る。

 

「気にすんな!!なんとか防いだ!!だが……!」

 

 スカルフェイスに近いガスマスクを被り、拘束具のような衣装を身にまとった、夕闇の白髪を持つ聖徒。

 

「っ、あれは……!バルバラ……!!完成していたのですね……!」

「“バルバラ……?”」

「ユスティナ聖徒会の、最も偉大だと呼ばれた聖女の一人だね。でも、今は割とそんなことどうでもよくて」

 

 バルバラが両の手に構えたマシンガンとランチャー。その引き金を、カチリ、と。ほんの小さな動作で引く音が聞こえた。ただ、それだけだった。

 しかし、ほんの数秒も間を置かずして。

 

「ぐぅっ……!」

「うわあっ!?」

 

 レイとヨセ。分隊長の中でも上位の戦闘力を誇る二人が、羽虫を振り払う程度の手間で一時戦闘不能まで追い込まれる。

 

「……重要なのは、歴代のユスティナ聖徒会で。紛う事なき、最強という点だよ。それも、強化され改造を重ねられた状態の、ね……」

「“……!”」

 

 ただそれだけのことでも、絶望的な状況。だというのに、それに加えて。

 

「アンブロジウスまで……!」

 

 召喚されるのは、四体のアンブロジウス。先ほどのものよりも数を減らしてはいるものの、以前個々の強さに変わりはない。

 

「ね、ねぇ、サウちゃん……あれ、小隊長とどっちが強い……?」

「……さぁな。だが、あれが通常の聖徒会と同じく復活するってんなら……比べるまでもねェだろうよ」

 

 立ちはだかるのは、聖園ミカ、そして剣先ツルギ。彼女たちと肩を並べる実力を持つ、桐花スオウ。彼女たちと比較にならないほどの戦闘力を持った、偉大なる聖女(バルバラ)。失敗作の人工天使(アンブロジウス)。そして、不死の軍勢(ユスティナ聖徒会)

 誰か一つを取っても厄介だというのに、それら全てが揃ってしまったのだ。もはや勝ち目など……その可能性が、誰かの頭によぎり。

 

「“みんな、武器を構えて!!サウ、レイ、ヨセ!!三人はバルバラの相手を!”」

 

 直後出された先生の指示によって、その思考は妨げられた。

 

「て、めェ……」

「“シオ、ヒフミ、ハナコ、コハル!聖徒会の相手を!残る全員で、アンブロジウスに対処しよう!!”」

 

 先生の目を見る。タブレットを見据える彼の目に、諦めは映っていなかった。勝利の可能性を信じ、疑いなどカケラも抱いていなかった。

 

「“ここまで来た!あともうひと頑張りだよ!!スオウに会いに行こう!”」

「……クッ、アハハッ!!良いねェ!!気に入ったぜ!!お前はあの馬鹿小隊長そっくりだ!!」

 

 そっくりな目だった。誰しもが出会った、彼女に。

 諦めるなだとか、虚しいことなんてないだとか。綺麗事ばかりを並べて、希望ばかりを謳って。だからこそ、前を向かせてくれた彼女に。

 そんな教えに反して、一人で犠牲になろうとしている彼女に。

 

「だが、その選択肢は不正解だ……そうだろ、テメーら?」

 

 同意を促して、サウが後ろを向く。分隊長たちの方を。

 

「うん……私たち……そこまで、弱くない……」

「あんまりナメられちゃ困るね!これでも小隊長直々に鍛えられたんだし!」

「それは君だけだろう、レイ……まあ、小隊長はできるだけ死なないという約束だからね。信じて待つとしよう」

「“どういう……”」

「ここは私たちだけで十分だということです。あまり時間もありませんから」

 

 彼女を助けるためにという理由だけで。彼女がいたという事実だけで。それだけのことで、力が漲る。希望が見える。

 

「……小隊長ってばさ。そんなに大変なこと抱えてるって、知らなかったんだ。私たち。でも、ヘラヘラしてて……それがどれだけツライことか、私は知ってる」

 

 分隊長たちが、銃を構える。バルバラの方へと。ほんの一瞬でも、道を切り開くために。

 

「……スクワッド。あなた達に任せるのは癪だけど……でも、お願いよ。ここは私たち分隊長でなんとかするわ」

 

 珍しくもシオが、その目を見据えて。

 

「……私の……私たちの、大切なお姉ちゃんを……助けて……!」

「……任せろ。あの分からず屋は、引っ張ってでも連れ帰ってやる」

「ちょっと!!お姉ちゃんに何するつもりよ!!?」

「言葉の綾だ」

 

 どこか気が抜けてしまうような終わり方で、けれども確かに任されたのだ。

 

「とはいえ、流石にキツいものはキツいけどね……」

「でしたら、聖徒会は私たちがお相手しましょう」

 

 そんな弱音に反応したのは、ハナコを始めとした補習授業部だった。

 

「……まあ、手伝うって約束だもん。し、仕方なくよ!」

「い、至らぬところもあるとは思いますが、よろしくお願いします……!」

「……ハッ。頼りになる助っ人だ。シオ、手伝ってやれ」

「命令しないでちょうだい……!」

 

 彼女たちも、聖徒会が相手であれば十分以上に戦闘が可能になる。しかし、それが意味することは。

 

「……ヒフミ」

 

 アズサとの、一時的な別れだ。

 

「……アズサちゃん。今度こそ約束してください。必ず帰って来て……そして、海を見に行きましょう!!必ず!!……で、できることなら、アリウスの皆さんも一緒に!」

 

 けれど、彼女たちはもう乗り越えた。きっともう大丈夫だと、誰一人としてだって疑うことなく、そう信じていられる。

 

「……うん。約束する。絶対に、無事で戻ってくる」

「当たり前よ!!また勝手にいなくなったら承知しないから!!」

「くれぐれも気をつけてくださいね、アズサちゃん」

 

 桐花スオウを助けてくれという願い。必ず無事で戻ってくるという約束。二つも、託された。大きなものを、二つも。あまりに多くの想いと、人物から。

 

「ヒフミ!!コハル!!ハナコ!!」

 

 だというのに、どうしてだろうか。アズサにとって、それらはまるで重荷に感じられなかった。むしろ。

 

「……行ってきます!!」

 

 前へ進む活力のように、体中を巡っているようにさえ感じ取れた。

 

「はい!また後で!」

 

 返事はシンプルなものだった。並べ立てる言葉など必要もなかった。

 ただその目を合わせて、同じ視点で話したからこそ。お互いのことを、ただ信じられたから。

 

「“……行こう、スクワッド!”」

「ああ!」

 

 背中を任せて、先へと進むことができるのだ。

 

 

 

 

 バルバラを、アンブロジウスを、聖徒会を、その全てを任せて。スクワッドと先生は、バシリカへと向かっていた。マユミの作り出した道も途切れ、それから先は複雑に入り組んでいる。

 

「おそらく、聖徒会のリソースはアレで限界だろう……分隊長たちと……アズサの友人が足止めをしている間は大丈夫だ」

 

 聖徒会による追撃はない。教員は現れるが、それらは容易に対処可能なものだ。

 道中トラップ類はあったものの、そのほとんどを無視するように走り抜ける。体へのダメージは多少なれどもあるが、トラップの構造はわかっていた。最小限のダメージに抑えられる。

 ただ、問題があるとすれば。

 

「……このトラップさ」

「ああ……ベアトリーチェが仕掛けたものではないな」

 

 誰かが、この先に向かうのを拒絶する意志を感じられる。その構造の癖に、見覚えがあった。

 

「というか、これって……!」

「……多分、スオウの」

 

 爆発の音が、どこか遠くで聞こえる。非常識、異質と言い換えても良い戦法を使う彼女特有の、連続するような爆発音。

 

「この近くにいるな」

 

 痕跡から見るに、そう遠くに作られたものではない。つい先程作られたもの。

 

「っ、貴様ら!!スクワッドか!!」

 

 そんな分析をしていると、数人の教員に発見される。

 

「チッ……!」

 

 この狭い空間では、戦闘は避けられない。先手必勝と、一気に距離を詰めて。

 

「妹に……手を出すな……!」

 

 見覚えのある、白い髪。いつも内側に身につけている装備こそないが、フードのついたコートを羽織っている。何より、相手のことを妹呼ばわりする異常な言動。

 

「っ……スオウ!!」

 

 様々な感情が渦巻いて、ぐちゃぐちゃに混ぜ合わされて。それらを吐き出すように、名を呼ぶ。随分と呼び慣れた、その名前を。

 

「……」

 

 けれど、彼女から返ってきた反応。それだけは、今までと違っていて。

 

「……どうして来たんですか?」

「っ……!?」

 

 彼女からの、今まで向けられたことのない敵意。そして、怒りだった。

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