EYESHIELD21 天使の軌跡   作:沢霧春慈

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勢いで書いていますので色々とキャラやルールが違うかも知れませんが気にしないでください。


序章 天使爆誕
序章


西暦2008年12月25日―――イエス・キリストが生誕した日を祝う日だが、日本の世間ではクリスマスと呼ばれるお祭りの日である。

 

 恋人や家族と過ごしたりする者がほとんどだが、雪が降る夜の東京スタジアムでは今年一番の大勝負が行われようとしていた。

 

 全国高等学校アメリカンフットボール日本最強決定戦“クリスマスボウル”―――東日本の頂点に立った高校アメフトチームと西日本の頂点に立った高校アメフトチームが日本最強の座を賭けて闘う夢の舞台。

 

 アメフト好きな者にとっては興味を惹いてならない一大イベント。おまけに今年は東西共に奇跡を起こして夢の舞台まで駆け上がってきた新鋭のチームだ。

 

 東の代表校は創部二年にして部員数わずか十五名。

春秋九連覇の神龍寺ナーガ、無冠の王こと王城ホワイトナイツ、最強のラインマンが所属する白秋ダイナソーズなどの強豪を倒してきた超攻撃型のチーム。

 

西の代表校は創部初年にして部員数も同じく十五名。

全ての始まりにして全ての頂点と呼ばれ、クリスマスボウルが始まって以来全勝を重ねてきた帝黒アレキサンダーズに始めて公式戦で黒星を付けた選手個性豊かな最恐攻撃チーム。

 

 それゆえに今年のクリスマスボウルはアメフト関係者にとっては注目の的であり、自分の目で見ようと東京スタジアムは観客で埋め尽くされていた。

 場内は和気藹々としており、観客達は試合が始まるのを待っている。

 

 『本日12月25日! ついにッ、ここ、雪の東京スタジアムに於いて―――東の王者と西の王者が激突ッッ!! 最強は果たしてどちらなのか!!? 全国高等学校アメリカンフットボール日本最強決定戦クリスマスボ~~~~ゥル開幕!! まずは選手紹介からです!!』

 

 場内にテンションの高い実況アナウンスが流れ、東側の選手から選手紹介が始まる。

 選手がチームのマスコットキャラクターを模した入場ゲートから選手紹介されながらフィールドに現われる度に、場内は歓声に包まれる。

 東側の選手紹介が終わると、次は西側の選手紹介が始まった。

 白いユニフォームに身を包んだ選手達が次々と現われ、拍手で迎えられる。

 

 『そしてフィールドを駆け抜けるのは! 時代最強最速のランナーにして超光速のランニングバック、“アイシールド21”小早川瀬那!!』

 

青いアイシールドが付いたヘルメットを腕で抱えた小柄な少年・小早川瀬那がフィールドに現われると今まで以上に大きな大歓声が起こる。

 会場にいるアメフト関係者は彼を見る為に来ていると言っても過言ではない。

 “アイシールド21”小早川瀬那というアメフトプレイヤーにはそれだけの価値がある。

 

 「すごい人だ、前よりも人が多い」

 

フィールドに出た瀬那は昔の懐かしさを感じながらベンチに向かう。

 そこには瀬那が所属するチームの個性豊かな選手達、マッチョな外人の監督権顧問、悪魔みたいな主務、美人の敏腕マネージャー、気の弱いトレーナーが揃っていた。

 

 「いよいよだな・・・やっぱり前もこんな感じだったのか?」

 

 感慨深く会場を見渡していた瀬那に声を掛けたのは長身の美少年。チームの司令塔であるクォーターバックを務める瀬那の親友だ。

 彼に声を掛けられた瀬那は小さく頷き、

 

 「前の時は大和君と試合に勝つ事しか考えてなかったから、あまり観客とか憶えてないけど前よりも多いと思うよ」

 「お前も奇特な人生を送ってるな。青春の高校生活を二回も楽しめるなんて役得だぞ」

 「確かにそうだね」

 

 親友の言う事は尤もだと思いながら瀬那は敵側のベンチを見る。

 そこには嘗てのチームメイトの姿がある。

自分を無理矢理アメフトの世界へと引きずり込んだ悪魔のクォーターバック。

デブで鈍足で気弱だけど誰よりも優しくて力強いラインマン。

老け顔の飛ばし屋キッカー。

キャッチに命を賭けたサル顔のレシーバー。

勉強漬けでスポーツ経験ゼロだが、誰よりも心の強い頭脳レシーバー。

バカで目立ちやがり屋のタイトエンド。

いつも仲良くつるんでいる不良のラインマントリオ。

小柄でいつも何を言ってるのか理解できないけどパワフルなラインマン。

影が薄い陸上部からの助っ人。

無類の酒好きで金使いの荒いトレーナー。

いつも自分の心配をしてくれていた幼馴染のマネージャー。

そして、いつも自分を応援してくれたチアリーダー。

何人か知らない顔がいるが、間違いなく敵は嘗て共にクリスマスボウルを制覇した泥門デビルバッツだ。

 

だが彼らは誰も自分の事なんか知らない。

そう思うと寂しく感じる。彼らと築いてきた絆が全て失われた様なものなのだから。

自分の人生はあの日、一度リセットされてしまった。

 

「なに辛気臭ぇ顔(ツラ)してんだよキャプテン」

 

瀬那の隣に立ち、その肩に逞しい手を置いて話しかけてきたのは親友のラインマンだ。

どうやら彼はデビルバッツの面々を悲しそうな顔でぼんやりと見ていた自分が気になった様だ。

 

「え、あ、ごめん?」

 

まだ出会って一年足らずだけど、クリスマスボウルを目指して苦楽を共にしてきた仲間達がいる。

そんな彼らよりも昔の仲間に今でもこだわる自分が情けなく思って瀬那は謝った。

 

「―――行こうみんな。頂点をもぎ取りに!」

「「「「「おう!!!」」」」」

 「選手整列!」

 

瀬那の言葉にチーム一同が返事を返し、審判が試合前の両チームの選手整列を伝える。

 両チームがフィールドの中心に整列する。

 

 『さあ遂に日本最強の座を賭けて東西の最強チームが激突します!! 東の王者・泥門デビルバッツVS西の王者・誠光エンジェルス!! 悪魔と天使!! 栄冠を掴み取るのはどちらだ!!』

 

 両チームの挨拶が終わり、試合の準備を始めながら瀬那は全てが始まった日の事を思い出していた。

 




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