EYESHIELD21 天使の軌跡   作:沢霧春慈

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手抜き気味です。近い内に全て改稿します。


7th down 誠光学院高校アメリカンフットボール愛好会

 ―――ウチの高校にアメフト部は無いぞ。

 

 担任から知らされた衝撃の発言から数時間後、入学式などの行事が無事に終了し、昼になって学校は終わった。

 誰もが教室から出て行く中、瀬那は独り屋上でぼんやりと生徒達が下校する光景を見つめていた。

 

 「はぁ~・・・まさかアメフト部が無くなってるなんて・・・・・・」

 

 もう何度目か分からない溜息を吐く。

 まさかアメフト部が無くなっているとは思わなかった。

 クリスマスボウルを目指す気満々だったからこそショックが大きい。

 担任のブライアンの話によるとアメフト部は嘗て強豪だったらしいが、とある事故で去年廃部になったらしい。

 

 「はぁ~・・・前途多難だ、これじゃあ今年クリスマスボウルに行くなんて夢のまた夢だよ・・・・・・」

 

 今年瀬那がクリスマスボウルへ行くには廃部となったアメフト部を復活させ、更に顧問とやる気のある部員を集め、チームをオールスター軍団である帝黒学園に勝たなければならない。

 普通に考えれば無理、と言うか絶対不可能だろう。

 それこそ泥門デビルバッツが全国制覇した時以上の奇跡が必要だ。

 あまりにも遠過ぎる道のりに嘆きたくなる。

 

 「うん? こんな所で何黄昏てるんだ、瀬那?」

 「森羅・・・」

 

 後ろから声を掛けられて顔を向けると、そこには下校した筈の森羅がいた。

 彼がどうして此処に?

 瀬那の記憶では、彼は学校が終わった後で阿瑠琉と買い物に付き合う約束があったはずだ。

 

 「美空さんとの約束はいいの?」

 

 どうして彼が此処にいるのか聞いてみた。

 

 「アルルとの待ち合わせまでまだ時間があるからな。ちょっと部活動見学してたんだよ」

 

 森羅はあっさりと答えると瀬那の横に並び下校する生徒を見下ろす。

 

 「・・・・・・そう」

 「随分元気が無いな。その様子だとアメフト部が無かったのが相当ショックだったみたいだな」

 

 元気の無い返事を返す瀬那。それを見た森羅は苦笑しつつ瀬那の小さな背中をパンパン、と軽く叩いた。

 

 「うん、まあね・・・」

 「そんな辛気臭い顔するなよ、高校生活は今日始まったばかりなんだぜ。アメフト部の件は残念だったろうが無いものは無いんだ。なら、とりあえずアメフト愛好会の方にでも行ってみたらどうだ?」

 「アメフト愛好会?」

 

 あまり彼の話を聞いていなかった瀬那だが、アメフトという単語に反応して聞き返す。

 

 「もしかして知らなかったのか? 去年廃部になったアメフト部の奴等が立ち上げて活動してるらしいぞ。こんな所で独り黄昏ている暇があったら行ってみたらどうだ?」

 「森羅・・・ありがとう! それって何処にあるの!?」

 

 希望を持つには十分な情報を聞いて瀬那はさっきまでの意気消沈していた態度とは打って変わって森羅に詰め寄り場所を尋ねる。

 

 「学校の裏山にある第二グラウンドだと。今はラグビー部が占拠してるが、そこがアメフト部の練習場だったらしい。そこにアメフト同好会もいるってよ」

 「早速行ってみるよ。森羅もどう? 一緒に見学に行かない?」

 

 部活見学をしている森羅も誘ってみるが、彼は首を横に振る。

 

 「悪いけど俺は一度部屋に戻って着替えてからアルルとの待ち合わせ場所に行くよ。もう待ってるだろうしな」

 「そうなんだ・・・本当にありがとう森羅!」

 

 情報を教えてくれた森羅に感謝の礼を言うと瀬那は風の様に走り去っていった。

 屋上から勢いよく走り去った瀬那を見て森羅は独りぼやいた。

 

 「やれやれ・・・世話の焼ける奴だ」

 「相変わらず優しいんだね。森羅はいつもそう」

 「なんだいたのか」

 

 瀬那が屋上から走り去るのと入れ替わるように阿瑠琉が嬉しそうな微笑を浮かべて現われた。

 

 「セナに元気が無いの気にしてたんでしょ?」

 「それはちょっと違うな。俺はセナが辛気臭い顔をしてるのが嫌だったから情報をやっただけだ。全ては自分の為だ」

 「正直じゃないわね」

 「バカ言うな俺はいつだって正直に生きてるさ、誰より純粋にな。それよりも此処にいるって事は、用事は済んだのか?」

 

 てっきりもう帰ってると思っていた彼女が此処にいる事に疑問に思って聞いてみた。

 すると阿瑠琉はあっさりと答えた。

 

 「用事って言うほどの用じゃなかったから抜けて来たのよ。もうこのまま買い物に行きましょ、部屋に戻る時間が惜しいから」

 「やれやれだな」

 

 相変わらず強引な幼馴染に腕を引かれながら森羅は屋上を後にした。

 

 

 

 

★☆★☆★

 

 

 

 

 屋上から飛び出した瀬那。

 森羅から教えてもらった情報を頼りにアメフト愛好会があるという学校の裏山へとひたすら駆け抜ける。

 そして学校を出て十五分ほど走った裏山の中腹にあるグラウンド、そこの隅っこにアメフト愛好会と札が掛けられた部室があった。

 すぐ近くに建つラグビー部の部室などに比べれば貧相極まりなく部室と言うよりも物置小屋みたいだ。

 

 「ここがアメフト愛好会・・・」

 

 部室の前まで来た瀬那は札を見てポツリと呟くと顔を引き締めて部室のドアを開ける。

 中にはまだ誰もいなかった。仕方なく中で待とうと部室に入り、中を見渡すと見慣れたアメフトの練習器具やボールなどがあり、棚の上には嘗て強豪だった名残の様に誇り被ったトロフィーなどが置いてある。

 その中で瀬那はとある物を見つけた。

 

 「これって・・・栗田さんやヒル魔さん達みたいな事をする人ってやっぱりいるんだね」

 

 瀬那が見つけた物、それは油性マジックで文字が書かれた学校旗だった。

 旗の中心には『絶対クリスマスボウル!!』と書かれ、その周りには御剣、緋澄、鳴海、鷺沢、伊吹、五人の名前が書かれている。

 彼らは廃部となった今でもクリスマスボウルを目指してるのだろうか?

栗田や蛭魔など昔の仲間を思い出しながら部室で独り待つ。

すると部室の外から話し声が聞こえ、ドアが開いて三人の男が現われた。

一人は泥門のムサシや神龍寺の山伏並みの老け面をしており、瀬那よりも背が低い小柄な男。

もう一人は短く刈った赤髪をしており、白人とのハーフみたいで真面目そうな顔立ちをしている男。

そして最後の一人は無造作に伸ばしたストレートの黒髪に鋭い眼差しをしたガタイの良い長身の男。

 男達は部室の中にいる瀬那を見ると一瞬きょとんとするが、すぐに立ち直って瀬那に声を掛けた。

 

 「おお、もしかして新入部員か!?」

 「部員じゃねぇよ、会員の間違いだろうが」

 「・・・・・・・・・・・・」

 

 小柄の老け顔男が嬉しそうに言うと、鋭い眼差しの男が言葉の間違いを正し、ハーフらしき赤髪の男は黙々と手帳に何か書いている。

 

 「は、始めまして、小早川瀬那です・・・アメフト愛好会に入会したくて来ました」

 「おお、やっぱりかいな!? わいは伊吹平治(いぶき へいじ)や。歓迎するで」

 「はい、こちらこそ!」

 

 握手を求める小さなおっさん少年、伊吹の手を握って瀬那は握手を交わす。

 続いて赤髪の男が無言で右手を差し出す。

何故か左手には【鳴海・ジョン・優人です。よろしく♪】と書かれた手帳が瀬那に見せる様に向けられている。

 

 「あ、どうも・・・」

 

瀬那は疑問に思いながら差し出された手を取って握手する。すると伊吹が、瀬那が疑問に思っていた事を答えてくれた。

 

「ジョンは生まれ付き難聴で耳が聞こえないんや」

「そうなんですか・・・大変そうですね」

 

 瀬那はジョンの顔を窺う。

 耳が聞こえない―――それがアメフト選手にとってどれだけハンデなのか瀬那には容易に理解できた。

 耳が聞こえないという事は作戦や合図なども上手く伝わらないし、即座の対応の指示も伝わらないという事だ。

 

「それでも実力は確かだぜ。耳さえ聞こえていたなら今頃は帝黒のエースでもおかしくなかった」

 

 そう言ったのは鋭い眼差しをした男だった。

 

 「でも作戦とかはどうやって伝えるんですか?・・・・・・えっと・・・」

 「鷺沢一誠だ。作戦は手話で伝えるから問題ない」

 

 ここまで断言するという事は本当に大丈夫なんだろう、と瀬那は一人納得して話を変えた。

 

 「部員は僕を入れて三人だけなんですか?」

 

 旗に書かれた名前のうち二名足りない事が気になって聞いてみる。

 すると伊吹が丁寧に答えてくれた。

 

 「いんや、小早川を入れて六人や。一人は入院中で、もう一人はちょっとアメリカに行っとる」

 「アメリカに・・・・・・」

 「ははは、ちょっと眼の手術に行っとるだけや、秋大会までには絶対戻って来るさかい気にする必要は無いで」

 

 伊吹が笑いながら瀬那の肩をポンポンと叩く。

 

 「あいつらの事よりも今はアメフト部を復活させる事の方が大事だろうが、愛好会のままじゃ大会に出れないんだからな」

 「どうして廃部になったんですか?」

 

 今の状況を不満そうに言う鷺沢。どうしてアメフト部が廃部になったのかまだ知らない瀬那は尋ねた。

 すると三人は嫌な事でも思い出したのか辛そうな顔をする。

 

 「去年の秋大会前に大事故が起きたんだよ」

 

 最初に口を開いたのは鷺沢だった。

 

 「秋大会が始まって試合会場に移動していた俺達のバスにいきなり大型トラックが突っ込んできてな・・・選手の大半が大怪我して試合どころじゃなくなって秋大会は棄権したんだ。部員のほとんどが三年生で泣き泣き引退して人数が一気に減って、おまけに次を担う筈の有力な二年生三人が全員帝黒に引き抜かれて、残ったのは俺達一年が五人だけ。おまけに二人は事故で大怪我をしてリハビリ中だ。俺も右足を失ってこのざまだ」

 

 鷺沢が右足側のズボンの裾を上げる。

 そこに見えたのは人間の生身の足ではなく精巧にできた人工の義足だった。

 

 「大変だったんですね」

 「それだけならまだ良かったんだよ」

 

 どうやら今から語る出来事の方が嫌な事だったらしく、言葉に苛立ちを感じた。

 瀬那は黙って鷺沢の話を聞く。

 

 「事故で部員数が少なくなってからラグビー部の顧問をしてる教頭がやかましくなってな・・・。ラグビー部の顧問のくせにアメフトは危険なスポーツだとかなんとかのたまって最終的には校長の一存でこのざまだ」

 

 鷺沢は肩を竦める。

 あまりの出来事に瀬那は目の前の先輩達に同情した。

 さっき『大変だったんですね』と自分は言ったが、恐らく大変などという言葉では軽すぎるほど彼らは大事だっただろう。

 

 「とりあえず今はアメフト部を復活させようと校長や先公共に頼んどんやけど、どうもええ返事がもらえんのや」

 

 大きな溜息を吐く伊吹。

 その姿は哀愁を感じさせる。

 

 「【それよりも今日はどうする?】」

 

 彼らの様子を黙って見ていたジョンが、話が一段落したのを感じてメモを見せる。

 それを見た彼らはこれからの予定へと話を変えた。

 

 「頼むだけじゃダメだな。やっぱり署名活動でもするか?」

 「いやいや、今日は小早川の実力も知りたいし能力テストしようや。ええな、小早川?」

 「はい」

 

 今日の活動が決まり、聞かれた瀬那に異論なんかある筈も無く頷く。

 

 「そういや小早川のポジションは何処や?」

 「ランニングバックとセーフティーです。それと少しだけですけどクォーターバックもできます」

 「攻撃も守備も出来るのか。なら話が早いな。背番号は何番がいい?」

 「できたら21番がいいです」

 「了解。丁度空いてるぜ」

 「さてさて、こんな所で話しとる間があったらさっさと行こうや。高校生活は短いんやぞ」

 

 伊吹のその言葉に頷いた一同は部室から出て行った。

 




諸事情で少しだけ休載します。
途中やめだけはしません。

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