雀聖の器   作:マージャンスキー

10 / 38
阿知賀5 デジタルの葛藤

 出目徳の爺さんから心を無にし、そして散歩してこいと命令なのか特訓なのかわからない司令を承った。

 心を無にするってなんだよ? 京太郎のように明鏡止水すりゃいいのか……いや、俺の明鏡止水はGガンダムに汚染されてるから逆にハイテンションになりそう。

 そんなこんなで山奥の自宅からダラダラと二足歩行していると鳥居が見えてきた。

 

「ほへぇ……神社じゃん……」

 

 神社だとか、神様系の場所って変な宗教に入ってはいないが……鹿児島の一件でトラウマ爆発してるのよね……。

 ただ、心を無にして辿り着いた先が神社というのなら、雀聖の器たる俺はここに入らなければならないのだろう。

 ……なんか、雀聖の器ってフル・フロンタルぽくて好き♡

 

「うーん……裏筋覚えるのムズい……」

 

 鳥居を抜ける、あ! ちゃんと神様の通り道である中央は通ってないよ! 神様怒らないでね!!

 で、神社に入ると新子が神妙な表情で麻雀の指南書を睨みつけている。

 よくわかる防御麻雀? うへぇ、その歳で防御寄りの麻雀を覚えるとか玄人だねぇー……。

 

「えっと、二拝二拍手一拝が作法だっけな……ここ何の神様なんだろ? まあ、安産以外ならなんでもいいか」

 

 神様に挨拶してナケナシの百円玉を賽銭箱に入れる。

 さて、けーるべ、新子が視線を向けているけどけーるべ!

 滝川流也は逃げ出した。

 だが、回り込まれた。

 

「ちょ、逃げるな!」

「あーし、ピュア系男子だから女の子苦手なのぉ」

「いっつも女に囲まれてるじゃない!」

「いてーところヤブからスティックするよね、君?」

 

 新子の隣に腰掛けて晴天の青空を見上げる。ああ、いい天気、お茶飲みたい。

 というか、新子がシングルでエンカウントするなんて珍しい。高鴨辺りに振り回されながら俺とのエンカウントが現状100%だから新鮮に感じられる。

 

「ねえ、流也? 流也は裏筋理論はどう思う」

「まあ、攻めっ気を出すための口実、一向聴を聴牌に持っていく為の決意みたいなもんかね」

「攻めっ気? 裏筋理論はオリの技術じゃないの」

「違う違う、裏筋は攻めの技術だぞ……自分の一向聴、相手の和了牌を予想して聴牌まで攻めるのが裏筋の本質、安牌が無いから降りる時に裏筋で降りるってのは発案者からしたら邪道だ」

 

 裏筋、まあ、だいたいリーチ宣言牌からと後ろ二枚くらいで相手の和了牌を予想する理論。良型予想理論。

 

 {13}の嵌張、これが{134}と変化する。こうなると{1}は雀頭に期待するか{1234}という延べ単にするか、もし雀頭があるなら基本的に打{1}が普通。そして、残るのは{34}となる。で、この場合の和了牌は{25}これが基本的な裏筋理論。

 こいつは長い歴史がある理論なんだが、{23578}こういう形で打{5}すると裏筋が二通り、{14}{69}となる。じゃあ、索子は完璧に危ない牌じゃないかと思うわけじゃん? でも、良型両面のMAX8枚待ちなら{14}か{69}のどちらかが裏筋的な当たり、だが、こういう時に限って{白白中中}みたいなシャボで待たれてることなんてザラだ。

 

「なあ、プロの良型リーチ率ってどのくらいだと思う?」

「うーん、プロなんだから八割くらいかな」

「残念、案外低くて68%くらいなんだ。なんならギリギリ良型と呼べる延べ単を除外すると60%くらいに落ちると思う。言うならば、40%の確率で裏筋が通用しないリーチ手が飛んでくるってことだ」

「40%……あれ? それなら裏筋が無い良型リーチを含めるとどうなるの」

「余裕で六割超えるぜ」

 

 新子が信じられないという表情を見せる。

 確かに裏筋理論は考え方は悪くない、ただ、その理論が単純過ぎるが故に打ち方によっては消せるし、裏筋が見えるリーチにしても通用するかどうかもわからない。

 だからこそ、俺は別に裏筋は使わないし、眼中にない。偶にこの辺りかなと考える時にごま塩程度に思い出す理論ってところだ。

 

「……じゃあ、流也はどうやって放銃率下げてるの?」

「ああ、それならお守り、場に二か三枚出ている字牌を宣言牌、一発回避牌として抱えることで格段に放銃率下がるぞ」

「ああ、地獄単騎以外は絶対にロンされないからお守り……」

「そうそう、なんなら一発消し後に叩くこともできるから便利だぞ。一枚で二度ならぬ三度美味しい」

 

 新子が裏筋理論の指南書を睨みつける。

 まあ、初心者はわかりやすい麻雀理論を覚えたがるものだ。俺も裏筋を覚えようと四苦八苦したもんだが、実戦で披露したときにゃ、出るわけねぇ嵌張やらシャボに放銃しまくったもんだ。麻雀は運の要素が強い、運七割技術三割で戦えたら良い方さ。

 

「玄や宥姉、偶にしず、変な打ち方……オカルトとかいうのかな……」

「ふむふむ」

「あたしにも何かあるのかな……流也みたいな……」

「何いってんだか、俺はデジタル打ちだぞ?」

 

 目を飛び出させるのではないかと思う程に見開いて、俺がオカルト持ちじゃないことに驚愕している。

 いや、確かに麻雀教室でトップ率四割フラットを叩き出しているのだからオカルト持ちだと思われても仕方がない。だが、俺の本質は基本的にデジタル、本物のデジタルではなく……オールド・デジタルって言ったところか?

 古風な打ち方だが、そこには確実にデジタルの気配を感じる。そんな打ち方。

 

「新子はさ、オカルト打ちに欠点が無いと思ってるだろ」

「……そりゃ、高い手をバンバンだから」

「アレ、俺から言わせたら欠点の固まりだぞ? だってさ、和了を縛ってるんだからさ」

「和了を縛る?」

 

 そう、オカルト打ちってのは美学打ちとも表現できる。

 自分の好きな役やら、和了かたを固めて打っている。究極の固め打ち。

 で、デジタル打ちはどうなのか? 高度に柔軟な発想で戦ってる泥臭い麻雀、戦争打ち。

 

「新子、配牌を見た時はどういう気分になる?」

「うーん……こいう手になりそうとかー」

「それがデジタル寄りの考え方、オカルト打ちならこの手にすると考える。オカルトは修正、デジタルは構成、オカルトは自分の好きな手に修正する。デジタルは手が伸びたいと思う道を構成する。ま、点数抜きの速度合戦ならデジタルの方が仕掛けは早い」

「……なんか、偉いプロ雀士みたいな考え方してる」

 

 冷たい風が吹き抜けて、少しだけ汗が出ていた体を冷ます。

 まあ、デジタル打ちがぶつかる壁、オカルト打ちとの圧倒的な何か、自分にはない何かを持っているという劣等感、こんなの麻雀をやめる理由になりえる。

 だからこそ、俺みたいなデジタル、自称雀聖の器がけっぱるべ! なんつって!!

 

「ねえ、流也が絶対に勝てないと思うオカルトとかってある?」

「……そうだな、毎回ダブル立直してくる相手は厳しいかね」

「毎回ダブル立直?! ま、確かにそれはつらいわ……」

「まあ、その時は――俺もダブリーしてる気がするがな……!」

 

 新子がポカンとした表情を見せたかと思えば、クスッと笑みをこぼす。

 

「やっぱりオカルトじゃん」

「いいえ、デジタルでーす」

 

 手が疼く、麻雀の話をすると打ちたくなるのは本能なのか……。

 

「打ちに行く?」

 

 頷いて立ち上がった。




 アコチャーの出番が少なかったから投下。
 あらたそはどうするか考え中、下手したらアンケートするかも。

【追記】

 アンケート実行しましたが、終了時刻書いてなかったんで……。
 とりま、明日の夜七時くらいで終わりにします。

【また追記】

 投票ありがとうございます!

阿知賀12後 寄り道していいですか? 11書き直し許可感謝!

  • 怜を可愛くかかんと容赦せいへんで!
  • 愛宕親子再び
  • 京ちゃんの小学生時代希望
  • テレビ番組出演(はやりん☆)
  • BADENDとかある? 見たい
  • おまけの中身 以下略
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。