雀聖の器 作:マージャンスキー
なんでも、俺の修行は終わりかけているらしい。
出目徳の爺さん曰く、当時の環境ならイカサマの練習をさせていたが、今の時代にサマは必要ない。ただ、自らの天運を高めていけばいいらしい。
つまり、俺の天運は爺さんが出会った雀聖と変わりないモノになった。
ただ、爺さんは最後に自分で道を切り開く覚悟が必要だとも語る。
天運に身を任せ、ただ流れる麻雀では雀聖にはなれない。
天運を拒絶するその時、自分の覚悟をもって天を拒絶するのが最後の試練らしい。
というわけで、時が来るまで修行は山積みだけになりましたーいぇーい!
2
で、なんでワシがボーリングなんぞせなあかんねん?
出目徳の爺さんが急にボーリングをしたいなんぞ言い出して、最寄りのボーリング場に無理くり連れてこられた。
まあ、毎日麻雀をしねぇーと生きられない体ってことはねぇが、最近新子が何切る問題を俺に聞くのが趣味になってるし、赤土さんは俺をラスにした時にしか得られない快楽があるとか言ってるし、松実妹はおもち大きいし、松実姉はもっと大きいし、高鴨は……どうでもいいや……。
あーあ、どうせ明日は新子に激おこプンプン丸されるだろうなー……。
「流也! ストライクじゃぞ!!」
「おー、すげーすげー」
「ほんっと、最近の若いもんは……ワシがピチピチの四十代の頃はボーリングとビリヤード、ダーツが最高の娯楽じゃったというに」
「麻雀はどうしたよ」
麻雀は仕事だとか吐き捨てた。
てか、ボーリングとビリヤード、ダーツってバブル期くらいの流行か? えっと、バブル崩壊が何年だっけか……爺さんいくつだよ……。
そんなこんなで爺さんと一応孫の俺がボーリングをプレイしていると、流石に出目徳よりは若いおばあさんが調子はどうかと尋ねてくる。ああ、受付してたおばあさんだ。
「まあ、そこそこじゃな、歳はとりとうない」
「それにしても、滝川さんにこんな可愛い孫がいるなんてねぇ」
「どうも、滝川流也です」
「あらまあ、滝川さんの三十倍は礼儀正しいじゃない」
爺さんが薄ら笑いをやめて臨戦態勢、流石に暴力沙汰はないだろうが……爺さん口論大好きだし三十分は続くだろうなー……。
にしても、田舎のこういう施設ってのは絶対セットで全自動麻雀卓があるもんだよなー……。
一時間レンタル五百円、結構良心的じゃん? この時間帯は麻雀牌触れてることが多いしな、ツモ切りの練習だけでもさせてもらうか。
受付に五百円玉を置いて卓を借りようと思ったが……こけしがいる……。
「麻雀卓使う……」
「使う、一時間」
「そう……」
「そう……」
そうを合わせたらキッと睨まれた。おーこえーこえー……。
全自動麻雀卓を起動させ、四つの山から適当に切り出して配牌を睨む。
この手なら国士無双かね、国士無双が仕上がるまで何回ツモ切りしますかなぁー。
タンッ、タンッ、タンッ……。
求めている役を愚直に目指して二十回目のツモ、出来上がった。
{一九①⑨19東南西北白発中} ツモ{中}
国士無双十三面待ち、別に十三面待ちにするつもりはなかったが、この瞬間までは重なることがなかった。
そういえば、国士無双は和了したことないな……相性悪い役満なのかも……。
二回目の配牌を摘む瞬間に肩を掴まれる。
「どうしたよ爺さん、わっちは練習中ですわよ」
「いや、鷺森の婆さんに頼まれてな、この子と数戦な」
さっきのこけし少女が露骨に嫌そうな顔をしながら視線ビームを照射してくる。
やっべ、この子めっちゃ拒絶してくるやん? 俺、この拒絶の視線大好き♡ 興味ねぇーのがヒシヒシと伝わってくるんだもん。
「結構古いタイプだから……」
確かに古いタイプの全自動卓、三麻機能は無いようだ。
そして、奥の方に布が被せられている手積みの麻雀卓を指差す、アンティークで打つ麻雀ってのも悪くないか。
出目徳の爺さんと一緒に骨董品を引っ張り出し、竹牌のこれまた骨董品を並べて萬子の19以外を抜いていく。
そういえば、鷺森って阿知賀編にいたなぁ、ああ、このこけしが鷺森灼か……年上好きの同性愛者って中々ハードな性癖してんなーおい。
「バカにした……?」
「さあ、わからん」
またキッと睨まれる。目つき悪いねぇ……。
にしても、出目徳の爺さんと卓を囲むのははじめてじゃないか? 基本的には放任主義、京太郎と一緒の時にも居酒屋にブラブラしてたわけだし……実力しらねぇーんだよな……。
洗牌を終わらせて、タンッと山を積み上げる。体感九秒ってところか? まあ、日頃の鍛錬が功を奏し……ッ!?
「おう、流也……まだまだ遅いのぉ……」
なんだよ……俺より早いじゃねぇーか……。
まあ、積み込みした気配はない。流石にヒラで打つのか、歳喰うと麻雀強くなるって噂は本当かもな……。
額の汗を裾で拭った。
「ま、お遊びの麻雀じゃ、点数移動なし、全員子のお嬢ちゃんからのツモ番でいいじゃろ、山は端からで」
「はい……」
この感じ、地下を思い出すな……あの時の麻雀卓は配牌まで自動でやってくれてたからな、嫌な思い出。
さーて、配牌はなんじゃろな?
{一九①⑥⑧⑧89東南北白中}
さっきの国士無双が尾を引いてるってところか? 九種九牌で流せるが、流石にここまで国士をチラつかせるとグラつくってのが男ってもんだ。仕上げていきますかー。
「のう、流也……おまえと打つのははじめてじゃな……」
「まあな、武勇伝ばっかり聞かされて耳にタコだぜ……どんな麻雀打つのかもしらねぇーし」
「……?」
「まあ、一応は孫に爺さんの強さを見せとかないとな……」
爺さんの纏うオーラが変わる。
――松実姉妹が纏う熱いそれじゃない、これは……まるで氷、すべてを凍てつかせる絶対零度のオーラだ。
クッ、こりゃ、タヌキ爺さんからキツネ爺さんに昇格かね? こけしちゃんにはわりぃーが……俺もダラダラ打てる程の余裕がねぇ……。
{一九①19東南北白発発中中}
七巡目、国士無双一向聴……悪くないね……。
でも、出目徳の目がギラついている。下家のこけしも聴牌の気配。
まあ、別に遊び麻雀、遊びだから――
「ロン、純正清老頭じゃ……まあ、純正はローカルか……ッ!」
「はっ?」
被った{一}を叩いたら出目徳の爺さんが冷たい視線で急速に体温が奪われていく。
{一一九九九①①⑨⑨⑨999} ロン{一}
気配の一つない、数合わせに入った人間が漂わせるような薄い気配しか感じなかった。それに自摸和了で四暗刻との複合、それを惜しみなく俺にぶつけて来やがった……ッ!
へへっ、役満放銃は人生初だぜ……。
尋常じゃない雰囲気にこけしちゃんが目を泳がせている。
いや、確かに普通の麻雀打ちなら困惑するだろうさ、普通じゃない俺も困惑してる。
何年も死線を潜り抜けて生き残ってきた昭和の玄人、それが相手なら……デジタルなんて意味をなさない……ッ!
「リーチッ!」
{一一③③④④⑤112233} 和了牌{②⑤}
「ペー……ツモ、門前・嶺上開花・北ドラ」
{456789⑦⑧⑨南南南⑤} 和了{⑤} {北}
はっ、こっちの良型やら高めやらを全部ブロックしてやがる……ああ、フラストレーションッ!
「ロン、七対子・北ドラ3」
「ツモ、門前・一盃口・ドラドラ・北ドラ1」
「ロン、平和・二盃口・ドラドラ」
「ロン、断么九・北ドラ1」
「ツモ、三暗刻ドラ3」
「――ロン、八連荘」
卓に右手を置き、静かに深呼吸を繰り返す。
まるで流れを掴めない、この場のすべての運動エネルギーが絶対零度 −273.15 °Cに凍てつき……すべてが動作を止めたような……。
川の流れさえ瞬時に凍らせる、絶対零度の麻雀……。
はじめての感覚だぜ……ッ!
「まあ、このくらいでええじゃろ……久しぶりに本気出してもうたわい! カッカッカッ!!」
世界に存在する色がすべて失われ、モノクロの世界が広がっていく。
まるで、自分が置物になったような感覚、自分が強いと感じていた自信がすべて喪失し、自分が人間かどうかすら見失いそうな……。
この爺さんも天運の持ち主? いや、違う……これは喰運……。
他人の運を喰らっている。
「だいじょうぶ……?」
こけしちゃんが心配そうな視線でおしぼりを額に当てくれた。
頷いて感謝の意を示し、おしぼりを顔に広げて何度も深呼吸を繰り返す。
京太郎よ……おまえ爺さんと打たなくて正解だったよ……。
「……滝川流也、君は」
「鷺森灼……」
「……聞いたことある、上級生ですね。鷺森先輩」
「うん、よろしく……」
ああ、おしぼりのおかげで素直に泣けそうだわ……クソッ!
上には上がいる……だが、俺はその上とも対等に戦える打ち手になるんだ……!
俺は……雀聖の器なんだ……ッ!
阿知賀編を電子書籍で全巻買いました。
アニメだけだと不安やし、不備があったら書き直すかもしれません。
あと、これからは常時アンケートしていきます。
主に雀聖編と七星編の選択ですね、投稿ごとにリセットしていきます。
阿知賀12後 寄り道していいですか? 11書き直し許可感謝!
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怜を可愛くかかんと容赦せいへんで!
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愛宕親子再び
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京ちゃんの小学生時代希望
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テレビ番組出演(はやりん☆)
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BADENDとかある? 見たい
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おまけの中身 以下略