雀聖の器 作:マージャンスキー
出目徳の爺さんとの対局、俺はなにか出来ただろうか?
癖として高い手を作ろうとするのは自分の長所で欠点だと知っているが、爺さんの手も基本的には高い手……俺と何も変わらない。
ただ、あの絶対零度の感覚……運を喰らわれる恐怖感……。
デジタル打ちだが……流れを重視する俺には背筋が凍る……。
「どうしたんだ? 浮かない顔して」
「……いえ、身近な人間が一番怖いって再確認してるところです」
「おっ! 私か!?」
「はぁ……アンタだったらこの場所に来てるわけないでしょーが……」
レジェンゴが盛大の大盛りで勘違いしてるのでジト目で対応してやる。
お調子者なんだからな……まあ、高鴨と同じムードメーカー、存在するだけで場が和むのは認めるが……今はどういう言葉もツライ何かに変換されてメゲル……。
本当だったら麻雀教室に顔を出すのも嫌なんだが、出目徳の顔を見るのも嫌、どっちも嫌々のやーやーなの。
「男の子だろ、シャキっとせい!」
「女性の価値観を男性に押し付けるのやめてもらえます?」
「じゃあ、特訓じゃー!」
「今日は牌を握りたくない……怖いんです……」
自分も経験したことある感覚、麻雀というのが怖くて仕方がない。それを理解してか赤土さんはこれ以上の誘いはしなかった。
小鍛治プロに打ちのめされた……俺は不眠症程度と牌を握りたくない程度のショック、赤土さんは数年間も麻雀を打てない程のショック……。
……俺は可愛いもんか、それとも図太いだけか?
「あー! ズル休み発見!!」
「いや、麻雀教室は自由参加だろ? 高鴨はお手伝いで来ないこともあるわけだし」
新子がナチュラルに指差し、人を指差すのやめてもらえます?
そして、今日も何切るの本を携えてやがる。今日はどんな何切るだろうか……牌を握るよりマシか……。
新子が隣に腰掛けて何切る本を手渡してくる。
「放銃するが曲げるべき……?」
「流也だったら絶対に理解できると思って、これあたしにはわかんないのよねー」
「まあ、俺はオールド・デジタルだからな……結構好きよこういう強気の麻雀を教える本……」
「でもさ、最初の問題を見てよ?」
『これは放銃しても曲げるべきシーンを集めたものです』
【東一局0本場】
東:「25000」親 自分
南:「25000」
西:「25000」
北:「25000」
ドラ{七}
{二三四七七⑦⑧⑨45西西西} ツモ{9} ツモ切りリーチ
待ち{36} 枚数8枚
自河:{横9}
『放銃理由』
対面の人和。
「おお、ダブル立直か……それに{七}がドラで最低でも満貫確定の良い手じゃん……」
「そうそう! これが対面の人和に放銃するって書いてるの!! 天文学な数字じゃない?」
「いや、これは問題集の本質をついてる……これを曲げないヤツはいない。直感で放銃するとわかってるなら逃げられるかもしれないが……それでも曲げた方がいい」
「でも、失点するんだよ?」
「新子は失点することを恐れすぎてるんだ。曲げて放銃は基本的に諦めていい、自分が信頼したリーチは放銃しようが和了への信頼を忘れちゃいけない……ッ!」
これは結果を知っている神様視点で見れば逃げられると思うが、その場でこの手を聴牌したら絶対に曲げる。対面が人和だろうが、なんだろうが絶対に曲げる。
デジタル雀士ってのは基本的に失点を本気で嫌う、だからこそ失点を肯定するこの手の本は理解したくないのだろう。だが、強気じゃない麻雀は自分の足場を底なし沼に変化させるだけ、ある程度の強気姿勢を維持しなければ半荘を戦い抜くメンタルは成長しない。
「ねえ、流也がこの状況、人和を放銃すると知ってるなら回す?」
「いや、これを100回繰り返そうが絶対に曲げ続ける」
「流也ってやっぱりオカモチとかいうヤツじゃないのー」
「ちげーよ、デジタルでも攻めっ気は持ってなきゃダメなんだ」
どうしても世代的に現代麻雀を覚えるなら防御力重視の鳴き先行型の麻雀を覚えてしまう。
門前で二翻縛りするような古風な打ち方は若い世代には受け入れられない。なんなら欲や勢いが自滅への道だと表現するプロ雀士までいる。
だが、麻雀の本質はいかにアクセルを踏むか、ブレーキを踏むかだ。
このリーチはアクセルベタ踏みの方が良いって典型例、これをその場の勢いなんて言わせない。
――踏めない人間に勝利はやってこない。
それにしても面白い本だな、俺も買おうかな……って、発売が五年前かよ? 絶版だなコレ……。
「このページ、曲げる必要なくない?」
「ふむ、どれどれ……」
【東三局 親 1本場】
東:35700
南:22700
西:25300 親 自分
北:16300
ドラ{発}
{一二四五六七八九⑦⑧⑧⑨5} ツモ{⑧} 打{5}リーチ
待ち:{三} 枚数4枚
自河:{南北中北横5}
『放銃理由』
下家が降りずドラポンの發ドラ3
こりゃ、面白いッ! これを曲げるヤツがこの世界にどれくらいいるか、初心者ならノンタイムで曲げるだろうが、書いてるのはプロ雀士……ッ! こんなの愚形だと見透かされても曲げる理由! ああ、この雀士のファンになりそう♪
「これ、親番なんだからダマの一通でいいんじゃないかなって」
「いや、これは素晴らしいリーチだ。この点数状況がすべてを物語っている」
「点数状況?」
「ああ、想像してみろ? 東家が立ち親で40符3翻で7700を北家にロンした。そして一本場、この本の作者がその一本場で1000点は1300点の手を南家にロン、東二局に移行、多分、ここで打ち手は良好な配牌を貰っただろう。だが、東家の早いリーチでベタオリを選択、一人聴牌で3000点、流れ一本場で自分の親番、若干パッとしない手だったが字牌整理の過程で無駄自摸無しの門前一通に変化、これは曲げる」
想像するだけで涎が出てくる。こんなのが自分の親番に来たら流れを掴んだと確信するッ! 曲げない手はない。それに、東と南は東場だと諦めて少し消極的になる。だが、鬼は北ッ! 東場だとしても現状の点差に焦りが見える、つまりは放銃を確信しない限り降りないッッッ!
こいつは下家が放銃するか、上手く捌いて自分が放銃するかの戦い、一騎打ち……麻雀で一番楽しい瞬間じゃねぇーか!
「なあ、新子? この手……待ちは四枚、辺張の{三}、心構えとして何枚だと思えばいいと思う」
「えっ、まあ、普通に四枚?」
「違うね、この辺張の{三}は四枚じゃねぇ……リーチするなら四億枚の待ちだ」
「ちょ! 数字がバグってる!?」
「まあ、リーチする時の心構えってヤツだ。こういうリーチをする時は待ちの枚数は億倍しな……スッと入ってくるから」
「やっぱりおかもちじゃん!」
やっぱり麻雀って面白い、この本で自分のスタイルを再確認させられた。
いやはや、必要なのは――あ゙ご゙ぢ゙ゃ゙ん゙だ゙ア゙ア゙ァ゙゙ァ゙ア゙~~~~~!
ああ、最高! 最高にハイ!! こんな気持ちのいい麻雀を打つのは誰だ?
【著者:阿佐田哲也】
おまえかよ! 雀聖!!
てか、これ刷り直し? もしかしたら買えるかも……爺さんにおねだりしよっと……。
「ヒーローは遅れてやってくる! あぁあああ! 今日は流也いる!! うつぞー!!」
「あの、勝手に面子にいれるのやめてもらっていいですか?」
「さーて、流也はメンタル弱ってるしラスらせがいがあるなぁー」
「わたしもはいるぅー」
うえーん、わっち勝てない戦いはしない主義なのにぃぃぃ!!
雀魂の深夜帯(二時から三時)はえげつない雀聖がチラホラで楽しいぜぇ……ッ!
雀聖編は投稿者の雀風が使用されています。基本的にデジタルですが、若干古いテーストを織り交ぜた私スタイル、ちょっち臭い麻雀かもしれませんがご容赦の程を(小並感)
あと、やらせたいこと無くなったら和出します。
阿知賀12後 寄り道していいですか? 11書き直し許可感謝!
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おまけの中身 以下略