雀聖の器 作:マージャンスキー
今日も今日とて小学生、小生小学生。
まあ、別に苦手な算数以外はある程度できるから一目なんとやら、小学生で知識無双してもおもろくねぇーなー……。
で、昼休み、グラウンドでボール遊びをしている小学生を眺めながら昨日の対局、高鴨が見せた場の支配力を思い出す。
「ありゃ、限定的だが魔物の類だねぇー」
高鴨の山からの切り出し、今まで幾度となくグロ配牌を見てきた俺だが……十三不塔ははじめて見た……。
確か、高鴨の能力は山を支配するとかいう感じだったはず? それなら雀聖の器たる俺の配牌が十三不塔になるのも頷ける。
天運、俺が持つ最大の武器すら高鴨は防いで見せた。
言ってしまえば神様の類が違うのかもしれない、基本的に天運を持つ者は夜の打ち手、その場合天というのはお月様だとか、お星様みたいなものになるのだろう。
だが、高鴨の持つ能力を神様的に表現するなら――山の神、仙人とも表現できる。
「山の神様ってのはお硬いんじゃねぇーのか? まあ、無邪気な子供を好むのが神様ってやつか……」
ひねくれたクソガキにはお月様が優しく微笑む……。
にしても、今日の爺さんは妙にソワソワしてたな……? あの歳で逢引ってことはないだろうが、情報通、アレの情報網は底が知れない。
それに、俺が自意識過剰で雀聖の器だとか名乗っているが……爺さんはそれを本気で信じている……。
雀聖、どんな打ち手だったのだろうか? 同じ卓で牌を握らなければわからない。本に出てくる断片的な情報じゃ測れない。
俺は雀聖と同じ土俵に立てているのだろうか? 俺は雀聖と同水準の麻雀を打てているのだろうか? 俺は雀聖の器を名乗る資格を持っているのだろうか……。
真実は天のみそ知る。
「あ、滝川くん! お爺さんが早退のお願いに来たわ」
「えっ?」
顧問の先生が焦った表情で爺さんの訪問を告げた。
あらら、俺の予想が当たってるよ多分……こりゃ、どんな相手を連れてきたのやら――ッ!
2
「はやっ☆!? こんな可愛い子が雀聖二世なの☆☆☆」はやりーん☆
「わっかんねー」ケラケラッ
おい、爺さん? なに真面目にヤバイ奴ら連れてきてんだよ……ヤンデレ妹より病んで刺し殺すぞゴラ……。
テレビで見た、聞いた、打ってたメンバー揃い踏み、これは夢か幻か? ただ、こいつらが本気でやべー奴らだってのはぶつけられるオーラでヒシヒシと伝わってくる。
オイオイ……こんなの役満和了しても勝てる気しねぇーぞ? コレと打たせるとか拷問だぞゴラ……。
「いや、まだ二世を名乗らせるわけにはいかん。よくて器じゃな」
「流石は雀聖のおひきー! 心酔がみえてるねぇー」
「おう、クソガキ? おまえのオムツを変えた恩をわすれたか」
「わっかんねぇー」ケラケラッ
クッソ! 完全にアウェイゲーム……爺さんが卓に入るにしても、劣勢を楽しめとばかりに運を喰らいにくるだろうッ! この状況で一番入ってくれて嬉しいのは……赤土さんくらいかッ!
「あの、滝川さんが私になんの――ッ!?」
「はやっ☆」はやりーん☆
「わっかんねぇー」ケラケラッ
うわ、願ったら本当に来たよコレ……だが、この表情を見るにまだまだ爺さんが卓に入った方がマシだな……。
チッ、雀聖の器(笑)とか思ってたが……ここまでのトッププロを集めるなんて爺さんもどうかしてる。俺はまだ器の状態、中身が全然溜まってねぇんだよ……ッ!
赤土さんに襟を掴まれて廊下に出る。
……松実館景色ええなー(思考放棄)。
「ど、どうしてあんなめんつ……」
「爺さんが雀聖の器を見つけたって触れ回ってるんだろうさ、俺はまだ器の状態……別に心が折れるとまではいかねぇがッ! この対局で何日不眠症の牌恐怖症になるかわかんねぇ……」
「おまえはまだまだ小学生だろう? 滝川さんもやり過ぎなんじゃ……」
「そんなの爺さんが一番わかってる。だが、俺を劣勢に立たせるのが好きみたいでね……赤土さんは巻き込まれたってところか? 爺さんは気分が乗るか、絶対に入らないといけない時しか卓に座らねぇ……」
赤土さんの震えがこっちにまで飛び火してくる。
そらそうだ、このメンバー……小鍛治健夜と何度も戦って、それでいて心が折れていない。
その点、この人は一度の対局で何年も尾を引く傷を残している。そして今は大学生やりながら麻雀の先生だ。
本質的には麻雀が好きで堪らない、だけど、トラウマってものは……深層心理の中に傷跡を残す……。
「赤土さんや……逃げるなら今だぞ、今逃げるなら爺さんが打つ。正直、あのメンバーで一番強いのは爺さんだ。俺は確実に負けるだろうが……爺さんに負けることなら経験してる」
「……ッ! いや、これを蹴れば……もう二度と過去の自分に向き合えない……」
「まだ覚悟決まってねぇだろ! 本気の覚悟があるなら震えてるわけねぇだろが!!」
「――ッ!?」
チッ、小学生に叱られてどうする? 本当に精神年齢十三歳なんだからさぁ……。
まあ、俺は麻雀を捨てていい。男の麻雀なんて価値がない、それなら未来ある赤土さんの為に今日――麻雀打ちとして死んでもいいかッ!
震える手を掴み、そして自分の胸に押し当てる。
「なあ、俺の鼓動を感じるか? 今、俺は死と同じくらいの恐怖を感じてる」
「あ、ああ……」
「だが、死ぬわけじゃない。そう言い聞かせてる」
「う、うん……」
「アンタを飛ばさせやしない、飛ぶ時は俺が飛ぶ、約束は守るさ……」
「……ほんと、アンタが同い年だったらよかったのに」
震えの収まった手、これなら戦力として数えられる。
……この夜、非公式のプロアマ交流戦のはじまりってところか。
さあ、レジェンド……アンタは納得のいく麻雀ができるか――?
「戻りました。滝川さん? 本当に私が入っていいんですね」
「ああ、元よりそのつもり……アンタぁ……ここの景色を夢見てるんだろ?」
「……はい」
「じゃあ、入りなッ! 半荘三回、トッププロとトップアマの戦いさね!!」
卓の中央にある風牌、その一枚を誰よりも早く捲った。
弱気は消えた……半荘三回、俺に何ができるか……?
しらねぇーよ……そんなの……ッ!
「じゃあ、ルールは少し古めにしようかッ! ありあり、じゃが、赤は無し、ローカルなし、八連荘あり、ダブロンなし、三万点返しでええじゃろう」
「うっわ! 赤いれねぇーのーわっかんねぇー」ケラケラ
「まあ、哲さんが一番好きなルールじゃったからな……コレ……」
「はやりは問題ないよ☆」
カーッ! こいつらなんだよ……どうして笑ってられるのかねぇ……!
ここから先は――地獄の扉が開くってのにッ!
【一戦目:東一局0本場・親 三尋木咏】
東:三尋木咏 「25000」親
南:瑞原はやり「25000」
西:赤土晴絵 「25000」
北:滝川流也 「25000」
最初の半荘は綺麗にプロとアマが分かれたな、この状況ならアレも確実に決まってくれる。精神的に楽だな……。
「ねえ、坊や? ――その25000点、250点だと思った方がいいよ」ケラケラ
「残念、50点棒なんてねぇーよ」
「あちゃー! こりゃ一本とられたねぇー!!」
「打とうか……トッププロを味見してやる……」
いつも思ってたことがある、俺は自分の本気ってのを理解していないのじゃないかって……。
爺さんが俺を雀聖の器だと表現する。だが、俺はそれを受け入れるのを躊躇っていた。俺みたいなオカルト持ってない打ち手が雀聖なんておこがましい、よくて雀荘で小遣い稼ぎ出来る程度の存在。そう思ってた。
だが、こと今日に限っては――雀聖の器として打たせてもらうッ!
ゴゴゴゴッ!
(こりゃ、この子を本気にさせちゃったねぇー……)
(若いのに覇気があるね☆)
(りゅう……や……?)
言ってしまえば博打打ち、雀聖ってのは聖と書くが所詮は名を挙げた博打打ちでしかない。
だが! 博打打ちだからこそ――聖を使うことを許される。
今日、俺は麻雀打ちから博打打ちに転職させてもらうッ! さあ、金を賭けない最高の博打をしようぜッ!!
(まっ、このくらいの威勢は二軍にゴロゴロいるしー? 雀聖だとかそいうのは感じないかなぁー)
『三尋木咏・配牌』
{125④⑤四五六東東東西南} ツモ{1}
『ドラ表示牌』
{北裏裏裏裏}
(うひょー! ダブ東ドラ3、なんなら三色までついてわっかんねー)
こりゃ、プロがプロたる何かを感じさせられる。このちっちゃいプロ……三尋木プロだっけか? 火力がヤバイってことしかしらねぇが、配牌の時点で役満の気配漂わせてやがる……。
それに比べて俺はどうよ?
『滝川流也・配牌』
{一三23①②⑦⑦⑦⑧発発西}
クッ……悪くはないが……役満の気配に勝てる気がしない。
流れは三尋木プロ一色、放銃したら誰かが絶対にトブッ! だが、俺はそれを許さない。絶対にッ!!
さあ、その役満……この手で叩き潰してやるよ……!
(はやっ☆ うーん、少しむずかしいのがきちゃったなー)
『瑞原はやり・配牌』
{①①②④三五八九78白白南}
(ま、まさか……これって!)
{③④⑤七八九567北中中中}
(聴牌してるッ!? このメンバーで人和・地和のチャンス! 流也……アンタのおかげで……)
赤土さん、そうとう良い配牌を貰ったんだろうが……その手は――多分和了出来ない……。
そんな目で俺を見るなッ! アンタのその手は絶対にこの場の流れで和了ることが出来ないんだ!
考えてみろ? この場を支配しているのは完全に三尋木プロ、俺が何度も場を支配したことがあるだろうが! ダブル立直の配牌だろうが絶対に回せ!!
――そうじゃないと、もう二度と牌を握れなくなるぞ?
「まっ、これでいいかな」
打{南}
「うーん、じゃあ……これで☆」
打{南}
(引けッ! 私!! 流也にカッコイイところ見せるんだッ)
スッ{南}
(くっー……でも、まだチャンスはある!)
『ドラ表示牌』
{北裏裏裏裏}
(ドラ表示牌、待つには良い手じゃないか!)
「ダブル立直ッ!」
打{横南}
クソッ! 曲げやがった!! この場の雰囲気でわかるだろ!? その待ちは――死んでる……。
俺も南を持っていれば四風子連打で流局させられたが、そこまでご丁寧なことはしてくれてない。
{一三23①②⑦⑦⑦⑧発発西} ツモ{二}
とりあえず鳴きの三色が見えてきた。ケチな点棒だが、この場合は拾わなければ一瞬でケリがつく、そして……放銃するのは赤土さんだ……ッ!
打{西}
「おっと、四風子連打になるかと思ったよ……良い手だったからさー」ケラケラ
「私のダブリー怖いですよ?」
「それはどうかなー……カンッ!」 {裏東東裏}
{1125④⑤四五六西} {裏東東裏}
「さーて、ドラ4確定だけどさー……まだ足りなくね?」
「――ッ!?」ゾワゾワ
「嶺上牌の前に捲っちゃおー」ケラケラ
『ドラ表示牌』
{北北裏裏裏}
完全に落ちた。この空気、確実に落ちる。
赤土さんや、お願いだから後……三巡は諦めるなよ……。
{1125④⑤四五六西} 嶺上牌{4} {裏東東裏} ドラ8
(流れに乗れてるねぇー! こりゃ、ダブル立直に臆する理由がわかんねぇー)
打{西}
「りゅ、りゅうや……」
「前だけ見てください、そうしないと……喰われるッ!」
(うーん、咏ちゃん絶好調☆ 無理して攻めると痛い目かなぁー)
打{発}
「ポンッ!」 {発横発発}
(流也が鳴く? それだけ私が危険だってこと――)
打{②}
(少し早いツモ番、っと? これは尚更に面白いじゃん♪)
{11245④⑤四五六} ツモ{1} {裏東東裏}
打{2}
(うーん、ダブル立直も怖いけど咏ちゃんも怖いなぁ☆)
打{白}
(こわい……こわい! こわい!!)
ツモ{4}
タンッ
「チーッ!」 {横423}
打{①}
(おっと、これは? 流石は滝川の爺さんに認められるだけあるねぇ……見た目は)
{裏裏裏裏裏裏裏} {横423}{発横発発}
((緑一色……))
はっ、どうせ緑一色とか考えてるんだろうが……こっちの手はこうだよ……。
{一二三⑦⑦⑦⑧} {横423}{発横発発} 待ち{⑥⑧⑨}
「カンッ!」 {裏11裏}
「ひっ!?」
「またまた嶺上牌より先に――新ドラみたいじゃん?」ケラケラ
『ドラ表示牌』
{北北北裏裏}
「ああ……あぁ……」
「うひょー! 三連続なんてひさびさー!!」
スッ{5}
「立直したくなるよね♪ リーチ」
{55④⑤四五六} {裏11裏}{裏東東裏} 待ち{③⑥}
『三尋木咏・河』
{南西2横4}
(もー、東で役がついてるのにリーチしちゃうんだからー☆)
打{白}
(お願い……お願い……! お願い!! ッッッ!!)
ポロッ{⑥}
「ろーん! リーチ・一発・ダブ東・ドラ12……裏もみちゃおー「すまない、頭ハネだ」えっ?」
{一二三⑦⑦⑦⑧} {横423}{発横発発} ロン{⑥}
「まあ、裏くらいは見せてやるよ……好きにしな……ッ!」
『ドラ表示牌』
{北北北裏裏裏}
{999裏裏裏}
――ボロボロッ
「発のみ、30符1翻は1000点……リー棒はもらうぜ……」
「りゅ、りゅーや……」
「シャキッとせい! それでも大人か!!」
「う、うん……」
(こりゃ……)
(本当に……)
((雀聖を名乗る実力があるね……!))
東:三尋木咏 「24000」
南:瑞原はやり「25000」
西:赤土晴絵 「23000」
北:滝川流也 「28000」
阿知賀12後 寄り道していいですか? 11書き直し許可感謝!
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怜を可愛くかかんと容赦せいへんで!
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おまけの中身 以下略