雀聖の器   作:マージャンスキー

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語られぬプロアマ交流戦2

「すこし……お手洗いに……」

「……まだ、折れるなよ」

 

 小さく呟いて消えるように向かう赤土さんを眺めた。

 にしても、三尋木プロの親番を蹴れただけでも儲けもの……東風以上、下手すると一局戦並みの重さが一局一局に集約されている。あまりにも暴力的、バイオレンスッ!

 クッ……鳴きの速攻なんて趣味じゃない打ち方させやがって、{中}が暗刻で入ってるなら一翻くらい捨てろよな? 確かに配牌聴牌で心が踊るのはわかるがッ! ここにいるのはトップ中のトップ、小学生の支配力とは雲泥……いや天泥の差だ……。

 

「うーん、まだまだ復活の予兆はないね☆」

「打てるようになったって期待してたんだけどねぇー、しらんけど」

「……知り合いで?」

「うん、小学生の頃かなぁ? 雀聖くんと同じくらいの時だと思うな☆」

 

 ……シノハユとかいう漫画の関係ってところか? 生憎、シノハユは読んでないからわからんね。

 ただ、アニメと漫画で瑞原プロに誘われてたって描写があったが、シノハユというヤツで接点があったのか、なるほどね……。

 でもどうしてだ? これだけの猛者に一目置かれているのに赤土さんは俺レベル、下手すると俺以下の実力になっているんだ……トラウマを克服してないとは言えど、もっとこう、パッとしないもんかね……。

 

「でも、雀聖くんすっごく無理してたね☆ 本当は門前で戦いたかったんでしょ」

「見透かされてましたか? 本当だったらこの{発}鳴くつもり一切なし、なんなら初手で叩いてもよかった。でも、赤土さんのダブル立直でこいつを使わないと――焦土が生まれるだけなんで」

「うっわ、わたしのドラも見抜いてたわけ? しらんけど」

「……まあ、場の支配は完全に貴方でしたからね」

 

 場の流れを変えるには、流れを喰らうしかない。

 鳴き麻雀は好きじゃない、オールド・デジタルは鳴きでリズムを崩すのが大嫌いんだよね……。

 まあ、この場合……リズムもヘッタクレも無かったから和了出来ただけ儲けものか……ッ!

 

「まあ、雀聖くんとの対局は二の次で、晴絵ちゃんの打ち方を見に来たんだけど☆ ……今は雀聖くんしか見えてないよ」

「うっわ、このプロきつい……小学生に狙い撃ち宣言ですか……」

「完璧に流れを掴んだわたしに頭ハネを見せつけたんだ、戦う相手を間違えてたのかもね! しらんけど」

「……まあ、俺を撃ち落とすならガトリングでも持ってこないと撃てませんよ、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるしなきゃねッ!」

 

 瑞原プロの目がアイドル雀士のモノからランカー雀士の目に変わる。

 流石にガトリングでも持って来いは挑発し過ぎたか? だが、この程度の安い挑発でリズムを崩すのがプロな訳がない、確実に決めてくるッ!

 それが高い手なのか、それとも――連打なのか、予想するだけでタマヒュンもんだぜ……。

 

「戻りました……」

「ハンカチ持ってきてねぇーのかよ、顔がビチャビチャだぞ? ほれ、ハンカチ」

「うん……ありがとう……」

「ったく……爺さん! ダウンしたら代打ち頼むぞ」

 

 出目徳の爺さんが尻を掻きながらドラマを観てやがる。こいつ絶対に入る気ねぇな……まあ、それでこそタヌキ爺だッ!

 さあ、対局をはじめよう……撃ち殺されるのが先か、濁流に呑ませるのが先か、どっちだろうな……!

 

 

【一戦目:東二局0本場・親 瑞原はやり】

 

東:三尋木咏 「24000」

 

南:瑞原はやり「25000」親

 

西:赤土晴絵 「23000」

 

北:滝川流也 「28000」

 

 点数状況は未だ危険水準、レジェンドがレジェンゴだと再確認して東二局、親は神速のデジタル瑞原プロ……あまりプロ麻雀リーグに興味が無いのが影響してか、一回の平均打点がどのくらいなのか皆目見当もつかない。

 ただ、言えることは一つ――最低でも五巡目に和了しないと抜け出せない底なし沼だということ……ッ!

 見えるッ! 瑞原プロの背後に世界最速の猛禽類――隼が飛んでいる姿がッッッ!!

 

「ロン、断么九ドラ、2900」

「ツモ、混全帯么九のみ500オールは600オール」

「ロン、平和三色5800は6400」

 

 狙い撃ちされてるのが肌で感じられるッ! だが、そのすべてを掻い潜って失点はツモの600のみ……てか……。

 

「うひょー! カモられてるぅー! しらんけど」

 

 赤土さんも守りの姿勢に入って防御力が高い、なんやかんやでプロに憧れる一人だ……打ち方は事前に研究済みってところか? だが、研究してるなら和了できるだろう、それなのに和了できない……気が弱くなって配牌に影響してるってところか? デジタル打ちがオカルト語って悲しくなるぜ……。

 だが、弱気の姿勢は配牌を弱くするし、道を決められない。常に誰よりも強い自分を演出しなければ勝ちは拾えないッ!

 

 

【一戦目:東二局3本場・親 瑞原はやり】

 

東:三尋木咏 「14100」

 

南:瑞原はやり「36100」親

 

西:赤土晴絵 「22400」

 

北:滝川流也 「27400」

 

 こいつは……ヘビーだぜ……ッ!

 だが、今日という日は全身全霊を超えたガムシャラで打つって決めてるんだ……だからこそ、誰よりも虚勢を張らなければならないッ!

 揺さぶるんじゃない、当たり前を恐れに変えるだけだ……。

 

「爺さん、この戦いってダブル役満アリなのか?」

「何を言っとる、三倍でも四倍でも掛け算せい、その分点棒を得られる。あと、八連荘に翻数縛りは無しじゃ」

「はやっ☆ 狙ってるのかなぁ? かなぁ」

「そりゃよかった……箱点でもダブルで捲くれる……ッ!」

 

 もうそろそろ……放銃したいところだったんだ……ッ!

 八連荘が先か、俺の役満が先か……勝負しようぜ……!

 

「ロン、1500は2400」

「ロン、1500は2700」

「ロン、1500は3000」

「ロン、1500は3300」

 

【一戦目:東二局7本場・親 瑞原はやり】

 

東:三尋木咏 「14100」

 

南:瑞原はやり「47500」親

 

西:赤土晴絵 「22400」

 

北:滝川流也 「16000」

 

「……これだけ失点して笑ってるなんて、強いぞ男子☆!」

「ただ、致命傷は与えられてない。次が本当の致命傷――八連荘ッ! その役満、ぶつけてみなッ!」

 

(なんて戦い……瑞原プロが一方的に勝ってるように見えて、本当は負けてるッ! 流也に当てている弾丸はすべてドラが無いのみ手、本来だったら二回に一回は二翻、もしくは三翻の手が入る筈なのに……流也の天運がそれを妨害する……)

(これはこれは☆ ……八連荘のチャンスなんて言ってられないね☆☆☆)

(まるでカウンターを待つように……静かにその時を待っている……)

(こりゃ、わたしトブかも……しら、しりたくないけど……)

 

『滝川流也:配牌』

 

{①①①⑨⑨⑨東南西北白発中}

 

(((配牌だけでわかる役満の気配ッ!? それもただの役満じゃない……ダブル!!)))

 

『瑞原はやり:配牌』

 

{三六九147東南西西白発中} ツモ{西}

 

(あれだけ和了してこの配牌ッッッ!? うそでしょー☆)

 

{①①①⑨⑨⑨東南西北白発中} ツモ{②}

 

 打{東}

 

{①①①②⑨⑨⑨南西北白発中} ツモ{③}

 

 打{南}

 

{①①①②③⑨⑨⑨西北白発中} ツモ{④}

 

 打{西}

 

{①①①②③④⑨⑨⑨北白発中} ツモ{⑤}

 

 打{北}

 

{①①①②③④⑤⑨⑨⑨白発中} ツモ{⑥}

 

 打{白}

 

{①①①②③④⑤⑥⑨⑨⑨発中} ツモ{⑦}

 

 打{発}

 

{①①①②③④⑤⑥⑦⑨⑨⑨中} ツモ{⑧}

 

 

『滝川竜也:河』

{東南西北白発}

{中}

 

(((うごけない……誰一人……ッ!)))

 

(まあ、こういうのはラスの仕事だよな……しらんけど……)

 

 打{③}

 

「……――フッ」スルー

 

(あ、和了らない……なんで……わかんねぇ……)

 

 出目徳の爺さんが視線を移す。

 流石に九蓮宝燈、それも純正九蓮宝燈を張ってるなら雰囲気でわかるかッ! それに、この三尋木プロは典型的なオカルト打ち……俺が筒子の九蓮宝燈を張ってると見るや速攻で放銃しに来た。多分、ラス目の仕事だと思ってるんだろうさ……ッ!

 だが、こいつはプロとアマの対決、落とし屋の仕事を思い出す……あの頃は天運もヘッタクレもなく、ただ運がよかったとプロに勝ってきた。

 ――今日は、プロを喰らう存在としてやってきた。

 

(流也のヤツ、赤土ちゃんとワンツーを狙っておるな……だが、まだ弱い、あの人の麻雀はもっと凄かったッ)

 

(ようやく聴牌……だけど、リーチしないと役が付かないぞ☆)

 

{四五六112347⑥西西西} ツモ{8}

 

(もし、九蓮宝燈だとしても――咏ちゃんから和了しなかったのはダメだぞ☆)

 

「リーチ☆」

 

 打{横⑥}

 

(流也……頼むぞ……)

 

 打{東}

 

「リーチッ!」

 

 打{横4}

 

(とんでもなく危険なところをあっさりと☆!?)

(こりゃ、はやりさん……一発だねぇ……)

 

 打{北}

 

(そんな、そんなわけない……役満張ってるならリーチしないよね☆)

 

 スッ……{⑤}タンッ

 

「ロン……純正九蓮宝燈、子のダブル役満は64000、七本場は66100」

 

{①①①②③④⑤⑥⑦⑧⑨⑨⑨} ロン{⑤}

 

(や、山越しで……純正九蓮宝燈……?)

 

「雀聖くん……わたし、役満放銃本当に久しぶりだよ……」

「まあ、プロですからね――だから窮鼠猫を噛む、綺麗な打ち方ですよ……流石プロ」

「そんな綺麗な九蓮宝燈を見せられて、わたしのこの手が綺麗なんて☆ お世辞が上手いね♪」

「参ったねぇー半荘なのに東場で終わっちゃったよーしらんけど」

 

 

 

【一戦目:終局】

 

東:三尋木咏 「14100」 三着

 

南:瑞原はやり「-19600」四着

 

西:赤土晴絵 「22400」 二着

 

北:滝川流也 「83100」 一着

 

 

 

「なんじゃ、九蓮宝燈は九蓮宝燈でも筒子かえ、萬子で作らんか美しゅうない」

「言ってろ爺、下手したら吐いてたんだぞ……こんな重圧久しぶりなんだからさ……」

 

 九蓮宝燈、また死の役満がやってきやがった。

 俺、爺さんより先に死ぬつもりねぇーぞ? それに、京太郎ともまた打ちたいからな……ッ!

 

「晴絵ちゃん? ――男の子に守られてたら……こっちで戦えないぞ☆」

「……はい」

「じゃあ、次の親決めやろうか! 勝ちたい気持ちがあるかどうかはしらんけど!」

 

 残り半荘二回、赤土さんや、ワシは一回トップ取れたから満足してるが――アンタはどうだい?

 

 出目は{東}、親番かッ!

阿知賀12後 寄り道していいですか? 11書き直し許可感謝!

  • 怜を可愛くかかんと容赦せいへんで!
  • 愛宕親子再び
  • 京ちゃんの小学生時代希望
  • テレビ番組出演(はやりん☆)
  • BADENDとかある? 見たい
  • おまけの中身 以下略
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