雀聖の器 作:マージャンスキー
あの夜の後、どうにも天運を鎮めるのに時間がかかる。
麻雀教室の面々で天運を止められるのは高鴨の山から切り出す時くらい、それだけ俺の運の部分の成長が著しい。
今までお決まりと思っていたグロ配牌も最近はご無沙汰している。言ってしまえば――卓が俺の和了を待っているんだ……ッ!
俺という存在はデジタル打ちだが、運の流れってのを重視する……今の俺に流れなんてない、卓が和了しろと場の支配を深めていく……。
常に俺の流れ、常に俺の勝利、常に俺の……。
「トップ率六割はイカサマ疑われるって……」
そんなこんなで最寄りの神社、新子の実家に足を運んだわけだ。
別に神様がお願いを叶えてくれるとは思っていない、少しだけプラシーボ効果ってのを感じたいだけなんだ。
いつものように神様の通り道を外れた端の方から中に入り、祀られてある場所で二礼二拍手一礼、お賽銭は奮発して500円、小学生にしては頑張ってると思ってくださいな……。
「流也?」
振り返ると新子が不思議そうな表情で覗き込んでくる。
こりゃ参ったね、一人寂しくお参りしたい気分だったのにさー……。
新子とシングル遭遇の時は基本的に隣り合って座り、他愛もない会話からスタートする。
「でね、しずがー」
「へー……そうなの……」
「流也反応うすーい」
「だって他人事だもの」
新子がわからないという表情で見つめてくる。そんな目で見ないでくれ、わっちは軽度の女性恐怖症なんじゃから(大嘘)
まあ、わからないではない。俺という存在が阿知賀ガールズに与えてる印象は強い、だからこそ……引け目ってのを感じるのさ……。
本来ならば必要とされない不純物、それが純粋な存在を汚している……なんだろうか、それがどうしようもなく嫌だ……。
「なんで……流也は皆によそよそしいの……」
「昔、同じ釜の飯を食う大親友が居たんだ……」
「親友……」
「その親友がさ、両親の元に引き取られた。実の両親。それなら別にいい、でも……親御さんがさ、俺と爺さんを嫌ってるから連絡一つさせてくれないし、こっちからの年賀状も破り捨ててる。そう電話で告げられた。だからさ、声を聞きたくても聞けないし、顔を見たくても写真もってないし、友達ってのがどれだけ儚いくて……作ると怖いもんなのか……」
新子憧、おまえさんは阿知賀編だと鷺森灼と同じくらい常識人、まだまだ小学生とは言えど理解してくれるだろう。
――俺がおまえ達に必要とされたくないって……。
原作を壊したくない気持ちもあるが、俺は気楽な存在でもありたい。
あの夜の対局、赤土さんは俺に依存の瞳を向けるようになった、アレはダメだ……俺を必要としている……。
なんで……こんなのを必要とするのか……理解に苦しむね。
「……だから、みんな名字で呼ぶんだ」
「ああ、だから顔見知り程度、友達の友達程度に押さえている。これくらいなら……気分的に離れ離れになっても凹まない……」
「それでも! 友達……だよね……」
「いいや、男女の間に友情は成立しないらしい。偉いフェミニストが言ってた」
「ふぇるみにすとってなによ!」
「まあまあ、俺はおまえさんのこと嫌いじゃない……特別好きじゃないがな……」
酷く寂しい表情を見せる。
なんだよ、なんでお前まで――赤土さんと同じ目をしてるんだ……。
カーッ! これが雀聖のサガってやつなのか? 前世の麻雀放浪記だとか、雀聖と呼ばれた男だとか、そいうのである程度、いや、結構、雀聖はモテモテだったからなー……モテ期が来るの早すぎんだろ……。
小学生で色恋なんて味わいたくないね……もっとサラッとした関係でありたい……。
「じゃあ……二人きりの時は名前で呼んで……」
「嫌だ。俺は誰かを特別扱いする気は微塵もない」
「じゃあ! どうしたら……仲良くなれるのよ……」
「俺みたいなヤツと仲良くなろうとするな、最高にろくでなしだ……」
静かに立ち上がる。
新子、おまえさんは理的だが、情熱的、少し焦った行動が多い。
名前呼びの提案も焦りが生んだ焦燥感ってところか? ほんと……なんだろうね……。
「流也は中学……もう決めてるの……」
「さあ? とりあえず女子校には入れないからな……適当な場所で……」
「そうなんだ……そうだよね……」
――突風、
ありゃ? こりゃ、新子を悲しませてるから神様怒ってんじゃね? やめろよなー……俺のポリシーってヤツを神様が横槍するの……。
あーあ、普通に十円玉投げときゃよかった……エコヒイキ神にお願い叶えてもらえるわけねぇーじゃん……。
「流也……名前で呼んで……」
「……新子憧」
「憧だけでいい……」
「……じゃあ、俺に役満でもぶつけてみろ? 直撃だ。そうしたらなんでも願いを一つ叶えよう! 俺が出来る範疇でさ、ただ、お願い事を増やすみたいな真似はNG」
新子の頭をポンポンと撫でてその場を後にする。
雀聖の器、雀聖は雀士を引き寄せる――そして、雀士を成長させる。
俺と雀聖、接点も血縁関係も無いのにさ……。
【その後】
「カンッ!」
「えー、憧がカンするなんて珍しいー」
「カンッ!」
「うえっ!? なんで、変なのでも食べた?」
「しずー知らないの? 流也に役満直撃出来たらなんでも言うこと聞くらしいの……」ニコッ
「え! 初耳!! ドラがこれだけ増えてるなら勝負するしかないよね!!」
こいつ、策士だわぁ……。
ベタオリ、ベタオリ……。
キャラストーリーは麻雀要素が含まれない為、非常に脳に優しい(でも、麻雀好き♡)
体調がいいからかな、妙に筆が進みます。もしかしたら次は0時頃に仕上がるかも?
阿知賀12後 寄り道していいですか? 11書き直し許可感謝!
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おまけの中身 以下略