雀聖の器 作:マージャンスキー
そういえば、赤土さんが今日は定休日だとか言って麻雀教室はお休み、別に牌を握らないと死ぬ体でこそないが、いつものメンバーが集まらないのは少しだけ……自由時間みたいでいいじゃん! 誰にも怒られないって最高!!
ってな感じで、どうせ休みだと知らされているなら一番乗りで麻雀教室に入ればこっちの勝ち! 最近の新子が妙に積極的だから困ってたんだよ、出目徳の気持ち悪い顔を見るよりは三億倍くらいマシだが、俺は一匹狼の躁鬱気質、一人でいるのも寂しいわけじゃない。なんなら一ヶ月くらい監禁されても飄々としてそうだ(自画自賛)。
「うんしょうんしょ……ふーなのです……」
「あらら、先客がいましたか……」
「あ! 流也くん!!」
「テンションたかいなー」
懇切丁寧にモップがけをしている松実妹、そういえば掃除当番の日だったな? まだまだ小学生なのにご苦労なこって、来年からは中学生か……。
いつものようにふてぶてしくソファーに腰掛ける。ここのソファー高級感あってスコ……。
「流也くん、今日は麻雀教室お休みだよ? 忘れ物でもあったの」
「うーん……松実妹の顔を見たくなった……」
「うぇえっ!?」
「ひゃーからかいがいがあるねぇー……そう顔を真赤にされるとさ!」
林檎と同じくらい顔を真赤にさせたかと思えば、美少女な顔でプンプンしはじめた。ありゃー、こりゃ嫌われたかなぁ? それはそれで面白いからいいけどさ、一人だけ俺のことを嫌いな状況って控えめに言って最高じゃね! 無視決め込んで、俺と同卓拒否とかしてくれたら尚更にハイテンション! 俺の天運でもドラゴンロードのドラ爆は防げないわけだし……。
「……いつも思うけど、流也くんは意地悪ですのだ」
「そりゃ、自分でクソガキ名乗ってますからなぁー……嫌いになってもいいよ?」
「うんうん……流也くんと麻雀打つの楽しいからそれはないよ……」
「あらら、嫌われたいのになぁー」
掃除が粗方終わったのか、俺の隣に腰掛ける。
にしても、松実姉妹はどこの角度から見ても美形だな、大学生になって合コンでもすりゃ、男の過半数、いや、一人残しで全員クロチャーにアタック確定だな、そして誰かにお持ち帰りされる。それが大学生ってヤツかね? おもちかえりー☆
「流也くんはお母さんいないんだよね……」
「通り越して親父もいない、なんもない」
「強いね……」
「語りたいこと全部語れよ? 聞き専に回ってやるから」
若干強引だが、松実妹の姿勢を崩して膝枕してやる。俺が女子に優しいのは周知の事実なわけだしぃー(大嘘)
また顔を真赤にさせる松実妹だが、懐かしい何かを感じたのか優しい表情を見せる。
少し意地悪のつもりで頭を撫でてみたが、別に拒絶することなく受け入れる。この子は麻雀の防御力も低けりゃ、女としての防御力も低いねぇ……。
「お母さんに言われたんだ……ドラは大切にしなさいって……」
「そうかい」
「お母さんに麻雀を教わって、よくおねーちゃんも入れて三人で打ってたの……おねーちゃん萬子が好きだから索子の19だけ残して……」
「そうかい」
「それでね……それでね……」
「ちゃんと聞いてるよ、焦らなくていい……」
「おかあさんが……死んちゃった時……わたしだけ泣いて……おねーちゃんを泣かせてあげられなかった……!」
胸ポケットに常備してあるハンカチを松実妹の顔に落とし、次の言葉が出てくるのをただ待つ。
なんでだろうねぇ……地下生活のせいか、人の生死に感情移入が出来ない。本当だったら共感して泣いてやるのが優しいヤツなんだろうが、クソガキを極めている俺から言わせると……死んでしまっただけだとしか認識できない……。
負けたヤツが悪い、死んだヤツが悪い、そんな感情が自己防衛のように湧き上がってくる。
最低の糞男だわ……あーし……。
「おねーちゃんにいつも……ツライ思いをさせて……!」
「…………」
「わたしだけ……ここに来て……!」
「…………」
「でも、流也くんが引っ越してきたから……おねーちゃんが来てくれて……」
「…………」
――すごく楽しい。
すごく楽しい……か、なんと表現したらいいのだろうか、もう原作が壊れてね? まだセーフ? 俺って原作壊し過ぎじゃね? セーフだよね……。
まあ、松実姉が偶に顔出すから完璧にぶっ壊してるのはわかるんだが、それでも……モブでいたい、物語を壊したくない。こいつらが原村和に出会って、もう一度卓を囲みたいという気持ちをもって……白糸台と戦ってほしい……。
出会いと別れ、古今東西の物語に必ず出てくる要素、それを俺が壊したくない。
でも、それを告げるのは……今じゃないか……。
「感動的なのをぶった切って悪いんだが、瑞原プロってさ……」
「はやりん!? はやりんのことなら任せて!!」
「良い尻してるよな……」
「はっ」ハイライトオフ
うわー、黒髪ロングのハイライトオフとかアニメでしか見たことねぇーアニメみたいー。
家猫のように目を細めていた松実妹がフンと視線を合わせなくなった。だが、膝枕は所望って……どっちだよ……。
「流也くんはおもちに興味ないの……」
「お雑煮は好きだぞ、正月以外も食ってる」
「違う! おっぱい!! 恥ずかしいからおもちって言ってるの!!」
「通はバストって言うんだぜ?」
「へ、そうなの?」
「さあ、しらん」
松実玄のジタバタ! 効果は無いみたいだ。
こいつ、なんというか……甘え下手だが、甘えていいと思ったらとことんなタイプなんだな、断片的な要素しか見てこなかったからさ……。
そういえば、おもちが好きな設定は無意識に母性を求めているとかなんとやら? 別に父性はいらないんじゃない、ワシ男よ。
でも、まあ、こいつが強がりなのは知ってる……あまり抑圧するのはよくない、ガス抜きってやつだ……。
「憧ちゃんから聞いたよ……流也くんに役満当てたら……」
「なんでも言うことを聞く、そうだろ? まあ、俺に当てられるヤツなんていない。だからなんでもなんだよ……」
「わたしもなまえで呼んでほしいな……」
「おまえが一番役満に近いだろ? けっぱれけっぱれ」
「おまかせあれ!」
「うひょー……本気になりやがった……」
そのまま無言が少しばかり続く。
時間の流れが遅く感じる、だが、松実妹の方は早く感じてるんじゃないか? なんか、そんな気がする。
時間は有限、時間ってのは……意地悪だねぇ……。
「なあ、松実妹さんよ……おまえさん、本当に強がりだよな……」
「えっ?」
「強がりの甘え下手、付け加えて孤独が嫌い。でも――芯は通ってる……」
「どうしたの……流也くん……」
「本当は……今日も麻雀が打てると思ってる誰かを待ってたんじゃないか? 寂しい顔しながら、掃除して、待ってた」
見透かされたという表情で目を見開く。
「そうしたら俺が来た。嬉しかった。そして……心が軽くなった……」
「う、うん……」
「うさぎは寂しくなると死んじまうらしいが、君は強い芯があるから死んでない。芯があるから……ドラを打たない……」
「…………」
「そのスタイル、貫き通せ……でも、変化するのを忘れるな……」
「流也くんは……」
俺は……そうだな……。
「……松実玄、君と真逆、一人が好きで、馴れ合うのが嫌いで、麻雀も好きじゃなくて、自分がやってることに疑問を抱いている」
「ッ!?」
「でも、今も悪くないかと思う自分がいる……不思議だろ?」
「……ずるいよ」
日が傾く、季節が変わる時期か……。
「……見たくないの見ちゃったな」
今日はここまで、毎日投稿を通り越して毎日加速してるけど、誤字脱字がきになるところさん……。
阿知賀12後 寄り道していいですか? 11書き直し許可感謝!
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おまけの中身 以下略