雀聖の器 作:マージャンスキー
松実姉が風邪をひいたらしい。松実妹が律儀に麻雀教室にやってきて、姉の看病をしなければならないと足早に帰っていった。
まあ、あの見た目で体が強かったら逆に心配になる。阿知賀の病弱枠ってところですわぁー。
でも、まあ、煙草と酒を浴びるようにしてる奴でも100生きる世の中だ、早死するようにも見えない。過労か何かで体調を崩しただけだろう。
「爺さんや? なんで宴会なんてしてんのさね……」
「そこに知り合いがおるからじゃ」
「パリピ……いや、バブル知ってんなら全員パリピか……」
今日も今日とて爺さんの付き添いで松実館に連れてこられては、顔も知らない爺さんの旧友達達にもみくちゃにされる。
ここの九割が麻雀関係者、爺さんの口の軽さが影響して数回の半荘を強要された。やっぱり雀聖の器って面倒くさいですわぁー……。
「流石は滝川さん、どこからこんな原石を拾ってきたんですか」
「まあ、趣味さね……もうやめた趣味じゃがな……」
露骨にドヤ顔してる出目徳の爺さん、面倒くさいからトイレに行くフリをして会場から抜け出す。
それにしても、松実姉は大丈夫だろうか? 松実妹がいるから大丈夫だとは思うが、どうにも顔を見たい気持ちがある。高鴨と新子は用事があったのか、麻雀教室に顔を出してないわけだし……。
「流也くん、娘が心配なのか?」
「あらら、松実の親父さん」
「体調は良くなっているが、顔くらい見ていくか」
「まあ、親御さんの許可があるなら」
二人で松実姉の顔を見に行こうとするが、松実父は会場の酒飲みに呼び止められる。
なんだよ……結局一人で行かないといけないの? うさぎは寂しいと死んじゃうんですよ! 寂しいんですよ!!
ため息を一つ、そのまま松実姉の部屋にダラダラと出向いてみる。
「松実宥……可愛らしい立て札だこと……」
三回ノックして、中に入ってみるとムワッとサウナ室も顔負けの熱量が身体を襲う……ッ!
こんな環境で人間が生きられるのかよ!? これがニュータイプか!!
珍しくツッコミに回ってみたが、原作以上のカルチャーショック、ここまで来ると病気をうた……今病気だったわ……。
「はぁはぁ……」
「オイオイ……こりゃ……」
脱水症状起こしてね?
こたつで寝ている……いや、倒れている松実姉をみて直感する、この表情は脱水症状、もしくは日射病、寒がりでも人間の体はここまでの熱に耐えられる設計はしていない。無痛病だとかいう病気の人間が熱中症や風呂で痛みがわからず死んでしまうのがこういう場合だって何かの本で読んだことがある。
こたつに置いてあるアクエリ、俺はポカリ派、それを拾い上げて松実姉にゆっくりと飲ませる。
本当だったら熱が籠もりやすい場所を冷やした方がいいんだが、この人を見るにそんなことしたら逆に低体温症を引き起こす可能性が微レ存、怖いからやんねぇー……。
「ったく、風邪ひいてる人間がこたつで寝るなよな……」
高鴨式山駆けトレーニングのおかげでわっちの体は小学生離れした筋力を誇る。こんな線の細い中学生女子をお姫様だっこなんて容易い容易い。
お姫様だっこで布団まで運び、そのまま大量の布団と毛布を重ねてサンドイッチ……逆に死なないこれ? わっち暑がりなんよね……。
まあ、ダメ押しの小型電気カーペットを腹部に滑り込ませて任務完了、熱いから風呂借りてこよう……そうしよう……。
「……りゅうやくん?」
「おう、みんなのアイドル流也きゅんだぞぉー☆」ダラダラ
「……きてくれたんだ」
「うん、顔見れたからお家帰るね」ダラダラ
俺の発汗がマッハ、ダークソウル的に言えば溶岩の中でもローリングできるレベルで発汗してるよこれ……。
またね、その言葉を告げようとした瞬間には、
涙腺ならぬ、汗線が刺激され、大量の発汗、この場所は人間が寝る場所じゃない……電気椅子の方がまだまだ生存率高いんじゃねぇーの? ヤバイ、ここに三十分もいたら絶対に死ぬ……ッ!
「あったか~い……」
「……うん、そうですね」ダラダラ
なぜにわっちが添い寝せなならぬ? わっち悪いことしましたか? 結構してました。
ああ、次の転生先は現代日本を所望します……普通のサラリーマンとして生き抜きます……倍返ししません……。
体から逃げていく常温が俺の正常な判断を狂わせる。
「お母さんの香り……」
「わっちおとこどすえ……」ダラダラ
「おかーさん……」
「……もう、どうにでもなーれ」
なんとなくだが、松実姉も極度の寂しがり屋、姉妹だって実感する。
こういう時、俺はどうすりゃいいのか? そんなの……優しく抱きしめてやるだけさ……。
少しだけビクッと体が震えたが、すぐに呼吸が落ち着いていく。
逆に俺の呼吸は発情とかじゃなくて、この場の暑さによって呼吸が乱れていく。
なにこれ? ウィンウィン……なわけねぇーべや! しぬぅ!!
寝て、お願いだから寝て! セットされてた湯たんぽが尚更に俺の寿命をマッハしていくんですが!!
「りゅーやくん……おにいちゃんだね……」
「すいません、わっち年下どす……」
「ううん、おにいちゃん……だから……あったかい……」
「そうですか……ありがとうごぜーます……」
なんで、露骨に寂しそうな表情をするんだよ……。
孤独が好きな俺には……理解に苦しむね……。
でもさ、この人も人格形成に一番大切な幼少期を……母親抜きで育ったんだ……。
そりゃ、寂しいか……妹に強いところを見せないといけないからさ……。
「もうすこし……このままでいい……?」
「寝るまで大丈夫だよ……あったかくなるまで一緒にいてやるよ……」
「うん……」
ただ、抱きしめて、ただ、温めて、ただ……。
――寂しさが少しでも埋まればいいね……。
2
「流也がアクエリを一気飲みなんて珍しい……」
「体は塩分を求める……まだ風呂入れるよな? 汗流してくる。なんならシャワーだけでもいい」
「よーわからんが、南蒲のクソガキがおまえをご指名じゃ、汗を流したら打ってやれ」
「すいません、滝川さん……本当に哲也さんの器か確かめたくて……」
うっわ、原作の方で見たことある顔なんですがそれは……。
まあ、いい、死ぬより麻雀打ってた方がマシだわ……。
あと、仏壇に質問してねぇと……。
「……娘二人が糞男に誑かされてるぞ、そう言わねぇとな」
どこまで行っても……俺はクソガキの糞男でしかねぇーんだわ……。
短い方がエモい、私はそう思うんですよええ、多くを語らない方がね、なんというか……頭の中に二千文字とちょっと、その数字が浮かんだんですよ。なんというかなぁ、多くを説明しない方がエモいみたいな……。
小◯構文は難しい、真面目にやります。
もう、キャラストーリーも残り二人、しずがここまで残るとは思ってませんでしたが、一回七星編を挟んで、二人を消化、和登場って感じですね。
阿知賀12後 寄り道していいですか? 11書き直し許可感謝!
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テレビ番組出演(はやりん☆)
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おまけの中身 以下略