雀聖の器 作:マージャンスキー
遺書という名の日記1
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五万円でノートとペンを購入した。
100円ショップで売っているような安物の品、こんなのに五万円も使用したことに若干の後悔が滲み出る。
だが、どれだけ生きられるかわからない現状。それを考えて無難な数字だと思いたい。
俺がいる場所は日本のどこか、多分だが、この蒸し暑さは沖縄とまでは言わないまでも、九州のどこかだと思う。
ここは子供を玩具にする場所、小学生くらいの子供達に賭け麻雀なんてさせている趣味の悪い場所だ。
正直、この世界に生まれ落ちた時には普通の日本だという感情しか湧いて出なかったが、野球と同列に麻雀が競技として普及しているのを見て、ここは【咲-saki-】の世界なのではないかと疑ってはいた。
そして、疑惑が確信に変わったのは一人のプロ雀士、名前を大沼、この人は確かに咲の世界に存在している。だからこそ、この場所が咲の世界だと理解できた。
五歳児の頃くらいは男で咲世界はやること無いだろうと前世と同じような生き方を選ぼうとしたが、どうにも異世界は転生者に無理難題を押し付けるのが趣味らしい。
――親父が借金の保証人、カイジがエスポワールに乗船した理由と同じ、それが起こった。
まあ、別に母さんが俺を引き取ってシングルマザーにでもなってくれたらよかったんだが、どうにも親父を捨てることが出来なかったらしい。逆に俺を捨てた。
俺はヤクザなのか、それとも半グレなのかわからない男達に連行され、この場所に連れてこられた。
ガキ一人の命は一千万らしい、相場はしらないが。
もう1ページが終わりそうだ。一日1ページと決めて書いていこう。
二冊目になることを祈りながら。
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この場所で行われていることは人身売買、それも奴隷として飼育するのではなく、臓器の売り買いをしているときた。趣味が悪いとしか言いようがない。
両親は若干の哀れみをくれたのか、俺を一千万で売ったが、百万円はこの場所で長生きする為に預けてくれたらしい。クソなのは変わりないが、この場で現金が無くなることイコール・死、温情だ。
それにしても、この場所の空気は性に合わない。
多分だが、命のやり取りをしているのが常人の感性から外れているからだろう。
泣き叫ぶ同い年くらいの少年が死にたくないと甲高い声で叫んだのを今でも思い出す。今頃は同い年くらいの少年の一部になっているのだろうか? 健康な人間を殺して不健康な人間を生かす、これは自然界の摂理に反するのではないか? 疑問が尽きない。
負けた奴が一番悪い。そう言い聞かせる日々が続きそうだ。
そういえば、今日の対局で俺の貯金が150万になった。まだまだ遠いがこの場所から脱出するのに一歩づつ近づいている。
まあ あと何人 地獄に落とせばいいのか
今日はこのくらいにしよう。
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ちくしょう! この世界の女は化け物か!!
今までは男の子とばかり打っていたから気付かなかったが、この世界の女麻雀はオカルト前提だ。
どうにかラス回避だけは出来たが、それでもマイナスはマイナス。
前の世界では、女流雀士は流れに乗れば強いというジンクスがあるが、この世界はそれ以上を女に与えてやがる!
くそ! くそ! くそ……
くそと書き込むのにページを使うのはもったいない。残念だが、ボールペン書きだから消すこともできない。
だが、あの打ち方、多分だが、役牌が初手で対子で入ってくるという速攻系の能力だろう。
あの対局で門前で仕上げたことはない。一翻、二翻、運が良くて満貫程度、こっちは最大限の手作りで倍満を和了すればいい。
これからは女との対局は最大限、そして殺すつもりで打つしかない。
対策を練りながら練る。
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やったぜ! あの女に役満ぶつけてやった!!
配牌がよかったのもあるが、どうせ役牌ポンするならと九種九牌で流さず国士無双まで仕上げた。
最初の打ち方を見た時から、打点を上げる為に加槓は積極的にやってたのが功を奏した。
役満直撃は10万円のボーナスがある。これで最初のマイナスがプラスに転じたってもんだ。
だが、結構な金額を毟ってたようで、これからもあのオカルト女との対局は続く、だが、対策は完成度が増してきた。
ここの麻雀は赤ドラが存在しない、鳴きの速攻は手役を含めた裏ドラで刺し殺せる。相手が1000点を拾う間に8000点を和了すればいい。
これからは捕食者として戦う。
死にたくないからな。
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この場所の空気に慣れてきたのか、生き死にを受け入れたのかわからない。
どうにか貯金が二百万になった。そう、二百万。差し馬30万を握り勝利したからこその二百万。
あの女、生粋のドSらしい、幼年とは思えない考え方をしてやがる。なんでも、泣き叫びながら連れられていく少年の悲鳴が癖になっているらしい。だから弱い相手には率先して差し馬を握らせている。
だが、俺は弱くない。牌効率も出来ていないガキに速度で負けるわけがない。握る相手を間違えたな!
まあ、初心者狩りをしているメスガキに良い天罰だ。これからはどんどんおまえから毟ってやる。
どうせ、この場所を出る前に何人を
もういい、今日はここまでだ。
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くそ! また新しい女だ!!
立直和了後に必ず裏ドラが乗るタイプのオカルト、赤ドラが無い麻雀だと裏ドラの脅威は何倍も跳ね上がる。
だが、付け入る隙は存在する。アレは立直するまでは俺達と変わらない、ただ、新しい女、女Bが和了したら裏ドラが乗るだけ、それ以外は普通の麻雀を打ってる。
麻雀で最強の戦術はドラを抱えて断么九で殴るだ。
幼い牌効率を披露している間に鳴きの速攻で局を流せばいい。親番は特にだ。
それにしても、前の世界じゃ考えられない。そりゃ、能力が存在する麻雀ゲームならわかるが、現実でこうもオカルト麻雀を披露されると自然と受け入れてしまう自分がいる。
まあ、生きてお天道様に挨拶するなら長生きと金策をしなけりゃならない。
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女Aと女Bが同卓した、少しの緊張が走ったが、互いに長所を潰し合ってくれて逆に打ちやすくなった。
どうしても幼い麻雀、ベタオリの精度も低い、逆に攻めっ気を出しすぎて放銃が普段より多かった気がする。
それにしても、立直・七対子・断么九なんて上手い奴は絶対に放銃しない手を放銃して拍子抜けしてしまった。
案外、この場所の打ち手には強気の麻雀が刺さるのかもしれない。下手に同レベルだと思って打ったらツキが逃げていく、それならガンガン良型を目指して門前で進めた方がいい。
能力を持っていても、過信してしまえば喰われるのが麻雀。
この調子なら一冊のノートで地上に帰れるかもな!
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レベルが違う
今日の対局はプロ雀士、それも咲世界の本物のプロ雀士が卓に座った。
二軍で調整中のプロだとか言っていたが、女という時点で警戒こそしていた。だが、幼い麻雀に慣れた体が放銃を誘う。
久しぶりに一級の麻雀打ちと打ったが、これが連日連夜続けば俺の貯金は無くなる。
だが、プロの世界で飯を食っている存在、俺の防御力が高いと見るや、同卓していた少年を容赦なく狙い撃ち、なんなら山越しで徹底的に撃ち殺し、飛ばした。
ギリギリ貯金はあったようだが、次の対局でラスになれば、、、、
考えたくない、プロは最大限の警戒を誓う必要がある。それだけ。
今日も生きている。
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なんで彼がこの場所にいるんだ?
金色の髪、琥珀色の目、整った顔立ち、彼は、、、京太郎じゃないのか?
わからない、なんで長野にいる筈の京太郎がこんな血生臭い場所にいるのか見当がつかない。
だが、俺が知っている須賀京太郎とは違う、明るい性格の彼じゃなく、例えるなら明鏡止水、心に何の淀みもない姿勢で麻雀を打っている。
そして、七対子を得意としているようだ。
ドラマだとかじゃ、存在を消されている京太郎だが、この世界はカラフルな髪の毛が多い。だから、推定漫画・アニメ世界。
どれだけ負けようが、どれだけ勝とうが原作に登場するだろう。
もし、俺が京太郎を殺そうとしても、バタフライなんたらで生き残るさ、気にせず打てばいい。
キャラクターの命より自分の命だ。
それに……おれはこの世界ではモブ、ネームドに劣る存在……。
【京太郎戦】
今日も今日とて子供がやっちゃいけない麻雀を強いられる。
自分の親を恨まなければならないのだろうが、どうにも慣れが勝る。
両親の顔も……うろ覚えさ……。
「……よろしく」
「今日は殺してあげるわ」
女Aと女Bがいつもどおりに卓についている。そして、観客席からは歓喜の声が響いている。
この歓声の場合は一回のラスで人生終了が卓に座ることが多い、オカルト打ちが二人……絶望を通り越して、闇だな、そこには何もない。
――金色の髪、琥珀色の瞳、整った顔立ち。
「……えっ」
最後に卓についた一人に見覚えがある。いや、俺が咲を知ったキッカケ……!
「須賀……京太郎……」
「……なんで知ってるの?」
「いや、ああ、まあ……」
「……君は?」
透き通るような瞳に飲み込まれそうになる。
原作のキャラクターだからか、他の奴とは違うオーラを感じる。
だが、どうして京太郎がこの場所にいる? 彼は長野に住んでいるごく一般的なおもちスキー……?
いや、ドラマ版だと存在を消されている、この場所はドラマ版咲の世界なのか? わからない。
――ただ、このオーラを持つ人間が喰われるとは思えない。
「流也、名字は親に捨てられたから使いたくない……」
「流也くん……うん、覚えた……」
京太郎はこんなに冷静なタイプだったか? もうすこしひょうきんな性格をしていたと思う。
だが、この場所に落とされるってことは……つまりは親に売られたってこと……。
どうしてだろう、この場所で一番危ういのが彼だとわかっているのに、彼の放つオーラから敗北の香りを感じる。
――今日、俺は負けるのではないかと感じてしまう。
「捲っていい?」
「あっ、ああ……」
「どしたのよアンタ、いつもより弱気じゃない」
「わかってる。わかってるよ」
事前に並べられた四枚の風、その一枚を京太郎が捲る。
出目は{北}
女Aが{東}
女Bが{南}
俺が{西}
どうにも胸騒ぎが収まらない、そう、捕食者の前に立たされる小動物のような気分。
だが、この場所に立っている時点で逃げることは許されない。
賽は投げられた……。
【東一局】
東:女A 「25000」
南:女B 「25000」
西:流也 「25000」
北:京太郎「25000」
この全自動卓は素人がチョンボしないように最初から配牌が配られ、山が固定の位置に出てくるタイプ。
ドラ表示牌は女Aが捲り{中}が姿を現す。
表情を見るに女Aの手牌にはドラの白が対子で入っているのが濃厚だろう。白ドラ3で7700か8000、役牌にドラが絡むと手がつけられない。
{38⑥⑥⑦二三四六七中南東}
配牌はそこまで悪くない。字牌整理後に平和系、萬子を伸ばして一通の形も目指せなくはない。
だが、この中で不気味なのは……下家に座る京太郎に尽きる。
親の女Aが理牌後即{②}切り、上家の女Bが渋い表情で打{東}、{一}をツモった俺は上家に合わせて打{東}とりあえず、ダブ東の脅威は無くなった。
「……これかな」 打{5}
第一打{5}? 混一色の気配でもあるのか? 少し萬子と筒子は警戒しておくか、そのまま貫き通すか、まだ一巡目……焦る必要もないか……。
五巡目、卓はようやく狂気を見せる。
「リーチッ!」
親から飛んでくるリーチ宣言、この女がリーチをかけてくるなんて珍しい。
手牌は……
{33⑥⑦⑦⑧一二三四六七八}
一通を意識したが、これは仕上がる前に上がられてしまうだろう。悪くない手だったんだが……河は……。
{②3⑤⑤横1}
そうだな、消極的過ぎるが、まだまだ東場、現物の{3}連打でお茶を濁す。
「――リーチッ」
――ッ!? 京太郎もリーチ? だが……ツモった{東}をノンタイムで曲げてリーチ……一発を感じたのか、確かに一発の気配ってのは打ち続けて残り香程度に感じられるものだ、だが、親の立直に向き合える手なのか。
「ロンッ……立直・一発・七対子・ドラドラ……裏なし」
「ッッッ!?」
「子の跳満は……12000……」
えげつない打ち方をしやがる……。
その後、俺は京太郎に能力があるのかどうかを確かめる為に見ることに回った。
そして、彼にはオカルト能力が備わっていることを確信する。
「……ツモ、大七星」
{東東南西西北北白白発発中中} ツモ{南}
……さすがは原作キャラだぜッ!
牌変換のやつ、投稿しないと見れないのつらい。
阿知賀12後 寄り道していいですか? 11書き直し許可感謝!
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怜を可愛くかかんと容赦せいへんで!
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おまけの中身 以下略