雀聖の器   作:マージャンスキー

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キャラストーリー・高鴨穏乃

 山、それは自然のトレーニングジム。

 大量の草木、足を掬う石ころ、日が当たらない故に泥濘んだ地面。

 こんな場所を全力で駆け巡れば自然と鍛えられる。

 

「で、麻雀なんて打ってるあーしをさぁ……なんで山登りさせてるわけ……?」

「運動は楽しいよ! ウヒヒッ」

「この無邪気さが怖いです……」

「えっへん!」

 

 麻雀教室に一番槍で出向いたのだが、そこでシャトルラン、あの持久力を図るようなアレ、それの話題になったのだが……ワシが三十三回しか往復できなかったことを聞いて高鴨に連行されてしまった……。

 いやさ? シャトルランってリズム崩すとボロボロじゃん! 三十三回でも結構上位だったよ!? それなのに高鴨は余裕で百回だとか、新子でも六十回だとか平然と言いやがる……別にわっちもやしっ子じゃないもん……!

 そんなこんなで山登り、奈良の山って妙に雰囲気がピリピリしやがる、山頂に近づくにつれて場違いだと追い返されるような感覚、神聖な場所にクソガキは立ち入るなって話か……ッ!

 

「でも、流也けっこうスタミナあるじゃん! なんで三十三回なの?」

「いや、あの唐突にリズムが早くなるのが苦手なんだよ……麻雀でもさ、ドッシリと門前で構えて一定のリズムで打ってるじゃん? 焦るのすごく嫌いなんだわ……」

「なるほどぉ……一定のリズムだったら100回余裕と……」

「いや、よくて五十くらいだわ……」

 

 高鴨が唐突に走り出したり、急に木に登ったり、急によもぎを食ったり……お猿さん? うっきー! 今年は申年(違います)!! 早いぞォォォォー!!

 ったく、コレは本当に……まあ、これだけワイルドなら同性婚余裕だろ、この世界同性婚(女性限定)にすごく寛容だから。こりゃ、合コン開いて男より女に言い寄られるタイプだわ、しらんけど。

 

「ねえ……流也は……」

「ヤブからスティックどうしたよ?」

「どうして――みんなと仲良くしようとしないの(距離を置くの)?」

「……俺は、神様を見たことがあるんだ」

 

 俺の唐突な新興宗教信者顔負けの神発言にポカンとしている高鴨。確かに、同い年の男子が神様なんて言い出したら驚きを通り越して脳の処理がバグるよな……。

 でも、事実……俺は――鹿児島で神の姿を確かに見た……ッ! アレは……人々に夢を与える存在、光の神、決して邪神の類じゃないッ!!

 そう……それが俺に牙を剥く、流也という一個人としてはどうでもいい現象だが――人間という大きな括りで見てみれば……これは、神様という存在が『個人』に肩入れするという理解したくないソレなんだ……。

 

「俺は……神に殺されかけた……」

「……うーん、よくわかんないなぁ」

「知ってるか? 神様に嫌われた人間は早死するらしい……親しい奴らも含めて……」

「うぇっ!? 流也死んじゃダメだよ!!」

 

 なんか、最近は女の子やら女性に抱きしめられるのが多い気がする。真っ当な思春期男子なら役得だと思うのだろうが、どうにも下心が出てこない。まるで――何かがポックリ抜け落ちたような感覚……。

 なんだろう、この気持ち……アカギを思い出す。

 彼は生きることに飽きていた。周りの人間がどうでもいい娯楽で満足し、お金という紙切れで一喜一憂する。その景色を見るのにどうしようもなく飽きていた。だからこそ、麻雀の世界に、金だけじゃない、命まで賭けるギャンブルの世界に足を踏み入れて……ようやく、ようやく自分の生きる意味を見つけた。

 雀聖と神域、彼らは同じ……自分を安売りし、そして、心が躍る勝負を求めた――ッ!

 

「りゅう……や……?」

「ごめん、少しこのままで……」

 

 抱きしめた。互いに抱きしめあった。

 雀聖の器、雀聖の後継者、雀聖……。

 真っ当な人間から外れる存在、普通じゃなくなる。

 嫌なんだ……凄く嫌なんだ……ッ! 当たり前を……忘れることが……。

 俺はモブでいい、コマにも映らない存在でいい! でも、雀聖という名がそれを邪魔する。

 本当はある程度の大学を出て、そのままサラリーマンでもやっていたかった……それなのに……今、こうして雀聖や神域の気持ちがわかってしまう。

 それは……正しいのだろうか……?

 

「ごめん、もういいや……少し落ち着いた……」

「……流也が考えてること、少しだけわかった」

「……?」

「誰にも知られたくない秘密、それがあるんだよね」

 

 まあ、そうだな。

 

 

「ここから見える景色は最高なんだよねー!」

「うっわ、マジで綺麗じゃん」

 

 辺りを一望することができる場所、高鴨は木の上に登っているが、俺は地面にあぐらをかいて流れる車の数を眺める。それにしても、角度を変えたらなんとやら……何にでも言えることだな……。

 

「役満の景色だよね!」

「いや、こいつは――平和の景色だ……」

「うぇえ!? 役満でしょ!!」

「役満なんて滅多に見れない……それより平和のように毎回見れる方がいいじゃないか?」

 

 高鴨が平和の意味を理解したのか、確かにこの景色を役満にするのは勿体ないと笑みを溢す。

 平和、ピンフ……半荘で見ない日は無い役、リーチ一発ピンフ、赤ドラが使われるようになって満貫にも化ける手、この景色が平和のように清らかな存在であることを切に願う。また、見たい景色だからな。

 

「やっぱりここにいたー! 二人で駆け出すんだからー」

「憧! 綺麗な景色でしょ!!」

「ほほーう、これは役満の絶景」

「――違うよ、平和の景色だよ♪」ウヒヒッ




 ああ、キャラストーリーもあと一人で終わるんやなって……。

阿知賀12後 寄り道していいですか? 11書き直し許可感謝!

  • 怜を可愛くかかんと容赦せいへんで!
  • 愛宕親子再び
  • 京ちゃんの小学生時代希望
  • テレビ番組出演(はやりん☆)
  • BADENDとかある? 見たい
  • おまけの中身 以下略
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