雀聖の器   作:マージャンスキー

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阿知賀9 デジタルと自称デジタル

 わっちも小学六年生、もうそんな時期ですか、そうですか。

 阿知賀周辺に来て一年、濃ゆすぎる一年だとも表現できる。この一年でどれだけの無理難題を押し付けられたことか、最上級プロ雀士との対局とか良い例だ。

 もうね、わっちは思うんですよ……ゴールしていいよね……? 麻雀やめてもいいよねって……。

 まあ、各方面から雀聖の器だとか、雀聖の再来だとか爺さんのネットワークで拡散からの炎上、そして実際に打って鎮火、このルーティーンを何回繰り返したと思ってるの? メゲルわぁ……。

 

「――きゃっ!?」

「おっと! すまないすまない」

 

 よそ見して歩くとろくなことが起こらない、どうにかぶつかってしまった少女を支えて転ばせないように工夫したが……うっわ、なにこれ? ゴスロリってやつ……。

 親の趣味を子供に押し付けるのはナンセンスだと思うんですよ、アルバムとか見る時に赤面しちゃうじゃない!!

 

「ごめんね、少し考え事をしてたんだ」

「……はい、わたしこそすいません。少し寝不足で」

「寝不足はお肌に悪いらしい、ゲームは一日一時間って決めないとね」

「……上級生、いえ、わたしが六年生だから」ブツブツ

 

 寝不足と相まって妄想の世界に向かってしまった。

 にしても、桃色の髪の毛って珍しいなぁ? 阿知賀ガールズは赤土さんを除いて結構普通の髪色してるのに、やっぱりアニメの世界はスゲーわ、転生して……よかねぇーか……。

 さてはて、今日は麻雀教室がある日なわけだけど……もうそろそろ原村和が入ってくる時期だしなぁ? あーしは原作を壊さないように顔出しを控えるか……そうしよう……。

 

 

 で、わっちは高鴨に教えてもらった絶景、平和の絶景を眺めております。

 わっち男だから阿知賀入れねぇし、今年中に赤土さん実業団に行っちゃうし、縁切りには丁度いい時期だと思うんですよね? だからわっちは一人ぼっち。

 まあ、バタフライなんちゃらで俺の記憶なんて消し飛ぶだろうさ、確かに濃ゆい交友をしてきたが、男の俺が下手に首を突っ込むのは気が引けて、勝手に百合の花でも咲かせてくださいな……。

 

「んーッ! 春はいいな……心地いい……」

 

 その場に寝転がり、何度か深呼吸を繰り返す。

 そういえば、京太郎は何してるかな? 来年は中学生、ハンドボールとかいうのをはじめるんだろうな……。

 俺はあいも変わらず麻雀漬け、爺さんもまだまだ現役、あいつだけでも……良い青春を……。

 

「流也発見! 連行します!!」

「あの、すいません……拒否権を発動させてもらっていいですか……?」

「阿知賀こども麻雀クラブのナンバーワンが責任から逃げられるわけないよね」ウヒヒッ

「はぁ……あんまり気乗りしねぇな……」

 

 立ち上がり肩を鳴らす。

 まあ、でも、全員が集まるタイミングでカミングアウト、同じ中学に入れないから疎遠になりたいと表現すりゃええか……。

 高鴨に腕を引かれて連行される麻雀教室、雀聖の器からも逃げられねぇし、阿知賀からも逃げられないんじゃないかと思うんですよね? 原作ブレイクさせるのやめてもらっていいですか……。

 

「おまたせー! 流也連行してきましたー!!」

「うーす、阿知賀のクソガキここに見参ッ! 帰っていいですか?」

「おう流也……今日は閉店まで付き合ってもらうぞー……」

「あらやだ、大人って怖い……」

 

「「「「り゙ゅ゙ゔぐん゙だ゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ア゙~~~~!!」」」」

 

「おう、年下組? 鳴かない麻雀覚えたかぁー」

 

 年下組に抱きつかれてスクワット、わっち男の子ですから倒れません! 倒れるにしても前のめり……いや、それはこいつらが怪我するからNGで!

 にしても、最初の頃は二つ卓が埋まるのが精一杯だったのが、去年の終わり頃、急激に生徒数増えたよなぁ……まあ、麻雀の競技人口を考えたらあたり前田のクラッカー……なんつって!

 それにしてもさ、赤土さんが主に麻雀教えてるわけだけど、こいつらの雀風がほぼ全員オールド・デジタルになってるのうけるぅー! 鳴き率一割あるかないかの子が過半数だぜ……!

 

「あれ、今朝の……」

「ああ、今朝の……」

「「どうも」」

 

 この子が原村和だったぁぁぁぁぁぁ!? なんかドラマチックな再会? いや、ねぇーべや! ちょっと廊下でぶつかっただけだしぃ? そんなので恋に発展するのは少女漫画! これは百合麻雀漫画!! OK? OK!

 で、卓に入ってるのは新子、松実妹、席を立ってるけど赤土さんか……。

 まあ、雀風知ってるけど、一応聞いておこうか……。

 

「この子、オカルト打ち? それともデジタル」

「ガチガチのデジタルだよ、こりゃ、この歳でそうとう打ってる……」

「へー、それで? 打てる子の挨拶なら終わったし、帰りたいのですが」

「今、和が二連勝中なんだ! 流也を倒せばここのナンバーワンだよ!!」

「いえ……半荘二回で強い弱いは測れません……」

「まあ、いいや……わっちは年下組を俺色に染め上げて、将来のインターハイチャンプをビルディングしますわぁ……卓空いたら呼んで」

 

 年下組がキラキラお目々を向けてくる、うい奴らめ! わっちの三十年くらい古い麻雀を教えてやるぜ!!

 

「卓あいたよー」

「ちょ、ま! 南入してんなら言えよな!? 年下組が可愛そうだろ!!」

「その分、私が教えるからいいのさ!」

「ケッ、これだから赤土さんはよぉー……じゃあ、親決めしますかー……」

 

 松実妹と新子……こりゃ、友情コンボにきーつけないとな……ッ!

 

 

 

【東一局0本場・親:原村和】

 

東:原村和 「25000」親

南:松実玄 「25000」

西:滝川流也「25000」

北:新子憧 「25000」

 

 

「くぅー! また短期勝率最弱の西家かよ! あーあ、もう嫌になっちゃうねぇー」

「流也って西家ほんとうに多いよね♪」

「チャンスですのだ!」

「短期勝率を気にするということは……ネット麻雀を?」

「ネトマね、嗜む程度には……まあ、門前縛りで打ってるからそんなに段位高くないけど……」

「門前縛り……プレイヤーネームは……?」

「【雀の器】だよー」

「――ッッッッッ!?」

 

 デジタルの天使、のどっち……どのくらいの実力か確かめる為に何度かネットの世界に潜った……。

 正直、小学生離れしたデジタル思考、驚かされる牌効率、そして何より――回し打つのが上手いッ! ベタオリの完成度は高いが、一番評価しないといけないのは――押し引き、勝負手を押す、安い手は降りる、それが徹底している。

 放銃を恐れるわけじゃなく、放銃せずに打ち取る麻雀が異様に上手い。

 まあ、もろほんのプロには劣るが……インターミドルレベルなら問題なく優勝できるだろう……ッ!

 

(ここ数ヶ月で急激に実績をあげた雀の器さん……牌譜をみるに門前縛り、大三元の種が揃っていても鳴かず、オリの精度はトッププロのアカウントに匹敵する……)

 

「じゃあ……打ちますか……ッ!」

 

 長いこと牌を握ってきたが、牌以外のことを多く学んできた。

 人の癖、痩せた考えと思われるかもしれないが――ライオンはうさぎに対しても全力の狩りをする。だからこそ、相手の癖を見抜くだけの目が必要になる。

 原村和、のどっち、ネット麻雀の世界では有名、瑞原プロに無理やり送られたノートパソコン、ネット回線までご丁寧に設置。週一で瑞原プロ、三尋木プロ、なぜか野依プロまで合流して意味不明! 一般人なら金を払わないと打てない面々ってヤツだ。まあ、三尋木プロはネット麻雀では火力で押せ押せ、場の支配が出来ないのか、平凡なデジタル打ちになるのだが……。

 

「リーチ」

 

 六巡目にリーチ、配牌が良かったってところか? のどっちの牌譜を見る限り、愚形リーチ率はギリギリ一割あるかないか、つまり良型両面、まだまだ松実妹にドラが集まることに半信半疑、ドラ筋の可能性も考えられる。

 付け加えて癖、ネット麻雀を主軸にする人間あるあるの癖なんだが、自分の待ちを何度も確認する。そして河を一周見渡す、レベルが高くなると手出しかツモ切りかの情報も拾う。これの繰り返し、自分の待ちがどのタイミングで気付かれるかってのを考えてしまう。

 

「えっと、転校生「原村和です」原村さんはさ……麻雀に何を求める……ッ!」

「……合理性です」

「なるほど、それは結構……ストレートな麻雀だ……」

「ん?」

 

 合理性、合理性ね……数学的に麻雀を読み解こうとしている……。

 言うならば、数字麻雀……愚形より良型、一翻より二翻、夢より現実、なるほど……ッ!

 

「うーん……これっ!」

 

 新子の打{中}に酷く反応した。この時点で萬子の待ち、字牌処理後の即リーチだが、待ちが絞れるなら十分だろうて……それに……。

 

『ドラ表示牌』

 

{一裏裏裏裏}

 

 ドラの{二}の筋、{二五八}は少し気になる。多面張の可能性が高い、この辺りは松実妹は知らないが、新子は絶対に打たない。

 なら、俺は……少しだけラフプレー……ッ!

 

「チーッ!」 {横七八九}

「うえっ!? 流也くんが鳴き入れ……?」

「めずらしー……変なモノでもたべたー……?」

「鳴くのがそんなに珍しいんですか?」

「だって流也、{白発中}が対子で入ってても鳴かないで七対子にするような奴だし、鳴いたの……下手すると半年ぶりくらい……?」

「まあ、形式テンパイ欲しいからな……俺も最新のデジタル雀士になるのよさー……」

 

 さて、これからはじまる揺さぶり……どう反応するかなぁ……。

 

「聴牌です」

 

{123三四五六七③④⑤⑨⑨}

 

「うぅ……ノーテンです……」

「うひゃーノーテン」

「てん……いや、ノーテンにしとくか」

 

{一三四五五六七八八八} {横七八九}

 

 パタンッ

 

{裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏} {横七八九}

 

「待ってください! 聴牌しているのにノーテンというのはマナー違反です!!」

「マナー? 結構お上品なのね……だが、俺の手は伏せられ、今はノーテン。リー棒あーげる♪」

「……聴牌にしてください」

「だからノーテンだって、伏せとかないと流れが逃げる」

「麻雀に流れなんてありません! 最大限の牌効率を果たした先にあるのが和了です!!」

「……はぁ、原村さんは完璧主義者なのねー」

 

{一三四五五六七八八八} {横七八九}

 

「聴牌……ッ!」

 

(やっぱり……わたしの待ちを……)

 

 これで揺さぶりのセットは完了……どうしても俺を意識して打つようになる……ッ!

 さーて、これは楽しくなりそうだ……!

 

 

【東一局1本場・親:原村和】リーチ棒一本

 

東:原村和 「25500」親

南:松実玄 「23500」

西:滝川流也「26500」

北:新子憧 「23500」

 

『ドラ表示牌』

 

{白裏裏裏裏}

 

 

 最高のタイミングで特急券がドラ、こいつはグレートッ!

 さて、原村和さんや……リーチしない方が身の為だぜ……ッ!

 

「リーチ」

 

 今回は五巡目リーチ、目の移動を考えるに索子を無意識に見ていた。

 この牌効率を見てると、字牌処理が終わったら聴牌するみたいなオカルトにも思えてくるが、作中屈指のデジタル打ちってのが彼女の称号、デジタル一本でインターハイを駆けるッ!

 まあ、俺も――張ってるんだがな!

 

「通らばリーチッ」

「んっ……」

 

 少し動揺した。ダントツの聴牌速度を誇る自分に追っかけを仕掛けてくる。自分は良型ですよって顔に出ている。だからこそ、俺は――愚形で勝負に出る!

 ネット麻雀なら流れだとか、そういうのが排除されるが……ことリアルの麻雀においては強気か弱気の差は顕著、今、原村和は弱気、少し調子を落としたと表現できる。この場合、第一の捕食者だけでなく、第二の捕食者まで呼び寄せてしまう……ッ!

 

「あ、それロンです! 倍満!!」

「えっ……?」

「あちゃー……こりゃ酷い……」

 

{4赤56四赤五六④赤⑤発発発南南} ロン{⑥}

 

「発・三色・ドラ6の倍満16000! 一本場は16300ですのだ!!」

「は、はい……」

「あひゃー……リー棒損した……」

 

 まあ、こういうことがあるのがリアル麻雀、完璧に誘導できたって感じか……ッ!

 パソコンじゃなく、卓で打つ麻雀ってのは気持ちの持ち方で色々と変わってくる。弱気なら相手に有効牌、強気なら不要牌、捕食者になるか、獲物になるか、そういう側面もあるんだぜ……ッ!

 俺は基本デジタル打ちだが――考え方が古いオールドなんでね! こういうオカルト風の精神論大好き♡

 

 

 

【南四局0本場・親:新子憧】

 

東:原村和 「13600」

南:松実玄 「26600」

西:滝川流也「39500」

北:新子憧 「22300」親

 

 

 

「ツモ、門前のみ……500・300」

「あちゃー! 玄が倍満和了ったのに止められなかったかぁー」

「うぅ……申し訳ありません……」

「…………」ボー

 

【終局】

 

東:原村和 「13300」

南:松実玄 「26300」

西:滝川流也「40600」

北:新子憧 「21800」

 

 

 

「まあ、四連続の半荘で疲れが見えてたってところか、適度な休憩が勝利のコツって誰かが言ってたわー」

「しずに連れられて、最低でも数キロは全力疾走してきたのによく言うわ……」

「あーし、バリバリの男の子だぞ♡」

「うわ、キッモ」

 

 新子に罵られて……ビクンビクッ! 俺ってMの才能があるかも、でもさ? MってことはSなんじゃないかな(謎理論)。

 阿知賀のクソガキ兼ね、阿知賀のドSだからねぇーあーし……。

 

「……凄く綺麗な打ち筋でした」

「まあ、手役重視の門前麻雀だからね、見た目は綺麗なもんさ」

「いえ、河に牌を落とす動作もすごく綺麗で……」

「いや、あの……あんまり褒められ慣れてないから……」

 

 ガチ目に麻雀で褒められるとか滅多にないから驚く。

 爺さんに叩き方やら、リーチ後の姿勢なんかも矯正されたからなぁ……見る人間がみると美しさすら感じるのかもしれない……。

 だーが、美しさで勝てるのなら誰だって美しい麻雀を打つ、ラフプレーマシマシの打ち方の奴の方が威圧感あって苦手なんだよねぇ……。

 

「流也……おまえが照れるなんてなぁー……」

「人の揚げ足取りして楽しいですか?」

「楽しい!」マジキチスマイル

「Oh……ジーザス……」

 

 椅子から立ち上がり背伸びを一つ、半荘は疲れるべや……。

 

「りゅうくん! まーじゃんおしえてー!!」

「おうおう、赤土先生の麻雀じゃ満足できねぇーか! いいぞ、ただトイレに行かせてくれ、わっちの膀胱は半荘一回までの制約があるんだ」

 

 さーて、トイレの後は年下組に麻雀を教えるかー。

 

「あの、あの男の子は……」

「滝川流也、この辺では最強の小学生……和は雀聖って知ってる?」

「はい、アカギさんと肩を並べる雀士……」

「その雀聖、実際には雀聖のおひき、それがここら辺に住んでてね……連れてきたんだよ、雀聖の器だって……」

「雀聖の……器……?」

「最初はさ、小生意気なクソガキとしか思わなかったけど――打てば打つ程に魅了される……人を引き付ける打ち手なのかな……」

「……そんなオカルトありえません」プイッ




 流石に七星編が書けてないので、二話くらい七星編にリソース割きます。

 男臭いのから、一気に女の園ですよ! 女の子がいる方が書いてて楽しい!!

阿知賀12後 寄り道していいですか? 11書き直し許可感謝!

  • 怜を可愛くかかんと容赦せいへんで!
  • 愛宕親子再び
  • 京ちゃんの小学生時代希望
  • テレビ番組出演(はやりん☆)
  • BADENDとかある? 見たい
  • おまけの中身 以下略
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