雀聖の器   作:マージャンスキー

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爺さんの独白

 今ではもう昔、雀聖と呼ばれた男と旅をした。

 ただ、真っ直ぐに勝負をし、そして時に勝ち、時に負ける人だった。

 どこか人間離れ、だが、人間臭い人、そんな人と青春を駆け抜けた。

 

『ダンチ……俺は次世代に託す……』

 

 雀聖、阿佐田哲也の死後、世界は麻雀一色に染まった。

 その理由に阿佐田哲也がいるなら本望、だが、雀聖が育てた弟子達は数年で引退していった。

 プロ麻雀は女性のモノ、男性プロは絶滅危惧種。

 何か、歯車がポロリと落ちた感覚、雀聖が育てた弟子達が、師もいない女流雀士に駆逐されていく。

 その光景はあまりにも……苦痛過ぎた……。

 

 

 私は麻雀好きの一人の老人として雀聖の器を探し続けた。

 数年前までは、男性限定で探していたが、この世界の麻雀は女性が強い。もう、強ければ女性でもいいと思えた。

 各地、小学生から青年まで、色々な打ち手を見てきた。

 だが、雀聖になれる存在はいない。

 雀聖として麻雀を打てる存在はいない。

 絶望感すら漂う、この世界は雀聖を必要としていない、興行として美しい女性雀士だけを求めている。

 だが、あの戦後復興期、あの旅の中で……強く戦った雀聖をもう一度だけ……。

 

 

 九州にある地下施設、旧陸軍が本土決戦を意識して秘密裏に作り出した地下空間。

 そこに全国各地から連れてこられた小学生、それに違法以上の額を賭けさせて麻雀を打つ、そんな興行が行われていた。

 どの時代も、人の生死を他人事で見ることが好きな奴がいる。

 金を払い、他人の命が散る瞬間を間近で見たいという気狂い、あまりにも気味が悪かった。

 だが、この場所に雀聖を求める自分も変わりがない……この観客達と……。

 

『今夜のメインイベント! ここまで三百万も稼いだ脅威の少年、流也!! 彼が挑むのは――』

 

 少年、この場所で少年が三百万も稼ぐなんて珍しい。

 この場所もまた、女性、いや、少女の独壇場。数人の少女達が少年の命を刈り取る。

 そして、運良く勝ち続けた少年も……こうして主催者側に雇われたプロに狩り殺される……。

 

『ロン……3900……』

 

 違う、狩られる存在にしては打ち筋に怯えがない。

 どんな状況でも捕食者としての威圧を忘れない、1000点の手を役満に見せる程の威圧、その姿は――雀聖。

 リーチに対するスタンスも他の少年少女とは比べ物にならない。相手がプロであろうとオリなければ死ぬのはお前達だと言わんばかり。

 

『ツモ、満貫』

 

 薄い場所を嗅ぎ分けるセンスも抜群、変に良型を目指すよりは愚形で勝負に出ることも多い。

 これは……少年なのか……?

 今まで化け物と呼べる少女達を何人も見てきたが、久しぶりに見る化け物と呼べる少年。

 長い人生の中で……ようやく見つけた雀聖の器……!

 この子を雀聖として育てる、それが自分の運命だと知った。

 

 

 流也を正式に私の孫にし、おまけで京太郎という少年も引き取った。

 なんでも、京太郎は男にしては珍しいオカルト打ち、それも七対子を使いこなすタイプ。

 主催者側が何度も殺そうとしても、京太郎は相手を弾き飛ばす。このままでは捕食者である少女まで殺しかねない、その理由で流也を引き取ると同時に京太郎も引き取った。

 だが、この京太郎という少年、薄い。

 確かにオカルト打ちとしては興味深いが、生き様という部分ではあまりにも薄い。

 流也が命という活力に満ち溢れているのとは反対、あまりにも生きるということに執着がない。まるで死人、自分を一人の人間としてではなく、地球の重力に引っ張られた人形として考えている。

 強い心を持たない人間に勝利は降りてこない。

 だが、流也という器によって、徐々に人間らしさを取り戻している。

 

 

 京太郎の両親が息子を引き取ると申し出てきた。

 次男が交通事故で死んでしまい、このままでは家督を継ぐ人間がいなくなると……。

 あまりにも唐突なもの、だが、両親の下で生きるのが子供の最高の幸せなのではないか、それが金の為に売られた存在だとしても。

 私は鹿児島の巫女に連絡を入れ、汚い世界で生きた記憶を消し去ることを選んだ。

 流也の弟分、あまりにも唐突なのかもしれないが……これが最善の選択だと思いたい……。

 

 

 流也が鹿児島の巫女に殺されかけて数ヶ月。

 まだ幼い彼には神々の悪意がわからなかったのかもしれない、雀聖として生きるのなら、神すら喰らう存在にならなければならない。

 もう少し、彼が成長してからでいい。まだ、彼は幼い。

 だが、旧友と酒を酌み交わす間に流也はこの旅館の娘達と牌を握っていた。

 すべて無駄自摸無し、少し遊ぶように役満を和了する。

 親心を見せたが、この子は天に愛されている。

 ――特訓の再開。

 

 

 瑞原が連絡をとってきたのは偶然だった。

 この地で偉業を成し遂げた赤土晴絵、彼女が麻雀を打てるようになったからと様子見の依頼を受けた。

 この機会を逃しては、流也にトッププロのなんたるかを見せることは叶わない。少し意地悪だが、日本を代表するトッププロに半荘三回の報酬を約束させた。

 そして、流也は華麗に舞った。

 心を折られた赤土晴絵を庇うように自らを盾にし、これ以上のトラウマを植え付けないように誰よりも考えて麻雀を打った。

 そして、あの九蓮宝燈……天が与えた役満……。

 天運、ここに極まる。

 これから先、雀聖の器が雀聖を超えるかもしれないという期待感。

 歳を重ねたくないとはじめて思えた。




 爺さん視点無かったからなんとなく。

 誤字脱字の報告修正、本当に感謝です!!

阿知賀12後 寄り道していいですか? 11書き直し許可感謝!

  • 怜を可愛くかかんと容赦せいへんで!
  • 愛宕親子再び
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  • テレビ番組出演(はやりん☆)
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  • おまけの中身 以下略
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