雀聖の器   作:マージャンスキー

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阿知賀11 墓穴を先に掘るタイプ

 春、桜の木に葉が芽生える季節。

 転校生、原村和は新天地で出会った友のことを考える。

 転校から数日で出来た気が許せる友達、少し意地悪な同級生男子が混じっているが、趣味の麻雀に深い理解を示しているのは点数が高い。

 だが、若干のオカルト理論に系統しており、その部分は残念としか言いようがない。

 SOA! そんなオカルトありえません!!

 

「お、原村だ!」

「やーい! おっぱいおばけ!!」

「……ふんっ!」プイッ

 

 小学六年生、まだまだ男子生徒にからかわれる毎日。

 彼女は元来気の強い性格、この程度の誹謗中傷で泣いてしまう人間ではない。

 数年単位で転校を繰り返し、その都度、出会いと別れを経験している。

 本当に小さい頃は祖父母の家に預けられることも多かったが、両親の方針、子は親の元で過ごすという考え方で今に至っている。

 慣れている、他所から来た存在を誹謗中傷に似たイジリで傷つける存在は。

 

「可愛くねぇ奴……」

「あなた達にかわいいと思ってもらわなくて結構です」

「新子と猿女と一緒にいて楽しいか? 麻雀なんて「友達を悪くいうのはやめてください!」……なんだよ」

「少なからず、あなた達よりは……わたしのことを尊重してくれて、大切な友達です!」

 

 ガキ大将、田舎のクソガキは反論できないという表情を見せる。

 だが、彼らもまだ子供、強い言葉を受け入れるという程に成熟していない。

 

 ――だから、暴力に訴えかける。

 

 女の子特有の甲高い叫び声、一人が和を突き飛ばした。

 はじめて体験する理不尽な暴力、彼女は恐れの表情を見せながら、それでもキッと彼らを睨みつける。

 

「暴力なんて最低です!」

「いつもいつも、流也に守ってもらって……新子も猿女もだ! 俺達が正しいと思ったことを捻じ曲げてくる!!」

「アイツが転校してから……本当に息苦しい……」

「気は済みましたか……どこかに行ってください……!」

 

 折れない心、それが逆鱗に触れる。

 二人は劣等感を持っている。それは顔だとか、身長みたいな男性のプライドではない。言うならば、彼を見ているだけで、自分が矮小な人間に見えてしまう。

 同い年、同じ学校、同じ土俵、それなのに――上位の存在に見える滝川流也という少年に酷いコンプレックスを持っている。

 もう止まれない。

 

「ひっ!? ――「あらやだ、女の子にグーパンはダメでしょ❤」」

 

 殴られると思い、咄嗟に目を瞑るが、開いた時には一人の少年が薄気味悪い笑みを見せながら殴りかかっている少年に抱きつき、頬と頬をすり合わせている。

 いつの間に、その考えが脳内を駆け巡る。

 だが、紛れもない事実、滝川流也という少年は――この場所にやってきた、まるでヒーローのように。

 

「は、はなせ! きもちわりぃー!!」

「いやぁ~ん! わっちドSだからその言葉にゾクゾクしちゃう♪ 嫌よ嫌よも好きのうちでしょ☆ だってこんなに勃起……してないね❤」

「チ◯コさわるな! てか、ズボンの中に手を入れようとするな!!」

「なんだよー? 友達ち◯こは万国共通の求愛行動だろ! チ◯コ触らせろよゴラ!! ◯剥いてやるから!!」

 

 抱きつかれていた少年が強引に拘束を振り解き、その場にへたり込む。

 流也は心底面白そうな表情で彼と取り巻きの一人を見つめる。

 ――狩人の眼光。

 

「こ、この男女! オカマ!!」

「よかったのか? 俺は男も女もイケるタイプのLGBTQに配慮した小学生なんだぜ、オカマなんて言われたら……公衆便所に連行しちゃうぞ❤」

「き、きめー!! 逃げるぞ!!」

「わ、わかった!!」

 

 二人は千鳥足になりながらその場を駆けていく。

 原村和はその姿を見つめることしかできない。

 

「アレ、典型的な悪ガキ? 後先考えないタイプの馬鹿。わっち、後先考えるタイプの馬鹿」

「……た、滝川くん」

「ああ、お礼とかいいから。とりま日が暮れるまでに帰ろうね。夜道はあぶねぇーし」

「……こ、腰が抜けて」

「……え?」

 

 

 

「この先をずっと真っ直ぐです……」

「アイアイサー」

 

 何故にだろうね? なんでわっちが原村さんをおんぶしているのだろうか。

 いつものごとく、爺さんのミイラ顔負けのグロテスクフェイスに身構える為に散歩をしていたわけだが、美少女、なんなら数年後も美少女、その先は美女である原村和が同じ学校のガキ大将に理不尽な暴力を受けていた。まあ、未遂だからいいのかな? こういうのって現行犯逮捕しないといけないパターンな気がするし。

 にしても、来年からは中学生だってのに、子供の凶暴性には頭が痛いよ、気になる子に意地悪とは言ったもんだが、流石にグーパンはダメでしょ? 腹パンが性癖だってのは知ってるが、男より女の方が色々と未来の負担がやべーんだよ、顔と腹はやめてさしあげろ。

 

「重くないですか……」

「高鴨が高頻度でライドしてくるからなぁ……それ――ッ!? ご想像におまかせします」

「……はい」

 

 この女ッ! 重たいかどうかを聞いたくせに重たいと表現しようものなら首を締めて絞殺の気配を纏わせやがった!? この世界の女は麻雀以外もおっかねぇ……。

 

「……ありがとうございます」

「……どういたしまして」

「……そうですね」

「……お日柄もよく――グエッ!?」

 

 丁寧言葉しりとりをしているものだと思っていたら、思いきり首を締められた……。

 こ、こいつ! 恩を仇で返す天才か!?

 細腕と夢と希望の詰まった母性の塊の感触、わっちはドSだから細腕の殺意の方に意識がいってままならない! 助けてライダー!? 絞め殺されるぅぅぅぅ!!

 

「……滝川くんは」

「ハァハァ……絞殺しようとした奴に質問すんじゃねぇーよ! 振り落としても許されるね!!」

「……どうして、他の男の子と違うんですか」

「……聞いてねぇし、真面目な質問飛ばすし、私いじけちゃうし」

 

 心底ダルいと思いながら夕焼けに染まるアスファルトを見つめる。

 

「……俺が麻雀馬鹿だからさ」

「……そうですか」

 

 とびっきりの嘘を無理矢理に信じたのか、掴まる腕の力が強くなる。

 そのまま会話することなく歩いていると耳元で吐息、気を張ってたってところですかね?

 

 

「で、君は娘の何なのかね?」

「同級生です。それ以上でもそれ以下でもありません、名前は滝川流也」

 

 原村さんの家に到着した時にジャストタイミングで原村パッパが車に乗って帰宅していたのですよ。そのまま娘を引き取ってくれたらいいのだが、流石に人力車で帰宅したのは不安があったのか、ベッドにゴーシュート! した後にティータイム&尋問の時間がはじまってしまった。

 にしても、この世界の人間、人間の髪の毛の色には脱帽もんだ……一見白髪のように見えるが、普通に銀髪、自分の髪の毛が普通過ぎて泣きそう。

 

「……娘はいじめられているのか」

「いえ、女友達は普通以上、男友達は皆無、自分は友達と顔見知りの中間ぐらいの存在だと思いますね」

「だが、服に泥が付着していた? それはどう片付ける」

「まあ、田舎のガキ大将ですわー……高性能な防犯ブザーか、催涙スプレーを持たせることを推奨します」

 

 流石に法の番人やってるだけあって観察眼は人並み以上か、尻もち後の泥までしっかり観察してある。

 さーて、困りました? 会話の種を発芽させる前に踏み躙ったせいで会話が続きません! このお茶を飲んだら帰っていいですか? いいよね!

 

「で、君は娘のなんなんだい?」

「他クラスの同級生、麻雀教室に通っている同級生、多少麻雀が強い小学生、好きなの選んでくださいな」

「……なら、この場合は麻雀教室に通っている同級生にしようか」

「ええ、娘さんとは麻雀教室で知り合って、偶に打つ間柄ですね」

 

 嘘は言っていない、まったくもって嘘は言っていない! あーしって正直者ぉ♪

 

「……娘のことをどう思っている?」

「そうですね、短い期間ですが……負けず嫌い、寂しがり屋、アマノジャク、そのくらいですなぁ」

「……一つ一つお願いできるかな?」

「負けず嫌い、この部分は両親のどちらかの遺伝ですね。多分、パパさんの方でしょう、他人に厳しく、自分に厳しいのが瓜二つです。言い方を美しくするなら凛としている」

 

 驚いた表情を見せるが、続けたまえと余裕を見せる。

 やべーよ、小学生が高レベルなこと言ってて大人ぶってるとか思わないのふつー……?

 まあ、別に小学生の理論フル回転ならいいか、言うだけタダの世界だわ。

 

「寂しがり屋、この部分は人格形成の中で十分なスキンシップを怠ったのが理由でしょう。弁護士バッジを見る限り、パパさんの方は多忙、ママさんがこの時間に家を留守にしているということは、同業者、もしくは検事さんの可能性があります。推定で申し訳ありませんが……三歳から五歳の間までご実家の方に預ける頻度が高かったのでは?」

「……肯定しよう」

「最後にアマノジャク、この部分は内気な性格をしている子に多い傾向です。自分のことを見てもらいたいという願望、この場合は両親の気を引きたいという部分がそうさせるのでしょう。自分が見てもらえないとなると若干オーバーなリアクションや拗ねた表情を見せることが多いです」

「……そうか」

 

 さて、あーしから見た原村和という少女を説明終わったわけだしぃ? 帰っていい♪

 

「……娘は、麻雀」

「どういった視点での意見が欲しいのですか?」

「……君から見た娘の麻雀はどうかね」

「基本的には現代的なデジタル打ち、鳴きの速攻を得意としている感じがしますね。かと言って場を荒らすような麻雀ではなく、必要最低限の鳴き、その後はハイセンスな牌効率で和了りを目指すタイプですね。まるでインターネット麻雀の光景をリアルに移したような打ち方です」

 

 パパさんが納得した表情を見せる。

 あ、この表情は経験者だな……確証は持てないが、原村さんに麻雀教えたのはこの人だわ……。

 湯呑みのお茶を空にして、その場を立とうとするが、次のお茶を淹れられる……なぜに……?

 

「君、将来の夢は?」

「……じゃあ、無難に精神科医とでも言っておきましょうか」

「……本心はどうかね」

「それなりの学校を出て、独身貴族ができるくらいの中小企業ですかなぁ」

 

 パパさん眼光やばいって!? 小学六年生になんて目を向けてるのぉ!!

 まあ、一人娘の男友達とか天敵でしかないしぃ? 阿知賀ガールズの親御さんがノーアクションすぎるだけだとは思うけどさ! 中身が成熟しているオスガキだとしても怖いって!!

 なんか胃がキリキリしてきた……帰りたい……帰ってSIRENやりたい……。

 

「……君は、どう思う?」

「言ってしまえば、親の心子知らず、その逆も然り。大人というのは裕福な家庭を望みます。幼少期に感じた金銭的束縛感をバネにして、ですが、裕福な家庭の子供はどうして裕福なのに忙しくしなければならないのかと疑問をもってしまいます。確かに、社会活動の一環で賃金が発生するのは子供でも理解できます。ですが、社会活動というのを目や情報でしか知っていない存在はやはり疑問を持ってしまうんです。両親が共働きで……裕福な家庭に生を受けた子供は特に……」

「……そうか」

「別に共働きを全否定するわけではありません。ですが、言ってしまえば……昔ながらの家庭に比べると家族間での意思疎通が難しくなる。それだけですね」

 

 流石に言い過ぎたな? この子とは遊ぶなとか言われそうだなぁー……。

 まあ、男と女の間に友情は無いって言うし? 別に嫌われたところでって感じ、わっちも麻雀教室に顔出さない口実が出来て嬉しいくらいだ。

 

「……悪くない」

「……何がですか?」

「……考え方が嫌いじゃない」

「……ありがとうございます?」

 

 原村さんのパパさんに肩を叩かれる。

 なんじゃろな?

 

「……一緒にお風呂に入ろう。夢だったんだ」

「……お断りします」

「……なら、松実館の大浴場」

「……もっとお断りします」

 

 何かに認定されたぁ!?!?




 とりあえず、阿知賀編の登場キャラクター全員に説得力のある理由を付与できたかな?

 二コポ苦手なんで、二次創作とは言えど理由はある程度、薄くてもギリギリ理解できる分だけの説得力インストールできたらと!

 次回は七星編書きます。

阿知賀12後 寄り道していいですか? 11書き直し許可感謝!

  • 怜を可愛くかかんと容赦せいへんで!
  • 愛宕親子再び
  • 京ちゃんの小学生時代希望
  • テレビ番組出演(はやりん☆)
  • BADENDとかある? 見たい
  • おまけの中身 以下略
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