雀聖の器 作:マージャンスキー
部室、旧校舎の一室を使用したなかなか広い部屋。
そこには結構な備品が揃っており、麻雀の指南書から咲が好きそうな歴史小説もギッシリと本棚に詰め込まれている。
そして、なによりも仮眠用のベッド、部長が粉骨砕身の覚悟で入手したらしい。確かに長時間椅子に座ると腰にくるからな、わからなくはない。ただ、シーツの洗濯やらが面倒くさそうだ。
――ガシャガシャッ! トントンッ! タンッ!
手積みの卓でひたすらに山を積み上げる。
この作業をかれこれ三十分は続けている。そして、飽きが一切生じていない。
なんだろうか、この心と体が落ち着く感覚……まるで日常の一部にこれが存在していたかのような安心感……。
やっぱり俺は麻雀をやったことあるし、人並み以上に経験している。それなのに、記憶のすべてから……切り取られたように忘れていたんだ。
――体が覚えていて、本当によかった。
「おまたせだじぇ!」
「おまたせしました。ホームルームが長引いてしまって……」
黙々と山を積み上げ、崩し、洗牌、また積み上げる。
全自動麻雀卓もある程度の音を発生させるが、この洗牌の音が堪らない。
牌に命を吹き込んでいるような――そんな感覚ッ!
「きょーたろー! こんな美少女が入ってきたんだから挨拶くらいした方がいいじぇ!」
「……ああ、片岡か。すまない、ちょっと心を静めてた」
「じぇ? ……京太郎、その目は反則だじょ」
「えっ?」
片岡の瞳に大粒の涙が、今の俺はどんな目をしているのだろうか?
ただ、牌を積み上げるだけ、無心で行なっていた。それで怖い目になるのだろうか……。
わからない、だが、少し目を閉じて……咲と行った美術館でも思い返してみる。
「これでいいか?」
「よかったー……昨日の京太郎だー……」
「そう、かな」
「須賀くんはまた洗牌を? 昨日はわたし達に卓を譲り続けてくれましたが」
和は山積みの速度を考えて、俺がそれなりの打ち手だと直感しているようだ。
昨日は部員全員集合……というか、三人も一年生が入ってきたんだ。部長や染谷先輩も張り切って牌を叩いてた。俺は少し体調が優れないと全自動卓に入らなかったが、それが不思議に思えたらしい。
「部長と染谷先輩はまだかー」
「いや、部長は疲れてるからそこで寝てる。染谷先輩は実家の手伝いで今日はパスみたいだ」
「これだと四人で打てませんね……」
「起こせばいいんだじょ!」
起こさないでくれ、死ぬほど疲れてるんだ。
そんな紙が安全ピンで止められている。
まあ、部長は生徒会長……この学校は生徒議会長だったか? の兼役、疲れるのはわからなくはない。
手積みで三麻でもいいと思うが、三麻は娯楽人口は多くても競技人口は少ない。全国を目指すなら四麻を打ちたいところなのだろう。
「パソコンあるからさ、ネトマでも打てばいいんじゃないか? それか部長の指南書」
「麻雀部に入ったんだから打ちたいじょ……」
「わがまま……でも、気持ちはわかります」
何言っても無駄かと思い洗牌しようと視線を動かす。
だが、カランッと扉が開く音がした。
メガネの先輩、染谷まこ先輩が若干息切れさせながら部室に入ってくる。
「今日は卓のメンテナンスの日じゃった……定休日……」
染谷先輩のその一言で場がパッと華やぐ。
さて、数合わせで卓に入るのが確定したが……昨日の感じで片岡は東場に強くなるタイプだと思える。そうだな、それを確認したい。
「じゃあ、三人で三麻がんばってくださーい」
「なにいっちょるんじゃ! おんしも入んなさい」
「えー、山積みしたいっすわ……」
「ちょ! 京太郎のくせに生意気だじぇ!!」
「大声出すな、部長が起きる」
「……知り合いが条件出す時にそっくりです」
原村さんにはバレたか? 条件つけたいから少しゴネてみたが……。
まあ、言うだけタダ、お願いは一つだけ……。
「全部東風にしてください、半荘は一局の重みが軽く感じますから」
「おっ! 京太郎も東場スキーか!? 仲間だじぇー!!」
「ワシはええが、和はどうじゃ?」
「現代麻雀は東風が主流です。大丈夫ですよ」
染谷先輩が{東南西北}をシャッフルし、一枚捲る。
それに一年生が続いた。
【東一局0本場】
東:片岡優希・親
南:原村和
西:染谷まこ
北:須賀京太郎
「よっしゃ! 親番だじぇ!」
片岡の立ち親率は異様だな、昨日の半荘を思い返しても天文学的数字で立ち親を引き続けていた。
別に立ち親が嫌いなわけじゃないが、東風だと初手に流れを掴めなければその後ジリジリ貧乏……まあ、彼女に関してはその心配は無用ってところかッ!
こと東場に限っては化け物の領域に片足を突っ込むッ! 最低でも満貫一回は和了するだろう。
だが……それを許すと思ってるのか?
(きたじぇ! 最高の手がなぁ!!)
『優希手牌』
{一一三三赤五六七七八東東東5} ツモ{九}
『ドラ表示牌』
{北裏裏裏裏}
「リーチだじぇ!」
『河』
{北南1⑥横5}
(無駄自摸なしの五巡目リーチじゃと!?)
(いつものことですね、門前混一色あたりでしょうか……)
和:打{北}
まこ:打{南}
「フッフッフッ! 東ヂカラとタコスヂカラが合わさって最強だじぇ!!」
京太郎:打{中}
「ぽ、ぽん!」
「じぇ?」
「一発が消えましたね」
(――なんじゃ? 京太郎から鳴けと言わんばかりの打{中}、確かにワシの手は……ッ)
『まこ手牌』
{66⑥⑥⑥⑦⑧白白発発} {中中横中}
(大三元なんじゃー! かーっ!! 顔に出るタイプじゃったか……)
打{⑥}
まあ、結構ギャンブルだったが……功を奏したって感じか? それに、まだまだ必要なパーツは多そうだ……ッ!
付け加えて……こいつは危ないよなぁ……?
――優希の本来のツモ牌{一}ッ!
「うぅ……一発消されたじょ……」
京太郎:打{白}
「ポンッ!」
「うえっ!?」
(やっぱり京太郎は初心者なんか? それとも……ワシの顔だけでこの手を……)
{66⑥⑦⑧発発} {白白横白}{中中横中} 打{⑥} 待ち{6発}
(意図的に大三元にしよった!?)
「うー……なんか調子崩れたじぇ……」
優希:打{1}
別に大三元なんて怖くない、ただ、この手は絶対に和了たい。
さあ、来い……ッ!
「なあ、片岡? 俺がここでツモったら名前呼びしていいか」
「じぇ? ……出会って一日でプロポーズなんて♡ ダ・イ・タ・ン♡」
「ははっ、言ってろ……ッ!」
タンッ!!
{①①②②③③778899一} 自摸和了{一}
「ツモ、七対子……と言いたいところだが、門前自摸・二盃口・純混全帯么九……一翻お釣りの跳満ッ! 3000・6000」
「「「ッッッッッ!?」」」
この手も違う、流也との思い出……まあ、こいつは七対子じゃなく二盃口なんだが……。
いや、まて? 流也が言ってた……思い出せッ!
『ツモ、門前と七対子』
『おいおい、そいつは七対子じゃねぇ、二盃口だ。珍しい役だな……』
『りゃん、ぺいこう?』
『三翻役、純混全帯么九と門前混一色、そいつらと肩を並べる良い手さ、七対子の王様。神様は大七星ってところか?』
やっぱりだ、俺は……流也と麻雀を打っている。
それなのになんで忘れてるんだ……。
だが、二盃口……七対子の王様、悪くない響きだ……。
「親が流れて……親被りなんてぇー……」
「片岡……いや、優希よ? 麻雀は理不尽だから面白いんだぜッ」
流也、おまえとの記憶……少しは思い出したぞ……。
【東四局0本場】
『ドラ表示牌』
{4裏裏裏裏}
『京太郎・河』
{55五四六}
{赤⑤④}
(((露骨に親ながしにきた・じぇ・か!?)))
「どうしたんですか? 妙に青い顔して」
(くぅ! 飄々とした面でキツネじゃこの男!? 東風戦はこれをやりたいが為の伏線かッ!)
(ネット麻雀では定石、二着目のわたしでも満貫直撃か跳満ツモじゃないと捲れない……)
(ドラが三枚も……大切にしないとダメだじょ……)
「ロン……3900です」
「じぇぇー!?」
まあ、ネット麻雀打ちなら二着で妥協するか……当たり前だわな……。
ただ、俺は親を流そうとしたわけじゃない……七対子の神様に会おうとしただけなんだ……。
{④9東南西西北北白白発発中}
――パタンッ
{裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏}
まあ、収穫はあったってところか? 少ない収穫だけどさ……。
「京太郎! おまえ強いんだな!!」
「まあ、多少は……まだまだ昔の腕は取り戻せてないが……」
「このまま負ければタコスが廃る! 再戦を希望だじぇ!!」
「へいへい、優希様のゆーとーりー」
流也、おまえも麻雀を打っているか? それなら……また会えるか……ッ!
もう、アンケート面倒くさい。
みんな結構雀聖編が好きみたいだし基本雀聖編で七星編は書き上がったら投稿でええかな? そっちの方が楽しめると思います。
阿知賀12後 寄り道していいですか? 11書き直し許可感謝!
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怜を可愛くかかんと容赦せいへんで!
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愛宕親子再び
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京ちゃんの小学生時代希望
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テレビ番組出演(はやりん☆)
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BADENDとかある? 見たい
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おまけの中身 以下略